ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか 作:猫屋敷の召使い
換金を終えて【ヘファイストス・ファミリア】のホームに帰ってきた巧とヴェルフ。
疲れた表情の巧と呆れた表情のヴェルフが、ヘファイストスの部屋へと入る。
「ヘスティア様ー。帰ったよー……」
「只今帰りました、ヘファイストス様」
「「お帰りなさい」」
中へ入ると、ヘスティアとヘファイストスがテーブルを挟み、向かい合って座っていた。巧はテーブルに今日の稼ぎを置くと、テーブルに顎を乗せて凭れるような体勢になる。
「早速ですけど更新お願いしまーす……」
「……タクミ君、なんか疲れてないかい?」
「ちょっと担当アドバイザーの人に怒られちゃってねー……」
「一体何をやらかしたんだい?」
「13階層で人助けー。駆け出し冒険者なのに無茶し過ぎーってさ……」
「「!?」」
13階層と聞いて両主神は驚く。ヘファイストスはヴェルフに視線を向けるが、彼は静かに頷いて肯定する。
ヘスティアはテーブルに凭れかかってる巧に驚きながらもさらに聞く。
「け、怪我は無いのかい!?」
「ない。そこまでモンスターが強くなかったから……。正直、戦闘よりも説教の方が疲れた……」
ぐでーん、とついには床に寝そべってだらけてしまう巧。ヘスティアはその彼をゆさゆさと揺すって起こそうとする。
そんな彼を見たヘファイストスは呆れたようにため息を吐きながら文句を呈する。
「ちょっと。ここで寝ないでちょうだい」
「はーい……ヘスティア様ー運んでーついでに更新してー」
「まったくもー!今日だけだからなー!」
「わーい」
にへら、と笑って喜ぶ巧。それは年相応には見えない仕草だが、外見的にはマッチしていた。
ヘスティアにズルズルと引き摺られながら奥へと消えて行く巧。残されたヴェルフはヘファイストスに今日のことを報告する。
「ヘファイストス様。今日一緒に潜ってみたが、俺はアイツに相応しくない」
「そう?」
「ああ。俺の方が、足を引っ張ってしまう。そう思った」
「………………」
「アイツ、人を助けるために通路にいたインファント・ドラゴンを一撃で葬った。ただ通るのに邪魔だったから、虫を叩くかのように簡単にな」
「っ!」
「アイツは、俺なんかとより別の奴と潜った方がいい。俺のせいでアイツの成長を止めるわけにはいかない。そう思った。でも、俺が見捨てると、アイツは俺とは違う理由で一人になるかもしれねえ」
「……たった一日で随分と仲良くなったものね」
「……アイツ、武器は使わないくせに俺の作った武器を見たいって言ってくれた。今よりも上手くなれば、どんな武器を打てるようになるか興味があると。そんなことを言う、不思議な奴だ」
そういって無意識に笑みを浮かべるヴェルフ。
「俺の方からパーティー解消を申し出ても、向こうから断ってきた。邪魔だと思っているのなら、たまに一人で潜らせてくれるだけで十分だとな」
「……いい人に出会えたわね」
「本当にいい奴は俺の作った武具を使ってくれる奴だ」
「……ふふっ。そうね」
ヘファイストスは微笑を浮かべて、静かに笑い声を上げる。
その後、ヴェルフは自分の『工房』へと向かった。
ヘスティアに引き摺られて部屋に運び込まれた巧。
「ほら!せめてベッドには自分で上がってくれよ!」
「はーい」
うごうごと蠢いて虫のようにベッドへと上がり、上着を脱ぐとうつ伏せの状態になる巧。その彼の上にヘスティアは跨ると【
「まったく。ボクに心配をかけさせないでくれよ?」
「気を付けまーす。でも、助けを求めてる人がいたら無理かも。きっと自分よりその人たちを優先しちゃうや」
「……もしタクミ君が死んだら、ボクは眷属を失うことになる。唯一の眷属をだ。また一人になるのは、ちょっとごめんかな……」
「……神と人の違い………少し調べるべきか……」
