ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか   作:猫屋敷の召使い

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第六話

 ギルドで換金を終えた巧は真っ直ぐヘスティアが待つ【ヘファイストス・ファミリア】のホームに帰る。

 

「ヘスティア様ー!ただいま帰りましたー!」

「お帰りなさーい」

 

 部屋に入ってきた巧に、声を返すヘスティア。いつも通りの挨拶を交わす二人。

 巧は鼻歌を歌いながら、手に抱えた袋を持ったままバックパックを静かに下ろす。

 そんな彼の様子にヘスティアは前回や前々回のダンジョン探索よりも上機嫌だと感じて、彼にその理由を聞いてみた。

 

「今日は随分とご機嫌だね?何かあったのかい?」

「うん!良い具合に疲れる階層を見つけたし、倒したい目標も見つけられたから!」

 

 その彼の言葉に一抹の不安を覚えたヘスティアは、少し覚悟を決めてから更に話を聞いてみる。

 

「……何階層だい?」

「24階層!」

 

 ヘスティアの不安が的中した。

 階層を聞いた瞬間、ヘスティアは口を開けて呆然してしまった。彼女は24階層がどんな場所かは知らない。だが恩恵を授かって三日目で潜る場所ではないというのは理解している。

 彼女はすぐに吼えるように彼に向かって叫ぶ。

 

「君は馬鹿なのかい!?」

「だってモンスター弱い!」

 

 彼女の叱責に対して、ふんぞり返って手応えがないと話す巧。そんな彼に呆れながらも一応尋ねるヘスティア。

 

「ど、どう弱いんだい?」

「遅い!軽い!単調!つまんない!みんな一撃で死んじゃうんだもん!」

「け、怪我はしてないのかい?」

「ない!」

「そ、それなら良いんだけど……あれ?いいのかな?」

 

 巧の勢いに飲まれてか、少し混乱しながら頷いた後に首を傾げてしまうヘスティア。そんな彼女に彼は持っていた袋を渡す。

 

「はいこれ、今日の稼ぎ!それと裏手で体動かしてくる!」

「ちょっとタクミ君!?」

 

 ヒュンっ!と風を切って彼は外に出て行く。渡されたヴァリスの入った袋を持ったまま呆然とするヘスティア。部屋の出入り口と手元の袋を交互に見ると、そっと袋の中身を覗いてみる。

 

「¥#$%&#@¥%&$*?!?!」

 

 そして中に入っていたあまりの金額を見て奇声を上げた。その声を聞きつけたヘファイストスが彼女に駆け寄ってくる。

 

「ど、どうしたの!?」

「こ、これ!?」

 

 近寄ってきたヘファイストスに袋の中身を見せるヘスティア。それを見た彼女は固まってしまう。

 

「少なくとも二〇〇万ヴァリスは入ってるよ!?」

「………………どこで盗んできたのよ?一緒に謝りに行ってあげるから返しに行くわよ。その後ギルドに出頭しましょう」

「違うよ!?」

 

 ヘスティアの肩に手を乗せて話すヘファイストスの言葉を、彼女はすぐさま否定して説明する。

 

「タクミ君が今日の稼ぎだって言って渡してきたんだよ!?」

「………………じゃあ、彼が盗んできたのね。まさか、そんな子だったなんて……」

『風評被害が甚だしいよ!?魔石とドロップアイテムを換金する正当な稼ぎ方だい!!』

「「………………」」

 

 二人の会話が聞こえていたのか、裏手から巧の声が響いてくる。

 その声を聞いた二人は互いに顔を見合わせる。ヘファイストスはヘスティアに尋ねる。

 

「彼、何階層に行ったの?」

「た、たしか、24階層って言ってたけど……」

「それなら、妥当な金額ね……一人で稼ぐのは少し異常だけれど……」

 

 はぁ、と二人して溜め息を溢してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。いつもよりもキツくした修練を終わらせ朝食を食べているとき、巧はあることを思い出す。

 

「ヘスティア様ー。昨日更新してないから食べ終わったらお願いしてもいいー?」

「あぁ!そう言えばやってなかったね。もちろんいいさ」

「わかりましたー」

 

 ヘスティアの返答を聞くと、ペロン!と残っていた料理を一瞬で平らげる巧。その出来事に目を見張るヘスティアとヘファイストス。

 

「じゃあ、お願いします!」

「あぁ、うん……」

 

