ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか   作:猫屋敷の召使い

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第九話

 その夜、バイトから帰ってきたヘスティアによって巧は起こされて【ステイタス】の更新を行った。

 そして何故かいま、仁王立ちする彼女の目の前で正座をしている。相対している相手は違えど、既視感のある光景だ。

 

「それで?この『耐久』の異常な伸びは何かな?」

 

 彼女の手の中には更新した【ステイタス】を写した用紙があった。それを記された数値がよく見えるように巧へと突きつけている。

 

 

タクミ・カトウ

Lv.1

力:A812→SS1051

耐久:E427→A878

器用:SS1034→SSS1199

敏捷:SS1001→SSS1199

魔力:I0

 

 

 『耐久』だけで400オーバーの上昇。それ以外はいつもぐらいの上昇値、いや、昨日更新しなかっただけ少し多く感じる。それでも『耐久』だけは何かがあったとしか思えないほど異常な伸びだった。

 目の前の主神に汗をダラダラ垂れ流しながら、必死に思考を張り巡らせる。

 

「それは、そのー、ほら!きっとあれだよ!昨日更新しなかったから!」

「嘘だね。ボクは神様だよ」

 

 ヘスティアが巧の言葉を両断する。彼女の言葉にハッとした巧。

 

「……そ、そうだったぁ……!神様だった……!嘘が分かるんだったっけ……!?」

「そうだよ。だから今のが嘘じゃないってことも、分かるんだけどなぁ……!」

 

 すっかり神様だということを忘れていた巧。張り巡らせた思考が全てが泡になって消えてしまった。

 普通自分の主神を忘れることなどないのだが、彼女は身近過ぎて、馴染み過ぎて、巧の頭の片隅へと消えていたようだ。

 そのことに怒りで体を震わせるヘスティア。

 そんな彼女を前にした巧は、

 

「ごめんなさい」

 

 素直に謝ることにした。

 そして、『仮想組手』の説明をして、五一戦してどれだけの怪我をしたか話した。

 

「馬鹿なのかい?」

「これでも成績優秀の秀才―――」

「黙るんだ」

「はい」

 

 ヘスティアの神威の籠もった声に素直に従うしかなかった巧。そんな彼に声を荒げながら問い詰める。

 

「なんでこんなことをしたんだい!?」

「『耐久』の伸びが悪かったからです。『仮想組手』の相手の天野さんなら死なない程度で攻撃をやめてくれるから絶好の相手だと思って組手をしました」

「……わざと受けたのかい?」

「それはないです。ありえないことです。言語道断です。あれに対してはいつでも俺は全力です。でも、やっぱり勝てないんですよ」

 

 ヘスティアは驚愕した。

 彼の話を聞いた限りでは天野という人物は彼の恩師で、『神の恩恵(ファルナ)』を授かっていない一般人(巧は逸般人とか言っていたが)のはずだ。Lv.1とはいえ『耐久』以外カンスト間近の【ステイタス】を持つ彼が手も足も出ずに惨敗したというのだから。それも五一戦すべてだ。

 

「……君の恩師は恐ろしい人だね。いや、本当に人かい?」

「最近怪しく思ってる」

 

 アハハハ。と巧は笑っているがその目に光はなかった。

 

「もう怪我は治ってるし、傍にヴェルフもいた。各種ポーションもあったよ。流石に万全の態勢でやらないと怖くてできないよ」

「……気を付けるんだよ?」

「うん」

 

 ヘスティアの心配するような声に、安心させるような声音で返答する巧。

 

「あっ、それと明日から少し留守にするね?」

「えっ?」

「24階層で野宿してくる」

「はい?」

「じゃ、お休みー」

「ちょっとタクミ君!?」

「すぴー……すぴー……」

「ほ、本気で寝てるし……!……ハァ……」

 

 その後、ベッドで一緒に眠った二人。

 だが翌日。ヘスティアが起きる頃には巧の姿はなく、テーブルの上に『ダンジョン行ってきます!』と彼の似顔絵付きの置手紙があるだけだった。

 それを読んでプルプルと身体を震わせるヘスティア。そして次の瞬間には顔を天に向かって上げる。

 

