【完結】無限泡影が飛んでこないこの世界で元気に生きてます 作:気力♪
「今日もリンクヴレインズは平和ですねーっと!」
特に理由はないが、バックフリップを決めてみる。周囲を飛ぶDボーダーからは拍手が出るが、それくらいだ。
と、思ったら一人だけ妙な動きをしているアバターがいた。
枯れ木のような体で、何かを探しているように見えた。
散歩部としてのセンサーが反応している、困りごとだと。
「ハロー、そちらのウッドマンさん。何か困りごとでも?」
「...しまった、中央部に近付き過ぎたか」
「ありゃ、想定外のトコからの声。しかもそのにょきっとしてる感じ、不霊夢さんの同型のAIです?」
「にょきっと...ああ、確かに私はイグニスだ。そして、君のことは知っている、Stargazer。リンクヴレインズ最大の情報収集集団の長だからな」
「じゃ、協力を申し出ても良いですか?」
「協力?」
「あなたは、誰かを探してる。人手が要るんじゃないですか?」
「...人間を、信じろと?」
「まぁ、プログラムで隠されているのを見つけろってのは難しいんで、その辺りのツールは欲しいですけどね」
「手段を選んでる暇、あります?」
「ならばデュエルだ。君が信用に足るかどうか、試させて貰おう」
「構いませんが、不霊夢さんの同類って事はサイバース使いでしょう?メインコースから離れましょう」
「ああ」
そうして5分ほど離れた所で、互いに構える。
「「スピードデュエル!」」
「私の先行、手札からコストダウンを発動!手札を一枚捨て、Gゴーレム・ロックハンマーのレベルを4にし、召喚!ロックハンマーの効果!このカードをリリースし、Gゴーレムトークンを3体特殊召喚する。現れろ、大地に響くサーキット!リンク召喚!現れろリンク2、Gゴーレム・スタバン・メンヒル!さらに残りのトークンとスタンバイ・メンヒルでリンク召喚!現れろ、Gゴーレム・クリスタルハート!クリスタルハートの効果発動!墓地の地属性リンクモンスターをこのカードのリンク先に特殊召喚する!」
「おっと、残念。手札の屋敷わらしの効果発動!このカードを手札から墓地に送り、墓地からモンスターを特殊召喚する効果を無効にする!」
「何⁉︎」
「スタバン・メンヒルで墓地のモンスターを蘇生してリンク3に繋ぐつもりだったんだろうけど、発動を多くするって事はそれだけ隙ができるって事だ。デュエルは二人でやるもんだぜ?」
「クッ、私はカードを2枚伏せて、ターンエンド」
「じゃあ、俺のターンな。ドロー!スタンバイ、メイン!速攻魔法、ツインツイスターを発動!手札を一枚墓地に送り、伏せカード2枚を破壊する!」
「クッ⁉︎」
「破壊されたカードに、墓地発動はなし。じゃあ、フィナーレだ!俺は、手札から
アース LP4000 → 3000
「続いて!テラナイトモンスターであるシャムとベガでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ
「合計攻撃力は、4300ッ⁉︎」
「バトル!ヴァトライムスでクリスタルハートを攻撃!」
「そんな、クリスタルハートが!」
アース LP 3000 → 400
「トドメ!アルタイルで、ダイレクトアタック!」
「ぐぁああああ!」
アース LP 400 → -1300
「ありがとう、楽しいデュエルだった」
「...ああ、こちらもだ」
「で、どーよ。俺を信用できるか?」
「ああ、少なくともデュエルに関しては君は私を超えている。その上で私に何もしないという事は、少なくとも我々の敵ではないという事だろう」
「そりゃありがとう。けど、運だろ今のは。初手に誘発と除去引けなかったら盤石の盤面を崩すのは手間だぜ?」
「だが、君は引き込んだ。それは、君の強さだ」
「確率だと思うんだがなー。というか、なんでAIがオカルト語って人間が確率語ってんだよ」
などと語っていると、空気が変わる。
「えっと、アースさんで良いんだっけ?」
「ああ、私は逃走を図ろう。これが私の使っている探索プログラムだ。イグニスの反応があれば私に自動的に伝わるようになっている。活用してくれ」
「了解、コピーして皆に投げてみるわ」
「頼む」
「最後、確認なんだが探してるのって仲間のイグニスって奴か?」
「ああ、アクア。水のイグニスだ」
その言葉に込められた万感の想いから、知識としてでなく、実感として彼が本当にアクアを大切に思っている事が理解できた。
それを知ってしまったのなら、手を差し伸べないでいられる訳がない。
