ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか   作:猫屋敷の召使い

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 感染性胃腸炎で苦しんでた作者の猫屋敷です。

 なんか一部地域で流行っているらしい。

 皆さんも病気には気を付けましょう!

 とりあえず本編どうぞ!




第二二話

 気配を辿って自身のほぼ真下に気配が感じられる場所に辿り着いた巧。

 

「さーて、この妙な気配はどこからかなー?地下、だよねぇー?この下かなぁー?これはー、前にも地下水路で斃した植物型モンスターかな?」

 

 通りをフラフラと歩きながら、地面を気にする巧。都市全域の様子を探りながら、好奇心が赴くままに移動する。

 

「んー。あの神もベルを見かけたみたいだしなー。でも、ヘスティア様もベルに合流した。……何か起きても多分大丈夫でしょー」

 

 確証がないことを呟きながら、通りを行ったり来たりして地下の様子を常に探り続ける。そして、唐突に足を止めて表情を変えた。

 

「………ん?あっ。えっ?お前、上がってこれんの?嘘でしょ?」

 

 下から上へと近づいてくる気配に愕然とする。予想外の行動をしてきたそれは、巧が何かをする前に地表まで到達する。

 石畳が隆起して、巧が察知していた気配の主が姿を現した。

 

『き―――きゃああああああああああああああっ!?』

「予想外ー……。いや、植物だもんね。上がって来れることを想定しなかった俺の落ち度かなぁ……」

 

 細長い胴体に滑らかな表面。土煙の中、巧が確認できたのはそれだけだった。だが、以前地下水路で遭遇したモンスターと同一のものだと確信した。

 だが、住民たちは巧ほど落ち着いていられない。街中に突然出現したモンスターに騒然とし始める。

 巧は声を張り上げて、住民たちに避難を促す。

 

「すぐに避難してー!転ばないように気を付け―――っ!?」

 

 その影は巧に向かって突撃してくる。彼はすぐに反応して住民に被害がいかないように人のいない方へと後退する。しかし、植物型のモンスターは巧を執拗に狙ってくる。

 その行動を見た巧は冷静に分析する。

 

(なんで?人を狙うのなら俺以外も狙うはず。子供なら他にもいる。食人系統の生物なら本能的に弱い者から狙うだろうに。今はそこまで隠してないから、俺よりも周囲の人の方が本能では弱く感じるはず。ならそれ以外に引き付ける要素がある?以前倒した際には持っていなかったもの……いや、あの時は俺一人だ。何かを持っていたとしても結局のところ、俺しか狙う対象はいなかった。参考にはならない。なら今の手持ちで考えるしかない。ポーチにはポーション類に小道具、普通の魔石と極彩色の魔石の欠片。……反応しそうなのは魔石、か?それなら少し試すとするか……)

 

 巧は腰のポーチに手を突っ込むと普通の魔石を摑むと上へと投げる。

 するとモンスターは頭部と思しき部分を上に投げられた魔石へと向けて、幾筋もの線を走らせるとその頭部を咲かせた。

 その花びらの色を見た巧は驚き、更にその中央にある牙の並んだ巨大な口の奥、要項を反射させる魔石の光を確認した。

 

「やっぱり極彩色……。地下水路のと同じか!まだ生き残りがいたか!本当にきりがないな!」

 

 魔石を見た瞬間、思わず声を上げてしまう巧。しかし、そこで別のものが目に入ってしまう。

 

「うぇぇぇっ……!」

「っ!」

 

 モンスターの傍で泣いている少女がいたのだ。

 巧はそれを見るとすぐに行動を起こした。

 地を蹴り、モンスターの攻撃を躱して、少女を抱きかかえる。

 

「ごめんね?少し摑まっててくれる?」

「……ゔん」

「ふふっ。良い子だね」

 

 少女に優しく声をかけながら、モンスターの攻撃を躱して距離を取る。先ほど投げた魔石に気を取られている内に、素早く移動して少女を避難させる。だが、少女に負担をかけるわけにはいかず、あまり急激な動きをすることはできない。

 だから巧は、敢えて攻撃を受けた。少女を抱えてない左腕を盾として、衝撃を受ける。その瞬間に力の方向に跳躍する。

 吹っ飛ばされた巧は着地するも、勢いを流しきれずに地面を少しだけ滑る。体勢を崩しながらも、モンスターから離れることには成功した。

 

「―――っとと。大丈夫だった?」

「……ゔ、ゔん。で、でもお兄ちゃんの、う、腕が……」

「ああ……これぐらいは平気だよ。お兄ちゃん、こんなでも結構強いんだよ?」

 

