【完結】無限泡影が飛んでこないこの世界で元気に生きてます 作:気力♪
「プレイメーカー達、着きましたかね」
「あなたは行かなくて良かったの?」
「まぁ、行っても死体か人質が1人増えるだけですから」
Playmaker先輩とGo鬼塚のデュエルから、時は経った。
アースの力を手に入れ、完璧なデュエルタクティクスで先輩を追い詰めるGo鬼塚だったが、アンチスキルの効果がデュエル中に一度しか使えないという隙とも言えない隙を突かれ、新たなエース、ファイアウォール・
そして、アースの力はアクアさんの元へ行った。それが、先日の結果だった。
俺が舞台に上がるには、力が足りなさ過ぎた。だから、見て、叫んで、応援することしかできなかった。
それが、今の俺だった。
だが、戦えなくても出来ることはある。そのための散歩部の人脈なのだ。
今、敵の本拠地であるミラーリンクヴレインズに赴いた先輩達を万全の体制でバックアップできるのは、自分の積み重ねてきたものだ。
「さて、悲観してても仕方ありません。財前さん、ゴーストガールさん、リンクヴレインズ散歩部は全員配置についてます。異変があれば官民連携ですぐに対処できますよ」
「そして、君は司令塔としてSOLの情報の集まる私のそばにいると。...君は本当に小学生か?」
「失礼な、ピチピチの10歳ですよ」
「ピチピチって今日日魚屋くらいでしか聞かないわよねー」
中央広場を俯瞰できる位置に陣取って他愛のない話をしながら緊張を誤魔化す。
自分の知識をひけらかして、ニューロンリンクの事を言うことができたならもっと有効な手立てを取れたかも知れないが、証拠となるものを俺は何1つ見つけることができなかった。だから、ここまでしかできない。
原作よりも制御コンソールに近いこのエリアで、異変をすぐに食い止めることくらいしか。
「それにしても、人多いわね」
「一応、散歩部のアカウントではもうリンクヴレインズの接続障害の可能性って形でログインを控えてくれって宣言は出してるんですけどね。もう先輩達は向こうに着いたみたいですし」
「やはり、SOLを動かせなかったのが痛いな。ライトニングにこちらの攻勢を勘付かせてはいけないとは思っての事だったが、まさか広報部が目先の利益に走るとは思わなかった。すまないな、結城くん」
「Stargazerでお願いしますよ、財前さん。ほら、俺は形から入るタイプなんで」
「大人になりたいけど身長いじれる限界は超えられなかったからその中学生くらいのアバターなんだしね」
「成長期です。これから伸びるんですよーだ。と、長身イケメン高収入のカチグミ=サラリマンと長身美女トレジャーハンターに囲まれて言ってみるのでした。なんあやかれそうなんでパワー下さい、お二方」
「馬鹿ばっかり言ってんじゃないの」
「ふむ、何か君の成長を手助けできれば良いのだが。念を送れば良いのだろうか」
「ちょっと晃、真に受けてどうするのよ」
「なに、ちょっとした冗談だ」
「「マジに受け取ったと思った/わ」」
「...そこまで私はバカ真面目に見られていたのか?」
目をそらす俺とゴーストガールさん。そう思っていたのだからちょっと罪悪感があるのだ。
「っと、リンクヴレインズ各地でテクスチャの二重化現象が確認されてます。該当区域から人達を避難させますね」
「頼む。君たちに渡したのは、セキュリティ権限を持つボイスメッセージだ。だが、だからといって君たちが過剰に危険に首を突っ込む必要はない。音声を流したらすぐに遭遇した部員にも避難するように徹底させてくれ」
「了解です。...っと、追加情報です。該当エリアでログアウトを試みたアバターがいたらしいですが、不可能だったと。閉じ込められましたね、これは」
「懸念通りだな。...中央コンソールへ行こう。なにが目的かは知らないが、緊急ログアウトプログラムを起動させれば人員皆を少なくともライトニングの企みからは逃すことができるだろうからな」
「じゃあ、私はプログラム面でのバックアップを」
「俺は通信連絡の担当ですね。...プログラム関係を全部投げてしまってすいません。もっと出来ることがあったら良かったんですけど」
「十分だ、お陰で私は1人のプログラマーとしてこの事件に当たることが出来る。それは君の貢献だ」
「ありがとうございます、財前さん」
そうして、原作よりもかなり早くセントラルステーション地下のコンソールへと向かった自分たち。だが、案の定用意されていた緊急退避用の再起動キーによるログアウトは起動しなかった。
これが、イグニスの技術力か...
