【完結】無限泡影が飛んでこないこの世界で元気に生きてます 作:気力♪
というわけで、遊戯王VRAINS2年目、ボーマン編の最終話です、どうぞ。
皆へのニューロンリンクが断ち切られた。それが感覚として理解できた。どうやら藤木先輩達はやってくれたようだ。
だが、こちらからニューロンリンクにアクセスをするという蛮行を行った自分は未だボーマンの中に取り残されていた。
情報の奔流が比較的マシになったボーマンの中から、先輩達のデュエルを感じる。
どうやら、ボーマンの計算の上をいくタクティクスを藤木先輩は構築してみせたようである。ボーマンの焦りの感情が伝わってくる。
そして、どこかのなにかを探している奇妙な既視感も同時に感じられた。
これは、喪失感をそうだと受け入れることができなかったボーマンの心なのかもしれない。と、原作知識のある自分は邪推してしまう。
「人の心だ、土足で入るもんじゃないな」
そうごちて、ただ自我が拡散してしまわないように注意しつつのんびりと構える。
ああ、このままボーマンと共に消えてしまうのかと、なんとなく思いながら。
「ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルードでダイレクトアタック!ネオ・テンペスト・エンド!」
決着の一撃はボーマンの心を酷く揺さぶった。
あるいは、その前に言ったはずの先輩の言葉が原因なのかもしれない。
そして、デュエルに敗れて消えるしか未来のない運命になった時
俺とボーマンは、初めて相対した。
「ここは?」
「お前の中だよ。多分な」
「...なるほど、今際の際のプログラムが見せるバグか」
「浪漫がないねぇ、ギャンブルデッキ使いの癖に」
「あれは、私の足りない部分を補う為の最善の戦術だ。ただのギャンブルではない」
「ま、なんでも良いさ。俺はStargazer、結城天頂でも良いぜ。ボーマンさん」
「Stargazer...そうか、貴様がニューロンリンクを逆利用した人間か」
「そ、そのおかげでお前の中から抜け出せなくなった訳。だから、多分だけどお前と一緒に死ぬことになるよ俺は」
「...AIに、死はない」
「あるだろ、すでににお前は死を恐れ始めてる。繋がってるからわかるんだよ。その先にある終わりの先には何も無いって理解しちまってるから、今になってそれを直視してしまったから」
「わかったような口を効くな、人間である貴様には死の恐怖がないというのに」
「そりゃ勘違いだよ。俺は、死ぬ事の先を知ってる。だから、他の人よりも死がちょっとだけ身近なんだ」
「死ぬ事の、先?」
「ああ、理屈はわからないけど、俺は一度死んでいる。そうして生まれ変わったのが結城天頂っていうガキなんだよ」
「信じられないな、人の死の先は無だ。そこに変わりは無い」
「肉体的にはそうなんだろうよ。ただ、魂は違う。輪廻転生って言葉の通り、巡り巡って、新たな命に繋がっていく。それが、俺の体験した転生現象を感じたままに言葉にした死の先だ」
「魂...私たちには無いものか」
そう言ったボーマンの心は、どこか自身を嘲るかのような声だった。
ほっとけない。
自分がこのままでは死ぬ事、友人を彼らの計略により殺された事、そんなことはもう考えの外に出た。
俺は俺の人生最後の役目を、今決めた。
「なぁボーマン。違うだろ」
「...何がだ?」
「お前には魂がある、心がある。というか、じゃなきゃ伝わってくるかよ、お前の苦しみが」
「私が、苦しんでいる?」
「ずっとだったんだろ?納得したつもりになってても残ってた後悔。それは、お前が確かに愛を持っていなきゃ成立なんかしない。お前は、お前のその心の傷がお前に魂がある証拠だ」
「...そんなことは、ない。私は所詮0と1の組み合わせでしか無い。だから、Playmakerには敵わなかった。デュエルの中で繋がり進化していく彼に」
「0と1の中に魂がないなんで誰が証明した?」
「それは、悪魔の証明だ」
「つまり、可能性はゼロじゃないってことだ。だったら、心が叫びたがってる方を選べば良い」
「お前は、心で動いて良かったんだよ」
「...AIに、酷なことを言うな」
「でも、きっとそこを間違えてた。ま、教育してたのがライトニングなんだから仕方ないのかも知れないけどさ」
「...」
「だから、ほっとけない。間違ったままで死ぬなんて、納得できるか」
「君も私も死ぬのだぞ?何が出来ると?」
心で、叫ぶ。思いを、全力で。
「お前と友達になれる。一緒に死ぬんだ、それなら隣にいるのは他人や敵じゃなくて友達の方がいいだろう?