巧はヘスティアに聞こえない声量で呟く。彼女も彼が何か言ったような気がしたが、なんと言っていたのかは全く聞き取れなかった。
なにを言ったのか不思議に思い、ヘスティアは彼に尋ねる。
「……?今何か言ったかい?」
「うん。でも教えなーい♪」
「なにをー!?主神のボクに隠し事をするのかい!?」
「うん♪でも、これからは気を付けるから安心してー♪」
クスクスと笑いながら主神の反応を楽しむ巧。ヘスティアもそんな彼の無邪気な笑顔を見て、自然と笑顔になってしまう。
「はい!終わったよ!」
ヘスティアが一枚の用紙を巧に手渡してくる。
タクミ・カトウ
Lv.1
力:I3→I98
耐久:I1→I30
器用:I5→H126
敏捷:I4→H102
魔力:I0
魔法とスキルは変化がなかったために省略したようだ。
そして主神から渡された用紙の内容を見て、首を傾げる巧。
「この上がり方って普通なの?」
「異常だよ」
「やっぱそうなんだ」
「普通はたった一日でこんなに上がるのはありえないよ。でもタクミ君はスキルの補正を受けているからね。それに朝の修練の後は更新していないから、そのせいもあるとは思う。だとしても異常だけどね」
苦笑気味でヘスティアは話す。
トータル300オーバーの上昇。たった一日ほどでこの上昇値。ヘスティアも初めての眷属だが、異常だということだけは分かった。
「……他の人には言わない方がいいのかな?」
「……そうだね。言わない方が賢明かもしれない」
「わかったー」
巧は返事をして上着を着るとそのまま枕に顔を
「ご飯の時間になったら起こしてー」
「タクミ君……」
呆れたような声で彼の名前を呼ぶヘスティア。声を聞いて片目だけ枕から上げて彼女の方を見ながら声を出す。
「それとも、ヘスティア様も一緒に寝る?」
「…………………………魅力的な提案だけど、今はやめておくよ」
「ん」
大分悩んだのか、返答が少し遅れるヘスティア。それを聞いた巧は上げていた片目を再び枕に埋めて隠す。
「じゃ、おやすみー」
「おやすみ」
ヘスティアに声をかけると巧は目を瞑ってすぐに、すぅすぅ、と静かな寝息を立て始める。彼女はそれを聞いて微笑を浮かべる。そして物音を立てないように静かに部屋を後にする。
彼女が部屋を出ると、そこにはヘファイストスだけがいて、ヴェルフの姿は既になかった。
「ヴェルフ君は帰ったのかい?」
「ええ。自分の『工房』の方に向かったわ。貴方の眷属は?」
「今は眠ってるよ。担当アドバイザーの説教が相当効いたみたいだよ」
それを聞いたくすくすと笑い声を上げるヘファイストス。
「そう。まあ、そうでなくとも13階層まで行ったんだもの。休ませてあげましょう」
「うん、そうだね」
夕食の時間までの二時間ほど、二人は談笑して時間を潰した。
扉の閉まる音が聞こえ、隣から談笑する楽しげな声が響く中、睡眠状態から覚醒状態へと即座に移行した巧は独り言を囁く。
「神の姿形は不変……性格は各々で異なる……一部を除いた
一人になった部屋で巧は、自分にしか聞こえない声で呟く。
その彼の独り言は暫く止むことは無かった。
翌日。巧が日課の修練を終わらせて朝食を食べているときのことだ。ヘファイストスからあることを話される。
「今日は椿もヴェルフも都合が悪いみたいなんだけれど、今日はどうするの?」
「もごもごもご―――」
「呑み込んでから話してちょうだい」
ヘファイストスにそう言われて、もっもっもっごくん、と口に入っているものをよく噛んで呑み込むと返答を口にする巧。
「一人で潜ってもいいの?」
「ええ、いいけれど……大丈夫?」
「多分!相手の実力はちゃんと理解できるし!あっ!でもバックパック欲しいから買い物してから潜る!」
昨日の稼ぎもあるし!といって残っている料理を平らげる巧。そしてすぐに立ち上がると、秒で着替えを済ませる。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい!気を付けるんだよ!」
