【完結】無限泡影が飛んでこないこの世界で元気に生きてます 作:気力♪
というだけだとなんか勿体無いので、フラゲされたにも関わらず使われなかった彼に出番を与えるべくちょっとやりたかったデュエルをば挟ませて貰いました。
「なんか、場違いでしたねー俺」
「いいんじゃねぇか?お前らしくて」
「どういう意味ですかほむほむさん」
家電の国でのロボッピとSoulburnerのデュエル、そしてロボッピから手に入れたAiさんの居場所のデータを賭けたSoulburnerとリボルバーのデュエル。
圧倒的なそのデュエルを、俺はただ見ていた。
おそらく何が変わったわけでもない。けど、それでも伝えたいことだけは伝えられたからそれで良いだろう。
「じゃ、俺はもうちょいリンクヴレインズで遊んできます。なんかシリアスなデュエルばっか見てたんで、馬鹿やりたい気分なんですよ」
「...そうか。なぁ、天頂」
「なんすか?ほむほむさん」
「俺さ、この事件が終わったらこの街を出て行くよ」
「それは、寂しくなりますね...つってもネットで繋がってれば割とすぐにまた会えるでしょうけど」
「確かにな。なにせ俺と天頂は」
「デュエルで繋がった友達ですからね」
どちらともなく笑い出す。男友達なんてこんなものだろう。
そういえば、現実でも友人と言える人ができたのは今世初かもしれない。
中学に入って周囲の精神年齢が上がったら、ちょっとずつ地を出していけるといいなーと思う。
まぁなんにせよ、藤木先輩次第だ。
あの人の行動で、この世界がどうなるのかが決まる。
だが、きっとそう悪いことにはならないだろう。あの人は、Aiさんの相棒なのだから。
それは、Aiさんのメッセージを賭けたデュエルが終わってすぐのこと。
「Playmaker!Aiさんに伝えて欲しい事があります!」
「どうした?」
「ボーマンは、最期に笑ってました。最後の最後に、俺とただのデュエルができたからって。だから、きっとAIだろうがそうじゃなかろうが関係ないんです」
「デュエルは、次のステージに進むための道標をくれます!Aiさんが何に悩んでるのか、どんな結末を望んでるのかはわかりません。けれど、先輩とのデュエルならきっとまだ見えてない未来に繋がる答えをAiさんは見つけられると思います!なんで!」
「世界がどうとかは置いといて、先輩のハートの全部でぶつかってきて下さい!それで世界がどうこうなるってんなら、その時はその時でなんとかしますから!」
「...ああ、任せろ」
それだけ言って、先輩はログアウトした。Aiさんの元に向かったのだろう。
先輩からあった僅かな迷いが取れて、いつもの無愛想な癖に優しくて頼れる先輩に戻った。アレなら、きっと大丈夫だ。そう思える先輩だった。
「ヘイ!そこの仮面の取れたお兄さん!ただのデュエルしませんか?」
「Stargazer?...何が目的だ?」
「目的なんかないですよ。ただ、全力で馬鹿やりたい気分なんで、それに合う実力者を探してたってだけですよ」
「...良かろう、貴様の言うただのデュエルとやらが何を導くのか、試させて貰おう!」
「「スピードデュエル!」」
「私の先行。モンスターをセット。ターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン。
「破壊されたのは、アネスヴァレットドラゴンだ」
「とすれば、ここは攻める時!カードを一枚伏せて、バトル!デルタテロスでダイレクトアタック!“デルタ・ブレード”」
「この瞬間、チェックサム・ドラゴンの効果を発動!相手モンスターの攻撃宣言時、このカードを手札から特殊召喚する。さらに、このカードの守備力の半分、つまり1200ポイントライフを回復する!そして、攻撃表示のこのモンスターは戦闘では破壊されない!」
リボルバー LP4000 → 5200
「だがダメージは受けてもらう!バトルを続行!」
リボルバー LP5200 → 3100
「エンドフェイズに移行!」
「この瞬間破壊されたアネスヴァレットの効果発動!デッキからヴァレットを特殊召喚する!」
「させねぇよ!手札の墓穴の指名者の効果発動!墓地のアネスヴァレットを除外しその同名カードの効果を次のターン終了時まで無効にする!」
