やがて至る一刀   作:Koy

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どうしても

どうしても……

どうしても…………!

(配点:It's Moming)


地に足をつく

 

『武蔵が午後12時32分。三河陸港に到着したことをお知らせ致します――――――以上』

 

響くアナウンスとほぼ同時に伝わる僅かな振動。

それもすぐに収まり、武蔵は着港した。

 

三河。

自由を奪われた極東が、唯一自治を認められた土地。

武蔵と違い、警護隊と呼ばれる武装を許された部隊も存在する。

しかし。武蔵と三河は接触を禁じられている上、周りは聖連の監視が付きまとう。

自治が許されていても、完全な自由などは認められていないのだ。

理由としては、叛乱を恐れてのことだろう。

 

とはいえ。

大半の武蔵・三河住人にとってはそんなこと知らんといった風で、変わらない日々を過ごしている。

 

武蔵アリアダスト教導院の生徒たちも同じだ。

先ほどまで授業をしていた彼等も、午後からは解放され家や寮に帰る者や、バイトなどに勤しむものもいる。

そんな中。教導院橋前にて、一つの集団があった。

三年梅組の面々だ。

 

「……はい。さて。今日の総長連合会議の議題は「葵君の告白を如何にして成功させるか」というものです――――――うん。失敗以外の未来が見えないから今日はもうこれで解散にしようか皆」

「おいおいおいおいコラコラコラコラ! オメェ他人の一世一代のコクりイベントをそんなぞんざいに扱うとか人間じゃねえな!? あっ、コラ次々帰り支度始めるんじゃありません! 脱ぎ散らかすぞ! オメェらの部屋で!!」

 

最悪の脅迫である。

武蔵住人ならば彼の全裸は正直見飽きているので何を今更な感じではあるが、流石に自室に乗り込まれて脱ぎ散らかされては嫌悪と殺意が膨れ上がりそうで怖い。主に目の前の武蔵のトップを肉塊に変える的な意味で。あと確実にコイツはやる。間違いなく。

 

全員が本気の帰り支度を一旦止めて、話を聞く。

 

「じゃあ改めて聞くけど。葵君。君は何かプランはあるのかい?」

「それがないんだなーこれが」

「考えて喋れ!!」

 

総ツッコミを受けるもにへらと笑う。

 

「あ、そーだ。じゃあここは経験豊富なテンゾーから意見貰うってのでどうよ」

「じ、自分で御座るか……?」

「そうだよ。オメェ数は一応こなしてるじゃん? 別にノルマあるわけでもねえのになあ――――――ついでにモテるわけでもねえのに」

「こ、この数秒でこの御仁。自分のことを完全否定したで御座るよ……! あと! 別にノルマでもなんでもなく! ただ純粋に自分の気持ちに従って行動しているだけで御座るよ!」

「でもそれで成功確率0だろ?」

他人(ひと)に聞いておいてその言い草とは……!」

 

いいからと周りも促す。

帽子を被りマフラーを巻いた少年、点蔵・クロスユナイトは懐から手帳と筆を取り出す。

 

「一先ず。告白する前にここに自分の想いを書き綴ってみる、というのはどうで御座ろうか」

「俺知ってるぜ! それ恋文(ラブレター)って奴だろ?」

「Jud. こうすることで本番の緊張を和らげ。尚且つ。いざ告白という段階になって噛むこともなくなるというもので御座る」

 

頷きながら点蔵は語る。

トーリもそれに頷く。

 

「でもそれオメェの失敗談だろ? じゃダメじゃねえか!」

「本当に最悪で御座るな貴殿!?」

「そもそも点蔵に聞いたのが間違いなのではないかトーリよ」

「ウッキー殿まで!? くっ、味方と思っていた人物に背後から刺されるとは……!」

 

味方になり得る人物がいないのに援軍を期待するのは間違っているのではないかと全員が思う。

と、トーリの背後からウェーブのかかった茶髪を揺らしながら姉の喜美が近づく。

 

「まあダメ忍者がモテないのは今に始まったことじゃないとして。とりあえず愚弟? 貴方が思う彼女のいい部分をポエム調で書くのよ? ――――――そしてこの場で朗読しなさい! 青空の下でポエムを読むなんて素敵に痺れて悶えなさい! 通神帯(ネット)できっと晒されるわ! スレタイは『【速報】全裸でポエム朗読! 遂に末世来る!【いつも通り】』で決まりね! 素敵!!」