「はーい!」
二人に向かって元気に返事をして走って出て行く巧。ヘファイストスは彼が消えていった出入り口を見つめる。
「……やっぱり実年齢より体の方に精神が偏ってるわよね、あの子」
「そうかもしれないね」
二人はそんなことを彼に向けて言っていた。
巧はそんなことを言われているとも露知らずに、ギルドへと向かっていた。バックパックをどこで買えるのかを知るためにだ。
彼は到着するとすぐにカウンターに近付き、担当アドバイザーであるエイナにバックパックをどこで買えばいいか聞く。
「エイナー」
「……?タクミ君?今日はどうしたの?」
「うん。バックパックをどこで買えるか知りたいんだけど、どこで買うのが良いのかなって思って」
「それならダンジョンの上に立っているバベルの中で買えると思うけど……」
「何階?」
「えっと、何階だったかしら……」
階数を思い出そうとしだした彼女を見て、巧も少し悩むが彼女よりも早く結論を出す。
「んー。じゃあ、行って見てみるからいいや。ありがと!」
「あっ!ちょっと!?」
ばいばーい!と大きく手を振りながらギルドから出て行く巧。その彼に伸ばした手を静かに下ろすエイナ。
「一人でダンジョンには、潜らないわよね……?」
心配とも不安ともとれることを呟くエイナ。
半日後、ギルドの面談ボックスで彼女の怒声が響くことになるが、それはまだ先の話。
バベルで巧の身の丈ほど大きなバックパックを購入することが出来た巧は、意気揚々とダンジョンへと潜る。上層はどんどん進んでいき、まだ来たことのない14階層に到達するが、13階層のモンスターと様変わりしなかったため無視した。
そのまま階層を進み、15階層へと下りる。そこで『ミノタウロス』に遭遇するも、『共振遠当て』を加減して放ち脳を揺らすと、『摩擦熱切断手刀』で首を斬ることで処理する。そこから順当にモンスターを倒しては魔石を取りだして進む。
「まったく。何処まで潜れば手ごたえがあるんだろう?」
片手間にモンスターを処理しては魔石を取りだす作業を機械的に続ける巧。現在の階層は16階層。
少し落胆しながらも歩みを進める。
そして、17階層に来ると奥から人の声とモンスターの咆哮が聞こえてくる。気になった巧は足を速めて様子を見に行く。するとそこには
「おぉー……あれが『ゴライアス』なんだぁー」
数多くの冒険者たちと数多くのモンスター。そして何よりも目を奪われるのが7Mほどの巨人。
巧は小さく声を上げ、多くの人が協力して敵を打倒するその光景に少々の感動を覚える。そして近くの冒険者に話しかける。
「ねぇねぇ!あの巨人ってもらってもいいの!?」
「あぁ!?何言ってやがるこのガキ!?」
「貰っても良いのかって、聞いてる!」
「……死にてぇなら勝手にしろ!!」
―――うん。言質は、もらったよ―――
そう一言呟いて、巧は巨人に向かって跳んだ。全力で地を蹴り、現状出せる最高速度でゴライアスの顔へと急接近する。
ゴライアスも、それを相手取っていた冒険者たちも巧の存在に気づく。その時にはもう既に彼は拳を振りかぶっていた。
「一発ぐらい、もってくれよ?『臨界パンチ』ッ!!」
巧の
ゴライアスの顔面に、生体組織を原子核分裂させた拳が突き刺さり、頭部で大爆発が起こる。それにより、ゴライアスの頭は跡形もなく爆散していた。
たった一撃でゴライアスは頭部を無くして絶命した。
「……なんだ。拍子抜けだな」
昂っていた身体は急速に冷めていき、再び落胆を覚える巧。巨人の死体の上で落ち込むも周りのモンスターを見やる。
「倒したら魔石はもらえるのかな?……いや、別にいっか。今からやるのは、ただの八つ当たりだし」