「ほぅ、なかなかやるな」
「そりゃどーも!エンドフェイズ、まだあります?」
「いいや、もう終わりだ」
「ならターンエンド。さぁ、来ませい!」
「私のターン、ドロー!私は、マグナヴァレットドラゴンを召喚!そして、ヴァレットモンスターが存在する事で、アブソルーター・ドラゴンを特殊召喚!まずはマグナヴァレットでリンク召喚!現れろ、ストライカー・ドラゴン!ストライカーの効果発動!デッキからリボルブート・セクターを手札に加える!」
「展開のキーは止める!トラップ発動、ブレイクスルースキル!ストライカーの効果を無効にする!」
「残念ながら、こいつは囮だ。死者蘇生を発動!墓地のマグナヴァレットを特殊召喚する!」
「やっべ、繋げられた!」
「行くぞ、チェックサム、アブソルーター、ストライカー、マグナヴァレットの4体でリンク召喚!現れろ、ヴァレルロード・ドラゴン!アブソルーターがフィールドから墓地に送られた事で、デッキからヴァレットシンクロンを手札に加える!バトルだ!ヴァレルロードでデルタテロスを攻撃、そしてヴァレルロードの効果発動!“ストレンジ・トリガー”!デルタテロス のコントロールを奪う!そしてデルタテロスでダイレクトアタック!」
「やりやがる!流石はハノイのトップ!」
Stargazer LP4000 → 1500
「ターンエンドだ。さて、どうする?」
「そんなの、ドローしてから考えるさ!俺のターン、ドロー!...まずは墓地のブレイクスルースキルの効果発動!このカードを除外して、ヴァレルロードの効果を無効にする!ヴァレルロードが耐性を持っているのはあくまでモンスター効果に対してのみ!」
「良い目をしているな。それで、どうする?」
「当然、打開する!手札から、
「迎え撃て、ヴァレルロード!」
セイクリッド・ダイヤとヴァレルロード、二人の龍のブレスが衝突する。
そうしてブレスの応酬が終わった後に輝きに守られたセイクリッド・ダイヤが接近して尻尾でヴァレルロードを叩きつけた。いや、そう使うのかそこは⁉︎
リボルバー LP 3100 → 2900
「エンドフェイズ!そしてこの瞬間ヴァレルロードの効果が終了!デルタテロスはフィールドから墓地に送られる。よって効果発動!デッキからシャムを特殊召喚!そしてシャムの効果により、1000のダメージを与える!」
リボルバー LP 2900 → 1900
「念のため言っておきますが、セイクリッド・ダイヤは闇属性モンスターの効果ならどこであろうと無効にできる!そしてその効果にターン1制限はない!そして因子の効果によりセイクリッドダイヤはあらゆるカード効果から守られている!この布陣、突破してみせろ!リボルバーさん!」
「フッ、面白い!私のターン、ドロー!リボルブートセクターの効果発動!マグナヴァレットを守備表示で特殊召喚。さらに、モンスターをセット、ターンエンドだ!」
このターンで決めたいが、なんか嫌な予感がする。俺のライフは1500、ダイスポットのような面白モンスターの可能性を考えるに迂闊に手を出したくはない。かといって触らないのはもっと悪い。なので、ここは次のドローに任せよう。
「Stargazer、いや結城天頂。どうして今私とデュエルしようと思った?受けた私が言うのもなんだがな」
「今のあなたとなら、楽しいデュエルができると思ったからです」
「楽しいデュエルか...そんなものをする資格は私にはあるのだろうか?」
「ありますよ。だってあなたはなんだかんだでデュエリストじゃないですか。仲良しこよしじゃなくて、本気で削りあって、けれどそれがたまらなく楽しい。そんなのが俺の信じる楽しいデュエルです。そんな本気の削りあいだから、心の深い所で通じ合えて、一緒に笑顔になれる。それって、デュエリストの特権だと思うんですよ」
「罪人であってもか?」
「そんなこと、目の前のデュエルに関係あります?」
「...ないとお前は言うのか」
「はい!罪人だろうがAiだろうが精霊だろうが宇宙人だろうが、デュエルの前では皆平等です!だって、そっちの方が楽しいじゃないですか!」
「...フッ、おかしな奴だ」
