【完結】無限泡影が飛んでこないこの世界で元気に生きてます   作:気力♪

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LoTDで未だにイゾルデが引けないのはバグでしょうか。いや、運だってのはわかったんですがねー。本当にV兄様のパックなのか疑問に思えてきましたよ。


ダンジョンアタック(人任せ)

「エクストラ5枠ってキツイよなー」

「ですねー、でもその悩みまで行けるのは一部の変なデッキ使いだけなので、ルール的にはいいんじゃないですか?」

「いや、鬼畜星だって困ってんだろ」

「慣れました」

「慣れたかー」

 

今日は中堅カリスマデュエリスト仲間であるリョウさんと予定があったので一緒にリンクヴレインズを歩いている。とある人物と待ち合わせをする為に。

 

 

最近リンクヴレインズでは、電脳トレジャーハンターという職業が今まで以上に脚光をあびるようになった。

 

運営の遊び心なのか、あるいは何者かの別の意図があるのか知らないが、ダンジョンの類が頻繁に発見されるようになったのだ。

 

その奥には、貴重なカードが眠っている。そんな浪漫が蔓延している。実際にトラップを潜り抜け“サイバース”のカードを手にした者だっているからだ。

 

だが、それが罠である事は多くの先駆者が証明してしまった。

奥にあるトラップを抜けられなかったアバターは、ロストするのだ。

 

幸いにもリアルには大きな影響はないようだったが、アバターやデッキを失う事はこの街では大きい。

 

ハイリスクハイリターン。それがダンジョンアタックである。

 

だが、転生者として未来の知識を持ってこの現象を見ていくと、少し違った結論が見えてくる。

 

間違いなく、影響はある。

人間のサンプルを集めているのだろう、決して表に出る事なく。

そしてそんな技術力や影響力を持ちサイバースを作り出せる連中など限られている。

 

ダンジョン騒動の大元は、()()()()()()だろう。

 

本格的に動き出していないのは恐らく単純な理由、今はまだ条件が整っていないのだろう。ミラーリンクヴレインズという根城を作り出す事や、人の意識をプログラムにする超技術の。

 

だからこそ、今のうちに尻尾を掴んでおきたい。

 

「にしても、本当なんですか?ダンジョンを見つけたって」

「ああ、俺の買った編集スペースの奥に入り口があってな。軽く中を見たがやばそうなんで、すぐ逃げた」

「正解ですよ。アバターロストとかリアルダメージとかは笑えませんから」

「...リアルダメージの報告なんてあったか?」

「いや、割とヤバイのが常のリンクヴレインズですから、初期のスピードデュエル同様の被害が出てもおかしくはありませんよ。アバターロストなんて大ダメージなんですから」

 

そうして、セントラルエリアの情報センターに辿り着く。ここのカフェテリアが待ち合わせの場所だ。

 

「それで、凄腕の電脳トレジャーハンターのアテってのはどんなのだ?」

「ブラッドシェパード、金さえ積めばどんな依頼でもやってのけるって噂のバウンティハンターですね。本物かは知りませんけど」

「どこでそんな繋がりができたんだよ」

「散歩部の活動報告纏めて公開してるの俺じゃないですか。その縁でバグみたいなのや欺瞞テクスチャについての詳しいログデータが欲しいって連絡があったんですよ。調べるまではそれがバウンティハンターだとは知りませんでしたけど」

 

これは嘘。名前を見た時点でガッツポーズ決めたくらいに嬉しかったのは記憶に新しい。字幕で本名が出た人ことブラッドシェパードはあのイグニスアルゴリズムという意味不明なのを解析して使いこなすという離れ業をやってのけるお人だ。もしかしたらこのダンジョンの裏まで見抜いてくれるかも知れない。

 

「ここですね」

「まだ待ち人は来てないみたいだな。じゃあ時間つぶしにデュエルやるか!」

「衆人環視の中でですか?良いですね!」

 

カフェスペース近くにはそこそこのスペースがある。デュエルするには十分だ。

 

「レディースアンドジェントルメン!中堅カリスマデュエリスト、Stargazerとリョウのデュエルが始まるよ!さぁ、賭けた賭けた!」

「俺に賭けたら儲けさせてやるぜ!マスターデュエルなら負けねぇよ!」

「出せないエースを抱えてるアンタにはまだ負けてやれないな!」

 

