ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか 作:猫屋敷の召使い
そして早めに財団神拳を使って大暴れさせたい(切実)
ギルドで一通りの説明を受けた巧は街を徘徊しては、探索系【ファミリア】を訪れては入団できる場所を探していた。
「悪いが、お前を受け入れるだけの余裕はない」
「すまないが他を当たってくれ」
「ごめんなさいね」
「帰れ」
「…………………………」
………………………………………
…………………………
……………
ものの見事に全敗だった。最後の方なんかは無言で、その圧力に巧が負けた。
そのため、どうするでもなくフラフラと街を彷徨っていた。
「さぁーて、どうすっかなー?」
この際、商業系とか鍛冶系、治療系でもいっから全部当たってみるか。全部砕けたらそん時はそん時で。
そう考えた巧は近場にあった【ファミリア】に入って行く。
「失礼しまーす……」
「あん?んでテメェ?何の用だ?」
巧が入ると、入り口近くに一人の厳つい男性が座っていた。その男性が巧に用件を尋ねると、彼は首を少し傾げながらも答える。
「………入団希望者(仮)、かな?」
「……一応主神に通すだけ通してやる」
「アザーっす。ちなみにここって何ファミリアっすか?」
「………【ヘファイストス・ファミリア】だ」
一人の厳つい男性に建物の奥に案内される。巧はその男性の後ろをちょこちょこと歩いてついていく。
ある一つの部屋の前で止まると男性は扉を三回ノックする。
「ヘファイストス様。入団希望者が来ました」
「そう。分かったわ。通してちょうだい」
「おら。失礼を働くなよ」
「うっす」
そういって巧を置いて先ほどの場所に帰っていく男性。そして残されるのは赤い髪の女神と巧だけ。
「どうぞ。座ってちょうだい」
「ありがとー」
ヘファイストスに促されて椅子に、ぴょんと飛び乗るように座る巧。
「それで?貴方は何でここに入団したいの?」
「探索系ファミリアは全部門前払いされたから、こうなりゃやけっぱちだ!と思ってここに来ました」
「……………嘘じゃないのね。どれだけ運が悪いの?」
「世界の底辺ぐらいじゃないっすかね?」
へらへらと笑う巧。なんせ彼は寝ていたら突然異世界に来るような運の持ち主だ。
そんな彼に対してヘファイストスは一つ思いついたことがあった。
「それで、どうですかね?」
「……そうね。残念ながら入団は認められないわ」
「ですよねー。じゃ、しつれ―――」
「でも、神を一人紹介するわ」
「―――いしません。その話詳しく」
「え、ええ………」
若干食い気味に話を聞く態勢を取った巧に少し驚きながらも、彼女は話してくれた。
「今、私のところに神友が居候しているのよ。ファミリアも作らず、働きもせずにね」
「あ、失礼しましたー」
「待ちなさい」
「いや、だってそれ厄介払いっすよね?流石にニート引き取るのは嫌ですよ?」
「でも、この機会を逃すとどの【ファミリア】にも入れないかもしれないわよ」
「いや、居候ってことは衣食住が不安定過ぎません?自分、金ないっすよ」
「雨風を防げる場所は用意してあげる。食事も数日なら許すわ」
「ちょっとダンジョンに実際に潜ってみないとどんなもんかわからないんで………」
「私のところから信頼できる人物を一人つけるわ」
「「……………………………………」」
しばらく二人の間で無言が続く。
そして、先に沈黙を破ったのは巧の方だった。彼はテーブルを叩きながら椅子の上に立ち上がる。
「そこまでして居候を追い出したいか!?」
「追い出したいんじゃなくて、さっさと自立してほしいのよ!!」
「それって結局は堪忍袋の緒が切れかけてるだけじゃん!?」
「そうよ!!悪い!?」
「逆切れ!?」
二人が言い争いをしていると、部屋の奥から長い黒髪をツインテールにした少女ともいうべき風貌の女性が出てくる。
二人の言い争う声が五月蠅くて気になったのだろう。
「ヘファイストス~………一体何を騒いでいるんだい~……」
奥で寝ていたのか目を擦りながら喋っている。
ヘファイストスは彼女を見ると叫ぶように話しかける。
「あっ!ヘスティア!彼が貴方の眷属になってくれるそうよ!」
「あっ!?テメ―――」
「それは本当かい!?」
「うわっ!?」
眠そうだった表情は何処へやら。すごい勢いで巧に迫ってきたヘスティアと呼ばれた女神。巧はその勢いに押されてしまいそうになる。
「本当になってくれるのかい!?」
