「あーくん、おはよー!!」
「やめい。文章だけじゃわかりづらいんだから」
「てへっ!」
「うぜえ!」
「何だよ。テンション上げてやろうと、年下の幼馴染みを演じてやったのに」
「文字だけ見ればそう見えるが、俺からしたら、オッサンの猫なで声聞かされる苦痛な時間でしかないんだよ。てか、何でいちいち萌えに詳しいんだよ」
「さあな。生前はラノベ作家だったのかもしれん」
「どんな偏見だよ。ただのオタクじゃねーの?」
何だかんだぺちゃくちゃ喋りながら歩いている自分が恨めしい。意外な適応能力に驚きを隠せません。案外このままでもいいんじゃなかろうか。いや、よくない。
「ママー。あのお兄ちゃん、今日も一人でたのしそうだよー」
「しっ。見ちゃダメって言ってるでしょ!」
……やっぱり早く除霊せねば。このままではご近所さんからの評判に関わる。
そんな事を考えながら、角を曲がろうとしたら……
「きゃっ!」
「っ!」
誰かが思いきりぶつかってきた。
前も似たような事があったような……。
慌てて前を向くと、そこには女子中学生がいた。何故中学生だとわかったかというと、その女子が来ている制服が、2年前に俺が通っていた中学校のものだからだ。
まあ、ぶつかってきたのは向こうだが、倒れた女子を放っておけるほど、男を捨ててはいない。とりあえず声をかけることにした。
「いたた……何ですか?もう……」
「わ、悪い……?」
つい語尾に疑問符がついてしまった。
理由その一。その女子は口に咥えていたであろう食パンを、お腹の辺りに落としていた。
理由その二。尻餅をついた女子の淡い緑色の下着が丸見えになっている。
理由その三。そんな恋愛シミュレーションゲームの一場面をくり抜いたような出来事が起こった。
「お、お前……やるじゃねえか。こんなシチュエーション中々ねえぞ。おい」
オッサンが心底羨ましそうに呟く。うん、心底どうでもいい。
痛みが少しは治まったのか、少女は自分の態勢に気づくと、慌ててスカートで隠した。
それと同時に、こちらをジト目で睨みつける。またテンプレ発動か。
「あの……一応、聞いておきますけど……み、見ました?」
「え?えーと、あ、安心してください。履いてましたよ?」
「当たり前ですっ!!てゆーか、見たんですね!?見たんですよね!?」
少女の怒りの叫びが、朝の静かな街並みの空気をビリビリ揺らす……上手い切り返しだと思ったんだが。
次なるトラブルの予感に、俺は内心で溜息を吐いた。