ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか   作:猫屋敷の召使い

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 書いてて他の作品を書きたくなる症状が出始めた今日この頃。
 でもこれ以上書くと首が回らなくなるジレンマ。
 だから書けないし、書かない。

 では本編どうぞ。


第三九話

 訓練二日目を昼過ぎに終えて、解散というところで巧はアイズに呼び止められる。何やら聞きたいことがあるらしい。

 その内容というのが―――

 

「―――魔導士への指導?」

「うん」

「……あぁ、レフィーヤ・ウィリディスにでも頼まれたのか?」

「……よく、わかったね」

「お前のことをあれだけ慕っていればな。……嫉妬でもしたか」

「……?」

 

 巧は最後の部分だけアイズには聞こえないように小さく呟く。

 

「とはいえ、俺は魔法には疎いからな。彼女がどういったものを求めているのか分からないな」

「そう……」

 

 芳しくない返事を聞いたアイズが少しだけ顔を下げ、落ち込んだような様子を見せる。

 その反応に溜め息を吐きながらも素人意見を提案する。

 

「……調べた限りじゃ、『並行詠唱』はまだ実戦レベルじゃなかったはずだな。Lv.3が深層に潜るのならあって困る技術ではないはずだ。それを提案してみたらどうだ?」

「……わかった。そうしてみる」

 

 巧の言葉にアイズは顔を上げてしっかりとした返事をする。

 

「それと少し待て。実際にできる人物と交流した方が良いだろうからな」

「……?それなら、リヴェリアが―――」

「遠征前だろう?仮にも副団長が一団員に付きっきりになれるほど暇でもなかろうよ」

 

 アイズの疑問に答えながら、どこからか出した羊皮紙に色々と書いていく。

 

「【ディオニュソス・ファミリア】のホームの地図と、頼るべき人物を書いておいた。まぁ、互いに知らない仲じゃないから大丈夫だろうが、一応俺からも話は通しておこう」

「……ありがとう」

「構わん。これで誰か一人でも生き残る可能性が高まるのならな」

 

 礼を告げるアイズに対して、巧は笑みを浮かべながら羊皮紙を手渡す。

 今度こそ二人は別れ、それぞれ足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 アイズと別れた巧は【ディオニュソス・ファミリア】の内部へと侵入していた。

 そして勝手を知るように、すいすいと歩を進め、神ディオニュソスのいる部屋に誰にも気づかれることなく入室する。

 

「やっほー、元気?」

「ッ!?……はぁ、毎回毎回驚かせないでほしいな」

「ごめんねー、毎度アポ無しなもんで。こうやってこそこそ来るしかなくてねー♪」

 

 咎めるような神ディオニュソスの言葉に、巧は全く反省した様子のない態度で応じる。

 

「これ、一応今回のことをまとめた資料。ギルドの方に提出したのと同じ物だよ。とはいえ、実際に見聞きした以上のことは書いてないから、大した情報はないかもだけど」

「そうか……すまないな。それだけでも情報の照らし合わせができる。」

「いいって、いいって。協力者は多い方が情報は集まりやすいからねー」

 

 巧は持っていた資料の束をディオニュソスに手渡す。

 

「それで、もう一個話があるんだ」

「……?なにかな?」

「フィルヴィスさんのことなんだけどさ」

「……彼女がなんだ?」

「いや、そんな睨まないで……。変な話じゃないから。変な風に解釈しないで」

「あ、あぁ、そうか。すまない……」

 

 フィルヴィスの名前が出た時点でディオニュソスの目が鋭くなり、巧のことを睨むように見つめたものだから、巧も少し物怖じしてしまった。

 巧が誤解だと告げると、ディオニュソスはすぐに雰囲気を戻す。

 

「それで、何かな?」

「いや、【ロキ・ファミリア】のレフィーヤ・ウィリディスを知ってるかな?」

「あぁ、知ってるとも。フィルヴィスが饒舌に話していたからね」

「じゃ、それなら話は早いかな。今、彼女は『並行詠唱』の習得中でね」

「それで、フィルヴィスに指導を頼みたいと?」

「理解が早くていいね。ま、その通りだよ。ロキの眷属だし、フィルヴィスさんの新たな友人だ。親睦を深めるのは悪くないと思うけど?」

「……ふふふ。ああ、その通りだな。私から伝えておくよ。場所や時間は?」

「必要なら向こうから来られるように地図を渡してあるよ。『黄昏の館』に直接行かせてもいいけどね。その資料を神ロキに渡すとかいう名目で」

「……ああ、わかったよ」

 

 どうにかして二人を引き合わせようとする巧の言葉に、ディオニュソスは苦笑を浮かべる。

 

「それじゃ、俺はこれで。また何かあれば来るよ」

 

 それを最後に巧はディオニュソスの前から姿を消す。

 何度見ても慣れない光景だと思いながらも、一人になった室内で渡された資料へと目を通し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 【ディオニュソス・ファミリア】を後にした巧は、回復薬(ポーション)の補充のために『青の薬舗』に来ていた。

 

「おーっす、お客様が来てやったぞー」

「出口はそちらです」

「はい、そうですか。ってなると思うなよ」

 

 入った瞬間に店員であるナァーザに出て行けと巧は言われる。相変わらずの嫌われようである。

 

「そもそもなぜ、折角の金蔓をわざわざ返そうとする」

「個人的に嫌いだから」

「お互い様だボケ。とりあえず回復薬(ポーション)二ダース頼む」

「……………………………………………………わかった」

「そんなに俺に売るのが嫌か」

 

 ナァーザは溜めに溜めて、こんな奴でも客は客だからといった風に、渋々、本当に渋々回復薬(ポーション)が入った箱を持ってくる。

 巧は中身をすべて見分して、本来の代金よりも色を付けた一八〇〇〇ヴァリスを彼女に支払う。

 

「……」

「……?」

 

 代金を受け取ったナァーザがじっと巧のことを見つめる。

 

「……………」

「……」

「…………………………」

「……」

「………………………………………」

「……なんかあるなら早う言えや」

 

 無言で強い視線を向けてくるナァーザに、巧は呆れながらも尋ねる。

 

「……………………………………………………非常に、非常に癪で不本意で絶対に嫌だけど……」

「じゃ、帰るわ」

「待って。言うから……」

 

 ナァーザは長々と溜めた挙句、物凄く嫌そうな、歪んだ表情で、まるで我慢するかのように手の色が変わるほどに強く握りしめていた。

 そんな彼女の様子に呆れ果てた巧は出口へと足を向けて出て行こうとするが、ナァーザがそれを急いで止める。

 

「実は、冒険者依頼(クエスト)を、頼みたくて……」

 

 そういって一枚の羊皮紙を手渡してくる。そして内容を確認する。

 

「『ブルー・パピリオの翅』、か……」

 

 確認するように呟く。

 依頼内容は上層で出現する『稀少種(レアモンスター)』のドロップアイテムの納品。言ってしまえばそれだけのことなのだが、『稀少種』ということだけあって見つけ出すのは困難だ。それに絶対にドロップアイテムを出すというわけでもない。危険は少ないが、内容的には面倒な類だ。

 しかし、巧は一つ頷いて彼女に確認する。

 

「これ、うちのベルにやらせても構わないか?これぐらいならあいつでも十分やれるはずだしな」

「うん……。でも、早い方が、助かるかな……」

「明日にでも行かせるさ。とはいえ内容が内容だ。あまり期待せずに待ってろ」

 

 最後にそう告げて、巧は店を後にする。

 その後、巧はホームに帰還したベルとリリルカに冒険者依頼(クエスト)の話を伝え、受諾させた。初めての冒険者依頼(クエスト)にしては難易度が高いということで、リリルカは渋っていたが、ベルと二人きりということを巧が小声で言うと、快く承諾してくれた。

 無理そうならば巧が引き継ぐ旨も伝えると、ベルも安心したようで引き受けてくれた。成功するにしろ失敗するにしろ、いい経験になるだろうと巧は二人を見ながら思った。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。鍛錬三日目。【ロキ・ファミリア】の遠征五日前。

 巧はベルとヴェルフを連れて市壁の上へとやってきていた。

 対するアイズも、少し遅れて市壁の上に姿を現す。

 

「……」

「……」

 

 巧とアイズは見つめ合ったまま、一言も発さない。そうしてしばらく見合っていると、アイズの方から気まずそうに目を逸らす。

 ベルとヴェルフは既に組手を始めており、巧の後ろから剣戟や打撃音が聞こえてくる。

 そんな中、巧はアイズの前で仁王立ちして、彼女と、()()()()()()()()()()()を見つめる。

 

