ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか 作:猫屋敷の召使い
……いや、ちゃうんすよ。思いの外ベル君の奮闘が長くなってん。「どうにかして省いてもいいかなぁ」とは思ったんだけど、どうしても描きたい描写に必要だったので、ぶち込みました。
その結果がベル君の戦闘シーンだけで約3500文字ぐらい(全体で約5400文字ぐらい)。
……なげぇよ。普通なら一話分でもおかしくないわ、こんなん。
ま、まぁ、一部原作と変えて、原作よりも若干成長しているベル君も描きたかったし。
というわけでネタばらしをは次回です。ごめんなさい。
あと、急いで書いたから誤字脱字が多数あるかもしれないです。気づく範囲で直したとは思うんですけど、あったらごめんなさい。そしてできれば教えてください。
巧が放った奥義によって、激しい衝撃波が生まれる。さらには、一時的にとはいえ周囲の者達から色と音を奪った。
一方、オッタルは光線に連れていかれ、10階層に落ちてもなお、その勢いは劣ることはなく、さらに数階層の地面を突き破りながら、さらに下へと落ちていく。
その間に巧は周囲の石片を踏み台にして、9階層に戻ってくる。
しかし、既に彼の身体は限界を迎えており、上手く着地出来ずに地面を滑っていく。
そんな彼にリリルカは焦ったように急いで駆け寄る。
「タ、タクミ様!?大丈夫ですかッ!?」
「そう見えるのなら、お前の怪我は相当酷いのだろうな。今すぐに傷と目に
奥義の衝撃で服は機能を失うほどに消し飛び、髪を束ねていた紐も千切れ、巧の腰ほどまである長い髪が地面に垂れて、砂埃を纏わりつかせる。
そのうえ、地に足を付けていなかったことで反動も凄まじかった。
しかし、それでも口だけは問題なく動かせるため、彼女の言葉に皮肉交じりで答える。
そんな彼の言葉に、リリルカは眉を顰め、呆れながら答える。
「……そこまで減らず口が叩けるのでしたら、急ぐ必要はなさそうですね」
「おい。こっちは指一本たりとも動かせないんだぞ。さっさと
倒れたままの状態で巧はリリルカに要求する。それにため息を吐きながらも、巧から受け取ったポーチの中から言われた二つを出して、彼の口に突っ込んだ。
突然の行動に眉間にしわを寄せて不満そうな表情を浮かべるが、こんな時にとやかく言うべきではないと考えて、この扱いに甘んじる。
「……よし。なんとか、歩けは、するか」
壁に手をつきながらも、巧はなんとか立ち上がる。
「お前も
「は、はいっ」
リリルカが自身の傷に
しかし、その一歩だけで巧の身体はバランスを崩し、前のめりになっていく。
そのことに気づいたリリルカが彼の身体を支えようと手を伸ばすが、間に合いそうにない。
「あのような激戦の後だ。どれ、手前が担いでやろう」
だが、巧の身体が倒れ切る前にその身体が宙に浮く。いつの間にか傍まで来ていた椿によって、巧の身体は抱えあげられていた。
「……あんたか、椿。見られていたか」
「む?珍しいな。気づいておらんかったか?」
「むしろ、そこまでの余裕があったように見えるか?」
「うむ。顔は笑っておったのでな」
「……」
椿の返しに、巧は苦虫を噛み潰したかのように表情を歪める。そして、そんな彼女の傍には【ロキ・ファミリア】のアイズがいた。
「とりあえず、運んでくれるのならこの奥に頼む。うちの団員が奮闘しているだろうからな」
「あいわかった」
「出来るだけ、急いでほしい」
巧の言葉に素直に従った椿は、通路の奥へと駆ける。アイズもリリルカを抱えて、彼女に追従した。
そして、すぐにその光景を目の当たりにした。
「ベル様っ……!」
「ほう……」
「……」
「なんとか、間に合った、かな……」
そこには、猛牛の持つ大剣が、いや、持っていたはずの大剣が右手ごと宙を舞っている光景だった。そして、その大剣に必死に手を伸ばす、ベルの姿だ。
「椿、もう十分だ。降ろしてくれ」
「うむ……。あやつは、お主が鍛えたのか?」
「そう、だな。そういっていいのだろうな」
椿に降ろされた巧は、安心したように息を一つ吐きだして、目の前のベルへと視線を向ける。
「俺にそのような資格があるかは分からないが、あいつは弟子といってもいいんだろうな」
巧は子の成長を喜ぶ親のような、柔らかい表情を浮かべてベルの死闘を観戦する。
大剣を取り返そうとしたミノタウロスを、ベルが【ファイアボルト】で無理やり下がらせる。
そこへ、フィン達【ロキ・ファミリア】の面々が辿り着く。
「……おい、クソチビ」
「なんだ、ワン公」
「お前、あいつに何をしたんだ……!?」
「ただ、戦うための技術を教えた。ただそれだけだ。……ああ、そうそう。一ヵ月前は随分と好き勝手言ってくれたな?ま、『男子三日会わざれば刮目して見よ』とはよく言ったものだ」
くくく、と含み笑いをしながら、驚愕に見開かれている瞳を覗くように見つめる。
これだけで数日はおかずとして白米やパンを数人前は食べられるな、などとどうでも良さそうなことを考えるも、目の前の戦いからは意識を外すことはしない。
―――さて、俺をどう楽しませてくれる?
