さらば変人!   作:ローリング・ビートル

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第16話

「弟君?昨日に引き続き、何をやっているのかな?お姉ちゃんはすごく心配なんだけど」

「いや、これは……今、絶賛痴女に襲われ中で……」

「なっ!?何を言うのですか、この変態!」

「ふふふ……この態勢でどちらの言うことが真実に聞こえるかな?」

「くっ……」

 

 謎の美少女は、俺からぱっと飛び退いた。

 今だ。

 俺はその場から一目散に逃げ出した。

 

「あっ!」

「弟君!?」

「じゃあ、また後で!」

「逃げて大丈夫なのか?」

「義姉さんへの上手い説明が思いつかない!」

 

 時間が経てば多分忘れてくれるだろう。

 そんな希望的観測を抱きながら、俺は学校への道のりをただただ駆け抜けた。

 

 *******

 

「ふぅ……」

 

 何とか遅刻は免れた。

 義姉さんと謎の美少女をあの場に残してきたのは心残りだが、あの状況を姉さんに上手く説明できる自信がない……いや、これはこれで自分自身で傷口を広げた気がする。今の内に言い訳を考えておかないと。

 息が整ったところで、オッサンが話しかけてくる。

 

「お前、どうしたんだよ。モテキか?これから沢山の美少女と出会っちゃうのか?」

「俺もそんな気がしてきた」

 

 朝から変態扱いされたとはいえ、あんな美少女と(二次元において)ベタな出会い方をするなんて思いもしなかった。

 昨日から、美少女に縁があるようだ。どうやら……ついに俺にも恋が攻めてきたか。

 多分、この後さっきの美少女が転校生として……いや、あの子は中学生か。いや、待て。もしかしたら、俺が落とした生徒手帳を届けに来てくれるとか。

 俺は胸ポケットを調べる。

 生徒手帳はしっかり入っていた。

 

「お前、やっぱりバカだろ」

「別に。なんも期待してねーし」

「…………」

 

 しまった。

 普通にオッサンと会話していたら、前の席の女子が不審そうな目をこっちに向けてきている。

 これといった特徴のない眼鏡。そのレンズの向こう側の、怯えたような目。肩にかかるくらいの、少し癖のある黒髪。派手さはないが、上品に整った顔立ち。見覚えはないので、今年から同じクラスになった女子だろう。

 ……やっちまった。ちなみにオッサンは床に寝そべり、ゲラゲラ笑っている。

 内心テンパっている俺から、彼女は何故か目を逸らそうともしない。……お願いだから、そんな怯えたような目を向けないで欲しいんだけど。

 

「…………ぃ」

「はい?」

 

 彼女の口から何か声が漏れた気がしたので聞き返す。ほのかに赤い小さな唇は小さく動いていた。

 しかし、彼女はさっと前を向き、何事もなかったかのように読書を始めた。

 

「けけけ、ふられてやんの」

「…………」

 

 とりあえずこいつは無視で。

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