「……タクミ君の馬鹿ァッ!!」

 

 彼女の叫びが近所に轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 巧はさらに二つ購入しておいたバックパックを今のバックパックに詰め、食料や薬などの買い物を済ませると高速で移動して24階層まで辿り着いた。目標は三つのバックパックを満杯にすることと、打倒『グリーンドラゴン』であった。

 最初は雑魚モンスターを相手にして身体を温める。

 『デッドリー・ホーネット』や『ガン・リベラル』、『ホブ・ゴブリン』といったモンスターは『臨界パンチ』や『テレポ遠当て』、『共振パンチ』で難なく処理できる。ただ『ダークファンガス』だけは毒胞子と体の軟らかさから『量子指弾』を倒れるまで撃ち続ける。倒すついでというように採取用の原料(アイテム)も集める。

 

「~~~♪もう十分かなぁ~♪」

 

 24階層に籠ってほぼ丸一日。食事は摂らずに水だけを飲んで、採取をはさみながらモンスターを狩り続けた巧。おかげで身体が温まり、よく動く。

 

「それじゃ、メインディッシュに行ってみよー!」

 

 徘徊している途中で見つけておいた宝石樹を守る木竜、『グリーンドラゴン』の下に向かう。そうして彼の竜が見える位置まで来ると、荷物を下ろして宝石樹に近付いていく。

 そのモンスターの姿は竜には見えなかった。翼はなく、四足で地を移動する。竜というよりは獣に近い風貌だ。しかし、その身体にはその身体を守るように竜の鱗があり、さらにその上から植物の蔓が守るように絡まっている。

 巧が近づいてくるのを見た瞬間、木竜は牙を剥き出しにして警告をしてくる。

 

 

『GURURURURU……』

「あは!戦意上等!『解放礼儀』」

 

 それを見た巧も歯を見せるように笑みを木竜へと向け、迷いなく近づいていく。それによって木竜は彼が帰ることは無いと悟り、威嚇をやめて樹の地面を力強く踏みしめ、眼前の敵を見据えた。

 木竜に見つめられた巧は落ち着きを保ったまま、開いた左手に握った右手を合わせて45度の礼を行う。木竜の方もそれが終わるのを待っているかのように、その場から一歩も動かなかった。

 巧が礼を終えて顔を上げると拳を握り構えを取ると、息を吸って木竜に向かって名乗る。

 

「個体名、加藤巧。アイテム番号、SCP-710-JP-J-EX。いざ尋常に、勝負!」

『GURUAAAAAAAAAaaaaaaaaaa!!』

 

 両者が同時に、地を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 巧と『グリーンドラゴン』が猛スピードで近づき、巧は左拳を突き出し、木竜は右爪を振り下ろす。

 拳と爪が、ぶつかる。

 

「『臨界パンチ』!」

『GUAa!?』

 

 ぶつかった瞬間、爆発が起きる。拳の原子核分裂によるものだ。それにより木竜の腕は弾かれるが、傷は見当たらなかった。本来ならば、原子構造ごと爆砕できるはずだが、できなかった。

 『ゴライアス』以来の全力のパンチ。あの時よりも【ステイタス】は上昇し、スキルの影響で多少なりとも威力が上がっているというのに、それでさえも傷つけることが叶わない眼前の敵に、口角が吊り上がるのを抑えることが出来なかった。

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

 

 笑い声も、抑えられなかった。それほどまでに今の彼は昂っているのだ。

 巧は声を上げながらも、すぐに距離を詰めようと素早く動くが、木竜の尻尾がそれを邪魔した。

 

「すうううぅぅぅぅ……『喰期玉』ァ!!」

 

 息を吸い込みながら体を仰け反らせ、口元にエネルギーを集中させて向かってくる尻尾に吐き出す。

 着弾し、弾けて衝撃波を生み出す。それを利用して距離を離す巧。『グリーンドラゴン』も様子を見るためか距離をとる。

 それを好機と見たのか、巧はある秘伝を使用した。

 

「『剛力・羅漢の構え』!」

 