 料理が一瞬で消えたことに驚くこともなく、しかし疲れた表情を浮かべながら奥の部屋に向かう巧を追いかけるヘスティア。

 前と同じように上着を脱いだ巧の背に跨ると【神聖文字(ヒエログリフ)】を弄る。

 

 

タクミ・カトウ

Lv.1

力:I98→G202

耐久:I30→I67

器用:H126→G255

敏捷:H102→G214

魔力:I0

 

 

 作業が終わって【ステイタス】が変化する。

 前回と同じくトータル上昇値300オーバー。それどころか400近く上昇している。

 

「………うーん」

 

 巧の【ステイタス】の変化に、思わず唸ってしまうヘスティア。そんな彼女に首を傾げながら尋ねる巧。

 

「どうかしたー?」

「いやー、これがタクミ君の普通なのかなー?」

 

 ヘスティアも首を傾げながら、羊皮紙に巧の【ステイタス】を書き写す。

 

「これ、写しね」

「………………これは、まずいなぁ」

 

 【ステイタス】の写しを見せてもらった巧は、自身の【ステイタス】の変化を見て苦い顔をする。

 

「二次関数的に強くなってないと焼き入れられちゃうなぁ……いや、前回の上昇値よりは上だからギリ二次関数?修練厳しくするにしても、引っ越しも控えてるし少し厳しいかなぁー……もっと修練の時間を増やせるかぁ?」

 

 ぶつぶつと独り言を呟く巧。そんな彼の言葉の中にヘスティアは引っかかる言葉があった。そのため、彼に聞き返すように、つい口から零れてしまった。

 

「……引っ越し?」

「うん。引っ越し。言ってなかった?いつまでも【ヘファイストス・ファミリア】、というかヘファイストス様の所にお邪魔するのも悪いからって、ヘファイストス様に相談したら特別に住居を用意してくれるってさ。後で場所を聞いて掃除とかライフラインの確保をしないとねー」

 

 ふんふんふふーん♪と鼻歌を歌いながら、上着を着て部屋を出て行く巧。

 そんな中、ヘスティアは彼の言葉を聞いて動きが完全停止してしまった。

 

『ヘファイストス様ー。住居の件はどうなりましたー?』

『今、整備を進めてるところよ』

『何から何までごめんなさい。掃除とかはこっちでやるので、場所を教えてください』

『なら後で案内してあげるわ』

 

 二人の会話が扉の向こうから聞こえてくるが、頭で理解が追い付いていないヘスティア。

 

「えっ!?引っ越し!?」

『『反応遅くない?』』

 

 ヘスティアの声が部屋の外でも聞こえたのか、巧とヘファイストスが扉越しに反応する。

 彼女は部屋を飛び出して二人に詰め寄る。

 

「ちょっと!一体全体どういうことだい!?」

「いやいや、いつまでも居候はマズいでしょ」

「ヘファイストス!ボクたち神友だよね!?」

「それでも我慢の限界というものがあるのよ」

「居候を続けちゃうと駄目な神様になるよ?」

「…………………………………………………」

 

 二人に詰め寄るも、言い返されて押し黙ってしまうヘスティア。

 

「諦めて引っ越しを受け入れましょうよ。どっちにしろ近いうちに追い出されてましたよ。住居を用意してくれてるだけ感謝しましょうって」

「………分かった」

「なら荷物をまとめておいてくださいねー」

 

 巧の説得のおかげなのか、すごすごと部屋の中に戻っていくヘスティア。彼女の背中を見ていた二人が少し申し訳なさそうな表情をする。

 

「……大丈夫かな?」

「大丈夫じゃなくても追い出すから大丈夫よ」

 

 当然でしょ?とでも言うようにさらっと話すヘファイストス。そんな彼女に頬を痙攣させながら聞き返す巧。

 

「それって大丈夫じゃないんじゃ……」

「それは置いといて新居に案内するわね」

「あっ、本当ですかー?」

 

 話を切り替えて追及から逃れたヘファイストス。巧もその誘導に引っかかってそのまま流される。

 

「じゃあ、ついてきてちょうだい」

「はーい」

 

 ヘファイストスの案内に従い、大人しくついていく巧。二人は部屋を出て西のメインストリートの方へと歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 ヘファイストスの案内でついたのは、北西と西のメインストリートに挟まれた区画にある廃れた教会。