だが、それは織り込み済みなのだ。
リンクヴレインズそのものにトラップを仕込んでいたイグニスが、その根幹システムに細工をしていないはずがないからだと伝えることができたからだ。これは、エマさんとの縁が生んだ一手である。
「想定内だな。エマ、手伝え」
「了解」
「ダブってる部分は徐々に増えてます。下の方ではボードがないと危険区域から逃げられない人も出てきてますね。手の空いてる部員に救助のサポートをさせてますが、焼け石に水です。SOLの方からの連絡は、てんてこ舞いになってることと、それでもログアウトを実行しようとしていることが書かれています。ですが、音声通信は無理みたいですね。突貫の暗号回線仕込んだ緊急連絡網ではこの程度、って事なんでしょうか」
「そのようだな。だが、文字だけでも外と繋がれているのは大きい。リンクヴレインズの現状を送って、これ以上のログインが出来ないように警告を」
「すいません、もうやってます。名前勝手に使って」
「良い根性をしている!」
コンソールに文字を打ち込んでハッキングを続ける財前さんとエマさん。こちらもリンクヴレインズ散歩部の部員からの連絡を元に作ったリンクヴレインズ避難地図アプリケーションを更新し、それを共有することで避難の警告漏れのないようにしながら。
「ごめんStargazer、Playmakerの協力者からの映像に動きがあったの。解説してくれる?」
「はい...っと、ハノイのスペクターとライトニングのデュエル映像みたいです。内容は...エクストラリンクをスペクターが返した所ですね。リンクマジックを奪うタクティクス、ガンメタですけど有効です」
「どっちが勝ちそう?」
「ライトニングはエクストラリンクを返されて動揺しています。けど、その程度で情報量とその分析力の差が埋まるとは思えません。悔しいですが、スペクターの若干不利って所でしょうね」
「分析力?」
「この世界で
「入れても出ることは出来ない、か。だが、網を破る魚もいる事をAIに教育してやろう。第一階層突破だ。これで、コンソールの中にアクセスできる」
「次の階層へはどうやって侵入するつもり?」
「IDとパスワードが書き換えられていた以上、こちらの欲しいデータ、つまり向こうの急所となり得るデータには強固なプロテクトがかかっているだろう。正面からあたりつつ、抜け道を探す。それを続けていけば管理者権限までたどり着けるはずだ」
「気の遠くなる作業ね。でも、それしかないならやってやるわよ!」
「...すいません、悲報を1つ。スペクターが負けました。その意識データは向こうの手にあります。人質にする気ですかね」
「...私たちは私たちの最善を尽くそう。それしかないのだからな」
そうして、俺たちのカードを取らない戦いが幕を開けた。
Soulburnerがウィンディに勝ち、ブルーメイデンがボーマンに敗れ、草薙さんがPlaymaker先輩との戦いを強制され、それを先輩が心に傷を負いながら打倒し、ボーマンにSoulburnerが破られ、ライトニングとリボルバーが相打ちとなり。
先輩とボーマンの最後の戦いの幕が上がった。
「クソッ!ログアウトプログラムの一歩手前までやってきているのにッ!」
「イグニスアルゴリズムをさらに暗号化してあるッ!これを解くにはスパコン3台は要るわよ!どうするの晃!」
そうしてその時がやってくる。
「来い!我が意志の元生まれし新たなカードよ。マスターストームアクセス!」
ボーマンの背にある光の球体から、雷のように光が伸びていき、人々の頭を貫く。
原作知識のある俺にはわかる。
あれが、人の脳を奪うボーマンの最善最悪のタクティクス、ニューロンリンクだ
「...総員傾聴!セントラルエリアから1人でも多く人を逃せ!あの光はPlaymakerの敵の罠だ!当たると意識が持っていかれる!自分も逃げて、皆も逃せ!」
「...駄目ね、セントラルエリアに避難していたのが災いだったみたい。エリアがロックされてる、逃げられないわ」
「Lair Lordさん...それでも、一瞬でも長く逃げてください!こっちでなんとかする手段はあります!なので、必ず!」
「言わせたわね、あの子に」
「ああ...別ルートからリンクヴレインズを落とす。無理な壁を破るのがハッカーの仕事じゃない、結果的に辿り着ければそれがハッカーの正解だ!この階層からリンクヴレインズを強制シャットダウンさせる!」
「リスクはあるわよ!」
「責任は、私が取るさ!」
「そうはいかない、財前晃。念のため、お前たちには眠っていてもらう」
「財前さん、ゴーストガール!」
「わかってて躱せるなら苦労は無いわよ!」
「来るぞ!」
どこからともなく放たれる雷をすんでのところで一度躱して、しかし返ってくる雷を誰も躱すことはできずに貫かれた。
そうして、俺たちの意識は失われた。
ニューロンリンクにより、脳の処理能力の全てをボーマンに奪われて。
原作の、奇跡のような一瞬にたどり着かなかった。
だから、これから先は俺の異常さだけが際立った結末だ。
意識が、拡散する。だが、どこか懐かしいこの感覚を俺は知っている。
これは、あの日の死の直前に感じた感覚だ。
だから、自覚できた。
繋がる意識の中で、自分の存在を。
脳は、魂の情報を受け取るアンテナでしかない。だから、魂を強く理解していれば、動かすことはできる。身体じゃなくて、魂を。
リンクヴレインズでのアバターは、所詮形だけだ。
だから、1つの動作をするくらいなら魂だけで動かせる。そんな確信が
「ド、ローッ!来い、
コクリと頷くデネブ。その手がコンソールへと向かう。
プログラムの知識は俺にはない、しかし、
ならば、それを意思として伝えることで、デネブにハッキングの継続を行わせることができる。
財前さんのアカウントにメッセージが届く。リンクヴレインズの内側と外側、それを同時に攻撃する事でボーマンのマスターストームアクセスを妨害できるかもしれないという可能性を述べる言葉の筈だ。
これは、ドクターゲノムの言葉だ。脳のリソースを全て奪われてメッセージを読み取る機能がないから、原作知識での情報補完なのだが。
「ドロー、
エマさんのアカウントから攻撃に必要なデバイスを拝借し、ついでに作業の効率を2倍にする。
自分の
流れ込んでくる知識の奔流の中で、自我を保つ。関係のない知識の参照は最小限に、技術の利用は最大限に。
そして、次のスキル発動のタイミングで、リンクヴレインズに飽和攻撃を仕掛ける。管理者権限の近くでの情報の過供給。原作通りの方法だ。
やってみせる。やってやれる。
道を、希望を繋げば必ず道を拓いてくれると信じているから。主人公だからなんて曖昧な理由じゃなく、1人の不器用で優しいデュエリストとしての藤木遊作先輩を。
そうして、薄れゆく意識の中でデネブにプログラムの実行キーを押させた。
それが、この戦いの結末だった。
モンスターでハッキングをするという絵のシュールさ。まぁ人形なんできっとやれるでしょう。