観客が、デュエルの観戦モードに入る。賭けをオーケーにしたからそこそこの投げ銭が投げられた。オッズは俺が1.4倍、リョウさんが1.1倍とリョウさん優勢だ。

 

「さぁ、始めましょうか!」

「ああ、行くぜ!」

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

Stargazer LP 4000

リョウ LP 4000

 

「俺の先行、ドロー!スタンバイ、メイン!手札から星因子(サテラナイト)ベガを通常召喚!ベガの効果発動!手札のテラナイトを特殊召喚する。俺は星因子(サテラナイト)ウヌクを特殊召喚!ウヌクの効果発動!デッキからテラナイトカード、星因子(サテラナイト)デネブを墓地に!」

「レベル4が2体!いきなり来るか?」

「いや、たまには新しいのにかぶれるさ!現れろ、星の導くサーキット!俺は、戦士族モンスターベガとウヌクをリンクマーカーにセット!リンク召喚!聖騎士の追想イゾルデ!」

 

「イゾルデの効果発動!リンク召喚成功時、デッキから戦士族モンスターを手札に加える!ただし、このターンその同名カードはプレイ出来ない。俺は、デッキから2枚目のベガを手札に加える」

「既に使い終わったなら良いって事か」

「そういう事。さらに俺はイゾルデの第2の効果を発動!デッキから同名以外の装備魔法を任意の枚数墓地に送り、その同レベルのモンスターをデッキから特殊召喚する!俺は、最強の盾、月鏡の盾、星輝士(ステラナイト)の因子、デーモンの斧の4枚を墓地に送り、レベル4である星因子(ステラナイト)アルタイルを特殊召喚する!そして、アルタイルの効果発動!墓地のテラナイトモンスター、デネブを特殊召喚する!」

「ぶん回すな!燃えてくるぜ!」

「リンク4がいればもっと強い盤面なんだけどな!デネブの効果発動!デッキからテラナイトモンスター、2枚目のアルタイルを手札に加える。そして、デネブとアルタイル、2体のテラナイトモンスターでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ煉獄の騎士(テラナイト)ヴァトライムス!」

「エースを出してきたか」

「それだけじゃあない。お前のデッキには効くだろ?全てのモンスターを闇属性にするこいつの効果は」

 

お互い何度となくデュエルした身なので、互いにやられたら困る事は分かっている。奴のデッキは属性をキーにしているからだ。

 

「キツイが、なんとかするさ!」

「そうである事を祈るよ!カードを一枚伏せて、ターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー!...良し!俺は、手札から速攻魔法緊急テレポートを発動!デッキからレベル3以下のサイキック族を特殊召喚する!」

「通さない!チェーンして灰流(はる)うららの効果発動!デッキからの特殊召喚を含む効果を無効にする!」

「だが、打開の鍵は手札に揃ってる!俺は超量士(ちょうりょうし)グリーンレイヤーを召喚!効果により超量士(ちょうりょうし)ブルーレイヤーを特殊召喚!ブルーレイヤーの効果発動!デッキから超量カードを手札に加える。俺が加えるのは、超量要請アルファンコール!」

「...ヴァトライムスのロックを突発してきたか!」

「その通りさ!バトル!グリーンレイヤーでイゾルデを攻撃!」

「攻撃力は同じ1600ッ!」

「よって、相打ちだ!そして、超量モンスターが戦闘で破壊された事により、速攻魔法超量要請アルファンコールを発動!エクストラデッキから超量機獣(ちょうりょうきじゅう)エクシーズモンスターを特殊召喚!その後、そのカードに記載されている超量士モンスターを効果を無効にして特殊召喚する!現れろランク5!超量機獣(ちょうりょうきじゅう)マグナライガー!そして、超量士レッドレイヤー!」

 

グリーンレイヤーの消えたその先に、獅子を司る超量のエースモンスターと、その上に乗るレッドレイヤーが現れる。

なかなかに壮観だ。

 

「バトルフェイズを終了し、マグナライガーの効果発動!手札、フィールドの超量士モンスターをオーバーレイユニットにする。乗り込め、レッドレイヤー!」

 

「そして、マグナライガーの効果発動!オーバーレイユニットを一つ使い、モンスターを一体破壊する!消え去れ、ヴァトライムス!」

「...発動はない、破壊される」

「じゃあ、続けて行くぞ!レッドレイヤーの効果発動!墓地に送られた時、レッドレイヤー以外の超量モンスターを特殊召喚する!俺はグリーンレイヤーを特殊召喚!ただし効果は発動できなくなるが、それは今関係のない事だ!」