 体細胞を活性化させる特殊な構えにより、使用者に獣の如き剛力をもたらす秘伝。巧はそれにより力を上げる。

 そして身体を大きく丸めながら、全身の体毛を逆立てて、地を蹴った。

 

「『鰒猫拳』!!」

 

 地面との電磁的反発力を生み出し、超高速で移動を始める。木竜も巧を迎撃するために体に絡まっている蔓から、多くの木片を飛ばしてくる。

 

「『確率論的回避』!」

 

 しかし、相手が飛び道具ならば避けようはある。巧は確率的に軌道を予測することで木片を回避する。

 

「『テレポ遠当て』!!」

 

 全ての木片を避けると木竜の顔面に攻撃する。

 木竜は離れているはずなのに、顔に衝撃が走ったことに驚いた様子だったが、すぐに気を引き締めて巧のことを見据える。

 それに巧は口角を上げながら、右拳を構える。

 

『GURURUAAAAAAaaaaaaaaa!!!』

「『共振パンチ』!!」

 

 再び拳と爪がぶつかり合う。

 だが、今度は木竜の爪の一本にヒビが入る。

 

『GURUAa!?』

 

 先ほどの接触で木竜の爪の共振周波数を理解した巧は、爪に対して共振現象を起こす周波数で殴りつけたのだ。

 その影響で爪にヒビが入って悲鳴を上げる木竜だが、即座にもう片方の爪を振りあげてくる。

 

「『共振脚衝』!!」

 

 だが巧は冷静に分析して先ほどと同様に共振現象を起こす蹴りを放つ。

 そちらの爪にもヒビが入る。

 しかし、今度は怯まずにそのまま振り切って巧に叩きつける。流石の巧もこれは予想しておらず、避けることはできそうになかったため、腕を交差させて防御する。

 

「ぐっ!?」

 

 木竜の体重の乗った一撃をまともに受けて吹き飛ばされる巧。しかし、そのまま地面に叩きつけられるといったことは無く、空中で体勢を整えると足を地面につけると滑るようにして着地する。

 そこへ着地を狙ったかのように木竜が身体に絡まっている蔓から木片を飛ばしてくる。

 

「おいおいおい!着地狩りは卑怯じゃねえか!?」

 

 木竜に文句を言う巧だが、その顔には笑みが浮かんでいる。

 

「『確率論的回避』!!」

 

 巧は再び確率的に軌道を予測することで木片を回避する。だが、通用しないということを理解したのか木片を飛ばしながら、巧へと突っ込んでくる木竜。それを見た巧は喜ぶ。

 

「いいねぇいいねぇいいねぇ、おい!!戦法を考えることが出来るとか、素晴らしいな!!?ただちょっと弾幕が薄いんじゃねぇのかぁ!?」

 

 楽しげな声を上げながら、巧は前進する。木片はかすり傷程度で済ませ、無理に体勢を崩さないように接近する。

 そして、木竜は両の爪で巧を切り裂こうとしてくる。巧も両拳を構えて迎撃態勢をとる。

 

『GURUAaa!!!』

「『臨界パンチ』!!!」

 

 それぞれがぶつかり、爆発が起こる。木竜は弾かれながらも、口を開いて牙で巧を噛み殺そうとしてくる。

 巧はそれを見て、笑みを浮かべながらも即座に息を吸い込む。

 

「『喰期玉』!」

 

 口元に集中させたエネルギーを、木竜の口に向かって破壊力を持った空気の塊を吐き出した。

 二人の間で再び衝撃波が起こり、両者がそれぞれの後方へと吹き飛んで距離を離す。

 

「『…………………………』」

 

 離れた両者はしばし睨み合い、互いに相手を観察する。

 木竜は先ほどの衝突でヒビが入っていた爪は折れ、地面に転がっていて断面からは微量ながら血を流している。牙も先の衝突でヒビが入っているもの、割れたものなどがあり、口元からも血を流していた。

 一方の巧は、木片の乱射によって受けた多くのかすり傷から血を流してはいるが、致命傷となりうるものはなかった。だが、手の骨にヒビが入っているのを痛みと経験から理解していた。それに肋骨も折れてはいないがヒビが入っているだろうことも。呼吸するたびに鈍痛が走る。