「なにせ小学生ですから...というわけで、決めるぜ!俺のターン、ドロー!スタンバイ、メイン!アルタイルを召喚!効果発動!墓地のデルタテロス を特殊召喚!...カードを一枚伏せて、バトル!アルタイルでアネスヴァレットを攻撃!セクターで300上がっても守備力は1500!地味にシャムで破壊できなくて困ったわ畜生!」
「セットモンスターをシャムで破壊できれば貴様の勝ちだな。私のモンスターの守備力が1400以下か、賭けるか?」
「んな分の悪い賭けには乗らねぇよ!セイクリッド・ダイヤでセットモンスターを攻撃!」
「セットモンスターはシェルヴァレット・ドラゴン。守備力は2300だ」
「んなことだろうと思ったよ!けど、これでダイレクトは通る!シャムでダイレクトアタック!」
リボルバー、LP 1900 → 500
「バトルフェイズを終了、エンドフェイズ!」
「私はアネスヴァレットとシェルバレットの効果発動!デッキからヴァレットモンスターを特殊召喚する!」
「シェルバレットに対してセイクリッド・ダイヤの効果発動!リクルート効果を無効にする!」
「2体無効にしなくていいのか?」
「そしたらシンクロから打点負けするでしょうが」
「その通りだ。...全く、出会いが違えば君をハノイにスカウトしていたかも知れないな。それほどの実力を君は備えている」
「いや、断ったと思いますよ?基本的にデュエルは楽しく!がモットーなもので」
「そうか、残念だ。私は、エクスプロードヴァレット・ドラゴンを特殊召喚!」
「マジか⁉︎この人マジか⁉︎」
「私のターン、ドロー!私は速攻魔法、クイック・リボルブを発動!デッキからヴァレットを特殊召喚する!現れろ、ヴァレット・トレーサー!トレーサーの効果発動!エクスプロードを破壊しデッキからヴァレットを特殊召喚する!」
「通したらカウンター4のサベージ!当然止める!セイクリッド・ダイヤの効果発動!オーバーレイユニットを一つ使い、闇属性モンスターの効果の発動を無効にして破壊する!“ダイヤモンド・プレッシャー!”!」
「これならどうだ?ヴァレット・シンクロンを召喚!」
「カウンタートラップ、神の宣告!ライフを半分支払い、ヴァレット・シンクロンの召喚を無効にし破壊する!止め切ったぞ!」
Stargazer LP 1500 → 750
「忘れているようなので教えてやろう。これは、スピードデュエルだ!」
「データストームのないこの場所で、ストームアクセスをする気か⁉︎」
「いいや、今回のデュエルではストームアクセスをスキルにセットしていない。故にこれは、私自身のスキル!エクスプロードを対象にスキル発動!“ドラゴニック・リボルバー”!ライフ1000以下の時に発動可能!選択したモンスターより攻撃力の低いリンクモンスターを効果を無効にして墓地より特殊召喚する!蘇れ、ストライカードラゴン!ただし、このターン私は一度しかリンク召喚をすることはできない!もっとも、もうする必要はないがな!」
「...効果を無効にされていても、発動することはできるッ⁉︎二段サベージ狙いとか狙った後にそれかあんた!あー畜生、勝てそうだったのに!」
「私は案外負けず嫌いでな!遊びだというのなら全力でやる!」
「だからって露骨な引き分け狙いはどうなんだ!いや、負けるより百倍マシだってのはわかるけれど!」
「では幕を下ろすとしようか!エクスプロードを対象にストライカードラゴンの効果発動!そして、リンクモンスターの効果対象になったことでエクスプロードの効果が起動する!このカードを破壊し、お互いのプレイヤーに2000ポイントのダメージを与える!“ヴァレット・エクスプロード”!」
Stargazer LP750 → -1250
リボルバー LP500 → -1500
「次は俺が勝ちますからねー!」
「いいや、次は私が勝つ」
そんな言葉を最後に、リボルバーさんはネットの彼方に消えていった。
白黒ハッキリしなかったのは少し残念だが、それはいつかの未来に期待しよう。
「さて、俺はどうしますかねー?リボさんとのデュエルを動画にはできませんし」
なんとなく、終わったような気がしている。
藤木先輩なら、Aiさんがどんなに強くてもなんとかするだろう。
だってあの人は、Aiさんの相棒なのだから。
だが、その先の真の敵が現れるとかそんな気が全くしないのだ。不思議な事に、不思議な事に!