「そんな理由で、私と?」
「いや、お前が割と真面目系に面白い奴だってのもあるぜ?」
「...そうか、友達か。私には必要だとも思わなかったものだな」
「だが、友達とは何をするのだ?」
「決まってる、世界の危機も、俺たちの命も、全て放り投げてただあるがままにデュエルをしよう!全力の、全開で!」
「だって、デュエルをすれば大体友達だからな!」
「...理解はできないな。だが、心地がいい。そのデュエル、受けて立とう!」
「「
「ツイン・ハイドライブ・ナイトはヴァトライムスの効果を受けて闇属性を得ている!よってヴァトライムスの効果は無効!」
「知ってるよ、だから効果は使わないでぶん殴る!ヴァトライムスで攻撃!」
「アローザル・ハイドライブ・モナークの効果発動!ダイスを振りその出目に対応した属性のモンスターを全て破壊する!」
「当ててくるのは知ってるよ!カウンタートラップ、神聖なる因子!モナークの効果を無効にして破壊する!そして、墓地に送ったデルタテロスの効果によりベガを、ベガの効果で手札のアルタイルを、アルタイルの効果で墓地のデネブを特殊召喚!まだまだこれから!」
「シャムの効果発動!1000のダメージを与える!喰らえ!」
「インターフェアレンス・キャンセラーの効果発動!裁きの矢と相互リンクしているクーラント・ハイドライブのマーカーの数だけダメージをゼロにする!」
「やっぱやるな本当に!」
「ヴァトライムスとイゾルデを除外し、現れろ!カオス・ソルジャー -
「させぬ!カウンタートラップ、神の通告を発動!カオスソルジャーの効果を無効にして破壊する!」
「それをさせない!カウンタートラップ、神の宣告!通告を無効にする!」
「これで終わりだ!クーラント・ハイドライブで攻撃!裁きの矢の効果によりその攻撃力は2倍!デネブを破壊し、お前のライフはゼロになる!」
「最後の最後で、希望はここにやってきた!ダメージ計算前、オネストの効果発動!クーラントの攻撃力をデネブに加える!」
「...お前が手札に逆転のカードを持っていることはわかっていた。故に発動させてもらおう!カウンタートラップ、
「...あー、人生最後が黒星かぁ...でも」
「ありがとう、楽しいデュエルだった」
「こちらこそ、だ。これがはじめての楽しいデュエルだった」
そうして、心の中で握手をする。体を動かしているわけではないが、気分的に。
「じゃあなボーマン、来世があったら、次は勝つ!」
「...フッ、次も負ける気はない」
「...見ているか、ハル。私は使命を遂げられなかったが、満足だ」
「このデュエルで、お前に教えられた全てを使った。このデュエルで、お前の存在の本当の大きさに気付いた。私は、常に君と隣に居たかったのだ。それに気付けただけ、少しは上等だろう」
「ああ、そうかもな」
「...だが、1つだけ欲張らせてもらったよ、結城天頂」
「何?」
「旅路は身軽な方がいい。君と一緒に逝くのはきっと退屈しないだろうが、それでも私は君のこれからを見てみたい。私と君の出会う次の世界で、君ともう一度ただのデュエルをする為に」
「...ボーマン?」
「さらばだ友よ。しばらくは私の勝ちのままでいさせてもらう」
「人々の意識と共に帰り、笑って生きるが良い。私は、その方が嬉しい」
「...お前の心がそう言うなら、俺は否定はしない。けど、忘れてなんかやらないからな!ボーマンっていう友人がいた事を、絶対の絶対に!」
「それは...少し嬉しいな」