 その教会の前に巧とヘファイストスの二人はいた。

 巧は目の前の教会を眺めながら隣に立っている女神に聞く。

 

「………これ?」

「そうよ?」

 

 聞いてみるも返ってくる言葉は肯定であった。そう言われてもう一度教会を眺める巧。

 二階建ての建物。しかしところどころ石材が砕け、剥がれ落ちている。象徴である女神像は顔半分も失いながらも、その微笑みを崩していない。屋根には大穴が開いており、中に日差しが差しこんでいた。雨が降ったら建物の中にも盛大に降り注ぐことだろう。控えめに見ても雨を防げるとは到底思えない。

 目の前の建物を見て、益々怪訝な顔へと変化していく巧。

 

「雨風防げないじゃん」

「正しくはここの隠し部屋よ。そこは状態が良かったのよ」

「………………」

「……そんなに目を輝かせる事かしら?」

 

 巧は隠し部屋と聞いた瞬間に目をキラキラと輝かせて目の前の教会を三度見上げる。

 

「だって隠し部屋だよ!?隠し部屋っ!!それほどまでに男心をくすぐる言葉だよ!?」

 

 以前まで秘密組織の施設にいたことなど頭にないかのように熱く語る巧。いや、彼にとってあの施設は『実家』なのだから秘密も何もないため、その実感がないのだろう。

 興奮気味の彼の様子に少々引き気味のヘファイストス。それでもなんとか声を出して案内を続ける。

 

「そ、そう……。ひ、一先ずついてきてちょうだい……」

「はーい!」

 

 二人は中へと入って行き、祭壇の先にある小部屋へと進む。その部屋の中の一番奥の本棚を横にずらす。そしてそこに現れたのは、地下へと伸びる階段。

 

「おぉー……本格的だー」

 

 こんな教会になぜこのような隠し部屋があるのかは分からないが、巧も男としてこういった隠し部屋には興奮する部分がある。そのまま階段を下って行くとそこそこの広さの部屋が視界に広がった。巧はその部屋を一通り眺めると満足そうに頷く。

 

「……うん。二人で暮らすには十分。頑張れば四人ぐらいは暮らせるかな?でも、ちょっと埃が積もってる?掃除を頑張らないと…………おぉ!?ライフラインが行き届いている、だと!?」

「そこは頑張って整備させたわ」

「流石っす。ありがとうございます!んじゃ、俺はこれから掃除をするので帰ってもらって大丈夫です!」

「私も手伝いましょうか?」

「いや、それは流石に【ヘファイストス・ファミリア】の皆さんにタコ殴りにされそうなので結構です!」

 

 頑張ってね、という言葉を最後にかけて隠し部屋から出て行くヘファイストス。

 巧は布で口を覆うと、よし!と意気込んで掃除を始める。

 

「『虚喰掌握』」

 

 掌を握力で圧縮することで重力崩壊を起こして、引力場を作り出す。それにより部屋に積もっていた埃が引力場に吸い寄せられる。

 

「……本当に便利だよね、これ」

 

 この掃除方法は伝承者を含む他の財団神拳(SCP-710-JP-J)習得者から教えてもらったものだ。作りだした引力場によって塵や埃はすべて集められるのだ。

 巧は集まった埃を適当な袋に入れ、その作業を場所をずらして数回繰り返す。それが終わると今度は布を濡らして拭き掃除を始める。

 

「~~~♪」

 

 鼻歌を歌いながら天井から拭き始め、壁、床と下に降りて行く。窓も濡れた布で拭いた後、乾拭きする。外からも同じ作業を行う。

 巧は部屋の中に戻って見渡す。一応テーブルや椅子、ベッドといったものはあったが埃塗れで使えそうになかった。ライフラインは行き届いていてもそれ以外が駄目ならば快適とは言い難かった。

 

「……家具は買い替えないとマズいかな?あっ、調理器具や食器もないや。どっちにしろ買い物に行かなきゃだめだこれ」

 

 【ヘファイストス・ファミリア】に一度戻り、ある程度の金銭をもって街へと繰り出す巧。

 食卓テーブル、椅子、調理器具、食器、ベッド、ソファー、時計、クローゼット。とりあえず必要そうなものを買い集める。すぐに持って帰れる調理器具や食器は持ち帰るが、それ以外のすぐに運ぶのが難しそうなものは代金だけ払って、あとで取りにくると店ごとに伝え、他の物の購入を急ぐ。