「おいおい姉ちゃん! 俺優しいからあんま直接的なこと言わねえけど頭可笑しいぜ! あとなんで俺が全裸確定なんだ? いつも脱いでるわけじゃねえよ! 今日はまだ一回だけだぜ! ――――――後でまた脱ぐからそのときな!」

「常識で喋れ!!」

 

軽く犯罪予告である。罪状は猥褻物陳列罪辺りが妥当かとも思うが、よくよく考えるとコイツが全裸で捕まったことなど一度も無かった気がする。いやあったか? あったとしても番屋も現行犯か、誰かに呼ばれない限りは避けていた気がする。誰だって面倒は嫌なものである。後で通報しておこう。

 

トーリは、んー? と考える。

 

「……でもよー。やっぱ好きっていうのはそのー、なんつーかさ。感情の働きって奴じゃん? 上手く言葉に出来っかな?」

 

そういいつつ。手帳に次々と書いていく。

 

『顔がヤバイくらい好み』

『しゃがんだときインナーがパンツみたいで超興奮する』

『腰から尻にかけてのラインがエロくてたまらない』

『オッパイは 揉んでみないと 分からない』

 

「……あれ? 結構書けるじゃん。もしかして俺、表現力ありまくりじゃね!?」

「即物的なだけだ!!」

「というか最後。何を自然に一句詠んでいる」

 

ああ!? とトーリは全員を見渡す。

 

「オメエらだって気になるだろう!? 相手のオパーイのこととか! 点蔵だって巨乳好きだろうが!!」

「自分はただの巨乳には興味ないで御座る! 自分が求むは金・髪・巨乳! で、御座るよ!!」

「オメエそれだとナイトが当て嵌まるんじゃね?」

 

え、と点蔵が思わずそちらを見る。

それと同時に眼球に強烈な痛みを感じた。

硬貨弾だ。

 

「目がぁ! 目があああああああっ!」

「サイテー」

「ひ、人に硬貨弾ぶち当てておいてその言い草で御座るか!? あと自分! そういう目で見たことは――――――」

「無いって言ったらネタにした後殺す。有るって言ったら殺した後ネタにする」

「どちらを選んでも行き着く先は紙の上と土の下!? 援護! 援護を要求するで御座るよ!」

 

一斉に全員を目を逸らす。

やはりここぞというとき頼れるのは己自身ということか……! ある種の真理に到達している点蔵。

と、橋の向こう。昇降口の方から誰かがやってきた。

 

「おおっ、朝臣殿! 多勢に無勢故、加勢を求むで御座るよ!」

「やだ」

「か、考えて御座らんな!? 最早条件反射で拒否られる……!」

 

この面子を見てお前に加勢する奴が一人でもいるのかよ。

点蔵。地に膝をつく。

トーリは朝臣の姿を確認するとひらひらと手を振る。

 

「おー朝臣オメェ何処行ってたんだよ」

「あ? さっきまで教室の壁の補修してたんだよ。テメェの開けた大穴のな」

「ああ!? 開けたの俺じゃねえよ先生だよ!!」

 

どの道お前が原因だろうが。不機嫌そうに朝臣は言いながらトーリを見る。

 

「あれ? 朝臣君って建築系の技能持ってたっけ?」

「無い。が、何故かコイツがやらかした破損物の修復を頼まれたりすることが多くてな。おかげさまで。付きたくも無い技能までついちまったよ」

「ってことは俺朝臣の成長に一役買ってね? やったな朝臣、感謝しろよ俺に!」

「俺解体(バラし)のテクは得意でな。作ることを仕事にしてるからよ」

「お、オメェいきなり脅迫に入るとか人間として最低だぞ!!」

「常に最低値割ってるテメェが言えた義理か」

 

溜息を一つつくと、橋に寄りかかり程よく脱力する。

 

「つーかここで何やってるんだよ。大方、〝品川〟で言っていた告白の件だろうけどよ」

「さっすがだぜ朝臣! 実は点蔵から恋文作戦提示されたんだけどよ。とりあえずこんなん書いてみた」

 

