ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか 作:猫屋敷の召使い
謎の人物は自身のことを『
「いや、それは違う」
だが、巧はそれを即座に否定した。力強い確信をもっての発言だった。
そんな彼の言葉に、『
「私は紛うことなき『
「お前はさっき俺を連れ去った奴よりも、断然
巧は頭痛のせいか頭部を片手で軽く押さえている。そんな彼の話を聞いた『
「ほう、驚いたな。まさかそこまではっきり言い当てられるとは、少々君を見くびっていたようだ」
「うっせぇよ。防ぐことはできずとも、どんな内容をかけられたのかと解除ぐらいはできんだよ。それよりもテメェの正体を聞いてないんだが?」
「ああ、そうだったな。私はこの世界の『Saiga』だ。セサル・サイガ。それが私の名だ」
巧に看破されてしまった男性は、悪びれもせず本当の名を告げる。
「ああ、そうかい。それで俺をどうするつもりだ?こんなところに連れてきて、エロ同人みたいな酷いことでもするつもりか?生憎、俺はノンケなんだが?」
「安心してくれ。私もノンケだ」
「そりゃ良かった」
巧のネタにも軽く返してくれる男性だが、警戒をやめるつもりはない。
「だが、『Saiga』がいるならこの世界は平行宇宙ということになるが……」
「その通りだ。この世界は平行宇宙の一つだ。だが、その中で重要な位置に存在している」
「なに……?」
「この世界は原点から乖離し、まったく別の進歩を遂げた世界なのだよ。言ってしまえば、二つ目の原点から派生した世界だ」
「……」
果たしてそれは、平行宇宙というのだろうか。巧は純粋にそう思ってしまった。
しかし、その疑問はセサル・サイガと名乗った男も理解したらしく、更に言葉を発し始めた。
「そのような場合、本当にそれは平行宇宙なのか。まったくの別世界なのではないか。そう思っただろう?」
「……肯定だ」
「先ほど、乖離と言ったが完全に離れているわけではないのだ。二つ目の原点というのも比喩でしかない」
「……だが……ああ、いや、そうか。『鶏が先か、卵が先か』ということか。その時点からの分岐ってわけだ」
「素晴らしい。やはり理解が早いな」
『鶏が先か、卵が先か』。その問題は因果性のジレンマ。鶏と卵、どちらが先に存在していたのかというものだ。
だがなぜ今、巧はこの問題のことを口にしたのか。
それは巧の世界とこの世界の違いにつながる。
この場合は、『神が先か、人が先か』、だが。
巧のいた世界は人が先に存在し、神という存在を作り出した。
だが、この世界は神が先に存在し、人という存在を作り出した。
世界の根幹部分で異なるのだ。
そのため、巧の眼前の男は第二の原点と比喩したのだろう。おそらくこの世界からも多くの平行宇宙が派生しているのだろう。いや、もしかしたらこの世界も、その第二の原点の平行宇宙の一つなのかもしれない。残念ながら、それを知る方法を巧は持っていない。
「それで、結論を聞きたい」
「答えられることであれば答えよう」
「お前達はこの世界と俺が元いた世界を消すことはあるか?」
「いや、しばらくはない。どちらの世界も多くの平行宇宙と密接な関係にあるのでな」
「……そうか」
巧はそれを聞いて、安心したように息を一つ吐く。
「さて、私の目的を話していなかったな。目的は二つ。一つは今のように君との対話。これはもうほぼ達成されたから良しとする。もう一つは約束をしてほしい」
「……内容次第だ」
約束と聞いて、巧は更に警戒心を高める。そんな彼の変化に気づいたのか、セサルは苦笑を浮かべながら口を開く。
「しばらくこの世界に留まって欲しい」
「……は?」
「君は元の世界では異分子に近かったのだ。天野と合わせてしまっては世界の許容量を大きく超える未来が待っていた。そのため、この世界。『人が先の世界』よりも容量が格段に大きい『神が先の世界』に君を
「……その話をどうやって信じろというんだ」
「たしかに、提示できる証拠は何一つとしてない。だが、私は事実しか述べていない。何なら君の主神の前で話しても構わないが?」
「……いい。面倒だ。どうせすぐに帰る手段なんぞないんだ。お前達の口車に乗ってやる」
セサルの話を渋々ながら、巧はそれを受け入れた。
巧には彼の話が事実であるかどうかを確かめる術はない。元の世界に戻る手段もだ。それゆえに今はこの男の話を受け入れるしかない。
そんな話を聞いた巧はため息を吐いて呆れる。
「というか、この程度の用件ならば別に今でなくとも、いつでもできたんじゃねぇのか?」