「うん。黙ってないで説明してもらおうか?」

 

 こくり、とアイズは小さく頷いて説明を始めた。

 

「どう、教えればいいか、分からなかったから、連れてきた」

「いや、言ったよね?俺、魔法には疎いんだけど?」

「でも、身体の動かし方は、私より詳しい」

「……あー、感覚派か理論派か的なアレか」

 

 なんとなくわかったのか、巧は頭を掻きながらアイズの隣にいる()()()()()に目を向ける。

 彼女はアイズの後ろに隠れて、怯えながらも警戒心を顕にしていた。

 まるで猫のようだな、などとどうでもいいことを考えながら巧は思案する。

 

「昨日も鍛錬したんだよな?」

「うん」

「とりあえずそれをやって見せてくれ」

 

 そう言いながらも、巧は組手中のベルとヴェルフの下へ行き、乱入して引っ掻き回し、二対一の状況へと変化させる。もちろんベルとヴェルフがペアだ。

 二人の攻撃を捌きながらも、彼の立ち位置はアイズとレフィーヤの姿をはっきりと視認できる場所を陣取っていた。

 

「……じゃあ、やろっか」

「はいっ!」

 

 そうして、昨日とほとんど変わらないレフィーヤが一方的に殴られる組手が始まった。

 しばらくして、ベルとヴェルフが真っ白に燃え尽き、巧によって回復薬(ポーション)を無理やり飲まされた頃、ようやく二人にストップがかかる。

 

「はい、やめっ!」

 

 その声にピタッ、とアイズは動きを止める。レフィーヤは疲れからか、その場に座り込んでしまう。そんな彼女に後ろの二人同様に回復薬(ポーション)を渡す。

 

「なんとなーくだけど、わかった気がする」

「そ、そうですか……」

「やりたいのは『並行詠唱』でいいんだよね?」

「はい……」

 

 回復薬(ポーション)を飲み干したレフィーヤが弱々しく頷く。

 

「まず、傾向として防御の時に失敗しやすいね」

「防御、ですか?」

「うん。でも逆に不思議でしょうがないよ。なんでわざわざ慣れてないことをしようとするのかがね。今の君は『攻撃』や『防御』っていう余計なことをしてるから失敗しているんだよ」

「つまり……?」

「『攻撃』と『防御』はしない方が良い。てか、深層域のモンスターに、高々Lv.3程度の攻撃が通用すると思ってんの?しかも魔力特化型の魔導士の物理攻撃が。防御も一発でも受ければそれだけで戦闘不能になる可能性が高いんだから、当たらないことを意識しなさいや。魔法による攻撃のために動いてるのに、わざわざ余計な動作(アクション)をして失敗してどうすんの」

「……」

 

 巧の容赦のない言葉がレフィーヤに突き刺さる。それによって彼女の表情と雰囲気が暗くなる。

 

「でも、杖術を扱えるのは重畳だったかな。攻撃の受け流しぐらいは教えられそう」

「え……?」

「次は詠唱せずに回避だけの練習。身体捌き、移動、杖術での受け流しだけで組手やってみてよ。詠唱は余裕ができてから練習。まずは目や身体を慣れさせないとねー」

 

 じゃあそれを意識して続けててー、と言い残して巧はベルとヴェルフの下へと戻っていく。二人は土気色の顔色をしながら、歩み寄ってくる巧からどうにか遠ざかろうと、ずるずる、ずるずると身体を引きずって距離を取ろうとするも、やはり這いずりでは徒歩には敵わない。

 

「こら、逃げない。別にさっきみたいに俺との組手をやるわけじゃないから」

「「……………」」

 

 巧の言葉を聞いて二人の顔に生気が戻っていき、土気色から血色のいいものへと移り変わっていく。表情も花が咲いたかのような歓喜のものへと変化する。

 それを見て巧は少しだけ肩を落とす。

 

「……そんなに喜ばれるとちょっとへこむなぁ……」

 

 その後、巧はベルとヴェルフ、アイズとレフィーヤの組手を見守りながら、随時アドバイスを与え続けた。

 




 今日の巧メモ
・人として:最近、残高が気になる。
・武人として:魔法に関しては分からん!
・研究者として:(ポーション)漬けになり始めて危機感を覚え始めた。


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