「...モンスターが3体、来るか!」

「現れろ、ヒーローの駆けるサーキット!召喚条件は超量モンスターを含む効果モンスター2体以上!マグナライガー、ブルーレイヤー、グリーンレイヤーをリンクマーカーにセット!リンク召喚!現れろ真超量機神王(しんちょうりょうきしんおう)ブラスター・マグナ!」

 

現れる、4種のロボが合体したと思われるド派手なロボット。その大きさはカフェスペースの天井に届きそうなほどだ。あぶねーなー。

 

「マグナライガー単機より攻撃力は低くなった。効果耐性狙いか」

「ああ、ブラスター・マグナには相手の効果では破壊されない能力を持つ。お前のデルタテロスによる破壊はさせないって事さ!カードを2枚セットして、ターンエンド」

「...切るならここだ!エンドフェイズに速攻魔法ツイン・ツイスターを発動!お前のセットカードを2破壊する!」

「神の警告とブレイクスルースキルが!」

「怖いの伏せてやがったよ案の定。俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン!召喚条件として、墓地の光、闇属性モンスターを一体ずつ除外する。俺は、ヴァトライムスとイゾルデを除外!現れろレベル8!混沌より現れろ、カオスソルジャー開闢の使者!」

 

先程までざわざわしていた空気が、一気に俺の方に向いてくるのがわかる。巨大ロボは確かに格好いいが、カオスソルジャーだってそれに負けず格好いいのだ。

 

「俺は、アルタイルを通常召喚!効果は発動せずにバトルフェイズ!カオスソルジャーでブラスター・マグナを攻撃!開闢双破斬!」

 

リョウ LP4000 → 3500

 

高く飛び立つカオスソルジャーの一刀により、ブラスターマグナは破壊された。

そして、これで終わりではない。

 

「クッ、ブレイクスルースキルがあれば!」

「無い物ねだりは後にしな!カオスソルジャーの効果発動!モンスターを戦闘破壊した時、続けて攻撃できる!開闢双破斬、二の太刀!」

 

リョウ LP3500 → 500

 

「そして、アルタイルでダイレクトアタック!トドメだ!」

「...防ぐ術は、ない!」

 

リョウ LP 500 → -1200

 

アルタイルの斬撃をモロに受けて、リョウは大の字に倒れた。

今回は、俺の勝ちのようだ。

 

スゲーデュエルだったぞー!との歓声が鳴り響く。どうやらカフェの余興程度には良いデュエルだったようだ。

 

ちなみに、賭け金は勝者が利益の8割を貰えるという事なので、そこそこの集客力のある場所でそれなりのデュエルができるなら実は結構な収入になる。それをメインにしようとしてるカリスマデュエリストもいたりするのだ。主にLair Lordさんとかの武闘派は。

 

そんなことを考えつつ待ち合わせの席に着く。そこには、テンガロンハットに仮面のアバターがいた。

 

「あなたがブラッドシェバードさんですか?」

「そういうお前らは、Stargazerにリョウで間違いないようだな。先程のデュエルはお前らを良く表していた」

「それで、俺たちは信用できそうですか?」

「...その為に、デュエルを見せたのか?」

「いえ、暇だからデュエルしよーぜーってなっただけですよ」

「大馬鹿の類だったか」

「でも、俺たちの事を信用できるでしょう?万の言葉を語るより、一つのデュエルを見せた方が心は伝わるものですから」

「...情報に嘘はないととりあえず信じてやる。これで良いか?」

「はい!」

「...調子の狂う奴だ」

 

「じゃあ、案内します。ブラッドシェパードさん、Dボードはありますか?」

「当然だ」

 

センターを出てデータストームに乗り、リョウの土地に向かう。

セントラルエリアからそう離れていない浮島が、ダンジョンの入り口だ。

 


 

3人で若干下層にある浮島に向かう。浮島の土地を買って中をSF風に改造した所その入り口を発見したのだと。

 

「じゃあ、ダンジョンアタックな訳ですけど、メールで送った契約通りで問題ないですか?ブラシェパさん」

「...Stargazer、礼儀を叩き込んでやろうか?」

「嫌でしたか?ブラシェパさんってあだ名。良い呼び方だと思ったんですけど」

「...まぁいい、どうせ今回限りの縁だ。契約内容は把握した。そちらの報酬が中のカードというのも納得できる。が、中のシステムを詳しく調べてくれとはどういった理由だ?」