そういって朝臣に先ほどの手帳の内容を見せる。

 

「…………おいこれまさかそのまま伝える気じゃないだろうな。ソッコーで顎にお返事のアッパー入るぞお前」

「え、それってOKの合図ってことか!?」

O(おまえ)K(をころす)

「お、オイ。今ちょっと軽く想像出来てヒヤっとしたぞ……!」

 

当たり前だろう。

やれやれと言った風に手帳で肩を叩く。

 

「だって相手。ホライゾンだろ」

 

その名を告げると、騒がしい周囲が一瞬静かになる。

トーリは相変わらず軽く笑っている。

 

「ホライゾン。いつもお前に対しては超セメント対応だったろ」

「んー。まあボケには厳しかったよなあ……」

 

そういって頭を掻く。

 

ホライゾン・アリアダスト。

この武蔵において。特別な意味を持つ少女の名。

しかし。彼女はもう此処にはいない。

十年前。ある事故によりこの世を去った。

 

トーリは、そんな少女に告白をするという。

 

「……聞いておくが。お前。告白して、その後どうする気だよ」

「ん、んー…………」

 

朝臣に問われ、悩むように唸るトーリ。

次第に動き始め、くねくねと気持ちの悪い動きに変じた。

口に指を当て片目を閉じながら。

 

「……ヒ・ミ・ツ?」

 

お前は女かとツッコミたくなる。

だが朝臣は小さく息を吐くだけで、手帳をトーリに渡す。

 

「まあ絶対碌でもないことだろうけど。告白すんなら真面目にやれよ。こっちが真剣なら、向こうも真剣に返してくれるだろうよ」

「おいおい。ボケが入らねえようなアドバイスするなよ――――脱ぐぞ!?」

「どんな脅しだ!!」

 

本当だよ。

くねくねと動きながらくるくると回り始める馬鹿。

どうせ何を言っても聞かないだろう。

 

「おっ。皆集まってどうしたの」

「というか。往来の邪魔とか考えませんの?」

 

再び。トーリの告白の件について考えようとしていたとき、橋の向こうから二人の人物がやってきた。

学長の酒井・忠次と、同じ梅組のクラスメイト。ネイト・ミトツダイラだ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「あー。やっぱお前さんもそう思うんだ」

 

忠次はそう言いながら空を見る。

 

トーリの言うホライゾン。

その、件の少女によく似た雰囲気の自動人形が、武蔵にはいる。

梅組の生徒なら一度は出会ったことがある。そして、ほぼ全員がホライゾンの面影を感じていた。

トーリはその自動人形に明日、告白をするというのだ。

 

忠次はトーリを見る。

 

「けどお前さん。他人の空似ってこともあるんじゃあないの?」

 

かもなあ。トーリは気楽に話す。

 

「ただそれでも……何も出来ねえ俺だけど。一緒にいてくれねえかなー、って思ってさ」

「何時思ったよ、それ」

「今朝だよ――――十年前のこの頃に、ホライゾンがいなくなったんだなって考えたらさ」

 

自然とそう思えていた。トーリはそう語る。

忠次は穏やかにそうかと返す。

 

「まあ頑張りなよ。俺はこれから三河に降りるから」

「よく許可降りたなあ」

「まあね。昔の仲間からの酒飲みの誘いさ。酒呑んだらすぐに帰るさ」

 

そういって一歩踏み出し、ああそうだと朝臣を見る。

 

「朝臣。お前さんも連れてくるように言われてたんだよ」

「はっ? 俺? 何でです?」

「んー……正確にはお前さんの爺さんからなんだよね。呼びかけ」

 

忠次がそういうと、朝臣は若干顔を顰める。

 

「まあそんな嫌そうな顔すんなって」

「嫌そうってか。嫌なんですがねえ……苦手なんスよ。ウチのジジイは」

 

まあまあと忠次は言う。

 

「…………Jud. まあ断ると後々ネチっこく言われそうなんで行きますよ」

「あっ、セージュンと行くんならさ! 夜八時にここで騒ぐから来ないか聞いてきてくれてね?」

 

あいよと、手を振り了承する。

ふと、トーリを見る。

 