そう呟きながら、戦場を駆けて通りすがりにモンスターの首を手刀で斬り、拳で頭を潰す。僅か数分で残っていたモンスターを全滅させると、すぐに次の階層に行こうとする。が、それを呼び止める者がいた。
「おい!ちょっと待ちやがれ!」
「……なに?」
巧を呼び止めたのは一人の男性だった。鋭い視線を巧に向けて警戒の色を顕わにしている。
「てめえ、何者だ?『ゴライアス』を一撃なんざ、第一級冒険者以外じゃ見たことがねぇ。だが、俺の記憶にはお前みたいな第一級冒険者はない」
「……タクミ・カトウ。【ヘスティア・ファミリア】所属。暫定的に団長かな。まだLv.1のしがない駆け出し冒険者だよ」
「……ふざけるのも大概に―――」
「ふざけてないよ。ていうか、さっさとしてくれない?俺、先に行きたいんだけど」
「……なら、【ステイタス】を見せろ」
「別にいいよ。見られて困るものは隠してもらってるし」
「……チッ。それでいい。おい!【
そう男性が呼びかけると、一人の男性冒険者が駆け寄ってくる。
「コイツのLv.だけ解読してくれ」
「……誰なんですか、このチビ?」
「チビって言うな!不能にするぞこのクソ野郎!」
「ヒッ……」
「……ゴライアスを一撃で潰した野郎だよ。いいからLv.を解読しろ」
「は、はぁ……」
上着を脱いで待機していた巧の背中を見始める男性冒険者。そして解読結果を男性に告げる。
「Lv.1です。……確かなんですか?コイツがゴライアスを潰したって」
「俺もこの目で見てたから間違いねぇよ」
「……もう行っていい?」
「あと一つだけだ」
「今度は何さ?」
「ボールス・エルダーだ。18階層の『リヴィラの街』で有事の際のまとめ役みたいなことをしてる」
「あ、そう。よろしく」
男性が自身の名前を名乗るが、イラついていた巧は軽く流す。
「あぁ、俺が倒したモンスターはあげるから、全部そっちで処理して」
「……いいのか?」
「先に戦ってたのはそっちだよ。俺はそれを横取りしたんだから、もらう権利はないよ。それじゃあね」
そのまま巧は階層を降りるために先を急いだ。
残されたボールスと男性冒険者は信じられないような眼で彼を見る。
「……どうだった」
「スキルは隠されてたけど、『基本アビリティ』は見れた。それでも駆け出しの域を出ない数値だったよ」
「……マジもんの化け物じゃねえかよ」
巧に対して戦慄を覚える二人だった。
その後、巧は24階層まで行き、多くのモンスターを倒して魔石を回収する。その時の彼は、怒りをぶつけるように荒々しく、攻撃的で、まるで獣のようであった。
地上に帰還してきた巧はギルドに着くと、換金所に魔石を預けて査定してもらう。
「あっ、タクミ君。ちょっといい?」
「……?なに?」
エイナに呼ばれて彼女の下に駆け寄っていく巧。そのまま面談ボックスの方に誘導される。
「さて、なんで呼ばれたかわかる?」
「……?………わかんない」
彼女の問いに首を横に振る。エイナもその言葉に頷き、椅子に座る。
「そうでしょうね。これから問いただす内容によっては聞かれたら困るから呼んだのだから」
「……問いただすって。もう少し穏便な言葉を―――」
「使って欲しいの?」
「―――使った場合を思い浮かべたら逆に怖くなったからいいやー」
巧は笑顔なのにどこか怖い彼女の雰囲気に気圧され、下手なことは言えなくなってしまう。
「それで、今日は何階層まで行ったのかな?」
「………今日はダンジョンには行って―――」
「行ってない、なんて言わないでね?さっき換金所に魔石を預けてるの見えたんだから」
「―――………」
エイナの言葉に黙ってしまう巧。しかし彼は懲りずにまた嘘を吐く。
「……13階層だよ?」
「嘘ね」
「嘘じゃないよ?」
「なら私の目を見て言いなさい」
「……………………………………………………ウソジャナイヨー?」