「ダンジョンが危険なものなら、それを裏付ける強い証拠になります。知り合いがアバター全損とか嫌なんですよ俺」

「...その程度の理由か?」

 

魂を掴まれるような感覚。強者の持つ殺気だろうか。

だが、この世界に生まれてそれなりに修羅場は踏んできた。この程度では崩れてやるものか。

 

「最近のダンジョンブームとか、被害が本当にリアルの体に影響がないのかとか、新生リンクヴレインズそのものとかの色んなものがごちゃついてんですよ。これを放っておくとヤバイことになるっていう漠然とした直感、としか今は言えません」

「...成る程な、どうりでこの新生リンクヴレインズそのものを偏執的に調べる訳だ」

 

散歩部の活動を偏執的と言われてしまった。いや、データ自体は普通のものな筈なんだかなー

 

「契約は成立だ、お前たちは吉報を待っていろ」

「はい!」

 

編集スペースの奥にある棚をズラしたその先に、テクスチャのズレが存在した。注視して見なければわからないが、注視すればわかってしまう奇妙さが。

 

そんな所に、ごく当たり前のようにブラッドシェパードさんは入っていった。あれが、修羅場をくぐった経験だろう。凄い人だ。

 

その後30分程度でブラッドシェパードはあっさりとダンジョンを攻略してしまった。ハヤワザ!

ダンジョンの入り口だった壁は、普通のテクスチャになった。これで、リョウも安心だろう。

正直言うとブラシェパさんのデータを元に安全なダンジョン探索をやってみたかったが、それは高望みということだったのだろう、うん。

 

「トラップの類はどうでしたか?」

「あの程度、どうということはない。が、お前らが引き返したのは正解だったろうな。素人なら死にかねん」

 

あっさりと言われたその言葉に、俺とリョウは肝を冷やした。やっぱリンクヴレインズ怖いわ。

 

「なぁ、お宝のサイバースってのはどんなカードだったんだ?」

「...珍しいだけの雑魚カードだ」

 

そうしてブラッドシェパードは一枚のカードを見せる。

 


 

ライドロン

 

通常モンスター

星4/地属性/サイバース族/攻2000/守 0

高い適合能力を持った電子獣。

縄張り意識が強い。

 


 

「「微妙ですね」」

「全くだ。が、サイバースというだけで好事家どもには高値で売れる」

 

「内部の観測データはこのデータカードに纏めておいた、好きに使え」

「はい。ありがとうございます!またよろしくお願いしますね!」

「骨折り損は御免だ、他を当たれ」

 

その言葉とともにブラッドシェパードはDボードに乗り去っていった。

 

うん、次ダンジョンを見かけても声かけてみよう。望みは薄いかもしれないけど。

 

「じゃあ、俺はここで編集作業するわ。鬼畜星はどうする?」

「んー、俺もログアウトするかね。今日はいい絵が撮れたし」

「えー、あのデュエル動画にすんのかよ」

「そりゃそうさ。楽しかったし、何気に開闢のお披露目だったからな」

 

そう言ってログアウトをする。

その寸前、どこかからの視線を感じたような気がした。

 


 

「ふむ、この少年か」

 

光のイグニス、後にライトニングと呼ばれるその人工知能は、ダンジョン周辺のリンクヴレインズの観測データから一人の少年を観察していた。

 

自分のシミュレート結果とは違う行動を取る人物を辿っていけば、必ずこの少年に行き当たるのだ。

 

それは小さなもので、計画に影響はない。だが、この少年に関する何らかのパラメータが間違っているのは確かだ。

 

「...まったく、せっかくスキャンする為にダンジョンを出してあげたというのに、まさかバウンティハンターに丸投げするとはね。まぁ、こんな些事に割いているタスクは無駄か。これまでのデュエルデータからパラメータを推定し再定義、シミュレーションを再開しよう」

 

再び、シミュレートを再開するライトニング。

現状のプランの成功率がどの程度のものなのかを確かめる為に。




しれっと身内メタをする主人公、と見せかけて開闢のコストなのでした
しかし超量は難しい。スピードデュエル諦めてマスターにしてもブラスターマグナと超量機獣の構えはできませんでした。悔しいのでまた出番があるかもしれません。

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