「大船に乗ったつもりで居な!膨れに膨れたリンクヴレインズ散歩部1万人の全力を持って、お前の恋人と巡り会わせてやる!」
「こ、恋人ではない!」
「じゃあ、未来の恋人ってことな!」
「違う!そもそもAIに恋愛の概念などあるわけが!」
「じゃ、またな。アース!」
「...まったく!」
アースさんは、プログラムの内蔵されたカードを投げ渡して来て、すぐに何処かへ消えていった。
「さて、俺も逃げますか!」
ゴーストガールに渡されたジャミングプログラムをばら撒きながらこの場を離れる。
もうじきSOLのセキュリティドローンがこの場にやって来るからだ。それがなんとなくわかるようになったあたり、俺も修羅場に慣れて来たという所だろう。
「しっかし、戦法が分かってるとはいっても何とかなるもんなんだな」
戦法が分かっていてガンメタ張って尚ワンキルされた過去はあるが、あの日から少しくらいはデュエリストとしてのレベルは上がったという事なのだろうか。
「そうだと嬉しいが、そんな美味い話はねぇよなー」
思い出されるはブルーエンジェルさんに先行ワンキルされた過去。アレが負けるような相手がこの世界の敵なのだ。一般人はなるべく目立たずにいよう。
「とりあえず、ソウルバーナーとゴーストガールに連絡だな」
「あの子、狙ってるのかしら」
「ゴーストガール?」
リンクヴレインズを探索するプログラムを走らせながら届けられたメッセージを見る。
それは、偶然地のイグニスと接触したとの事だ。そして、その目的は水のイグニスの探索。添付されたプログラムを散歩部のメンバーに回して、捜索範囲を一気に広げるつもりなのだとか。
だが、そのプログラムに危険性がないかの確認の為に一応コピーデータをこっちとプレイメイカー側に回して来たらしい。
「んー、駄目ね。やっぱこのアルゴリズムはわからない。...葵、ちょっとリンクヴレインズ行ってくるわ。Stargazerの近くが一番情報が早い」
「エマさん、何があったんですか?」
「餌が勝手に動いて獲物を引っ掛けたのよ。あの子、本当になんなのかしら」
「遊作!草薙さん!アースの動きがわかった!」
「尊、本当か⁉︎」
「オイオイ、またあの姉ちゃんからの情報か?罠なんじゃないか?」
「違う、Stargazerが偶然アースと接触したみたいなんだ。アースはリンクヴレインズの各地を回ってアクアを探しているって」
「...その情報の正確性は?」
「イグニスアルゴリズムで組まれた探索プログラムが添付されていた。ゴーストガールにはそれは作り出せない上、アース特有の癖がそのプログラムにはあった」
「じゃあ、確定だな!」
「結城天頂はどれだけ優れたデュエルセンスを持っていても、所詮は10歳の少年だ。それが、アースの信頼を勝ち取り、ゴーストガールの信頼を勝ち取り、尊の信頼を勝ち取った。...なんの冗談だ?」
「遊作?」
「ちょっとちょっとご主人、何を疑ってるの?」
遊作は言葉を紡ぐ。
「この少年の行動は一見普通に見えるが、現状から逆算して見ると明らかにおかしい点が3つ見えてくる」
「おかしい点?」
「一つ、ネットワークが広すぎる。まるでこの事態を想定していたようにしか見えないほどに都合が良い。なにせ、進入禁止エリアギリギリまで調べ上げられているほどだからな。ブラッドシェパードはそれを利用していたと見える」
「だが、それは穿ち過ぎではないか?リンクヴレインズ散歩部の設立のログをハッキングしたが、話の流れは自然なものだったぞ」
「んなことやってたのかよ不霊夢」
「万が一の為だ」
「二つ、有力な人物への接触率の高さだ。一人目、尊ならまだ偶然と言える、二人目、ブラッドシェパードも情報網をアテにした接触なら納得はできる。だが、ゴーストガールとアース、この二人については明らかに偶然が過ぎる。偶然が3つ重なればそれは作為的なものとして見るのが定石だ、それが四つなら疑いようはないだろう」
「そして3つ目、イグニスという存在に対して何のアクションも起こしていない事だ。今、結城天頂の家のサーバーをハッキングして尊と会った日の検索履歴までを確認してみたが、AIについて検索した履歴は無かった」
「ご主人、それのどこが問題なんだ?」
「考えても見ろ、イグニスは人と同様に感情を持ち会話をするAIだ。それについて驚かなかった事はまだ10歳であるが故の無知だと言えなくはない。が、だからといってそれを調べないという事はおかしいんだ。結城天頂の今までの行動を素直に見た場合、好奇心旺盛な少年という姿が見えてくる。そんな人物がイグニスなんてものに興味を持たないのは不自然だ」
そんな疑惑に対して、尊が口を開く。理論ではなく、感情を主にした理由から。
