朝っぱらから労働とはついていないが、梛ノ宮先生と並んで歩きながら会話するチャンスができたのはなんかラッキーな感じだ。思春期男子たるものこういう潤いのあるイベントがなければいけない。
「けっ、ガキが調子のんな。そんな美人相手にフラグなんて立たねえからな」
「やかましいわ!」
「え、何?どうかしたの?」
「あ、いえ、何でも」
くっ、会話の途中に割り込まれると、ついついツッコんでしまう。仕方なく頭をフル回転させ、言い訳を搾り出した。
「いや、ほら、そこに幽霊が」
「き、君は霊感があるの?どこぞの不思議少女みたいに」
「違います。てか、つい長話してしまいそうになりますが、このままだと1時限目に間に合わなくなります」
「それもそうね」
そのあとは先生から頼まれた用事を済ませ、さっさと授業の準備をした。
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「あ」
「…………」
昼休み。
廊下を歩いていると、昨日のクール系女子とばったり出くわした。昨日と同じ、何物にも動じないような立ち振る舞いで、彼女の表情にはなんの変化も見られなかった。
「お、おう……」
「…………」
挨拶代わりに右手を小さく挙げたが、彼女は無視して、俺の隣をスタスタと通りすぎていった。
「…………」
無視の手本ともいえるくらい華麗な無視だった。こちらを見向きもしない。興味も持たない。まるでその辺の柱にでもなった気分だ。これは思春期男子のヤワなハートには……辛い!たまらなく辛い!
さらに最悪なのが、近くにいた女子二人組にその光景を見られていたことだ。
「「…………」」
「…………」
顔見知りでもない女子二人はこちらから気まずそうに目を逸らし、すれ違っていく。
……あのクソ女。
昼休みにいらんダメージを受けてしまったやるせなさは、放課後まで引きずる事になった。
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あっという間に放課後が訪れ、今日は部活もないので、さっそく神社に向かうことにする。案外、十円玉を賽銭箱に放ればオッサンがあっさりと成仏するかもしれないという期待を抱きながら。
「これで上手くいかなかったら笑えるよな」
「黙れ。必ず成仏させてやる。そんで平和な日常を取り戻すんだよ」
「いや、そんな実害は出してなくね?」
「オッサンの悪霊が取り憑いてるだけで既に有害だ」
「そりゃ間違いなく正論だな。何も言い返せねぇ」
オッサンと今日で最後になって欲しいくだらないやり取りをしながら下駄箱まで行き、靴を履こうとしていると、背後から聞き覚えのある声をかけられた。
「ちょっといいかしら?」