「え、ちょ、落ち着いて!倒れる!後ろに倒れるから!?」
「わわっ!?ごめんよ!?」
「はぁ………」
なんとかヘスティアを引きはがし、一息つくことが出来た巧。改めて椅子に座り直すとヘファイストスに向き直る。
「………住居は探してもらえるんだよね?それと食事は一週間は食べさせてほしい。そこからは自分で何とかしてみせるから。この条件でどう?」
あんなにも期待に満ち溢れた目で見られてはさすがに断り切れなかった巧。
その返答に口角を上げて笑みを浮かべるヘファイストス。
「構わないわ。取引成立よ」
「くそっ……どこの悪徳商法だよ………」
「……?何の話だい?」
「「気にしなくて
何の話か分かっていないヘスティアが二人に尋ねるが、こっちの話だと言って口を閉ざす。
そしてヘファイストスが奥の部屋を指しながら言う。
「奥の部屋で
「ああ!そこの君!えぇっと………」
「………巧。ここではタクミ・カトウの方がいいのかな」
「そうか!じゃあ、タクミ君!ついてくるんだ!」
そういって先ほど彼女がいたであろう部屋へと入って行くヘスティア。それに追従する巧。
その二人の姿を後ろから笑みを浮かべながら眺めるヘファイストス。
「タクミ君。上着を脱いでそこに座ってくれ」
「わかった」
「おお!随分と鍛えているんだね!」
「まぁね。それぐらいしかやることが無かったから」
上着を脱いで外気に晒した上半身を見てヘスティアが驚きの声を上げる。
彼の身体は余計な筋肉もつかなければ、余分な贅肉もない引き締まった体だ。
そんな体にヘスティアは『
「タクミ君はどうして冒険者になろうと思ったんだい?」
「……強くなって、腹立たしい恩師をぶん殴りたいから」
「………恩師だよね?そんな風に思われるなんて、一体どんな人だったんだい?」
「自主練してたら突然『みんなで殺し合いしようぜ!』みたいなこと言って乱入してくるような人」
「それ本当に恩師かい!?」
「教え方はともかく一応武術を教えてくれたさ……!教え方はともかく!」
大事なことだから二回言った。それぐらいに天野博士の教え方は破天荒だったのだ。
獅子は子を谷に突き落とすというが、それより酷い。谷に突き落とした挙句、ガソリンを撒いて火をつける。そのうえダイナマイトのおまけつき。
あっ、俺、このまま死ぬんじゃないかな?と巧は何度も思った。だが、それはなかった。幸運か不運かは分からないが、天野博士は生と死の境界をよく理解していた。どんなに酷い怪我をしても、ギリギリ死なない。ギリギリ生存する。その限界を理解していた。
故にサディスト。故に鬼畜。財団の中でも悪い意味で有名だった。
巧は数多くあった出来事を掻い摘んで話す。もちろん財団の事は伏せて。
「…………よく今まで生きていたね」
「全くだよ」
「はい。終わったよ」
ヘスティアは巧に【ステイタス】を書き写した用紙を渡す。
タクミ・カトウ
Lv.1
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
《魔法》
【】
《スキル》
【
・アビリティの上昇補正。
・向上心がなくならない限り効果持続。
【
・修練によるアビリティの上昇補正。
・修練の累計時間に比例してアビリティに高補正。
・研鑽を続ける限り効果持続。
・研鑽の量と質により効果向上。
【
・奥義・秘伝・秘奥の威力上昇。
・修練してきた時間に比例して効果向上。
「【
「………そ、そっか。うん。わかった。ありがとう」
自身の【ステイタス】が書き写された用紙のスキル部分を見て、思わず頬が引き攣る巧。
それを首を傾げながら彼を見やるヘスティア。
「どうかしたかい?」
「いや、大丈夫。うん。本当に大丈夫だから」
「神様だから嘘だっていうのは分かるけど、追求しない方がよさそうだね……」
「そうしてくれると助かる。実に助かる」
巧はしばらく深呼吸して感情を整理する。スキルになるほど体に染みついた己が習得した武術の心構え。それを見た彼は自分のもかなり染まっているんだな、と考え様々な思い無理やり押し込める。
「終わったかしら?」
そこへ扉の向こうからヘファイストスが声をかけてくる。それを聞いた巧はいそいそと上着を着直す。
「もう平気ー」
「そう。それなら出てきてちょうだい。話したいこともあるから」
そう言われ、巧とヘスティアは部屋の外に出て、椅子に座る。
「無事刻めたようね」
「おかげさまでねー……!」