 両者、自身の状態、相手の状態をそれぞれ確認する。そのまま睨み合い、互いの出方を待つ。が、

 

「…………………………」

『…………………………』

「…………アハッ!やっぱ我慢できねえやッ!!」

『!?』

 

 巧は自身の内の闘争心を抑えきれずに、木竜に向かって前進する。

 その行動に木竜はその緑眼を見開くが、すぐに迎撃のために木片を無数に飛ばして正真正銘の『壁』を作る。

 

「そうだよそうだよそうだよ!!?これが最適な弾幕だ!!まさに壁!!穴一つ無い、相手を殺すための弾幕ッ!!!最ッ高ッだなァお前はァ!!!!」

 

 狂喜の叫びを上げながら『壁』に向かって進む巧。進みながら、左手を強く握る。

 

「『虚喰掌握』ゥ!!」

 

 自身の掌を握力で圧縮して重力崩壊を起こして引力場を作り出す。それにより、巧の左手に向かって木片が集中する。次々に飛来する木片は巧の左手を襲う。彼は左手を犠牲にして木竜を討とうとしているのだ。その成果として『壁』に穴が作られる。

 そして、そこに身体を通すことで巧は木片の壁を越えた。

 互いに眼前の敵から目を離さずに、一人は拳を強く握り、一体は爪を上に向ける。

 人は拳を振り下ろし、竜は爪を振り上げる。

 

「あああああああああああああああああああああッ!!」

『GURUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 両者の咆哮と共に三度、拳と爪が衝突する。

 

「『臨界ッ、パンチ』ィ!!!」

 

 ―――今までの比ではない、大爆発が起きた。ダンジョン全体を揺らすような激しい爆発。

 周囲に煙が立ち込め、両者の姿を隠す。

 やがて、煙が晴れていき結末が顕わになる。

 

『…………………………』

「ハァ……ハァ……アハハ……俺の、勝ち」

 

 息を切らしながら、目の前に倒れ伏す木竜を見下ろす。その身体を覆う蔓は表面が焦げ、片腕が半分ほど失われていた

 巧は左手から血をボタボタと地面に垂らし、その服や体は先の爆発で所々焦げている。眼前の対象が完全に息絶えたのを気配を探って確信する。

 本当は今すぐにでも地面に倒れ込んでこの勝利、というよりは戦闘の余韻に浸りたい。

 だが、今は浸らずに彼はすぐ木竜に近付くと、右手で腰のナイフを抜いて、身体に突き立てて魔石を取りだす。それにより木竜の死体は灰となって消えるが、さらにそこに残るものがあった。

 

「……グリーンドラゴンの爪、か」

 

 灰を漁って、その中に綺麗な緑色の爪が一本だけ残っていた。それを灰を掃いながら優しく拾い上げる巧。しばらくそれに目を奪われる。

 

「……うん。これは、記念品としてとっておこうかな」

 

 腰のポーチに魔石と爪を丁寧にしまうと、宝石樹に近寄って生っている宝石を次々と回収していく。それが終わると最初に置いた荷物に近付き、薬品を入れてあるポーチを取りだす。その中の一本を取りだすが、そこで別のものが目に入る。

 万能薬(エリクサー)。最高品質の物は一本あたり五〇万ヴァリスもする代物だ。だが、その分効果は絶大だ。

 偶々目についたそれを持ち上げる巧。

 

「……飲んでみようか。効果も気になるし」

 

 左手に刺さっている木片を全て抜き去り、エリクサーを飲み干す。急速に傷が治っていくのを感じながら地面に座り込んでバックパックに背を預ける。

 

「……あぁー、楽しかったなぁー……」

 

 巧の表情は、実に満ち足りたものだった。彼はしばらく、その場で余韻に浸るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 魔石、ドロップアイテム、収集品の詰まったバックパック三つを塔のように積み上げて、地上へと帰還してきた巧。周囲から奇異の視線を向けられるが、気にした様子もなく満面の笑みでギルド本部に向かう道を歩いていく。