目を逸らしながら、汗をダラダラ流しながら、巧は片言で答える。そんな彼を終始笑顔で問い詰めるエイナ。そして彼女は急に立ち上がると巧の方へと手を伸ばしてくる。そのまま彼の両頬を摑む。
「本当のことを、言、い、な、さ、い~!」
「うにいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
(あっ、意外と、っていうかすごく柔らかい。地味に癖になりそう……)
彼女の手によって両頬をムニムニと引っ張られる巧。エイナはそんな彼の子供ほっぺの感触を密かに堪能する。
これにはさすがの彼も観念したのか、弄られたまま何とか声を振り絞る。
「
「それでいいのよ」
「うぅ~、頬が痛い……」
「最初っから素直に話せばよかったのよ。それで、何階層?」
「……24階層」
「…………………………」
素直に答えた巧の言葉にエイナは少し眩暈を覚えた。
(駆け出し冒険者が一人で24階層?しかも一昨日
彼女の頭の中を色んな情報が駆け巡る。このままでは頭がショートしてしまうので、彼女は一旦考えるのをやめると別の質問をする。
「な、なんでその階層まで行ったの?」
「モンスターが弱かったから!」
もう切り替えたのか、先ほどまでの隠すような態度はなく、ハキハキと答える巧。
彼の返答に頭を抱えてしまいたいエイナ。
「で、でもダンジョンでは不測の事態があるから、あまり油断しない方がいいのよ?」
「何かあるようなら勘で分かるから大丈夫!」
もう何も考えられなくなりそうなエイナ。
「そ、それでも何があるのか分からないんだから!あまり無茶なことはしないで欲しいの!いい!?」
「……どっからが無茶?」
首を傾げて本気で聞いてくる巧に、エイナはついに両手で頭を抱える。
エイナは机を叩いて立ち上がると、巧に叫ぶかのように言う。
「駆け出し冒険者が!一人で!24階層に行くことがよ!」
「……?なんで?」
「っ!」
「なんで無茶なの?大体みんな一撃で死んじゃうのに……」
悲しそうな眼をして、切実そうな声が漏れる。
それを聞いたエイナは目の前の少年のような見た目の彼が、一体何を言っているのか理解できなかった。
「い、一撃……?」
彼女は何とか聞き返すことに成功する。その問いに巧は頷き、詳細を話し始める。
「うん。一撃ー。まだ『グリーンドラゴン』には勝てないって思ったから挑んでないけど、それ以外、『ゴライアス』とかは一撃だったよ?あっ、でも、24階層辺りだとちょっと力を込めないと倒せないから、少しだけ楽しかった!これからはあそこで
悲しそうな色は少し和らぎ、無邪気な笑顔で語る巧。
あまりにも下地が強すぎた弊害。上層では相手になるモンスターはおらず、仕方なく中層にまで下りるしかない。そこまで行かなければ、彼は強くなれない。強くなるためには必然的に、下に行くしかない。
「それにまだ団員が俺しかいないから、俺が稼がないといけないもん!あまり主神に不自由させたくないんだ!」
そのうえ、彼の他に団員もおらず、他の【ファミリア】の冒険者と潜るか、一人で潜るか。その二択しかない。だが、生半可な実力の冒険者では彼についていけない。駆け出しに、そこまで実力のある冒険者と繋がるパイプはない。辛うじて挙げられるのが椿・コルブランドだが、彼女は鍛冶師で、直接契約を結んでいる相手が存在する。
普通の子供のような彼の純粋な願い。でも、実際にやっていることは歪で、普通とはかけ離れている。
「………………」
「大丈夫だよ。『グリーンドラゴン』を倒すまでは24階層からは下りないし、嫌な予感がするときはダンジョンに潜らないから!だから安心して?」
彼は安心させるような笑顔をエイナに向ける。事実、彼はあの木龍を見た瞬間、斃すまでは24階層より下に行かないと心に決めていた。あの強敵を斃せば、また一歩進めるような気がするからだ。
それでも、彼と会ってまだ日が浅いエイナは信頼は当然のこと、信用も出来ない。
「……本当に、大丈夫なの?」
