【完結】無限泡影が飛んでこないこの世界で元気に生きてます 作:気力♪
ゴーストガールの本拠地にて、財前兄妹と別所エマは持っている情報を擦り合わせていた。
Playmakerからもたらされた情報から、ネット経由のやりとりは危険だと判断したからだ。
「光と風、2つのイグニスの反逆ね」
「エマ、何か心当たりがあるのか?」
「ちょっとね。新生リンクヴレインズになってから見られていた現象らしいんだけど、テクスチャが二重になってる所を見つけたの」
「テクスチャが二重に?」
「リンクヴレインズそのものにそういう仕込みがされてるって線は考えなくて良いのよね、晃」
「ああ。だが、そんな現象に心当たりはないぞ。そのテクスチャの重なりの情報は本当なのか?」
「嘘をつくような子じゃないのは確かよ。今までは探索プログラムをフリーのものを使っていたから、情報を保存できなかったらしいの。彼がそれの証拠を見つけられたのは、イグニスの作った超高性能の探索プログラムを使い始めてから。リンクヴレインズのバグ報告にそのデータはあげられている筈よ。フォームに送ったのは私が見届けたから」
「そうか、後で確認してみる。とすれば、イグニスの隠れ場所がわかったかもしれないな」
「ええ、侵入方法は考えないといけないけどね」
「お兄様、どういう事ですか?」
「リンクヴレインズの基本システムに潜むようにイグニスの隠れ家があるのではないかという話だ。リンクを飛んでいるのか、侵入できない裏側を作ったのか、詳細はまだ不明だがな」
「では、私はリンクヴレインズの基本システムの見直しを社に提案してみる。2人は...」
「中立である二人のイグニスの捜索ね。もっとも、1人は行方不明で、もう1人は神出鬼没だけど」
「土のイグニス、アースの目的は水のイグニス、アクアの捜索ですよね?」
「そう、だからリンクヴレインズを巡ってアクアを見つけ出せば、二人纏めて釣り出せるって訳」
「頼むぞ...それと確認なんだが、土のイグニスと接触を持ったというStargazer、彼は大丈夫なのか?」
「ええ、彼のデュエルの腕は保証するわ」
「だが、彼は10歳の少年でしかない。リンクヴレインズを巻き込む騒動に巻き込んでいいものか」
「10歳⁉︎」
「言ってなかったのか」と晃はエマを睨み、「別に問題ないと思ったのよ」とそっぽを向く。
「じゃあ、私はちょっと学校帰りの少年に情報を伝えてくるわ。Playmaker達との連絡手段もリアル経由でできるのを探したいもの」
「なら、私はリンクヴレインズでアクアを探してみます。何にせよ、キーになるのは彼女ですから」
「では、行動開始だな」
三人は、それぞれがやるべき事の為に行動を開始した。
俺は今、今世最大の決断を迫られているかもしれない。
ここは、Den City の知る人ぞ知るカードショップ。リアルのカードを扱うオールドスタイルな店である。
そんな店に、たった6枚のカードが入荷した。
そのカードの名前は、“無限泡影”、個人的に思う最強の妨害トラップである。
抹殺の指名者という唯一のメタカードがあるが、それを扱うにはデッキの中に無限泡影を入れなくてはならない。自分ちょっとアレルギーなんです、許してください。
このカードの有用性が広まってしまったなら、このリンクヴレインズがOCG次元同様の修羅の世界になってしまうッ!
というのは正直別に構わない。だって今でも上位陣は修羅の世界に入ってるし。
だが、自分と同レベルのデュエリストを1つ上のステージに上げるポテンシャルがこのカードにはあるのだ。
「よし、買い占めよう」
「へぇ、良いカードじゃないのコレ」
「お、お姉さんは!」
「はーい、結城天頂くん」
「...クッ、ついにこのカードが世に出てしまう日が来たんですね」
「何苦渋の決断をしたような顔してるのよ」
「いや、お姉さんのデッキ的に、このカードは三積み確定でしょうから」
「そうね、ちょうど良いし買っておくとするわ」
「ああ、さらば我がパラダイス。まぁ、皆が使ってくるなら逆に対策楽ですけど」
この世界の法則は破壊されてしまった!おのれディケイド。
「はーい、6480円ねー」とエマさんと俺で3枚ずつ購入した金額を払う。こういう割り勘がさらっと出来るのは電子決済の強みだよなぁと思うのである。化石時代出身の自分としては。
「一枚千円って、大分安いわね」
「まだ世に出回ってないカードですから、適正価格が広まってないんでしょう。まぁ、細々と食いつないでる身としては微妙に痛い出費ですけど」
「あれ、動画の広告収入で稼いでるんじゃないの?」
「いえ、カード収納タイプで最新式のシステムに対応したデュエルディスクが開発中って話があるんですよ。Playmaker様々ですね」
「ああ、あなたもカード収納タイプのデュエリストだものね」
「自力でディスク作るのはちょっと敷居が高いですからね。有り難い限りですよ。なんで、今はなるべく節約生活なんです」