「そうかもしれない。だが、あまり表立って動きたくはなかったのでな。君との接触も最低限にするよう言われている」
「……ならもう、互いに用はないだろう。俺は行かせてもらうぞ」
そういって、巧はセサル・サイガの横を通り抜けようとする。が、その時、セサルが口を開く。
「ああ、そういえば―――」
セサル・サイガが突然巧に向かって蹴りを放つ。
「―――君の戦闘力の調査も目的の一つに含まれていたな」
「……あぁ、妙にピリピリしてると思ったら、そういうわけかよ」
不意打ちで放たれた蹴りを危なげなく腕で受け止めて、防御した巧が嘆息しながらセサル・サイガのことを睨む。
「情報をくれた礼として半殺しで済ませてやるよ。何分急いでいるものでな」
「やれるものならやってみて欲しいものですね」
『SCP財団』と『犀賀派』の人間が衝突する。
巧が拳を繰り出すと、セサルはそれを避けて『犀賀流』の奥義で反撃をしてくる。
だが、巧は多組織の武術にも精通しており、初動だけでどの奥義かを判別し、それに対して最適な動きをする。
「『共振パンチ』!」
「ガッ!?」
巧の拳がセサルの腹部に諸に入る。苦しそうな短い声を吐き出しながら後方へと弾かれる。そして空中にいるセサルに対して、巧は勝負を仕掛ける。
「『テレポ遠当て』・乱打!」
無数の衝撃がセサルを襲う。それを避けることも叶わず、全てを彼の身体で受けてしまう。しかし、彼もタダではやられない。
拳を繰り出している巧の横に真空が生み出される。
「……っ」
『犀賀流』の奥義、『犀賀宙空凄舞』だ。多次元理論による空間干渉で、任意の場所に真空を生み出す奥義。しかし、それも既に見切っている巧にとっては児戯に等しい。これがもし『犀賀六巳』本人ならば危なかったかもしれないが、目の前にいるのはそれよりも弱い人物。巧にとっては恐れるに足らず。
先ほどの乱撃を受けたセサルは既に重傷で、脚の骨が砕けていた。もう動くことはできないだろう。
「………………えっ……?弱っ!?」
一瞬で勝負が喫してしまい、巧は呆気にとられてしまう。しかし、すぐに表情を引き締めて警戒を続ける。
「……ま、まぁいい。これ以上やってもつまらないし、弱い者いじめというのも好きじゃない」
「……えぇ、まぁ、十分です……ありがとうございました……」
目的は達成できたということで、セサルは感謝の言葉を告げる。
一瞬で決着のついた戦闘だったが、それで何が分かったのかは巧には分からない。だが、もう邪魔してくることは無いと判断し、上へと戻る。
「……随分手ひどくやられたね」
「……殺されなかっただけマシです、
セサルは自身の眼前に立つ男性にそう返す。
どういう原理かは分からないが姿をはっきりと認識できない彼こそが、巧を最初に攫った男、『
セサル・サイガは気配操作に特化した諜報・隠密を得意とする人物だった。それに対して
「……流石に、手足も出ませんでしたよ」
「私以外では、相手は厳しいということですか。とはいえ、彼とは必要以上の接触はしたくありませんね……」
困ったような声で、
「では、早急に帰って治療をしましょう」
「はい……すみません……」
「数少ない同士です。それを失うわけにはいきません」
「……彼を、これからどうするつもりですか……?」
「……しばらく関わるつもりはないよ。必要なら手を組む。邪魔なら排除する。あぁ、それこそ
そして、
今日の巧メモ
・人として:胡散くせぇ……。
・武人として:弱ぇ……。
・研究者として:証明手段ないとか、うぜぇ……。
ちょっとした感想返し
>にくにくしい壁!?
「肉々しい」だけで「憎々しく」ないからせふせふ。
>肉のカルト
>カルキスト
……神はいます。
……以上!
以下クレジット
「犀賀派」は「要注意団体-JP」及び「"犀賀派"に関する一次調査報告」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/groups-of-interest-jp#toc4
http://ja.scp-wiki.net/goi2015-saiga
「共振パンチ」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j
「テレポ遠当て」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j
「犀賀宙空凄舞」は”Mumyoh_hokuto”作「闘いの荒野で」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/a