【完結】無限泡影が飛んでこないこの世界で元気に生きてます 作:気力♪
ただハノイの塔の時点では一般人の逆襲みたいな話は無かったので、主人公はただ見てるだけという。
極力原作よりにしとかないと未来の原作と矛盾するからね!是非もないよね!
カリスマデュエリストは、ランク上位の頭おかしい奴を除けばだが、みんな一昔前のyoutuberみたいなもんである。デュエルのみならず面白おかしい動画を投稿して人気を稼ごうと躍起なのだ。
何のためにってのも一昔前のyoutuberと変わらない。人気と広告収入のためだ。
そんな訳で、未来世界でもやらかす奴はやらかすのだ所謂バカッターという奴を。
そんな連中に今ブームなのは「ハノイの騎士から逃げ切れるか!リンクヴレインズチャレンジ!」である。
いや、確かにアナザー被害は無くなったため危険性は少ないのかも知れない。でもハノイの騎士は超危険なハッカー集団なのだ。そんな一発ネタの為に命をかけてどうするんだとは小学生でも思う。
ちなみにカリスマデュエリスト交流会の面子の中にもこのリンクヴレインズチャレンジに挑戦した人はいる。リンクヴレインズに入れなくなったことで録画データが尽きてしまい、カリスマデュエリストランキングを保つ為に一発逆転を狙ったんだとか。
実行したのは"スキッパー"さん。おそらくリンクヴレインズ1使えないスキルである"ドロースキップ"の使い手である。そりゃ面白いスピードデュエルの動画も撮りづらいというものだ。
ちなみに彼のリンクヴレインズチャレンジの結果は僅か4秒。ログインしたのがハノイの騎士の目の前という運のなさである。だが、驚いたのはハノイの騎士も同じだったようで、互いに2秒程度ポカーンとした後スキッパーさんは即ログアウトした。正気を取り戻すのがハノイの騎士のが先だったらどうなっていたか、恐ろしい限りである。
なお、リンクヴレインズチャレンジが始められてからこれまでの間スキッパーさんの最短記録が破られた事はない。彼は伝説となったのだ...
が、最長記録の方は別だ。リンクヴレインズチャレンジの最長記録はというか平均記録が日に日に伸びているのだ。まるでハノイの騎士がリンクヴレインズから撤退しているかのように。
これを、Go鬼塚たちがハノイの騎士を追っ払ってくれたのだ!と楽観的に取る人と、ハノイの騎士の大作戦の前触れだ!と悲観的に取る人の2種類がいた。まぁ2種類目の風潮を作り出したのはどっかの小学生なのだが。
そんな小学生が、この人大丈夫かなーとリンクヴレインズチャレンジの生放送を見ていると、その大事件は起こった。
消えていくのだ、建物が
消えていくのだ、データの風が
そして消えていくのだ、人が
赤きエフェクトを撒き散らし、何もかもが消えていく。
ログアウトを試みた人がいた。
完了する前に赤いエフェクトに飲まれ消えていった。
建物の中に逃げ込む人がいた。
建物ごと赤いエフェクトに飲まれて消えていった。
とにかく走って逃げようとした人がいた。
途中で転んで、足の先から徐々に赤いエフェクトに飲まれて消えていった。
そうして生放送の撮影者は見た。赤いエフェクトで消えていく人たちの中心を。
そこには、地上に根を張り、6つのリングを宙に持つ赤き紅き巨大な塔の姿があった。
その塔に飲まれるように、生放送の撮影者は赤く、消えていった。
「何だ、これ...」
デュエルで負けた訳では無い。
何か違法データをダウンロードした訳では無い。
明確に違反行為をした訳では無い。
ただそこに居たという理由で、彼らは赤く消えていった。
世界の命運を決める6時間、ハノイの塔事件が始まった。
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原作知識で何があるのかは知っていた。だが、実際に見るまで何かできることがあるのではと思っていた。
そんな事はない。ただ知っているだけの一般人に出来る事など無い。
事件のスケールが、違いすぎるッ!
「くよくよするな馬鹿!今できる事は何かあるッ!とりあえず情報だ!原作通りなら山本先輩たちが中継を始めるはずッ!それ以外にもリンクヴレインズで生放送してる奴なんてごまんといるッ!とにかく情報を集めないと!」
そうしてわかった事は二つ。
この事態を重く見た運営のSOLテクノロジーが、リンクヴレインズの封鎖を宣言した事。尚、宣言しただけである。管理者権限はハノイの騎士にあるためログインが可能であるという杜撰っぷりだが。
そして、ハノイの塔出現から1時間もしないうちに、ハノイの塔出現時にリンクヴレインズにいた人間は全て赤く飲み込まれてしまったという事。もうリンクヴレインズに人は居ない。完全なるゴーストタウンと化したのだ。
もう、自分に出来る事は無い。
事件が起きることの想定はしていた。ハノイの大襲撃の時と同様に、避難誘導くらいなら出来ると自負していた。
甘かった。甘かった。甘かったッ!
