ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか 作:猫屋敷の召使い
上記で察せる方もいるかもしれませんが、胆振東部地震を被災しました。私のところでは震度6弱でした。
電気も水道は私のところではかなり早い時点で復旧しました。まぁ、地下水汲み上げなので電気が止まると水道もストップですが。
特に被害がなかったのが救いです。
これを書いている後にまた大きな地震があるようでしたら、もしかしたら次の投稿が遅れるかもしれませんが、その時はご了承ください。
同じような状況に陥ると、4G回線さえもつながらない状況になりますので。
それでは、早ければまた来週の水曜日にお会いしましょう。
後書きもありますけどね。本編どうぞ。
ベルと共にホームである教会の地下室に戻ってきた巧は、ベルを地下室内に放り込んで寝るように告げると、自分は日課の修練を行うためにすぐに表へと出て行く。
だが、いつものように『仮想組手』を行おうとするが、雑念が混じって上手くいかなかった。そのため、座禅を組んで精神統一を行うことにした。
「……………………………ハァ」
しかし、それもあまり芳しくなく、思い浮かんでくるのは財団のことばかり。
「……本格的に不味いなぁ。マジでホームシック気味だぁ……」
こういう時に限って幻影の天野博士は現れない。平時なら自分勝手で神出鬼没なのだが。
巧は仕方なく、『仮想組手』を諦めて奥義の型の確認を行うことにした。
確認を一通り終えた巧が地下室に戻って二人と一緒に朝食を取った。巧は食事を終えると、ベルに魔法について簡単に教えると、ソファーに寝転がっていた。すると、自身が手に入れた覚えのない本が置いてあるのが見えた。その本は図鑑のように分厚く、手に取って中身をパラパラと眺め、顔を顰めた。そしてその本を上に掲げながら尋ねる。
「この本、誰の?」
「あっ、僕のです!正確には知り合いから借りた本ですけど……」
「……こんな貴重な本をくれる知り合いなんていたの?」
「……?どういうことですか?」
「……いやはや、無知というのは怖いな」
ベルの返答に、巧は表情筋を痙攣させながらも、寝転がっている体勢からしっかりと座り直して、ベルに向かって説明する。
「いいかい?これは、
「な、何だって!?」
「ぐ、ぐりもあっ?……ってなんですか?」
「それを今から説明するんだよ」
巧はやっぱり知らなかったのか、と彼の先程の返答から予測していたとはいえ、呆れずにはいられなかった。
「俺も知識で知っているだけで、実物はこれが初めてだけどね。これは魔法の強制発現書だよ」
「……」
一瞬で汗が吹き出し始めたベルを見て、巧はようやく状況を理解したかと考え、話を続ける。
「一回限りの魔法の強制発現書。一度使えば、効力を失う。発展アビリティの『魔道』と『神秘』を極めた者にしか作成できない稀少な代物。値段で言えば【ヘファイストス・ファミリア】の一級品武具と同等かそれ以上というのが一般的な認識だ」
「……」
「さて、もう一度聞こうか。そんな貴重なもんをくれる知り合いなんていたか?」
「……その、知り合いが言うには、誰かの、落としものらしいです……」
「あっ、そうなの?ならこの話題しゅーりょー!こんな貴重品を落とした奴が悪い!以上!解散!」
「イヤイヤイヤ!?それは流石に!?」
「ならベルが頑張って返済するってことで良い?」
「それも無理ですッ!」
「必要なら記憶を消してあげるけど?」
「必要ないですからやめてください!」
「いやタクミ君!やっちゃってくれ!」
「任せろーバリバリー!」
「うわああぁぁぁ!!」
巧の手から逃げるようにしてベルは地下室から走り去っていく。巧は示指と中指を立てた手を宙で彷徨わせると、ヘスティアへと向き直る。
「ヘスティア様は記憶消す?」
「遠慮しておくよ」
巧は笑みを浮かべながら尋ねるが、これまた笑顔でやんわりと断られてしまう。
渋々ながら巧は宙に掲げた手を下ろす。そしてお金と普段よりも小さいバックパックを持つ。
「出かけるのかい?」
「うん。ベルが魔法を使えるようになったなら
「ああ、そうだね。あって困らないね」
ヘスティアに見送られて巧は【ミアハ・ファミリア】が経営する『青の薬舗』へと向かった。
「やっほー。来たぞーぼったくりー」
「久しぶり……金づる……」
「あっはっは!めっちゃ殴りてぇ!」
巧は笑顔のままとんでもないことを言い放ちながら、実行する気は全くなかった。
「
「うん……最近作ったばかり……」
「何本まで売ってくれる?」
「薄めていいなら―――」
「駄目に決まってんだろうが」
「チッ……五本までなら……」