「具体的には?」
「ガチャを週一回までに抑えました」
「ゼロにしなさいな」
「いや、それは動画ネタとしてアウトですよ。人々は笑えるガチャ結果を求めてるんですから」
店内のデュエルスペースを眺められるベンチで、エマさんが奢ってくれたジュースを飲む。ドクペ派なのだが、まぁたまにはファンタでも良いだろう。
「それで、本題はなんですか?」
「あなたを通したPlaymakerとの連絡やイグニス絡みの話をネットでやるのは危険になってね」
「...ネットだと、監視されてるからですか?」
「勘がいいのね、その通り。今回の敵であるイグニスはインターネットにおいては無敵よ。対抗できるのは同じイグニスを持つPlaymaker達くらい」
「じゃあ、Soulburnerさんへの連絡は俺を通してのやり方から変えるつもりなんですか」
「そ。まぁ、怪しまれないようにダミーの連絡は入れるかもだけどね」
「...って事は、俺への要件ってのは」
「そう、彼らへの情報交換の方法を別に用意したいって事。あなた、Soulburnerの友達なんでしょ?何か知らない?」
「そうですね...言いたくないってのが本音です。あってるかは微妙なんで」
「...へぇ、知ってはいるのね」
「彼、ネットリテラシー低いんですよ。なんでチャットした情報を繋ぎ合わせると、彼がよく行く店がわかったんです」
「その店の名前は?」
「コーヒーの美味いホットドッグ屋でキッチンカーである事、それから考えると...」
端末を操作して食べログの星の高いその店を見せる。
「ここ、Cafe Nagi に来る可能性が高いかと」
「ま、行きつけの店がわかった所でどうしたって話なんですけどね」
「スパイ映画よろしく、暗号でも伝えてもらう?」
「出来たらカッコいいですけど、店主さんがSoulburnerを知ってると思います?」
「そりゃそうね。...とすると、向こうから見つけてもらうしかないか。ありがとう、ちょっとその店に行ってくるわ」
そんな時に、鳴り響くエマさんと俺のデュエルディスクの通知音
「どうしたの、ブルーガール」
「どうしました?ワンダーランドさん」
「今すぐ行くので、監視を続けて下さい」
「突入より、アースとコンタクトを取ることを優先して」
「同じ要件みたいですね」
「ええ。この店、確かレンタルスペースあったわよね奢ってあげるわ」
「ありがとうございます、お姉さん」
レンタルスペースに駆け込んで、太もものデッキケースからデッキを取り出す。
「デッキセット!in to the VRAINS!」
アクアの痕跡を見つけたというその場所に、俺とゴーストガールは向かっていった。
最速のデータストームに乗って駆ける俺とゴーストガール。
流れが荒いコースだが、目的地に行くにはこれが一番早い。
そうして追いついた、木人のアバター擬きを操るアースさんに。
「間に合った感じですね、アースさん」
「Stargazerと、誰だ?」
「私はゴーストガール。この子の...何かしら?」
「まぁ、敵じゃないですのでご安心を。ワンダーランドさんの観測データは見たんですよね、当たりですか?」
「まだ分からん、がイグニス痕跡なのは確かだ」
「じゃあ、護衛として使って下さいな。罠なら食い破る...事はできなくても時間稼ぎくらいはしますから」
「ちょっと、そこはカッコつけなさいよ少年」
「いや『ここは任せて先に行け!』を言えるチャンスと考えたら、つい」
「人間は、分からんな」
「なら、歩み寄って行きましょうよ。俺もアースさんのことちょっとしかわかりませんし」
「...やはり、分からん」
「考えるより今はスピード!スリップストリームでついてきて下さい!」
「...ああ!」
アースさんの前に出て最高速度を維持する。俺の身体は風の抵抗を受けるが、後ろのアースさんは抵抗を受けない。それにより加速ができるというものだ。
ちゃっかりアースさんの後ろにいるゴーストガールさんにはちょっと怒りを覚えるが、まぁ気にしないようにしよう。
「座標的には、あそこの小島です。ワンダーランドさん!」
「部長、報酬は?」
「ええ。カードパック一箱、確かに渡します。けど、それは後で。周囲の警戒をお願いします」
「わかった」
イグニスやSOLのトラップの可能性を考えて、ワンダーランドさんとゴーストガールには外に残ってもらう。
「この井戸が怪しいですね、先行します」
「いいのか?」
「トラップにあったら助けてくださいよ?初恋Aiさん」
「え、彼ってそうなの?」
「ち、違うとも!」
「はい、一番乗り!」
ボードで井戸の下へと降りていく。だが、案の定侵入者対策はあった。
「計ったように3つの分かれ道ですね」
「Stargazer、ブルーガール、これを」
「何?これは」
「通信プログラムだ。イグニスアルゴリズムを用いているため、妨害には強い。アクアが見つかったら連絡してほしい」