でも、まだ自分に出来る事はあるはずッ!そう思った。何をしようというイメージを持たずに。
そうして動き出してしまった。
「デュエルディスク、セット!デッキ、セット!行くぞ!In to the ...ッ!」
そんな、やけっぱちになっていた自分を止めてくれたのは、母との約束だった。
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ただ、なんども言うけど自分を危険に晒すようなことは絶対にしないで。お母さんとの約束よ?
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「畜生ッ、畜生ッ、畜生ッ!」
歴代主人公達のように、戦える強さが欲しかった。
数多のオリジナル主人公のように、戦える勇気が欲しかった。
理想の自分の持っている、心の強さが欲しかった。
どれも、今の自分には無いものだ。
臆病な自分には、母の思いを振り切れない。
臆病な自分には、母との約束を振り切れない。
想いが、重く自分を縛っているのが分かる。
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「天頂ッ!大丈夫⁉︎リンクヴレインズになんか入ってないわよね⁉︎」
「か、母さん⁉︎大丈夫、まだリンクヴレインズには入ってないから。」
「まだって何⁉︎...デュエルディスクつけてるって事はまさか⁉︎」
「いや、そうじゃない...そうじゃ無いんだッ!
リンクヴレインズに入ろうとしたッ!けど駄目だったッ!赤く消えた人たちの顔が目に浮かんで、勇気が出なかったッ!母さんとの約束を理由に、誰かを助けに行けるはずなのにッ!走り出すことをやめてしまった!」
「天頂、あんたねぇ...怒ればいいのか呆れれば良いのかわからなくなるじゃない。まったくもう。ねぇ天頂、いいじゃない別にあんたが走りださなくたって。」
「え、でも俺が行くことで助けられる人がいるかも知れなくて。」
「でも、あんたが助けに行かなくちゃいけない義務はないわ。良いのよ、見捨てたって。」
「でも、自分に出来ることをしなくちゃ⁉︎」
「...今自分に出来ることをしろー、ってのは父さんの口癖だからね。あんたがそれに影響されちゃうのも仕方ないわ。でもね天頂それは、今自分に出来る無茶をしろって事じゃないの。今自分に出来るから命をかけろってことでもないの。
これはね、今自分の手の届く範囲で親切にしなさいっていう言葉なの。」
「手の届く範囲で...」
「そう、手の届く範囲で。今のあんた見たく、無理して無茶してでも走り出して、誰かに手を差し伸べるって事は違うの。あんたに出来る事はちょっとネットに詳しい10歳児の出来る事でしかないんだから。
そんなあんたには、誰かの命に関わるような義務も権利も乗っていないの。」
「でもッ!」
「でもじゃないッ!まずデュエルディスク外して、しっかり地に足つけて考えなさい。あんたは、あんたの出来る事と、あんたのしたい事だけしていれば良いの。それ以上は背負い過ぎよ。
...けど、これも覚えておいて。あんたが無茶する事を、私たち親は望んでいないって事を。」
「母さん...」
「それじゃ、私は居間に戻ってるわね。頭、ちゃんと冷やしなさいよ?」
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言われた通り、デュエルディスクを外した。
冷や水を浴びせられた気分だった。
「でも、出来ること、情報は集めないと...」
そうしてネット情報を漁っているとこのリンクヴレインズの状況下で中継を始めた命知らずがいるらしい。
「これって、カエルと鳩の人たちの中継だ。こんな状況下でも頑張っているなんて...今考えると、凄いカッコいい人達だったんだなぁ...」
そうして中継を見ていると、ハノイの塔事件は原作通りに進んでいった。ブルーエンジェルはスペクターに敗れ、Playmakerがスペクターを倒し、Go鬼塚がリボルバーに敗れ、Playmakerとリボルバーはスピードデュエルで相打ちとなった。
だが、ここで原作と違うと思われる点が生まれた。中継の二人が、Playmakerとリボルバーのマスターデュエルが始まっても嵐の中に入って行かないのだ。行けないのだ、嵐に紛れる瓦礫たちが大き過ぎて。
些細な点だろう、そう自分では思う。
別に中継の有る無しでデュエルの結果は変わらないのだから放置でいいだろう。そう自分では思う。
そう、自分では思うのだ。
なのに何故か、体は動き始めていた。
自分が走り出すことに意味はないだろう。今自分に出来る事の範囲からは相当に外れている自信はある。母との約束を破る事に物凄い罪悪感を覚えてる。
でも、体は動き始めていた。
そうして気づいた。体が軽い。さっきまで中継を見ながらずっと震えていたのに、それが止まっていた。
だって仕方ないではないか。あの二人は頑張っているのだ、カッコいいと思ってしまったのだ。
そんな人を助けたいと思ってしまったのだ。
覚悟は決まっていなかったと思う。でも、こうも思うのだ。自分はただの10歳児だ、ご立派な覚悟なんてものは分不相応だろう。だからきっとこれで良い。
「母さんごめん、俺は約束を破るッ!自分に出来る事じゃない、自分のしたい事をするためにッ!頑張ってる誰かには、報われて欲しいって思うからッ!その人が届ける希望を、守りたいって思うからッ!