 

「まさか魔石器具で冷蔵庫が作られているとは驚きだった……。これの構造知りたいなぁ。何処で作ってるんだろ?いっそ買ってみてバラすかな?そうすれば大体想像つくし」

 

 魔石器具はそこそこ値は張ったが、何とか必要経費ということで納得して購入を決めた巧。器具の構造が気になったが、それは後回しにして住居の整備を進める。

 そして、教会の隠し部屋に購入したものを搬入し終えた頃には、もうすっかり陽は沈み切っていた。

 彼は少しの間ソファーに座って小窓から外を覗き見る。外は暗く、今からヘスティアを連れてくるにしても道を覚えられないだろう。

 

「………もう一日だけ【ヘファイストス・ファミリア】にお世話になろうっと」

 

 巧はそう思い、ソファーから立ち上がると隠し部屋から出て行く。扉を閉め、本棚で入り口を隠して教会を出て【ヘファイストス・ファミリア】のホームへ急ぐ。

 

「~~~♪」

 

 夜の街中を鼻歌を歌いながら歩く。

 

「ん~!この世界は、俺を飽きさせないなぁ~、本当に!」

 

 機嫌良さげに街を歩いて帰路につく。

 

 

 

 

 

 

 

「ヘスティア様!どうですか!?俺かなり頑張りましたよ!」

「ここが、新居かい……?」

「はい!」

 

 翌日。巧はヘスティアとともに新居に引っ越してきた。

 部屋の中をヘスティアに見せびらかすように両手を広げ、彼女の顔を見る。

 

「掃除も済ませて、家具は昨日のうちに全部新品に買い替えてここに搬入しました!調理器具に魔石製品も全部!食材は流石にまだですけど、それでも生活するには十分すぎる環境です!」

「全部、タクミ君一人で……?」

「あ、いえ!ライフラインの確保はヘファイストス様がやってくれましたー!」

「…………………」

 

 巧が胸を張って新居を紹介する。

 彼が言う通り、埃はほとんどないほどに綺麗に清掃され、家具も新品でまだあまり使われていないのが目に見えて分かる。

 すると、突然ヘスティアが巧に近付き、

 

「わぷっ!?」

 

 巧のことを抱きしめる。身長が5Cも違わないせいか、ちょうどヘスティアの顎が巧の肩に乗ってしまう。そして彼女の大きな胸が巧の胸板で潰れる。

 

「…………………」

「……ヘスティア様?」

 

 抱き着いたまま反応のない主神に話しかけるも反応は返ってこない。

 巧がそのまま大人しく抱きつかせていると、小さい声が聞こえた。

 

「……ありがとう。タクミ君……」

「……?別にいいですよ?主神であるヘスティア様には不自由や不便な生活はしてほしくないですから!……あっ!今度服を買いに行きましょう!俺もヘスティア様もそんなに数ないですし!」

「むっ。失敬な!ボクはそれなりに数はあるぞ!」

「でもボロボロなんでしょ?」

「うっ……」

「大丈夫ー!お金はまた稼げるからー!」

 

 にこにこと笑みを浮かべて彼女に語り掛ける。そこにふと、巧の視界に時計が映る。昨日のうちに時刻を合わせたそれは、九時四五分を指し示していた。

 

「あっ!」

「わわっ!?どうしたんだい!?」

 

 耳元で急に叫ばれたヘスティアは驚き、巧から離れてしまう。すると彼は慌てた様子でバックパックを背負う。

 

「ごめんなさい!十時にヴェルフと待ち合わせしてるんで、もう行かないと!?」

 

 ゆっくりしててくださーい!と言って、身の丈に合わない大きなバックパックを背負ってホームを出て行く巧。

 それを見送ったヘスティアは一人になった部屋の中で、何かを考える素振りをする。

 

「―――よし!」

 

 考えがまとまったのか、彼女も外に出て行ってしまう。扉を閉めた音の後に、本棚をずらす音がするので戸締りはしっかりしたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 午前九時五八分。広場の彫像前に着流しを着た赤い髪の青年が佇んでいた。誰かを待つように頻りに辺りを見回している。その彼に体に見合わない大きなバックパックを背負った少年のような容姿の男性が駆け寄っていく。

 

