「ようやくお前から解放されるのかー。いやぁ、長かったぜー。やっと自由だわー」
「どっちも俺のセリフだ。つーか、取り憑いて来たのはそっちだろうが」
クソくだらないやり取りをしながら、神社までの道のりを歩く。正直、お祓いの手順とかはあまり知らない。……小遣い足りるかなぁ?十円ぐらいのお賽銭で、このオッサン成仏しないかなぁ?てか、それで解決するのかどうかも定かではない。
「あなた、憑いてるわね」
「なあ、やっぱり金が勿体ないから、ゲームの呪文とかで消えてくれよ。ABBA右右左とか5656とか……」
「お前、とんでもねぇこと言うな……俺が実はものすげえ神様とかだったらどうする気だよ。お前は今、幸運を逃そうとしてるんだぞ?」
「断言してやる。それはない。あってたまるか」
「ねえ、ちょっと……」
「このクソガキ、後で……いや、今すぐ吠え面かかせてやる」
「上等だ。今すぐそこの神社のグラマーな巫女さんに地獄に送り返してもらおう」
「さり気なく願望を滲ませてんじゃねえよ。そんなの現実にいるわけねえだろ」
「いや、神様ならそのぐらいのささやかな願い叶えてみろよ」
「揚げ足とんな。できるなら天罰与えてるよ」
「ねえ」
「うわっ!」
「ひいっ!」
目の前にいきなり人が現れ、思わず飛び退いてしまう。てゆーか、この自称・神様。幽霊のくせに一般人相手に飛び退いたぞ。
オッサンにツッコむのに夢中になって、声をかけられていたことに気がつかなかった……ということは端から見れば、俺は独り言でヒートアップしている頭のおかしな奴に見られたのか。最悪だな。しかも同じ学校みたいだし。
嘉見学園の制服を身に着けたその女子は、腰まで届くくらいの長い赤みがかった黒髪をさらさらと風に靡かせ、腕を組んで仁王立ちしていた。勝ち気そうな鋭い顔立ちのせいもあるかもしれないが、機嫌が悪そうなのが見てとれる。それと、どっかで会ったような……。
「無視しないでくれる?」
「あ、はい……てか、何?」
割と近い距離で鋭い目つきで見据えられ、内心少しだけビビってしまう。うちの妹の怒った時を思い出したからだろうか。短気な女子は苦手だ。うっかり着替えてる時にドアを開けると、あいつ凄く怒るんだぜ?別に、幼稚園の時から見慣れてるっての。
まあそれはさておき、その名前も知らない女子は何の遠慮もなく、さらに距離を詰め、動けないでいる俺の肩に手を置き、小さいけどよく通る声で囁いた。
「……あなた、憑いてるわね」