「「了解」」
さらっと渡される超高性能プログラム。それはイグニスの恐ろしさを感じさせるものだが、細かいことは気にしないでおく。
そうして別れてボードを走らせていくと、鳥籠の中に水色のイグニスがいた。彼女がアクアだろう。
「えっと、アクアさん?」
「人⁉︎来てはいけません!」
ディスクに引っ掛けられるデュエルアンカー。鳥籠を覆うように何かがいた。
「侵入者を発見、殲滅プログラムを実行します」
「もちっと段階踏んで欲しかったなー、俺としては」
アースたちに連絡を入れつつ覚悟を決めてディスクを構える。やるしかないのだろう。
「「デュエル!」」
「先行、手札のサンダードラゴンの効果発動、デッキからサンダードラゴンを2枚手札に加える。そして、
「先行で攻撃力2600のモンスター!」
「いいえ、アクアさん。こいつの厄介な所はそこじゃないです。墓地の雷族を除外することでの破壊耐性、そしてサーチ妨害能力。厄介な置き土産ですね本当に」
「雷源龍の効果により、雷源龍を手札に加える。これでターンエンド」
「...今の私の力でも、あなたのアンカーを破壊することくらいはしてみせます、逃げて下さい!」
「なんでですか?」
「そりゃ、負けたら死ぬ!みたいな空気ですけど、勝てるんで問題はないですよ。勝利の方程式は既に整っているので」
「...あなたは?」
「Stargazer。アースの、土のイグニスの友達になろうとしてる男です。俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン!」
「手札の
警備AI LP 4000 → 3000
「ここで妨害がないってことは、手札には妨害系手札誘発の類はないようですね。なら、フィナーレです!俺は、テラナイトモンスター、ベガとシャムでオーバーレイ!エクシーズ召喚、現れろ
「攻撃力2600、対応圏内」
「...攻撃力でしか見てないとかこのAIポンコツなのでは?」
「Stargazer!」「アクア!」と後ろからボードの音が聞こえる。クライマックスに観客はいる方が良い。
「手札を一枚墓地に送り、オーバーレイユニットを1つ使ってヴァトライムスの効果発動!スターライト・エクシーズ!光属性のテラナイトモンスターを重ねてエクシーズ召喚する!現れろランク4!
「攻撃力2100、対応圏内」
「効果見ろ圏外だよ!トライヴェールの効果!エクシーズ召喚に成功した時、このカード以外の全てのカードを手札に戻す!吹き飛べ、でっかいライオウ!」
「エラーコード2056、対応する戦略がありません」
「突貫で作ったのかねー、この雑魚。手札の、愚鈍の斧をトライヴェールに装備。効果を無効にする代償に、攻撃力を1000アップさせる。そしてバトル!トライヴェールでダイレクトアタック!トライ・アクス・ブレイク!」
「デュ、デュエル継続不能。システムを終了します」
「一生寝てろポンコツAI」
警備AI LP3000 → -100
「じゃあ、邪魔はどかしたぜ王子様。鳥籠を壊してやんな」
「あなたは!」
「アクア、私は君を助けに来た。今、この鳥籠を破壊してみせる!うぉおおおおおお!」
アースが防護ブログラムの組まれている鳥籠を身を削って掴み、力尽くでアクアが通れるまでの空間を開けてみせた。
その両腕を傷だらけにして。
「アース!」
「...君の、笑顔を見せてほしい。私はその為になら、戦える」
「俺たち部外者ですね、ブルーガールさん」
「そうね、罠もこれ以上なさそうだし、先帰っときましょうか」
「待て、Stargazer。君には本当に世話になった。礼がしたい」
アクアにダメージを負った両手を治してもらいながらアースが言う。
「じゃあ、1つだけ」
「なんだ?」
「俺と友達になって下さい」
「...トモダチ?」
「そ、友達。デュエルをすれば大体友達みたいなもんですけど、アースさんAIだからその辺わかってないんじゃないかなーと」
アースさんは幾分か迷った後、こう言った。
「ああ、これから私は君の事を友人と呼ぼう」
「...フフッ」
そんな姿を、アクアは笑って見つめていた。
「AIチップ状態良好。GO鬼塚、いつでも行けます」
「出動よ。イグニス2体、確保して見せなさい」
「アクアが解き放たれたか」
「やっぱ、あんな急造のセキュリティなんて付けない方が良かったんじゃないの?」
「どの道時間の問題だった。そして、SOLにこの情報が流れるように仕込みはしてある。私達が手を下さなくてもアースもアクアも消えるだろうが、念のためだ。ビットブートを何十体か派遣しておこう」
2つの悪意が、少年たちに迫っていた。
サンドラはでっかいライオウを処理する手段さえあればなんとかなります。ただし、テラナイトみたいな破壊以外の除去を持っているか、サーチ無しでユニコーンに繋がるような展開力のないデッキだとそれだけで死にます。恐ろしい限りですよ。