 少女は巧のことを心配する。少女が見ているのは、攻撃を受けて折れ、骨の一部が肉を突き破っている彼の腕だった。彼はそれを少女の見えない位置に移動させると、笑顔で話しかける。

 

「タクミ君!」

 

 すると、そこにハーフエルフのギルド職員のエイナが彼に駆け寄る。

 その間に、通りには【ロキ・ファミリア】のティオネ、ティオナの姉妹とLv.3のレフィーヤ・ウィリディスが到着していた。

 

「ごめん、エイナ。この子をお願いしてもいい?」

「良いけれど、それよりも君の治療を―――」

「俺は大丈夫だよ。『元素功法』」

 

 巧は外気に晒されている骨を中に戻して、腕を元の形に直すと大気中の微粒子や構成元素を選択的に取り込み、血流に乗せて患部で再構築させる。殺菌できるかどうかは分からないが、念のためすぐにポーションを飲み干す。

 

「『解放礼儀』。じゃ、頼んだよ?」

「ちょっとタクミ君!?」

 

 開いた左手に握った右手を合わせて、45度きっかりの礼を五秒間行った巧は、再び地を蹴って、今度はモンスターへと急接近する。ティオネとティオナの二人が戦っている中に突っ込んでいく。

 

「悪いが、仕留めきれないならもらうぞ」

 

 攻撃のために振ってきた植物の蔓を足場にして、縦横無尽に宙を駆ける巧。そして頭部に向かって一直線に跳ぶ。

 

 

「『摩擦―――」

 

 

 自身を叩き落とそうとしてくる触手を器用に踏みつけて、跳躍し、加速しながら迫る。

 

 

「―――熱―――」

 

 

 襲い掛かってくる触手の隙間を縫って、進む。

 

 

「―――切断―――」

 

 

 頭部が攻撃を避けようとしているのを見つめながら、右手で手刀を形作る。

 

 

「―――手刀』ッ!!」

 

 

 モンスターの避ける動きに合わせ、手刀を首部分に押し付けて高速で擦りつける。それにより生じた摩擦熱で、見事に首を切断する。そのまま頭部は重力に従って地面に落ち、身体の方も力なく地面に横たわり、断面からは多少の煙と焦げた匂いを漂わせながらも、活動を完全に停止させる。

 地下水路でも同じように討伐してきた。かなり慣れた作業だ。これよりも手っ取り早い方法もあるが、一体だけならば、この方が()()()()()()

モンスターの死亡を見届けた巧は、冷めた目で死体を見つめる。

 

「……相変わらず、硬いだけでつまらないな」

 

 手刀を形作っていた手を軽く振りながら、そう一言溢して、三人の方へと顔を向ける。

 

「……ねぇ、レフィーヤ・ウィリディスさん」

「は、はい!?」

「魔法を使ってもらってもいい?発動まではさせなくていいけど、魔力が生じればいいんだけど」

「え、えっと、なぜですか?」

「地中にいる他の奴らが反応するか調べたい」

「えっ!?あんなのがまだいるの!?」

 

 巧の言葉にティオナが驚きの声で返す。彼女の言葉に巧は頷く。

 

「近くには三匹、かな。魔石に反応するのはさっき分かったけど、魔力と魔石のどっちを優先するか調べたい。協力してくれる?」

「「「……」」」

「どうせ新種なんだろうから、今のうちに調べられるのなら調べたい。以前にも遭遇したけど、魔力は試せてないんだ。これに失敗しても今出てくるか後で出てくるかの違いしかない。どうだ?」

 

 落ち着いた、低い調子の声で目の前の彼女に告げる。その真剣な様子を理解したのか、静かに頷いて了承の意を示す。

 

「……分かりました」

「じゃあヒリュテ姉妹は彼女を守ってあげてくれる?こっちは魔石を持って少し離れた位置に立つから」

「分かった!」

「……分かったわ」

 

 残る二人にも巧は声をかけ、協力を要請する。

 ティオナは巧の言葉に元気に返事を返してくれたが、ティオネはまだ彼のことを警戒しているようだったが、了承してくれた。

 

「じゃ、よろしく」

 

 それだけ告げて50Mほど距離を取る巧。そのことを確認したレフィーヤは詠唱を始める。

 

「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり】」

 

 片腕を突き出しながら呪文を編む。山吹色の魔法円(マジックサークル)を展開しながら速やか魔法を構築した。

 

「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」

 

 最後の韻を終え、解放を前に魔力が収束する。彼女を挟むように立っていたティオネとティオナの二人は、いつでも迎撃できるように身構える。

 次の瞬間、彼女たちの周りの石畳が隆起する。三人を囲むように三匹の食人花が出現する。

 

「『波動関数拳』」

 

 だが、すぐにその三匹は巧が使用した奥義によって絶命した。

 

「「「っ!?」」」

 

 周囲の食人花が突然力を失って横たわるのを見て驚愕の表情を浮かべる三人。そしてすぐに拳を前に突き出している巧のことを見た。

 彼は量子を殴打して波動関数の収束を操作し、対象の重ね合わさった生死を確定させたのだ。しかし今回は対象が複数だったが。前回、そして今回の戦闘で相手の波動関数の収束を理解していた。そのため、都市に余計な被害が出ないように最短で片付けたのだ。これが、最も手っ取り早い。

 巧は三人に駆け寄ると笑顔で話しかける。

 

「協力してくれてありがとー。どうも魔石よりも魔力の方が優先順位高いみたいだねー。そこら辺は芋虫どもと変わらないかもねー」

 

 怪我は無いー?と子供らしく話しかけてくる巧。彼のことを驚きのあまり呆然と見つめてしまう。

 

「……いま、何をしたの?」

「秘密ー!我が武術は門外不出なのだー!部外者には簡単には教えられぬー!にはははー♪」

 

 にぱー、と子供の笑みを浮かべる巧。答えてる間に倒れ伏している植物型のモンスターの一体から魔石を抜き取る。

 レフィーヤとティオネが状況を飲み込めない中、ティオナが興奮したかのように巧に詰め寄る。

 

「51階層でも見たけどやっぱりすごいね!色んなことをやってるけど、一体どうやってるの!?」

「さっきも言った通り門外不出なのだ!」

「じゃあ弟子入りするから教えて!」

「これは俺の出身地の一族じゃないと習得は禁じられているのだ!」

「えぇー!?ケチ!」

「これは決まりなのだ!これを破ったら俺より強く恐ろしい人達が俺を殺しにやってくるのだ!」

 

 のだ!というしつこいぐらいの語尾を使って、笑顔で答える巧。殺されるなら仕方ないか、と渋々ながら引き下がるティオナ。

 

「それじゃあ、俺はこれぐらいで失礼させてもらうぜい!他にもいろいろな場所を巡らないといけないし!」

 

 巧はそれだけ告げて、事態を収拾しようとしているギルド職員や騒然としている住民たちの下へ駆けて行く。

 人ごみの中をすり抜けるように進んでいく巧。しかし、その途中で声をかけられる。

 

「あ、お兄ちゃん!」

「……?あ、さっきの子?お母さん、見つけてもらえたんだね」

 

 声の方向には先ほど助けた少女が、母親と思われる女性と手をつなぎながら近寄ってきていた。

 

「うん!さっきは助けてくれてありがとう!」

「どういたしまして♪」

「戦ってるお兄ちゃん、かっこよかったよー!」

「ふふっ、ありがとー♪」

 

 しゃがんで少女と目線を合わせて話す巧。その後、彼に向かって軽く会釈する母親に手を引かれながらも、手を振っている少女に、巧も手を振り返して見送る。

 それを笑顔で見送ると、巧はベルの気配を辿りながら通りを進んでいくも、途中で襟首を掴まれる。

 

「うぇー?」

「さっき取りだした魔石を渡して欲しいのだけれど?」

「えぇー!?いいじゃーん!一個ぐらーい!あと三匹もいるんだからさー!それに倒したのは俺だよー!?」

「うっ……それはそうなんだけど……」

「ね、お願い!これ以上はいらないからさー!」

「……はぁ、仕方ないわね。内緒にしてよ?」

「うん!エイナ大好きー!」

「えうっ!?」

 

 巧の言葉に驚いて手を放してしまうエイナ。その隙をついてサササー!と走り去っていく巧。そのままベルの気配を辿って進んでいく。

 




今日の巧メモ
・人として:人助けはしないとねぇ~。
・武人として:つまらない……。
・研究者として:極彩色は魔力に反応する。研究が進展して俺は嬉しい!

 前話で言っていた奥義に関して、読者様のお声に甘えまして今後の投稿だけ気をつけさせていただきます。


以下クレジット。


「元素功法」は”sakagami”作”Central_ECH”改稿「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」欄に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

「解放礼儀」は”aisurakuto”作”Central_ECH”改稿「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」欄に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

「摩擦熱切断手刀」は”Central_ECH”作「耐久実験」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/central-ech-2

「波動関数拳」は”tacosuke109”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」欄に基づきます。http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken


※何かあったら怖いので作成者様と改稿編集者様を並列して表記しているものがあります。
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