「おっ? どしたよ――――――まさか、これを機に俺に告白を!?」

 

一回強く地面を踏みつける。

そうするだけでトーリは己の股間を守るように手で覆おう。何故か周囲の男衆も若干顔を蒼くしている。風邪なのだろうか。

 

「……まあ、明日の告白が上手くいくことを願ってるよ」

「あり? 朝臣今日は来れねえの?」

「さっきも聞いたろ。俺も三河に降りるの…………まあ、時間的余裕があったら顔出しくらいはするさ」

「安心しろよ。仲間外れにはしねえよ――――――積極的に巻き込んでやるからな!」

「お前に言われるとむしろ仲間外れの方がマシって考えるのは俺が可笑しいのか?」

 

いやそれは全く以って同意。

この場の全員が力強く頷く。

 

「お前等頼んだぞ。コイツが必要以上に、っていうか暴れだす前にきっちり沈めておいてくれ」

「Jud.」

「おいおいおい。何でオメーが仕切るんだよ! そこはこの皆大好き総長兼生徒会長の俺がだな――――」

「じゃあ行ってきまーす」

「お、オメエ俺と言葉を交わす気ねえのかよ! あっ、分かった! さては最近流行のツンデレって奴だな!!」

「お前に対してはツンはあってもデレはねえよ」

 

まあ頑張れ、と朝臣がその場を離れる。

 

「フフフ。と・こ・ろ・で。ミトツダイラ? ちょうどいいところに来たわ。実はアンタに頼みたいことがあるのよ。愚弟関連で」

「わ、私ですの?」

 

背後から喜美とネイトの声が聞こえるが無視して忠次の元へ向かう。というより関わろうと振り向いた瞬間、絶対に巻き込まれる。最悪の形で。

忠次は、ただ穏やかに笑っていた。

 

「なんか嬉しそうですね。学長」

「嬉しいというより。楽しいかな。いや、正確には楽しみだ」

 

楽しみ。そう忠次は言う。

 

「明日が、トーリにとって。どうなるか気にならない?」

「玉砕一択だと思いますが……」

 

まあまあ。

でもさ、と忠次は続ける。

 

「もし上手くいったらって思うとさ。楽しくない?」

「……まあ否定はしませんが」

「でしょ? それにほら。今は末世だなんだと騒いでいるでしょ? そんな中。惚れた女に告白するんだよ。なんかこう……上手くいきそうじゃない?」

「雰囲気で流されるような奴がこの武蔵にいますか? 特に相手はあのホライゾンですよ」

 

勝ち筋がまるで見えねぇ……と呟く朝臣。

はははと軽く笑う忠次だったがそのとき。背後から轟音と破砕音が響いてきた。

 

二人は急に真顔になり真正面を向きながら歩く。

 

「……なあ朝臣」

「知りません見ていません聞こえていません」

「いやいや。これ、後で俺に請求来るんだけど?」

「どうにかしてくださいよ。学長なんですから」

「学長そんな偉くないよ。今朝だって梅組の壊した建物の修理請求来たんだから」

「それに関しては体育のルート指定した先生にどうぞ」

「後でこっそり直してくれない?」

「えぇ……」

 

呻くようにそういうと、ぴたりと足を止める朝臣。

観念して後ろを振り向く。

そこには、校舎に完全に埋まっているトーリの姿があった。無論、校舎は破損している。

 

…………あー。これ絶対トーリがネイトに対して何かやらかしたな。

 

アレの修復となると結構な時間と労力。何より物資と金が飛ぶ。

流石に無理だ。と呆れ果てるばかりだ。

 

「学長。無理です」

「……まーた武蔵さんに怒られるなあ」

 

大丈夫です。これ。完全にトーリが原因なので。折半です。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

数分前。

茶道部部室。その中で少女、浅間・智は橋の上のクラスメイトたちの会話を聞いていた。

 

…………よし。とりあえず私はネタにされてませんね。

 

ほっと安堵する。

一々耳を傾けて目を光らせていないと即ネタ行きな場所がここだ。中でもその外道成分を濃縮している梅組はそれが顕著だ。

まあだからといって連中の外道がそれしきで収まるわけではないが。

帰り支度を進めながら、外の会話を聞く。

 

