ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか   作:猫屋敷の召使い

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 お久しぶりです!資格試験が終わり、今度は学校のテストが控えてるのに何してるんだと自分でも思っている作者の猫屋敷の召使いです!

 というわけで、一月振りの投稿です!
 しばらく書かないと書き方を忘れかけている自分がいて戦慄してしまいました……。

 では、本編どうぞ!


原作二巻+外伝二巻・三巻
第二四話


 怪物祭(モンスターフィリア)の翌日。

 巧は日課の修練を終わらせ、今はヘスティアに更新してもらっている。

 

 

タクミ・カトウ

Lv.2

力:SS1011→SSS1199

耐久:S969→SSS1199

器用:SSS1199

敏捷:SSS1199

魔力:I0

頑強:I

 

 

 【ランクアップ】して半月程度だが、もう『魔力』以外の基本アビリティが上限まで到達する。

 巧は渡された用紙を眺めると口をへの字に曲げて、不満そうな表情を浮かべる。

 

「……修練の形式が変わったせいか、上昇値がすごいね」

「二次関数的に強くならないといけないもんでねー。むしろ上限ある方がおかしいんだよー」

 

 【ステイタス】が限界に到達したことが不満なのか、限界があることが不満なのか。もしくはその両方か。巧は【ステイタス】が書き写された用紙を穴が開くのではないかというぐらい睨み付ける。そんな彼をヘスティアは苦笑交じりで見ている。

 

「二次関数的って……言ってる意味を分かってるのかい?」

「分かって言ってるよー」

 

 巧は用紙を投げ出すと、体を起こして上着を着直す。そして衝立の向こう側にいるベルに声をかける。

 

「ベルー。ごめん。今日は一人で潜ってもらっていいかな?個人的な用事があってさ」

「えっ?は、はい。大丈夫ですけど……」

「うん。ごめんね?……あぁ、ヴェルフに新しい防具を用意してもらってるから先に受け取りに行ってよ。代金はもう渡してあるから」

「えっ?な、なんでですか?」

「流石に6階層以降に潜るのにその防具は心許ないんだよ。それにかなり痛んできてるし」

 

 巧の言葉にベルは自身が身に着けている装備に目をやる。

 使い始めたのが一月と少し前。丁寧に手入れをして、ヴェルフに修繕してもらっているとはいえ、完全には修復できない傷があるのが分かる。

 

「……そう言われると、たしかに、そうかもしれないですね……。分かりました!これから向かってみます!」

 

 巧の話に元気よく頷くと、急いで地下室を飛び出していく。それを微笑ましそうに眺めた二人も出かける支度をして、地下室を後にする。

 神ヘスティアはバイトに。

 巧は神ディオニュソスの下へと。

 それぞれ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 【ディオニュソス・ファミリア】のホームへと人知れず侵入した巧は神ディオニュソスの居室へと入り込む。そして椅子に座っている男神に背後から声をかける。

 

「―――そっちの調査は順調かな?」

「ッ!?……なんだ、君か。あまり驚かせないでくれないか」

 

 ディオニュソスは後ろからかけられた声に過敏に反応し、勢いよく振り向く。しかし、話しかけてきたのが巧だと分かると、すぐに警戒を解き身体の緊張をほぐす。そんな様子に苦笑しながらも皮肉をぶつける。

 

「警備が甘いのが悪いんだよ」

「君相手だとそれは無理な話さ」

 

 他愛ない会話を少しだけする二人。一ヵ月前、三人の冒険者が殺害された件から、こうして人の目を忍んで会っていたのだ。その結果としてこうして軽口を言えるような関係にまでなっていた。実際の関係は互いに利用するような関係ではあるが。

 薄い笑みを浮かべていた二人はすぐに表情を引き締めると、低い調子の声で会話を始める。

 

「先日の植物型モンスターの魔石は見たか?」

「……ああ。こちらで採取して確認した。欠片とおそらく同じものだろう」

「俺も同じ見解だ。それに同質の魔石を51階層で遭遇したモンスターからも確認した。その魔石は【ロキ・ファミリア】のティオネ・ヒリュテが所持してるはずだ」

「……そうか。ならロキにも協力を求めるべきか?」

「……そこはお前の判断に任せる。好きなようにしろ。神ロキは俺のとこの主神とは仲が悪いから何とも言えん」

 

 冗談のつもりなのか、それとも本気なのか。判断がつかないことを言いながらも会話は続く。

 

「ギルドの方は調査できたのかな?」

「……無論だ。俺が調べた限りでは殺害には関与していない。隠し事こそ多いがな」

「……殺害には、か」

「そうだ。むしろそれについては殺人犯を追っているようだ。その者の目的等も調べているみたいだが」

「……君の見解を聞きたい」

 

 ディオニュソスは目を瞑り、天井を見上げるように椅子の背もたれに身体を預けながら、巧に意見を求めてくる。

 

「……まだ確証は持てない。だが、俺が調べた限りあの女と一致する容姿の冒険者は現在はいなかった」

「……そうか」

「俺からは以上だ。では、これで失礼させてもらう」

「……ああ。ありがとう」

 

 ディオニュソスの感謝の言葉を受けるも、何か言葉や仕草を返すこともなく、巧は建物から出ていく。

 

 

 

 

 

 

 

 神ディオニュソスとの話が終わり、買うべき代物もなくなった巧は、ヴェルフの工房に滑り込む様に入って行く。

 

「突撃!隣のヴェルフ工房ー!」

「おうわぁっ!?」

 

 突然勢い良く滑ってきた巧を見てヴェルフは飛び退くように驚く。ヴェルフはそんな彼に叫ぶように尋ねる。

 

「なんて入り方しやがるお前!?」

「こういう入り方!それよりベルは来たー?」

 

 巧はヴェルフの問いを受け流しながら、今度は逆にベルがしっかり来たかを尋ねる。すると彼は頷いて話し始める。

 

「あ、ああ。ちゃんと来たぜ?お前に言われた通り、適当なのを見繕っといた」

「『兎鎧(ピョンキチ)』シリーズ?」

「ああ」

「相っ変わらずひっどい名前だよねー!感性ぶっ飛んでる!面白いからいいけど!」

「うぐっ……。じゃ、じゃあ、お前ならどんな名前を付けるんだよ!?」

「少なくとも『兎鎧(ピョンキチ)』なんて名前は思いつかないし、思いついても付けない。せめて付けるなら、『ラビットメイル』とかシリアルナンバーみたいな感じの無難なのを付けるよ」

 

 笑顔だった顔を真顔に戻して巧は真面目に答える。その彼の返答にヴェルフはがっくりと肩を落として落ち込む。

 

「はぁ……ほらお前のナイフも見せろ」

「ほいほーい」

 

 ポンッ、とヴェルフが差し出した手の上に腰から取り外した剥ぎ取りナイフを鞘ごと渡す。彼は鞘からナイフを抜き取ると刀身をまじまじと見つめる。

 

「……あんま消耗してねえな」

「上層での剥ぎ取りは貫手でやっちゃってるからねぇ。使う機会があまりないんだー」

「中層や下層は行ってないのか?」

「中々にベルの付き添いで忙しくてねー。たまにしか行けてないよ。それとも何?ヴェルフが付き合ってくれるの?【ランクアップ】したから君の【ランクアップ】に協力してもいいよ?」

「……」

「でもなぁ、俺と一緒にいてもヴェルフは【ランクアップ】できないかもって、最近予感してるんだー……」

「……どういう意味だよ?」

 

 ヴェルフが鋭い目つきで巧のことを睨みながら尋ねる。

 

「ほら、俺とヴェルフってさ、実力が違い過ぎるじゃん?俺と一緒にいたら結局は心のどこかで甘えが出るかもしれない。危なくなったら俺が助けてくれるっていう感じのさ。ヴェルフはそうは思ってないかもしれないけど、本能的にどうかは分からないんだよ。だから、俺とパーティを組んでる間はもしかしたら【ランクアップ】は難しい。最悪、できないかもしれない」

「……」

 

 巧とヴェルフでは、実力に大きな壁が存在する。

 片や、到達階層15階層。だがそれは巧がいてこその代物。個人では精々が12階層止まり。しかし、【インファント・ドラゴン】と遭遇してしまえば一溜まりもない。

 そして片や、到達階層51階層。個人での到達階層は37階層ではあるが、51階層でも十分に戦える実力が備わっている。

 Lv.が一つしか違わないというのにこの差だ。

実力差自体は巧がLv.1の時から隔絶していた。両者はそのことをよく理解していた。

 

「だから、ベルと一緒に潜った方がヴェルフにとってはいいかもしれない。むしろ、そうした方がいいっていう確信に近い何かがある」

 

 じゃないと、俺の身勝手でヴェルフを死なせちゃうかもしれないし。と、聞き取りづらい小さな声で巧は呟く。

 少し寂しそうな表情を浮かべながら話す彼を見ながら、ヴェルフは真剣な表情で問う。

 

「……お前はどうするんだ?」

「そん時は一人で潜るよ。その方が自分の為だし」

「お前は、それでいいのかよ?」

「俺は良いよ。それでさ。みんなと一緒に成長できなくても、成長を見守り、お前達を守ることが出来るならね」

「……」

「だから、今のうちに言っておく。将来、ベルのパーティに入って欲しい。直接契約もしっかり結んでね」

 

 巧の言葉にヴェルフはすっかり黙ってしまう。険しい表情をするヴェルフを見て、巧は手をパン!と叩いて、話を変える。

 

「そうだ!ベルのナイフ見た?」

「……ああ。文字列(ロゴタイプ)が入った奴だろ。それがどうした?」

「あれ、ヘファイストス様が直々に打った奴だよ」

「……は?」

「ヘスティア様が無理言ったみたいでさ。おかげで借金塗れだよ」

「マジかよ……。そんなことならもっとじっくり見ときゃよかったぜ……」

 

 ヴェルフはがっくり、と項垂れて落ち込む。それを見て苦笑を浮かべる巧はそんな彼にさらに話しかける。

 

「それでさ、親友として約束してよ!」

「……なんだよ?」

「アレを超える作品、いつか打って俺に見せてよ!」

「……」

 

 ヴェルフは彼の言葉を聞いて唖然とする。その彼の表情に巧の方も唖然としてしまう。

 

「……あれ?そんな顔しないでよ。ヘファイストス様を超えるんじゃなかったの?」

「いや、それはそうだけどよ……」

「なら頑張ろうよ!」

「……ああ。そうだな」

「じゃあ―――」

「でも俺はお前と一緒にダンジョンに潜って成長する」

 

 だが、それでもヴェルフは巧と一緒に潜ることを選択した。その返答に巧は目を瞬かせながら口を開く。

 

「えっ、いいよ。邪魔だし」

「え!?ちょっ!?おまっ!?さっきの言葉全部嘘かよ!?」

「えっ?……………………あっ、ヤベ。本音出ちゃった。今の無し。無し無し!忘れて!」

「無理に決まってんだろ!?」

「なら秘奥で無理やりにでも―――!」

「おい馬鹿やめろ!?」

 

 工房内で鬼ごっこのように逃げ回るヴェルフを巧が追いかける。そんな追いかけっこをしばらくの間続けると、巧が笑いながら声をかける。

 

「冗談だよー。邪魔なのは本当だけど。ちなみにさっきのはほぼ建前」

「そこは本当かよ……。建前の方が信憑性高いってなんだよ……」

「そういう風に考えたからね。最後の最後でボロが出たけど。それじゃあ、明日からインファント・ドラゴン狩りに出発しようかー」

「…………………………はっ?」

「準備しといてねー?」

「ちょっと待て」

「なにー?」

 

 ヴェルフは巧の肩を摑んで無理矢理引き留める。

 

「お前が行くんだよな?」

「もちろん。でもヴェルフも行くんだよ?というか君が(しゅ)だよ?俺が(じゅう)

「……なんで?」

「君の【ランクアップ】のため」

「……邪魔なんじゃ?」

「そこまで心配してくれるなら無下には出来ないよー!あ、一応遺書を書いてきてね?死なせないようには気を付けるけど、流石に一撃で殺されたら俺でも助けられないからさ!」

 

 じゃーねー!と肩を摑んでいた手を振り切って巧は工房から出て行く。残されたヴェルフは膝をつき、一言溢した。

 

「……い、言わなきゃよかった……」

 

 後悔先に立たず。この言葉の意味をしみじみと理解したヴェルフだった。

 

 

 

 工房を出た巧はふらふらと街を徘徊していた。

 

(んー、ヴェルフをベルに押し付けるのは失敗かー。一人の方が動きやすいから本当のことと適当なことを混ぜて言ったのが悪かったかな?ま、別にいいかー。普通の人がどんな経験すれば【ランクアップ】するのか知れるかもしれないし)

 

 小躍りしながら街を徘徊する。

 

(それにしてもなんだろうなぁ、この感じ。ダンジョンの何処だろう?明日潜ったときによりはっきり分かると良いなぁ……)

 

 そんな不安を残しながら、翌日を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 午前九時五十分。いつも通り広場の彫像前で待ち合わせた二人。途中まではベルも同行するため、彼も巧とともに彫像前に来ていた。

 

「それじゃ、行ってみよーかー!」

「……マジで行くのか?」

「マジで行くよ?」

「……悪い。急用思い出した」

「逃がすわけないじゃん。それに今日は何も予定がないって調べ上げてるんだから。何かするにしてもダンジョンか鍛冶のどっちかでしょ?なら諦めてダンジョン行こうぜ?」

「お前の情報網怖ぇな!?」

「それに安心してよ。生死の境界はちゃんと理解してるから」

「その言葉を聞いて何処に安心できる要素があんだよ!?」

「……?安心しかできないでしょ?動けなくなっても生き残れるんだからさ」

「お前と俺らの感覚が違うんだよッ!!」

 

 昨日とは違い、今度はヴェルフが巧にがっしりと腕を摑まれて引き留められる。そこはLv.1とLv.2の違い。ヴェルフが必死に抜け出そうにも彼の腕はびくともしない。

 ヴェルフは最後の希望とばかりにベルの方に視線を向けるが、彼は合掌して一言だけ言った。

 

「えっと、その、頑張ってください……」

「くそぅ……」

 

 巧相手だと自分じゃどうにもできないということをベルはよく理解していた。だからこそ、このような言葉をかけることしか出来なかった。

 メンバー全員が納得し(諦め)たところで、巧は意気揚々と歩き始めた。

 

「じゃ、行こうかー」

「はい」

「いつか殴ってやる……」

「その意気だよー。怒りと殺意は人を強くするからねー。本当は持たない方がいいんだけどねー。ネガティブな殺意よりポジティブな殺意なら全然いいんだけどさ」

 

 満面の笑みでヴェルフを引きずりながらダンジョンの中へと潜っていく。ベルもそれについていく。無論、巧はダンジョン突入前に『解放礼儀』を欠かさず行っている。

 スタスタと進んでいくと、彼らの前にコボルトが姿を現す。それを見た巧は、少し悩むような仕草をするが、すぐに考えをまとめて声を出した。

 

「じゃーあー、ベル!君に決めた!」

「えっ?は、はい!」

 

 巧に言われてベルは前へと飛び出していく。巧の声だけですぐに実行に移せるのは彼が冒険者として成長している証だろう。

 そんな彼の動きは最初の頃に比べて格段に良くなっており、コボルトを瞬時に倒す。

 ベルの動きをじっと観察していた巧は感心したように一つ頷いて声をかける。

 

「……うん」

「ど、どうですか?」

「7階層でも大丈夫そうだねー」

 

 巧はコボルトの魔石を貫手で取りだすと、すぐに歩き始める。ベルも彼を急いで追いかけ始める。

 7階層への道中、巧はベルにいくつかの質問を投げかける。

 

「7階層から新しく出現するモンスターは覚えてる?」

「はい!『キラーアント』と『パープルモス』、それと『ニードルラビット』です!」

「それぞれの特徴は?」

「えっと、たしかキラーアントは瀕死になると仲間を呼ぶんでしたよね?パープルモスは毒の鱗粉を撒き散らして、何度も浴びると毒の症状が出る……でしたっけ?」

「そう。それで残りの角付きベルだけど」

「……ニードルラビットのことですか?」

「……ああ、ごめん。間違えちゃった」

「絶対わざとですよね!?」

「ニードルラビットは突進の速度についていけるようなら問題ないからカウンターで切り伏せちゃって」

「流された!?」

 

 ベルは自身の抗議が流されたことに驚きを隠せない。

 ちなみに角付きベルとは、巧が調教(テイム)を実践していた時に成功した、ニードルラビットの愛称であった。すぐにモンスターによって倒されてしまったが。そのとき、巧は数秒だけ涙を流したが、逆を言えばそれだけだった。

 叫んで抗議する彼を無視して巧はバックパックからいくつかの瓶を取りだしてベルに渡す。

 

「これ解毒薬ね。一応持っておいて。初めてだから様子見程度で留めるのがいいけど。ギルドでエイナに何か言われたら、俺のお墨付き貰ったって言っておいて」

「………………わ、わかりました……」

 

 何を言っても効き目がないと分かったのか、肩を落としながらも自身のバックパックに解毒薬をしまう。

 

「あっ、それとこれ。プレゼントね」

「わわわっ!?……プ、プロテクター?」

 

 巧はついでに出した緑色のプロテクターをベルに投げ渡す。それを受け取ったベルは疑問符を浮かべる。

 

「成長したから、ちょっとした防具のプレゼント。軽量だから問題ないとは思うから。それと収納スペースに予備の武器を入れてあるから使って」

「は、はい!ありがとうございます!」

 

 巧にお礼を告げながら早速左腕に装着する。プロテクターの中には以前ヴェルフにグリーンドラゴンの爪から打ってもらった片刃の短刀が既に収納されていた。その事を確認して目を輝かせながら笑みを浮かべている。ちなみに銘は『緑竜短刀(ミドリン)』だ。

 それを見届けると巧は声をかけて奥へと足を進める。

 

「じゃ、後は頑張ってね?俺とヴェルフは一気に行くから」

「あっ、はい!ヴェルフさんは気をつけて下さい!」

「……おう」

 

 すでに魂が抜けたように白く燃え尽きているヴェルフは、巧のバックパックの上に荷物のように乗せられながら運ばれていった。

 

「……よし!」

 

 巧たちがいなくなったことで一人になったベルは気合を入れ直して、周囲を警戒し始めた。巧が一緒の時は周囲の警戒を彼がやってくれているが、そのサポートがなくなると頼れるのは自分だけだ。

 ベルは気を付けながらダンジョンの奥に進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 巧はダンジョンを駆け抜けて11階層までやってきた。

 

「……気配は向こうか」

 

 気配を探って目当てのインファント・ドラゴンを探り当てると最短距離で向かう。

 そして前方に姿が見えると立ち止まり、背からヴェルフを下ろす。

 

「よし。逝って来い」

「字が違くねえか?」

「合ってるよ。なぜなら俺はそうやって強くなったから」

「誰もがお前みたいな奴だと思うなよ!?」

「少なくとも野菜人とシャーマンな人たちは俺と同類だぞ?他にもいるのかもしれないけど、少なくとも俺は知らん」

「誰だよそいつら!?俺にはどっちも分からないんだが!?」

 

 物語の登場人物です、とは言わずに、うだうだ言ってないで良いから逝って来ーい!とヴェルフを蹴ってインファント・ドラゴンに差し出す。

 

「う、うおおおおおおおおおおおおお!?」

 

 叫び声をあげながらもインファント・ドラゴンの攻撃を避けて、即座に攻めに転じるヴェルフの判断の早さは流石だろう。

 そんな彼を見ながら、巧はバックパックを下ろしてその上に座ると、本を取りだして読み始める。

 

「うおぉ!?死ぬ!死ぬぅ!?」

「そうやって喋れるうちは死なないから大丈夫ー」

「てめ、いつか覚えてろよ!?」

「それ前も聞いた。天丼ネタはNGなんでそこんとこヨロ」

「んなこと知るかあああああああああああああぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 ギンッ!ガンッ!と大刀を打ち付ける音とヴェルフの苦しそうな声、小竜の唸り声が響く。それらをBGMとして聴きながら巧は本を読み進める。

 それから二時間ほどが経過する。巧は二冊目の本を読み終わってもまだ続いている戦闘の方に目を向ける。

 

「なんだ。まだくたばってなかったか」

「おま、いま、なんつった……!?」

「体力の限界は近いっぽいねー」

「むし、する、な…………!」

 

 息も絶え絶えといった状態のヴェルフは、いくつか怪我は見えるが大きなものはなかった。本当に危険な攻撃はしっかり避けている証拠だろう。それでも足下は覚束ない様子だったが。

 しかし、相対するインファント・ドラゴンも血を流しており、負傷は此方の方が酷いように思える。

 それから十数分後。地に倒れて動かなくなったヴェルフを、小竜は踏みつけながら巧の様子を窺っていた。

 溜め息を吐きながらも、読んでいた本を閉じてバックパックにしまうと、一歩で小竜の懐に潜り込み、強烈なアッパーを叩き込む。そして次の瞬間にはその身体を灰へと変貌させ、影も形も無くなる。一瞥して確認すると、地面に倒れているヴェルフをバックパックに乗せ、移動を始める。

 

「……ここからなら『リヴィラの街』の方が近いか。一泊するだけの金はあるし、問題はないな」

 

 そう考えた巧は、ダンジョンの奥へと足を進めていく。近い未来で事件に巻き込まれるとは露にも思わずに。

 




今日の巧メモ
・人として:情報に嘘は吐かない。話してないことがあるだけです。
・武人として:限界を超えたい!
・研究者として:植物型モンスターの観察記録を編集中。

 はい。ということでお久しぶりです。今日から投稿再開します。
 以前と同じく週一投稿、水曜日の18時ちょうどです。
 なので、これからもよろしくお願いします!

以下クレジット

「解放礼儀」は”aisurakuto”作”Central_ECH”改稿「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」欄に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken
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