 ギルド本部に着くと塔のままでは入れないので、背負っていたバックパックを前に一つ、背中に一つ、その二つの上に一つ載せて入る。

 

『……なんだあれ?バックパックのモンスターか?』

『さあ?すごい力持ちのサポーターかもしれないわよ?』

『……いや、待て。アレってバカ騒ぎ(トラブルメイカー)じゃねえか?』

『『……マジで?』』

「換金お願いしまーす!」

『『マジだったわ』』

 

 ギルドの中にいた冒険者たちがバックパックに隠れて見えない巧を見て驚く。その声を無視して換金所スペースへと人にぶつかることなく、すいすいと進んでいく。

 換金所の前まで来ると正面に持っていたバックパックを下ろして、受付にいる男性に渡す。

 

「これまた随分と持って来たな……」

「頑張った!」

「査定しとくから、エイナのところにでも行って時間潰しとけ」

「はーい!」

 

 たたたたーっ、とエイナのいる受付まで走っていく巧。それを見送った男性は職員数人がかりで彼の持って来たバックパックを奥へと運んでいった。

 彼は自身の担当アドバイザーがいる受付が近づくと、腰のポーチを漁る。

 

「エイナー!」

「あれ、タクミ君。久しぶり。今日はどうし―――」

「『グリーンドラゴン』倒せたよー!」

「ぶっ!?」

「見て見てー!魔石と爪ー!」

 

 腰のポーチから出した魔石と爪を彼女に見せる巧。しかしエイナは巧から聞いた内容に驚いて噴き出し、むせてしまっている。

 そんな彼女を見て、首を傾げながら心配になって声をかける。

 

「ゲホッ!?ゴホッ!?」

「……大丈夫ー?」

「ゴホン!……え、ええ……もう大丈夫よ……ちょっと面談ボックス行きましょうか」

「はーい!」

 

 巧は上機嫌にエイナについて行って面談ボックスの中に入る。中にある椅子にお互いが座ると、エイナの方から話を切り出す。

 

「……それで?」

「グリーンドラゴン倒したよ!」

「ええ。そうみたいね……」

「すごーい楽しかった!あんなに戦闘中に戦略を考えてくる敵って今までいなかったもん!下層や深層とかはああいう敵ばっかなの!?」

「……戦略?」

「うん!木片を飛ばしてくる攻撃だけでも十分なのに、突進しながらや量を増やして壁みたいな弾幕を張るんだもん!驚いた!」

「……ごめん。タクミ君。その話詳しく話してくれる?」

「いいよー!」

 

 未だ気分が高揚している巧はエイナの申し出に喜んで応じた。

 それからしばらく木竜との戦闘について話をする。エイナはそれを聞き終えると頭を捻る。

 

「普通、そこまで急に戦い方を変えられるグリーンドラゴンは聞かないわ」

「……?じゃあ、どういうこと?」

「……考えられるのは潜在能力(ポテンシャル)が完璧に引き出された個体っていうところかしら。もしくは強化種かしら」

「えぇー!?じゃあまた出会ってもあそこまで強くないのー!?」

「その可能性はあるわ」

「つまんないのぉー!」

 

 口を尖らせて机の上に顎を乗っける巧。それを見てエイナは眉尻を下げて困ったような表情を浮かべるも、口元は笑っていた。

 

「ほら、そんな顔しないの。倒したんだからもう下に行ってもいいのよ?君の眼は信頼してるけど、無理はしない程度にしてね」

「うん。37階層の『白宮殿(ホワイトパレス)』が気になるからそこに行ってみる。それより下は、ちょっとやめとく」

「……?どうして?タクミ君の性格ならどんどん下に行きそうなのに。それとも実力が足りてないの?」

「ううん。40階層までは行けると思う。でもなんか、さらに下から嫌な感じがする。だから安全策をとって37階層に留めとくつもり」

「……何かあったの?」

「まあ、そうかな……。少し前、半月ぐらい前かな?冒険者を三人助けたんだけどさ」

「―――ちょっと待って?その話、私聞いてないわよ?」

「言ってないもん。なんか、根っこが深い気がして。それに街中だったし」

 