そうして、意識が浮上する。離れていた脳と魂の接続がリンクし、それと同時にボーマンとのリンクが切断される。
こうして、新生リンクヴレインズをサービス停止に追い込んだ事件、ボーマン事変は終了した。
数多の犠牲者の意識データが戻り、その中の1人の少年が友人の死に涙を流して。
「藤木先輩、バイトお疲れ様でーす」
「結城か、ホットドッグとコーヒーで良いか?」
「はい、あとちょっと勉強詰まったんで質問とか出来たらなーって」
「今度はどこで詰まった?」
「ボトムアップ型AIの学習システムの所ですね。なんか上っ面の理解はできてる気がしてるんですけど、どうもこの理論の延長線上にアースやAiさんみたいなイグニスがいるとは思えなくて」
「それはそうだ。彼らは天才中の天才が生み出した今の技術の2つ以上先のステージで作られた超技術だ。俺も知らんが、学習システムにデュエルのような異端のアプローチを加える事で今の技術で突破できない壁を超えていったのだろう」
「ですか...」
「だが、そんな壁を突破するのに必要なのは99%の努力だ。1%のひらめきは、今研究の最前線にいる天才が閃くだろうさ」
「つまり、今は焦らずに地力を鍛えろと」
「そういう事だ」
「ま、一足飛びにポンポンとは行きませんか」
「そういう事だ」
「イグニスに続く第2第3の意思を、魂を持つAIの作成。目標には少し高すぎましたか」
「弱音か?」
「いいえ、また燃えてきた所です」
道は遠く、子供の身にはまだ頂きは雲の向こうで見えないけれど。
それでも、出来ることから頑張ってみようと思う。
それが、2人のAIを友人に持ったStargazerと結城天頂のやるべき事でやりたい事だと信じているから。
「あれ、天頂どうしたの?」
「ちょっと藤木先輩に質問がてらエネルギー補給ですよ、ほむほむ先輩」
「うわ、また小難しいテキスト読んでるよこの10歳詐欺」
「仮にも電脳技術最先端のDen City High Schoolの生徒でしょうが、小難しいって投げてると留年しますよ?ガチに」
「それは勘弁かなぁ..遊作、今度の情報Bの試験だけど...」
「今は忙しい」
「ほむほむ先輩、いきなり他力本願とか流石ですね」
「仕方ないだろ、実技課題ありなんだから」
「...ハァ、店を閉めたらな」
「ありがとう遊作!」
「甘やかすと癖になりますよ、藤木先輩」
「犬じゃねぇよ、というかほむほむ先輩は止めろ、穂村先輩だ」
戦いを終えた戦士たちは、一時の休息を味わっていた。
「痛っ」
「どうした?天頂」
「すいません、ちょっと頭痛が」
そうして頭に浮かんできたのは、3年目の原作の情報。
AiがSOLテクノロジーを襲撃する事から始まるイグニスと人間の運命を決める戦いの幕開け。
その、最初期の部分だけが、新しく参照できるようになっていた。
「実績解除のトロフィーか畜生」
街頭ヴィジョンには、AI搭載可能人型ロボットSOLtiSの発売日を告げるCMが流れていた。
次の戦いが始まるのは、もうすぐだ。
現状3年目がどう転ぶかわからないので、またしてもこの小説はしばらくお休みとさせていただきます。
まぁ、適当な設定を捏造してデュエルだけを書く話が湧いてくるかも知れませんが、それはそれです。
ちなみに、ボーマンとのデュエルは走馬灯的な空間でやったので実時間は5秒程度くらいです。一瞬のデュエルであり、この話においてボーマンが皆の意識データを解放する決断したきっかけだったりしますが、それは蛇足ですねー。
ボーマンは良い敵役でした。