「ギリセーフ!」

「……もうちょっと早く来いよな?タクミ」

「いやーごめんごめん、ヴェルフ。新居でヘスティア様と話し込んじゃってさ」

「そうなのか?」

「ちょっとだけだよ。さ、早く行こう!」

「あ、おい!」

 

 巧はそう言ってヴェルフを置いてさっさとダンジョンに向かっていく。ヴェルフも急いで彼を追いかける。そして彼の横に追い付くと話しかける。

 

「今日はどうするんだ?」

「んー、13階層で君を鍛えるかな?『オーク』相手なら良い動きをしてたから、しばらくは技術の向上を狙うかな?」

「技術の向上だ?」

 

 話を聞いて首を傾げるヴェルフ。彼の顔を見ずに巧は頷き、話を続ける。

 

「うん。三日前、一緒に潜ったときの動きを見てたけど改善点がいくつかあるから、今日はそれを意識して動いてみて欲しいかなー」

「……マジで?」

「マジでー」

 

 驚いた顔で巧に聞き返してくるヴェルフ。巧はそんな彼を無視して話を続ける。

 

「やっぱり人ってさ、意識しないと無駄な動きが出るんだ。無駄のない動きを無意識や反射で出来るようになって初めて達人って言われるけど。でも、それでもまだ天辺じゃないんだから武術とかって面白いんだけどね?鍛冶もそうでしょ?終わりなんて来ない。生涯打ち続けてなんぼの世界じゃん。それと一緒。人生、常に高みを目指せー。目標は高く持った方が、より上に行けるよ。戦いも、鍛冶もね。人に限界なんてない。俺はそう信じてるからさ」

「…………………」

 

 ヴェルフは巧の言葉を聞いて押し黙ってしまう。

 そこまで話した彼は振り返ってヴェルフの顔を見つめる。

 

「ヴェルフは椿さんやヘファイストス様を超えようとか思わないの?」

「……思ってるさ。いつかは超えてみせるってな」

「じゃあ、早く【ランクアップ】して発展アビリティの『鍛冶』を取得しないとね。応援してるよ」

「……笑わないのか?」

「目標は高い方がいい、ってさっき言ったはずだけど?」

「……お前は、目標はあるのか?」

「あるよ?クソ恩師の顔面をぶん殴るっていう目標がね」

「………………………」

 

 巧の目標を聞いて唖然とするヴェルフ。

 

「……恩師なんだよな?」

「何万回と殺されかけてるけどね」

「……目標?」

「絶対いつか殺すっていう目標」

「………………………」

 

 再び唖然とするヴェルフ。巧はそんな彼の顔を見て笑うと、一言付け加える。

 

「でも、今はちょっと違うかな。ていうかその前段階の目標があるかな」

「……それは、なんなんだ?」

 

 ヴェルフの問いに心底楽しそうに笑いながら、巧は人指し指を天に向けながら答えを告げる。

 

「ここ、オラリオで天辺を取る」

「っ!?」

「【猛者(おうじゃ)】を超えて、頂点に昇り詰める。それが、今の目標」

 

 今は全然遠いけどね?と、巧は眉尻を下げて困ったような笑顔を浮かべる。そんな彼を見てヴェルフは自然と笑みが零れる。

 

「ほらほら!さっさと行くよ!」

「……おう!」

 

 巧が急かして、ヴェルフも先を行く彼を追いかける。そうしてダンジョンへと急ぐ二人。

 彼らのパーティはまだ、結成されたばかりである。

 

 

 




 なんかこれで原作前の話が終わりみたいな終わり方ですけど、あと四話ぐらいあります。

今日の巧メモ。
人として:主神であるヘスティアには最低限文化的な生活を送ってほしかった。実家は財団。
武人として:ヤバいよヤバいよ……二次関数的に強くなんなきゃ……。現目標、グリーンドラゴン討伐!将来的目標、天辺取るぞー!
研究者として:魔石器具バラしたい。

 皆さんは友人に実家を聞いて「俺の実家?財団の施設」とか返ってきたらどういう反応をするんでしょうね?少なくとも私は聞かなかったことにします。

 それと聞きたいんですけど、皆さんってヒロインとかって欲しいですか?活動報告にアンケートっぽい何かを作っておくので、良ければ覗いてください。
 …………………………なんか作品作るたびに悩んだ挙句聞いてる気がする。前作もそうだもんな。

以下クレジット。

「虚喰掌握」は”blackey”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」欄に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

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