恨めしそうな視線を女神ヘファイストスに送る巧。彼女はそれを涼しげな表情で受け流す。
「それで貴方。武器とかはあるのかしら?」
「えっ?いや、無いけど?」
「なら、貸してあげるからうちの団員と一緒にギルドに登録した後、ダンジョンに―――」
「いや、武器は必要ないって意味で言ったつもりなんだけど?」
「―――……何を、言っているの?」
巧の発言を聞いたヘファイストスが彼に聞き返す。ヘスティアも声には出していないが、驚愕している。
「武器は使わない。俺の武術は素手を前提とした代物。武器や防具はあっても邪魔になるだけー。だから必要ない。それに借り物とか壊しちゃったときが恐いし」
「……貴方、ダンジョンを舐めてない?」
「いや?少なくとも上の方はそこまで脅威になりうる奴はいないと感じてるけど?なんならヘファイストス様のとこの団員と戦ってみせてもいいよ?殺し合いに発展しないなら」
「………いえ、ダンジョンに一人付き添いをつけて様子を報告してもらうわ」
「アザっす。あっ、魔石を取り出すためのナイフだけ欲しい!さすがに貫手でいちいち取り出したくない!」
へらへらと最初と同様に笑う巧。それを見て、早まったかしら、と頭を悩ますヘファイストス。
【ヘファイストス・ファミリア】のホームを出てギルドに冒険者登録をしにきた巧。
とはいえ、初めての場所で勝手が分からない。
「こちらにどうぞ!」
「はーい」
巧が何処に行けばいいのか悩んでいると、ハーフエルフの受付嬢に呼ばれてそのカウンターへと向かう。
「今日は何しに?」
「冒険者登録、でいいのかな?必要なんだよね?」
「ええ。必要事項です。ではこちらの書類を記入してください」
「ういうい」
文字も見覚えのないものだったが、言語と同様に何故か理解できた。巧は名前、所属ファミリア等の必須事項を書き込んでいく。書き終えると軽く確認をして女性に渡す。
「はい」
「確認します。名前がタクミ・カトウで……所属が【ヘスティア・ファミリア】、ですか?」
「うん。さっき出来た!」
「他に団員は?」
「いない!でも、しばらくはあの人が付き添ってくれるって」
そういってギルドの入り口の方を指さす巧。ハーフエルフの女性もその指先の方に視線を向ける。その先には左眼に眼帯をした黒髪赤眼のハーフドワーフの女性がいた。
ハーフエルフの彼女にはその女性は見覚えがあった。
「つ、椿・コルブランドさん………!?」
「うん。確かそんな名前。ヘスティア様の神友のヘファイストス様が念の為ってさ」
「………わ、わかりました……。はい、登録が終わりました………では、これから―――」
「ありがとう!」
「あっ………!」
終わったー!と言って椿の方に走り寄る巧。すると、椿がため息混じりに拳骨を振り下ろす。が、巧はそれを僅かな動きだけで避ける。
「えっ!?」
それを見ていたハーフエルフの女性は驚きの声を上げる。椿も拳を振り下ろした状態で固まっていることから、彼女も驚いているように思えた。
しかし、それも僅かな時間。彼女は巧にガミガミと説教をすると、彼はすごすごと受付へと引き返してくる。
「説明をちゃんと聞いて来いって言われたからお願いします……」
「………ええ。分かったわ」
苦笑を浮かべながら、受け答えする受付の女性。
「私はエイナ・チュール。貴方の担当アドバイザーになるわ」
「書類にも書いたけど、俺はタクミ・カトウ。よろしく」
お互いに自己紹介を交わすと、受付の女性、エイナは巧に様々な事項を説明する。巧も面倒そうにしながらも、しっかりそれを聞いて覚えていく。
「―――以上よ」
「……うん、ありがとう。知らないことも知れてよかった。じゃあね!」
「ええ。さよなら」
たたたっ、と先ほどと同様に椿の方へと走り寄る巧。しかし、今度は拳骨はなく二人でギルドから出て行った。
「………不思議な子だったわね」
エイナは一人、そう感想を溢した。
「インストラクション:1 最短の道を選ぶなかれ」
「インストラクション:2 研鑽を忘れるなかれ」
「インストラクション:3 書を捨てよ、己が道を歩め」は
”sakagami”様を含める多くの方々が作成した合作-jpであるINTRODUCTION OF 財団神拳のInstruction of 710-JP-Jに基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken
茶臼サン様、メアリー・スーの怪物様、感想ありがとうございます!