「じゃあ、五本で六〇〇〇〇ヴァリス払う。それとそろそろその阿漕な商売、やめておけよ?いずれバレる、というか既に俺にバレてるんだが。何か頼みごとがあるなら格安で引き受けてやるから考えとけ」
「…………分かった」
「じゃあな」
本当に分かっているのかどうか定かではないが、忠告はしたという風に巧は店から出て行く。
地下室まで帰ってきた巧は、ほぼ同時に帰ってきたベルに自身の荷物を渡す。彼はその中身を見て、それが何なのか理解できずに呆然としている。
「えっと、これはなんですか?」
「『マジックポーション』。
「は、はい。ありがとうございます」
ベルは巧に礼を告げて、ダンジョン探索の為の装備品を身につける。
「それじゃあ、いってきます!」
「いってらっしゃい!」
「気をつけてねー」
巧とヘスティアの声を背中に受けながら、ベルは地下室を飛び出していく。
それを見送った巧も再び出かける準備をする。しかし、バックパックに手を付けない辺り、ダンジョン探索に向かうわけではなさそうだ。
「じゃあ、俺も所用を済ませてくるね」
「うん。タクミ君もいってらっしゃい」
「はーい、いってきまーす」
ヘスティアの声にしっかり答えて、ホームから出て行く。そのまま人気のない場所へと移動すると、周囲に人の気配がないことを確認する。
「……周囲に俺ら以外の気配はないぞ、フェルズ」
「それはよかった」
巧の声に反応して黒いローブを身に纏った人物、フェルズが建物の影から姿を現す。巧はそんな人物に呆れたような表情を溜め息とセットで表に出す。
「よく言う。俺が一人になるのを見計らっていたくせに。それよりも用件を言え。此処もずっと無人なわけではないぞ?」
「ああ。わかっているとも」
フェルズは了承すると、すぐに用件を切り出した。
「24階層で
「……よりにもよってその関連かよ」
巧の頭に思い浮かんできたのは路地裏や18階層で遭遇した赤髪の女。そして宝玉。この二つだった。
彼の思い浮かべているものを察したのか、フェルズも頷いて肯定する。
「その可能性が高い」
「他の協力者ってのは、【ヘルメス・ファミリア】と……アイズ・ヴァレンシュタインか?」
「アイズ・ヴァレンシュタインにはまだ接触出来ていないが、
「……アイズ・ヴァレンシュタインは問題ないだろうが、【ヘルメス・ファミリア】からは最悪死人が出るぞ?」
「そのための君だ」
「……俺だってすべてをカバーできるわけではない。ましてや、アイツ関連の情報が少なすぎる。それで最善を尽くすのは不可能だ。あまり、期待しないでくれ」
「それでも構わない」
「……わかった。出来る限りは尽くす。先ずはどうすればいい?」
「『協力者』は18階層で合流してから24階層へと向かう手筈だ。だが君には先に24階層まで行って
「……どうやって『協力者』と合流すればいい?来るのを待っていればいいか?」
「そうして欲しい。こちらから他の者達に伝えておく」
「……わかった。……ここに人が近づいてきてる。早く行くといい」
「ああ。そうさせてもらう。では、任せたぞ」
「だから―――」
フェルズは彼の言葉を最後まで聞かずに姿を消す。
一人になった巧は何かを言いかけていた口を閉じると、改めて溜め息を吐き、困ったように天を仰ぐ。
「―――……期待されても、困るんだってば……」
空に向かって放たれた言葉は、誰の耳にも入ることなく消えていった。
フェルズから
「エイナ」
「……?タクミ君?どうかしたの?」
「いや、ちょっとこれから
「……やっぱり、【ソーマ・ファミリア】ってマズいの?」
「……言うつもりはなかったけど、回復の兆しは見せてるんだ。内部で二分してるだけでね。これ以上は前にも言ったけど自分で調べて。じゃ、そういうことでよろしくね?」
「あっ!?ちょっと!?」
巧は今までエイナに向けたことのない、優しく、儚い笑みを浮かべてギルドから出て行く。
「死なない、わよね……」
まるで、死を覚悟したかのような表情をしていた彼の背中に呟いたそれは、ただただ消えていった。
「分かってる。全ては救えない。でも、命を投げうって、一つでも多く救えるなら、俺はそうするよ。財団の理念に従う。光の中で生きる人のために、暗闇の中で戦う。自分の命すら厭わない」
誰に言うでもなく、強いて言うなら自分に言い聞かせるように、一人呟く。強く握りしめた拳が、そんな彼の覚悟を表していた。
「とはいえ、むざむざと死ぬつもりはない。どんな状況でも、生き残ってやるさ。それどころか、俺の目的のための踏み台にさえしてみせる」
彼の表情は、好戦的な笑みが浮かんでいた。
今日の巧メモ
・人として:お家に帰りたい……。
・武人として:雑念退散雑念退散雑念退さ――――
・研究者として:使用済みとはいえ、
前書きにも書いた通り、来週投稿が予定通りの時間に無かったら察してください。
では、また来週(できれば)。
クレジット無し