「...遊作、俺にはStargazerが悪事をするような子には思えない。デュエルスタイルはともかく、人としてのあの子の事は信用できる。だから、僕はあの子を信じたい」
「ああ、俺もだ。何もStargazerが悪事に手を染めているとは言ってはいない。未だ姿を見せていない光のイグニス。もしかしたらそこに結城天頂は繋がっているんじゃないかという可能性の話だ」
「えぇ⁉︎あのクソ真面目野郎と⁉︎」
「遊作、それはどうしてだ?」
「単純に消去法だ。まだ見えていない水のイグニスと繋がっているなら、味方であるアースに居場所を教えない理由はない。ウィンディと繋がっているのは、奴の人嫌いの性格から考え辛い。だからだ」
「んー、俺ちゃんは違うと思うぜ、ご主人」
「どうしてだ?」
「いや、勘なんだけどさ、あの計算高い光のイグニスが、こんなトラブルだらけで勢いで辻斬りしでかすような予測不能の子供を味方に引き入れるとは思えないのよ」
その言葉に、遊作は少し黙った後で頷いた。
「...そうか、とすれば未知の勢力と繋がっていると考えるのが妥当か?」
「未知の勢力って何だよご主人」
「俺のサイバースデッキを残した謎の人物、というのは考えすぎか」
「そうだぜご主人。情報が無いからってなんでもかんでも何かに繋げて考えるの良くないぜ?コーヒーでも飲んで気分を変えなよ」
「...そうだな。すまん尊、草薙さん、見当違いの事を言ったかも知れん」
「だが、言われてみれば確かにStargazerには奇妙な面がある。少し本人に尋ねてみるとしようか」
「不霊夢、それでまともな返答が返ってくると思うのか?」
「もうメッセージを送った」
「嘘だろお前⁉︎」
「返答が来たぞ」
「なんだって?」
「ゴーストガールとは、以前リアルで知り合った知己である事、アースに関してはバックフリップを決めた時に妙な反応をしたから辻斬りを仕掛けようとした事がきっかけらしい」
「...ブレないなStargazerは」
「それから、我々イグニスの事は厄ネタの匂いがするから避けていた、との事だ。これに関しては私は何も言えないな」
「...結城天頂の危機察知能力か。たしか以前にもハノイの大襲撃を察知して警告を流していた事もあったな」
「ご主人のリンクセンスみたいな特殊能力かね?」
「かもな。ボーマンの動きに見当がつかない今なら、少し結城天頂について調べてみても良いかもしれないな」
「当の結城天頂は、とりあえず危険は無いと判断したアースの探索プログラムをリンクヴレインズ散歩部に配布しているな。アースの探索できないリンクヴレインズのセントラルエリアなどを中心に探しているようだ」
「確かに効果的だな。イグニスであるアースはどうしてもリンクヴレインズの中心部には近付けない。アクアがSOLテクノロジーに囚われているのなら、リンクヴレインズのシステムに組み込まれている可能性もあり得るな」
「...あー、敵が多いな畜生。デュエルでケリがつくなら楽だってのに」
「安心しろよ尊、そういった情報収集までは俺の仕事だ。ドーンと任せてくれや」
「お願いします、草薙さん」
それは、Aiがウィンディに誘拐される前日の事だった。
「この探索プログラム凄いな、今まで勘で見つけてたテクスチャのズレが丸見えだ。...ここ、やっぱダブってるな」
「何見てるの?Stargazer」
「ゴーストガールさん、どもです。いや、ここなんですけど、メッセージに添付した探索プログラムでここを見てくれませんか?」
「何...って何これ、バグ?」
「おそらく。時間経つと消えちゃうんですけど、新生リンクヴレインズってこんな感じにテクスチャがダブってる所がたまにあるんです。ゴーストガールさん的には何か知りませんか?」
「...わからないわね。でも、ただ事じゃないわね。勘だけど」
「同感です。重なったもう一つの世界、それがSOLの関与しているのなら安心なんですけど、そうじゃないならそんな事が出来るのは...」
「...イグニスね」
「やっぱ厄ネタでしたかあのにょきっと族。でも、逃げて良い感じのじゃないんですよねー」
これを見つけた事で、俺はもう逃げられない所まで来てしまっただろう、そんな予感がした。
「リアルダイレクトアタックだけは防げないから勘弁なんだよなぁ」
そう、一言口に出てしまったのは仕方がないだろう。
アニオリテーマは扱い辛いですねー。理想ルートは自力で編み出さないといけないんですから。
まぁ、そもそも展開させないというのがウチの天頂なので問題はありませんでしたが。