行くぞ!デュエルディスク、セット!デッキ、セット!In to the ッ!」
扉の外から、頑張れと声が聞こえたような気がした。
「In to the VRAINS!」
そうして自分は、滅びかけてるデータの世界に身を投げた。
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「...ほんとお父さんにそっくりに育ったわねー。肝心なところでいっつも約束破る所とか。人助けでデートすっぽかされた私みたいな犠牲者を出さないように、帰ってきたらしっかりお説教してあげないと。」
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「おい、行けるか!早く行かないとPlaymakerのデュエルが終わっちまうッ!このデュエルは、皆に届けないといけないだろ!」
「ダメです先輩!嵐が激し過ぎて、自分は兎も角先輩が瓦礫で串刺しになっちゃいますよぉ!」
「クソッ!一体どうしたら...何だ?後ろから風を切る音がするぞ?」
カエルのアバターの彼が後ろを振り返ると、そこにはDボードに乗った没個性のアバターのデュエリストがいた。
「俺が嵐の中に道を切り開きますッ!後ろを付いてきて下さいッ!」
「いきなり来て何を言ってるんだ⁉︎危険だ!」
「それをあなた方が言いますかッ!いいから付いて来て下さい。Playmakerのデュエルを世界に届けなくて良いんですか⁉︎」
「先輩、この人の提案を受けましょう!他にPlaymakerの所に行く方法はありません!」
「お前まで何を⁉︎いや、確かにそうだ。今は何をしてでもあそこに行かないとッ!そこのあんた!頼む、俺たちに道をくれ!」
「この嵐を突っ切るためにッ、希望を皆に伝えるためにッ!頑張ってる人の頑張りを無駄にしないためにッ!
現れてくれ!
さぁこいつの盾で瓦礫を防ぎます、付いて来て下さい!」
「星を司る戦士のモンスターッ!そうか、そいつでなら行けそうだ!頼む...えっと。」
「俺はStargazer、あなた達の中継に勇気を貰った、ただのデュエリストです!」
「そうか、それはちょっと嬉しいな!Stargazer、さぁ行くぞ!」
「舌を噛まないように気をつけて下さいね!」
そうして星の戦士を先頭に、巨大な嵐の中に一人と一匹と一羽は突っ込んでいった。
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「抜けた⁉︎おい抜けたぞ...Stargazer⁉︎その傷は!」
「最後の方で小さい破片に抜けられそうだったんで、ちょっと体張りました。正直クソ痛いです。」
「そうか、今すぐ治療を!」
「大丈夫です、自分はもうログアウトするので...Playmakerのデュエル、ずっと気になってても見れてなかったんです。今日こそ見られるように、しっかり中継して下さいね、お二方!」
「先輩、行きましょう!Stargazerさんの頑張りを無駄にしないために!」
「あぁ、そうだな!ありがとうStargazer!この恩は忘れない!」
「...やっぱログアウト出来ないか、前世のことといい、こういう土壇場で嘘ついちゃうのは悪い癖だよなぁ...あー痛い。しかも中継繋がらないからPlaymakerのデュエルまーた見れないし。
まぁ、気分は良いし、どうせ勝つのはPlaymaker様だし、良い、かな?」
朦朧とする意識の中、前世の死に様を思い出した。
デパートでの火災事故、天井が崩れるのを察知して、近くの子供を逆方向に逃がしたは良いものの瓦礫に足を挟まれてしまった。
助けてくれと喚くのが正しいのに、自分は子供に
「俺は別ルートから逃げられる、だから君は落ち着いて、ゆっくり逃げるんだ。良いね?」なんて格好をつけてしまったのだ。
多分それが原因で救助が遅れ、嘘つきは煙にやられて一酸化炭素中毒であえなく死んでしまいましたとさ。
前世の自分の事ながら、実に笑えない最期である。
だが自分にはわかる。前世と違い、今回のこれは人生の最期ではないのだと。だから残す言葉はこれで良い筈だ。きっと。
「頑張れ、Playmaker。」
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5体のリンク4モンスターによるエクストラリンクを決められ、トポロジック・ガンブラー・ドラゴンによるダメージをくらい倒れるPlaymaker。
そんな彼を励ますAiの言葉の他に、どこかから頑張れの声が聞こえた気がした。
彼が立ち上がった理由のうちの少しには、そんな小さな声援に応えるためにというのもあったのかも知れない。
裏設定
山本先輩達が嵐の前で立ち止まったのは、とあるキャラと遭遇しなかった事によるバタフライエフェクトです。
そのキャラが現れなかった理由はとある異次元からの魂がその子の魂を塗り潰してしまったからだトカ。
さて、塗りつぶされる前の魂は一体誰だったんでしょうねー。勿論原作に登場したキャラです。
まぁ、年齢から逆算したら一瞬でわかるキャラなんですけどね!
あと、活動報告にも書いたんですが、原作に追いついてしまったので次の話は来週、あるいは再来週となります。ご了承下さいな。