「うん!まだ怪我もしてないからね。本能的に危険だと感じる相手も『グリーンドラゴン』以外いなかったから」
「その言葉、信じるからね?」
でも、担当アドバイザーとして彼の言葉を信じることに決めた。
その彼女の言葉に笑顔を浮かべて、元気な返事を返す巧。
「うん!なんなら指切りでもする?」
「ゆびきり?」
「あれ?此処にはないのかな?」
『指切り』と聞いて首を傾げるエイナ。そんな彼女を見て巧も首を傾げてしまう。だから彼は『指切り』についての説明を始める。
「俺の住んでたところの約束の契りだよ。嘘吐いたら裁縫針を千本飲ませて、拳で一万回殴っていいよっていう死刑宣告にも等しい死の契約なんだけど」
「何それ怖い」
「だって破らなければいいだけだからね!元々は遊郭の遊女が意中の男性に小指の第一関節までを切って渡して、愛を誓うっていうのが由来だったかな?」
「どっちにしても怖いわよ」
巧の説明を聞いて、声は平静を保っているものの顔は血の気が引いているエイナ。彼はそんな彼女に微笑みながら説明を続ける。
「でも、やり方は簡単だよ?やるのは大衆に広まった簡易的なものだし。……どうする?やっても、不利なのは俺だけだよ?」
「……………………はぁ、良いわよ。やりましょう」
「じゃあ、小指出して!」
「……斬るの?」
「斬らないよ!?」
少し怯えたような表情で聞いてきたエイナの言葉をすぐに否定する巧。
彼の言葉を聞いて、彼女は恐る恐る右手を出して小指を立てる。それに対して巧も右手の小指を出して、彼女の小指に絡ませる。
「指切りげんまん♪嘘吐いたら針千本飲ーます♪」
歌のリズムに合わせて上下に手を振る巧。
「指切った♪」
最後の言葉で絡ませていた小指をほどいて、約束する。
「これで終わりー♪」
相も変わらず無邪気な笑顔を彼女に向ける巧。そんな彼を見て、彼女も自然と笑顔になってしまう。
「……約束よ?」
「うん!」
「じゃあ、今日はもういいわよ」
「わかった!」
おじさーん!査定終わったー!?と叫びながら面談ボックスを飛び出す巧。残されたエイナは、書類の備考に書かれていることを更新する。
『タクミ・カトウ』と書かれた書類の備考部分に書かれていることを横線で消し、『最高到達階層:24階層』と書き替える。
自分で書いたそれを見て、先ほどの表情とは一転して溜め息を吐いてしまうエイナだった。
原作との相違点:ヴェルフの最高到達階層が13階層に変化。
今回で主人公の側面が一部分とはいえある程度出たかな?
『人を守りたい』人としての面。
『好奇心を抑えられない』研究者としての面。
『戦闘を楽しみたい、上を目指す』武人としての面。
人はラノベ主人公、研究者はマッド気味、武人は戦闘狂+向上心の塊って感じです。
そして蹂躙できる理由は前話で書いた通り下地とスキル補正のおかげ。
【ステイタス】の上昇値は「INTRODUCTION OF 財団神拳のインストラクション:2」の「今日の貴方は、昨日の貴方より二次関数的に強くなっていなければいけません」(一部抜粋)という部分に基づかせてるため。つまりはそういうこと。
以下クレジット。
「共振遠当て」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j
「摩擦熱切断手刀」は”Central_ECH”作「耐久実験」に基づきます。http://ja.scp-wiki.net/central-ech-2
「臨界パンチ」は”sakagami”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken
INTRODUCTION OF 財団神拳
by sakagami他
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken