ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか 作:猫屋敷の召使い
……やるなら一度にまとめてやってほしい。
それと誤字報告の件で一つ言っておきます。
単位はダンまち世界の単位を参照していますので、誤字ではないです。
意識があるのかないのかが定かではないヴェルフと共に18階層へとやってきた巧。しかし、『リヴィラの街』が眼前まで迫ってきたところで、思わず足を止めて顔を顰めてしまう。
「……なるほど。妙な気配は此処だったか。ヴェルフを連れて滞在するには危険が大きすぎるか?だが、ここまで来て引き返すのもな……」
巧はチラリ、と背中のバックパックの上で伸びてる男性に目を向ける。
「……いい刺激にはなるかもな。あわよくば、と言ったところか」
ヴェルフに聞こえないように呟き、視線を前方に向け直すと、止めていた足を前へと動かせ始めた。
街中で起きている騒動の中心を探し当てると、巧は気配を消して騒ぎの元である『ヴィリーの宿』に侵入していた。
「やっほー、ボールス!おっ邪魔してるねー!」
「……何でここに居やがる」
「嫌な感じがしたのとなんか死臭がしたから!」
そう答えながら巧は部屋の中にある死体に近付く。頭を潰されて無残にも倒れているそれに。
それをじっくり観察して、無表情で戦慄する。
「……わーお。マジで?」
「……まあいい。この際五月蠅くは言わねぇ。お前はこいつが誰か分かるか?確かお前は大体の冒険者を記憶してるはずだ。頭が無くても分かるかどうかは知らねえがな」
「……あー、うん。分かるよ。でも、ちょっと待って。いま、中に入ってくる人たちがいる。話はその人たちが来てからでも遅くないよ」
「……なんだと?」
「それは僕たちのことかな、タクミ君?」
「……お前、もしかして分かってたな?」
「モチのロン」
ボールスが入り口に集まっているフィンを始めとした【ロキ・ファミリア】の面々を見て巧のことを睨むように見つめる。
「別に良いじゃん。これはボールス達じゃ手に負えないんだし」
「……どういうことだよ?」
「殺されたのはハシャーナ・ドルリア。【ガネーシャ・ファミリア】に所属するLv.4冒険者だね」
「……間違いねえんだな?」
「骨格、筋肉から言っても90%以上確実だよ。即死だろうし、死因は脊髄損傷か頸髄損傷、脳の損傷かな?少なくとも窒息死ではないね」
そこまで言って、ハシャーナの荷物と思われるものに近付いて物色する。ボールスはそんな彼を止めることもなく自由にさせる。周囲の者たちもそれを止めたり、咎めようという者はいなかった。
ハシャーナの荷物の中から一枚の羊皮紙を見つけだした巧は、それを手に取って穴が開くのではないかと言うほど、じっくり見つめる。
「
読める部分だけ眺めるとポイッ、と床に投げ捨てる。それをフィンが拾って同じように目を通す。
「殺しの手口も同じみたいだし犯人は彼女で確定かなー?」
「……犯人まで分かるのかよ」
「分かりづらいけど気配もまだ街にあるしねー。ほぼ確定ー。正確な場所までは分かんないけど」
「それって誰なの?特徴が分かってるならそれと合致する人を捜し出せばいいんでしょ?」
「残念だけどアレはそこまで馬鹿じゃない。女性だというだけでも情報としては大きいからね。先ずはそれを隠すはずだ」
「……?どういうことですか?」
「んー、待ってねー。色々考えを張り巡らせてるからー」
巧はそういってしゃがみ込み、ぶつぶつと独り言を呟き始める。
「一人で来てる?いや、ない、か?アイツのことだし、何かしらの保険を用意してあるはず。周囲にモンスターの気配は?……今のところはない?上手く隠してるのか?流石に此処まで気配が密集してると難しいな。街中に女に似た独特な気配は無し。……いや、普通の気配の協力者というのも有り得るか。じゃあ、最後まで可能性は捨てきれないな。なら油断はできないか。そっちは置いとくとして運び屋の強さは?……地上に持ち帰るだけだからハシャーナよりは下。一人で此処まで来ているのならLv.2では無理だからLv.3ということになるか。それにまだ地上に行ってないとすると、この街にいるはず。コイツが死んだことは気づいてる?……うん、多分気づいてる。ならどこかに隠れるか逃げ回っている?それともさっさと地上に?……いや、まだいるかもしれないか。此処から出て行ったのならあの女も気づいて追っているはずだしな。そもそも探してる物は何なんだ?あいつにとって重要なもの?……これはまだ分からないな。情報が少ない。おそらく未知の代物か理解の範疇に収まっていないものという可能性を視野に入れておこう。では、あいつはいまどうしてる?……それは分かりきっている。絶対に変装して姿を隠してるはず。ならその手口は?……あの身長であれば、俺ならばきつくても
その呟きは巧本人にしか聞こえず、周囲には何と言っているのかは分からなかった。
そんな彼の傍に居たヴェルフが巧の肩を叩いて思考を中断させる。
「おい」
「―――ん?」
「おいタクミ。そこまでにしとけ」
「ふぇ?」
「全員に引かれてるぞ」
「はれ?」
ヴェルフに後ろを指さされて振り返る巧。そこには彼から一定以上の距離を取っている一同がいた。傍に居るのはヴェルフとフィンぐらいだった。
「ああ、ごめん。思考に没頭するとどうにもねー。でもちゃんとまとまったから帰ってもいい?」
「なんでだよ!?」
「ヴェルフも帰るよー。準備してー」
「待てっつってんだろ!?」
巧の突然の帰る宣言にボールスは声を荒げながら彼のことを止める。そんな彼に巧は口を尖らせながら文句を呈する。
「だってメンドクサーイ!」
「ふざけんな!?じゃあ今の思考時間は何だったんだよ!?」
「教えなーい!んーならさぁー街には残ってあげるからそっちに全部任せるよー!こっちはヴェルフのお守で忙しいから!」
「せめて俺は何すればいいかぐらい教えろ!」
「えぇー……そしたらー……街の封鎖、冒険者を一箇所に集める。ボールスが出来るのはそれぐらいかな?」
それだけ告げてじゃーねー!と巧は去っていく。それに続いてヴェルフも部屋から退出するために足を動かす。
「……じゃあな」
「……彼は一体どこまで分かってるんだい?」
そんな彼にフィンが静かに話しかける。その質問を聞いてヴェルフは少しだけ苦い顔をしながらもはっきりとした声で答える。
「……ほぼ全部だろ。だが、アンタらに任せた方が都合が良いって結論に収まったんだよ。多分な」
「ヴェルフー!早く早くー!」
「悪い。もう行かせてもらう」
フィンに引き留められていたヴェルフも巧に急かされて今度こそ立ち去る。
「どうするんですか、団長?」
「……僕らにやれることをやってみよう」
そう告げて一同は話し合いを始めた。
「というか、ボールス。君はそんな性格だったかい?」
「……少し前に痛い目を見て、相手を考えるようにしただけだ」
フィンの言葉に答えながら、当時のことを思い出してボールスは体を震わせる。
周囲の人たちは、そんな彼の背後にウインクしながらピースをしている巧の幻が見えたとかなんとか。
今日の巧メモ
・人として:殺人なんて許せない!なおDクラス職員は別。
・武人として:ヴェルフには頑張ってもらおうか。
・研究者として:毒妖蛆の毒液には防腐作用があることは確認済み。ん?どうやって調べたかって?それは[削除済]
次回も水曜日の18時投稿です。
クレジット無し!