 そういって巧は半月ほど前に三人の冒険者を街中で助けた時のことを思い出していた。いや、正確には助けようとしたときのことだ。

 街中の寂れた場所で赤髪の女性が冒険者の首を折ろうとしていたのを、巧ははっきりと覚えている。

 なぜ殺されそうだったのか。それは分からないが、目の前で殺されそうな人たちを『人』として放っておけるわけがなかった。たとえ、勝てる見込みがゼロだったとしても。

 巧はその時は『天殺・認識災害の構え』と『量子歩法』のおかげ、それと『豊饒の女主人』という酒場に逃げ込んだことで難を逃れたが、片腕を砕かれていた。首を狙われて腕で守ったのだが、その腕ごと首を折られかけたのだが、何とか接触面を原子核分裂させて爆発させたことで、距離を取り逃げ出したのだ。

 だが、残念ながら助けた三人の冒険者はその後、首の骨が折られて殺されているのが発見されたが。

 

「その時も死ぬかもって思ったんだけど、なーんかそれと似た感じがするんだ。だから、まだ行かない」

「……そう」

「近々、深層かな?40階層以降に潜る予定がある人に注意しといた方がいいかも?なんか、やばい気がする」

 

 それは巧の『武人』としての勘だった。少なくとも行けば死ぬのは確定だった。40階層より下にはまだ行きたくはなかった。その感覚がより強くなり、体の動きが鈍ってしまう。

 どこかは分からないが、普通ではないことが起きているのは確かだった。

 

「ただの気のせいなら、良いんだけどねー」

 

 そう願うかのように言葉を溢す巧。そんな彼を見て不安を覚えざるを得ないエイナ。

 

(それにあの場で拾った、ポーチに入っている奇妙な魔石の欠片も何なのか気になるんだけどなー……)

 

 ポーチに入っている極彩色の魔石の欠片。明らかに普通の魔石とは異なる奇妙な魔石。これが一体何なのか。巧はこれに『研究者』として、好奇心を揺さぶられてしまっていた。

 




 半月ぐらい前の巧メモ。
人として:ヤベ!?あの人たち殺されそうやん!ちょっと助けたろ!……え、ちょ、無理……。
武人として:赤髪の女、許すまじ。
研究者として:なんやろこの変な魔石。ちょっとパクらせてもらうか。

 今日の巧メモ。
人として:平和なのはいいこと。
武人として:グリーンドラゴン楽しかった。また遊びたいなー。
研究者として:エリクサー、べーわ。それとなんでダンジョン内に『白宮殿』なんて呼ばれる構造があるんやろ?ちょっくら行って観察してみよか。

 今話の作者メモ。
戦闘描写キッツ。分かりやすく書けてるか不安やわ。

 ちなみにグリーンドラゴンさんは、モンハンのジンオウガに樹の蔓を絡ませたイメージです。果たして本当にそれがグリーンドラゴンだったのかはご想像にお任せします。

 それとヒロインアンケートもどき一先ず終了。
 そして、ここから本投票?に移りたいと思います!

現状

ヘスティア:2票
アイズ:1票
リリ:1票
ティオナ:1票
レフィーヤ:1票

です。

 活動報告の方にアンケートを掲示しておきます。詳細はそちらでご確認ください!
 良ければ覗いて、ご投票いただけると幸いです。

 以下クレジットであります。

「臨界パンチ」は”sakagami”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

「テレポ遠当て」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j

「共振パンチ」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j

「量子指弾」は”sakagami”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

「解放礼儀」は”aisurakuto”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」欄に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

「喰期玉」は”aisurakuto”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」欄に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

「剛力・羅漢の構え」は”blackey”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」欄に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

「鰒猫拳」は”sakagami”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

「確率論的回避」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j

「共振脚衝」は”Indigolith”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」欄に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken

「虚喰掌握」は”blackey”作「INTRODUCTION OF 財団神拳」の「新たな奥義」欄に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/sakagami006-portal-of-foundation-shinken
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