「まぁ、とりあえずデュエルだな!」
デュエルしていけば、そのうち情報は入ってくるだろう。そんな楽観的な感覚のまま、スピードボードを走らせた。
さて、今日のリンクヴレインズではどんな奴とデュエルできるだろうか。楽しみだ。
エピローグ
あれから、3ヶ月が経った。
藤木先輩はAiさんの死を看取ってから行方をくらませ、連絡は取れないでいる。けれど、なんとなくこの辺にいるんじゃないか?という感覚からちょっとネットを潜ってみると先輩らしき人の目撃情報があったりする。もしかしてこの感覚はリンクセンス(弱)なのでは⁉︎と今更気付いたが、世の中は平和で事もなし。
あれからちょくちょく連絡を取り合ってるリボさんに聞いてみるも、ネットの裏側で動いている邪悪な企みとかは今のところないとのこと。
さて、3ヶ月が経ちリンクヴレインズが数多のワールドのセントラルステーションになった事で、ライトニングの作ったのを奪ったあの島の価値がやばい事になってビビってる自分ではあるが、やっていることは昔と大して変わらない。散歩して、デュエルして、動画を作って、勉強をする。それくらいだ。
問題があるとすればAI関係の専門書を持ち込んだ事で学校で更に浮いた事くらいだが、リアルで友人を作るのは割と諦めているので大丈夫だ。うん、大丈夫。...いや、最近ちょっとリアルで顔を売っておくのも悪くないんじゃないかと思えてきたので、デュエル部に入ろうか迷っていたりするが、その程度の事だ。
ほむほむさんは彼女連れで度々リンクヴレインズに来訪し、結構エンジョイしてる。爆発しろ。
草薙さんは弟さんである仁さんと一緒にCafe Nagiを盛り立てている。そこにはちょっとしたインフルエンサーとなっている自分の宣伝(コーヒー一杯無料と交換)の力があったかどうかは定かではないが、そこそこの客足が伸びている。お陰で長時間ぐだぐたと居座れたあの空間は無くなってしまったが、それは時の流れという奴だろう。
そうして、世界は続いていく。自分の中にあった転生者としての知識の更新は止まって、自分の転生についての謎に関して調べられなくなってしまったが、それはそれだろう。きっと転生した意味だとか使命だとかは存在しないのだ。というか、あっても気にしてもしょうがない奴なのだ、多分。
なにせ、選ばれたのがこのお気楽者の自分なのだから。きっと使命があったのならその場のノリでやっているだろうし、使命がないのならその場のノリで生きていく。やることは変わらない。
なので、とりあえずデュエルをするとしよう。
丁度いい獲物がスピードボードで飛んでいくのを見つけたからだ。
「ヒャッハー!辻斬り良いですか?」
「...辻斬りが許可を求めるんですか?」
「はい、だって予定があったりとかして文句言われるのはアレですし」
「なら受けます。僕の星杯デッキの力を見せてやる!行くよイヴちゃん!」
「使う前からデッキを名乗るとは良い根性!しからば俺のテラナイトで押し通す!」
「「スピードデュエル!」」
拝啓、前世の皆様へ。私こと結城天頂は。
無限泡影が飛んでこないこの世界で元気に生きてます。
ここから星遺物を巡るストーリーが始まるような気がしますが、何だかんだモブな天頂とは関係のないことですのでこれにて終幕です。
これまで読んでくださり、本当にありがとうございました!