さらば変人!   作:ローリング・ビートル

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第10話

「じゃあ、さっきの女の子とは何もないの?」

「はい。神に誓って」

「うん…………わかった!弟君を信じる!」

 

 我ながら綺麗な姿勢で正座して、懇切丁寧な説明をすること1時間。ようやく姉さんは信じてくれた。姉さんのジト目は可愛らしく、割と好きなのだが、如何せん背後に漂うオーラが恐ろしい。姉さんが家に来た当初、着替え中なのに、ノックもせずにドアを開けたときも、こんな感じだった。あの時は……

 

「やっぱり顔が変な事考えてる時の顔だ……」

「ち、違うって!」

「本当に?」

「そ、それより、はやくここから出ようよ。なんか恥ずかしいし……」

 

 さっきから、小さな子供達がたまに覗きに来て、おままごとだとか、夫婦喧嘩だとか、からかってくるのがかなり辛い。いや、悪い気分はそこまでしないのだが。

 しかし、怒りが収まった姉さんはぼんやりと何かを懐かしむような表情で、ぼんやりとした暗い天井を見つめていた。

 

「なんか懐かしいな……」

 

 あれ?本当に懐かしんでいるようだ。

 暗がりの中に僅かに見える小さな微笑みに、とくんと胸が高鳴る。

 もしかして、何か素敵な思い出があるのだろうか……例えば、こんな遊具の中で……

 

 

『あたゆ君、おとなになったら、わたしがおよめさんになってあげる』

『う、うん……わかったよ。……ちゃん』

 頬に触れた少女の唇の感触に、すごく顔が熱くなった。手足は自分でもわからない感情に震えていた。

 

 ……まあ、こんな思い出ないんだけど。

 

「小さい頃ね。私も男の子達に混じって、こんな遊具の中で、秘密基地ごっこしてたんだよ」

「そうなんだ。意外」

「ふふっ。結構ヤンチャしてたんだよ。他には男の子達に混じって、よくスカートめくりとかしてたよ!」

「いや、それはおかしいような……」

「この前も月乃ちゃんにやってみたんだけど、ものすごく怒られちゃった……」

「二人の不仲の理由が明らかに!!」

「う~ん、料理中だったからかな?」

「いや、いつやっても不機嫌になるから止めようか」

「じゃあ、弟君がしてあげれば……」

「論外だ!」

「そっかぁ。まだ月乃ちゃんと仲良くなる為の道のりは険しいんだね」

「自分から険しくしてる気が……」

「そうかなぁ。スキンシップは大事だと思うけどなぁ」

 

 姉さんはふわふわの髪を指で弄りながら、残念そうにぼやく。

 俺に対しても、最初はそんな感じだったっけ。

 遠慮なく背後から抱きつかれたり、ソファで寄りかかってきたりとか。最初はこれなんてエロゲ?なんて考えたりもした。頼み込んだら、ようやく止めてくれたけど。さすがに自分が抑えられなくなるかもしれなかった。

 しかし、やっぱり……

 

「弟君、行こ♪」

 

 いつの間にか外に出ていた姉さんが手招きをしてくる。

 

「はいはい」

 

 膨らんだ妄想を、自ら萎めながら、俺はよたよたと外へ這い出た。

 姉さんの隣に並ぶと、春の温かさに溶け合うような淡い香りが鼻腔をくすぐってきた。そんなに年も違わないのに、そこには彼女を大人と周りに納得させるような何かがあった。

 

「おい、俺を忘れんなよ」

 

 ちっ。せっかく忘れかけてたのに。

 お祓いは明日にしておくか。もう面倒くさいし。

 こいつがいても面倒くさいけど。

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