ベルは黒煙を突き破って、手にした大剣を大上段から斜めに振り下ろす。
『ヴグゥッッ!?』
鋼を彷彿させる強靭な肉体に、太い赤線が走った。
戦い始めて、ようやく優勢に立てた。
斜に刻み込まれた傷痕から血が飛び散る。
そして、それらが地面に落ちる前に、ベルの大剣による二撃目が寸前まで迫っていた。
ベルは斜めに振り下ろした後、下手に止めることはせずに流れに身を任せて、身体を一回転させると、速度を乗せた大剣を一文字に薙ぎ払う。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
『ヴオォォッ!?』
変に勢いを殺さずに振られたそれは、先ほどの一撃よりも、断然重かった。先ほどよりも深い赤線が、ミノタウロスの胴にできる。
大剣の重さを利用して、遠心力で次第に加速していく剣閃がミノタウロスを圧倒する。
「あの扱い方は、お主が仕込んだのか?」
「……悪い?大剣はまだ基礎しか教えていないから、下手でも文句言わないでよ?俺の教え方が下手なわけじゃないからね?多分」
「いや、十分であろう。振り回されていないだけの」
辛うじて、大剣に振り回されてはいないといえる扱い方。
やはりそれでも、余裕が無いのか、はたまた疲れが出ているのか、振り方が雑ではあった。
しかし、怒涛の勢いは止まらない。
持ち直す暇を与えないかのような連撃。
モンスターの動揺もあり、確実に、そして可能な限りミノタウロスの身体に傷痕を刻み込んでいく。
『ゥ―――ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?』
怯んでいたミノタウロスが、吠える。
調子に乗るなと全身を怒らせ、獣の本能を取り戻す。
地面に打ち込んだ踵が、それ以上の後退を許さず、負けじとばかりにベルを押し返した。
「『――――――――――――――ァッッッ!!』」
言葉にならない喊声が空間を満たす。
モンスターの剛拳に応えるようにヒューマンが巨剣を振るう。人の剣技と怪物の怪力の対決。
全力のぶつかり合い。互いに動きを加速させていき、一進一退の攻防を繰り返す。
振るった大剣が前蹴りによって打ち落とされる。
防御のために構えた剣を避けて放たれた殴撃を紙一重で躱す。
振り上げられた斬撃が相手の骨を砕き、肉を裂く。が、同時に相手の拳が額を割る。
蹄型に陥没する地面、振るわれた剣で切り裂かれる草花。舞台が静かに壊れていく。
力の全てを出し尽くそうとする雄と雄は決して止まろうとしなかった。止まった瞬間、手を休めた瞬間、待っているのは『死』であるからだ。
血塗れた銀剣と罅割れた蹄が、火花を打って、何度目かわからない衝突が起こる。
戦いの終結が近い。その事を理解しているからか、誰一人として眼前の戦いから目を離そうとしない。
「うああああああああああああああっ!」
『ヴゴォッ!?』
ベルの全身を余すことなく利用した回転斬りがミノタウロスの横っ腹に入る。
肉の鎧と化している腹横筋の表層を半ば斬り裂き、刃は止まる。しかし、それでも勢いは止まることはなく、それどころか弾くようにして大剣を振り抜き、ミノタウロスを横合いに吹き飛ばす。
ビキリ、という大剣の小さな悲鳴が、柄を通してベルに伝わってくる。それに辛うじて気づいたベルは相手にバレない程度に悔しそうに奥歯を噛み締める。
『フゥーッ、フゥーッ……!?ンヴゥウウウウウウオオオオオオオオオオオオッ!』
離れた彼我の間合い、およそ五M。
出血する胴を一頻り押さえた後、ミノタウロスは目を真っ赤に染め、両手を地面に振り下ろした。
原型のなくなった両手が地面を踏みしめる。そして、頭は低く構えられ、臀部の位置は高く保たれた四つん這いの姿勢を取る。その姿は、まさに猛牛のそれだ。
ベート達は目を剥いた。
追い込まれたミノタウロスに度々見られる突撃体勢。
己の最大の
進行上の障害物を全て粉砕してのける強力無比なラッシュだ。
ただし、それは助走が十分である場合だ。この短い間隔では威力は半減してしまう。
それほどまでに、ミノタウロスは追い詰められているのだ。
なお、巧はこの突撃体勢を一切見たことがなく、情報として知っているだけである。
『―――』
最後の矜持によって残されていた片角が、ベルの見張られた瞳をギラリと焼いた。
互いに視線の矛を投げ合う。
呼吸を止めたかのように、一瞬、周囲の空気が張り詰めるも、空間自体は恐ろしいほどに静かだった。
ベルの眼差しと、ミノタウロスの眼光がかち合う。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」
『ヴヴォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』