「――――それで? 総長は私に何をしてほしいんですの?」

「いやー。それがよ…………ちょっと言いにくいんだけどよ――――」

 

言いにくいどころか普通に考えたら口にするのは可笑しいんですけど。

今までの会話の全てを聞いていた浅間はそう判断する。

何しろトーリの告白相手。ホライゾンへの告白会議に始まり、どういった部分が好きかに続き、最終的に同じ硬さの胸を揉んでみようという結論に至ってしまったのだから。

 

…………いけませんね。どうにもあの外道連中と接しているとこうした思考も受け入れそうになります。

 

自慢ではないが自分はこの武蔵でも上位に位置するほどの常識を備えていると自負できる。

何しろ相手はあの外道オブ外道な者達だ。自分だけでも常識を携えていないと世界が崩壊しかねない。割と冗談じゃない辺り、この武蔵だけ一足先に末世来てるのではないか?

 

「実はな。ちょっと、練習の相手をしてほしいんだよ」

 

その言い方は正しいんですけど全部じゃないですよね……

何も知らないネイトからすれば、告白の練習という変換がなされているだろう。

親友の危機ではあるがここで飛び出すほど愚かではない。もしかしたら本当に告白の練習のつもりで言ったのかもしれないのだから。ここは場面をよく見てから動くのが吉だろう。

 

「分かりましたわ――――――このネイト・ミトツダイラ。総長に、この胸をお貸ししましょう!」

 

あ、これ完全にアウト入りましたね。

親友の危機は救うものなのかもしれないが、既に踏まれた地雷を撤去する術は持ち合わせておらず、せめてもと窓の外を見てその最後を刻むことにした。

 

…………うわあ。私あそこにいなくて良かったぁ……!

 

絶対にネタにされていただろう。カラダ系の。

案の定。ネイトの怒りを買い、そのまま校舎に吹っ飛ばされてめり込んだ。

 

「先輩ヤバイです! 総長が服着て校舎に埋まってます!」

 

まるで全裸だったら何も問題がないみたいな言い方である。

とりあえず気にしなくていいと言っておこう。後で誰かが引き抜くだろうし。

窓の外を再び見ると、ネイトはそのまま何処かへ行ってしまったようだ。

外道共はそれ以降は解散という感じで各々自由に行動し始めた。

 

…………あ。

 

遠目に、見えた人影があった。

一人は酒井学長。トーリの埋まっている様子を見ながら苦笑している。

そしてもう一人。そんな状況を見て眉間に指を当てて険しい表情をしている少年。朝臣。

 

…………そういえば。三河に行くんでしたね。

 

小さい頃に武蔵にやってきた朝臣。

何処かしら臆病で、他人と接するのが苦手だった少年。

それを崩したのは、トーリとホライゾンだった。

昔のことを思い出すと、自然と笑みが浮かぶ。

 

「…………行ってらっしゃい」

 

自分以外誰にも聞こえないように呟き、小さく手を振る。

 

ふと。その瞬間、彼がこちらを見つめた…………ように見えた。

しばらく。こちらを見ている風の朝臣と目が会う。

そして。

 

「――――――」

 

口を少し動かしたあとそのまま踵を返し、忠次と共に〝村山〟方面へと向かっていった。

 

流石に遠く、声も聞こえず。ましてや読唇術という技を覚えているわけでもない。

丁度。学長である忠次が朝臣を呼んで、それに返事をしただけかもしれない。

そもそも。自分を見ていてくれたのかも分からない。

 

それでも――――

 

…………「行ってくる」って言っていたように見えたっていうのは。夢、見すぎですかね……

 

そう考えると、少し。顔が熱くなる。ついでに口元がちょっと緩む。

そのまま。彼が見えなくなるまで手を振っていた。

 

「み、見てください! 浅間先輩があんな顔を……!」

「落ち着きなさい。きっとああして油断させておいて撃つ準備を着々と進めているのよ」

「あの笑顔は騙しの笑顔だった……!?」

 

あれあれどうしていい感じの反応しているのにそんな返答が返ってくるんでしょうか?

 




どうもKoyで済まない。

短くて済まない。

本来は次の話と一話に纏める予定だったが思いのほかダラダラしてしまったので分割してしまった済まない。

それでは済まない。
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