両者が同時に駆けだした。
それを見た巧が獣のような獰猛な笑みを浮かべる。
「馬鹿がッ!」
「駄目です、ベル様ぁ!?」
青い感情を非難するベートの罵声と、張り裂けるようなリリルカの悲鳴。
響き渡る声さえ無視して、ベルとミノタウロスは耳に渦巻く風の音を聞きながら、足を動かす。
一気に縮まる間合い。相手の瞳に映る自分の姿が大きくなっていく。両者の気迫が肌を打つ。
大剣が右肩に振り上げられ、一角が巻くように右肩へ溜められる。
振り下ろしと、すくい上げ。
同時に発進したそれは、瞬く間に交錯した。
「……」
銀塊が砕ける音が響いた。
今の今まで、全く手入れされていなかった大剣は、力任せに振り回されて限界を迎えていた。
正しい扱い方ではある。力任せに振る。そのために大剣は頑丈にできているのだから。しかし、それは整備を行う前提だ。
これは明らかだった結末で、根元が粉砕され、剣身が明後日の方向に飛んでいくのは分かりきっていた。
その大剣を握っていたベルにとっては、だが。
大剣を砕いた傷一つないミノタウロスの角を視界に収めながら、相手の脇をすり抜ける。
その際、ベルの瞳に、口端を裂くミノタウロスの双眸が映った。
敗者に送る嘲笑ではなく、勝利に飢えた剛毅な笑み。
ミノタウロスは確実な勝機を見出していた。仮初めの切り札を失った相手に対して。
白い前髪が、静かに真紅の瞳を覆う。ミノタウロスと同じく、勝機を見出した瞳を。
視界が鮮明になり、思考がクリアになる。そしてミノタウロスが視界の外に消えていき、同時に相手の視界からも自分の姿が消えた瞬間。
「ッ!」
漆黒のナイフを抜いた。
「ッッ!」
急激な超ブレーキ。
百の状態からゼロまで速度を落とす。
最大酷使される膝からの悲鳴を無視し、回転。
左逆手に装備された《ヘスティア・ナイフ》が、紫紺の光沢を鈍く光らせながら、ミノタウロスの死角から迫撃する。
「シッッ!!」
『ヴオッ!?』
巨躯の右脇下に叩き込まれた《ヘスティア・ナイフ》は天然の鎧を貫通した。
遠心力が上乗せされた最大威力。刺突で一点に威力を集中させた影響で、大剣よりも威力は大きい。
不意打ちによりミノタウロスの体勢が揺らぎ、横にぐらりと流れる。
そしてベルは、体内に届いた黒刃をぐっと押し込み、ありったけの力を込めて―――砲声した。
「ファイアボルト!」
ドゴンッ、とミノタウロスの全身が振り乱す。
体内で何かが爆発したかのように、肉厚の胸板が膨張した。
ナイフに貫かれている傷口から炎雷が溢れだし、ミノタウロスの目が限界まで見開かれる。
「ファイアボルトォッ!」
追加の砲声でさらに肥大する。
ミノタウロスの上半身は風船の如く膨れ上がる。
体皮の上では魔法を無効化する肉体でも、体内からの攻撃を防ぐ術はない。
体内で炎雷が暴れ狂い、行き場のなくなった火炎流は出口を求め、鼻腔、口腔という穴という穴から、胴にある傷口のほんの僅かなすき間からさえも緋色の炎が勢いよく噴出した。
『ガハッ、ゲッハッ……!?グッ……ォオオオオオオオオオオッ!?』
喉を焼かれながらもミノタウロスは咆哮し、振り上げた巨腕を張り付いているベルへ直下させた。
ミノタウロスの超膂力から繰り出された肘鉄。
寸分の疑いもなく、当たれば無残な肉塊へと変貌させる極鉄槌。
だが、行動に移すのが、少しばかり遅かった。
「ファイアボルトォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
爆散。
『――――――――――――――――――――――ッッ!?』
聞き取れないほどの凄まじい断末魔が炸裂し、膨張していた上半身は粉々に弾け飛んだ。
体内に留まり、内から焼いていた熱塊が、拘束を解かれ自由になったことで、勢いよく爆ぜ、炎の轟華を咲かせる。
ダンジョンの天井まで立ち昇る緋炎と煙。火山の噴火のような光景の中、かろうじて原形をとどめた下半身が崩れ落ちた。
降りしきる血と肉の雨。
音を立てて猛牛の破片が地面に転がっていくそんな最中。
空高く舞い上がり、その身を回転させていた巨大な魔石が、ザンッと地面に突き立った。
巧はその光景を見て、ベルのことを誇らしく感じた。
今日の巧メモ
・人として:私が主人公です。
・武人として:最強は天野博士。異論は認める。
・研究者として:……そういえばこの世界の種族について失念していた(椿に担がれながら)
次回は一応一週間後の23日の18時予定。(間に合えば)
ついでにおそらく次回で原作三巻と外伝四巻の内容は終わりです。
……遠征?タクミ君は【ヘスティア・ファミリア】ですよ?
というわけでまた次回!
(なお、この時点で本稿投稿30分前なのである)
クレジット無し