「同じく涼太です。」
「3月も末、もうすぐ新しい年度が始まりますね。」
「作者はこの1年間あまり成長してないように感じましたが」
「いやいや、成長してるよ、この前初段とったし」
「ようやくですか.....初段如きに3回も挑戦して...」
「だって難しいんだもの」
「だとしても時間かかりすぎです。この小説も」
「ギクッ」
「12月に作り始めて出来たのが3月って....」
「いろいろ忙しくて.....」
「言い訳言うんじゃありません!!」
「すいませんでした。」
「さて、弓矢第10巻始まります」
「ようやく弓道らしくなってきました。」
「それでは」
「宜しくお願いします」
ヴィシー学園
数日後
「うーん、よく寝たわ〜!!」
私、伊藤遥はこの学園に来て初めての週末を迎えた。
先日私はカリーネ達と供に弓道クラブを立ち上げた。それ以来しばらく活動は
無かったが、今日私達の弓道場を作るべく集まる予定を立てていた。
私は、窓を開け、気持ちの良い空気を取り込んでから髪を整え、階下の食堂に
向かった。下では既にカリーネ達が待っていた。
ここヴィシー学園では寮ごとに食堂があり、朝食と夕食はここで食べられるのだ。
「おはよーハルカ!!」
「おはよう、ハルちゃん」
「おはよー、みんな早いね!」
シレーヌを始めとしていつもの面々が私に挨拶をしてきたため、私は返事をしてから
いつも座ってる場所に座った。ソバールはちょっと眠そうである。
今日の朝食はパンとちょっとしたサラダのようである。
この時代に来てからは、常に洋食であったが、フランス料理が美味しいのかなかなか
飽きる事は無かった。
皆が一通り食事に手を付け始めたところでシレーヌが聞いた。
「今日ってアンタたちクラブの整備するんでしょ?」
「そだけど.......どしたの急に?」
突然彼女の口からそんな言葉が出てきたため、少しびっくりした。確か、まだその
件については話していないのだが..........
そんな私を見て彼女は苦笑いをしながら
「いや、この前ソバールに聞いてね。アンタたちキュウドウとかっていう
スポーツするんだって!?」
私達の間では、弓道場ができるまでは内緒にしとく予定だったんだが.....
三人の視線がソバールに集まる。
するとソバールはバツが悪そうに俯きながら目線をシレーヌに向け
「だってシレーヌちゃんがどうしてもって言うから.......」
再び視線がシレーヌに集まる。
「どったの?みんな呆れたような目をして?」
シレーヌはシレーヌで状況を理解していない様だ。頭に?を浮かべている。
そんな様子を見て、カリーネはハァ〜とため息を吐いてから説明した。
........................
.........
「そうだったんだ!!それはごめんね」
理由を聞いたシレーヌはテヘヘと頭を掻きながら謝った。
「もぅ!!次こんなことしたら許さないからね!!」
「私達にも隠してる意味があったから隠してたわけで、それを聞かれたらサプライズ
の意味が無くなるじゃない......」
「アハハ....以降気を付けます」
彼女は周りからの集中攻撃に苦笑いで返した。そして一段落ついてから
遠くの方を見ながらしみじみとつぶやいた。
「そうかぁ、黄金の国(ジパング)の弓、キュウドウねぇ..........私にゃ
どんなスポーツか想像がつかないけど、話聞いてるとなんかフェンシングで
教え込まれた騎士道に似たところが有りそうねぇ.......」
それから彼女はしばらくそのままボーッとしていたが、突然私達の方に振り向き
頼んだ。
「私にもそのキュウドウとやらの準備、手伝わせて!!」
私達はその提案に驚き、しばらく呆然していたが、準備をするに当たり
ちょうど人手が欲しかった所なのですぐに許可を出した。
するとソバールは残っていたパンを一気に口に放り込み、満面の笑顔で
「ありがとう!」
と述べてから全力疾走で部屋に戻っていった。よほど弓道の事が気になって
いたのであろう。
私達もそれから残りの朝食を食べ、各自準備のために部屋に戻っていった。
..............
.......
私達は作業着に着替えてから、クラブ棟に向かった。
弓道クラブには既に叔母さんが待っており、部屋には工具と供に木材が大量に置かれていた。
私達が揃ったのを確認した先生は、シレーヌを見て驚いた後に、今日する作業について説明した。
「さて、それじゃ今日はハルちゃんに言われたとおり、必要な材料を集めてきたけど、弓道については私よりも
ハルちゃんの方が詳しいから細かい事はハルちゃんに聞いてね!!
さて、まずは弓道場の弓を射るスペース射場とやらを作ってみよか、それじゃまず地上27サンチのとこに印を打って........」
私達は木材を加工するグループと組み立てるグループに分かれて作業を始めた。
私とカリーネは加工を担当し、ソバールとシレーヌは組み立てを担当した。
まずは射場の製作である。天井はあるため、床面だけ木材を組んで的の高さに合わせる。
私とカリーネは木材を何本か運び、印にそって切断した。
室内は広く、当初の予定よりも多くの木材を使用することになったため、時間がかかったが何とか昼前には終わらす事が出来た。
私達の横でソバールたちが釘を叩く音が聞こえる。こちらも作業が順調に進んでいるようだ。
作業が終わった私達はしばらく休んでいたが、組み立て作業を手伝った。
また、近くの河原から川砂を運んできて、大鋸屑と混ぜて安土も制作した。
途中、バケツをひっくり返して泥まみれにもなったが、楽しかった。
..............................
..............
一ヶ月後
「はぁ〜、ようやくできた!!」
シレーヌはロココ風の建物の中にある、和風の建物を見てつぶやいた。
射場の広さとしては日本のものと比べて狭いが、奥行きがあり、
射礼をするのには十分である。
また、的場に関しても、安土だけでなく、きちんと看的所まで設置されており、ギリギリだが広さだけなら5人立ちが回せそうである。
天井は屋内のため無いが、審査席もあるため、審査等にも使える。
(そもそもまだ審査員となる先生方自体フランスにはいないため、意味は無い。)
ちなみに神棚はカトリック圏のフランスに合わせてカトリック式の祭壇が置かれている。
叔母さんは出来たばかりの祭壇を使い、祈りを上げていた。
私達はしばらく思い思いにはしゃいでいたが、ふとカリーネが私の方を見ながら質問した。
「あれ、弓道場ができたのは良いけど、肝心の弓はどうするの?」
私はハッとなって私の弓しかない弓立てを見た。
「あっ、そういえば私のはあるけど.......」
ここに来て、1番の問題が発生してしまった。いくら施設が立派でも用具が無ければ元も子も無い。私は天井に目をやって考えた。
「どうするの〜ハルちゃん!?廃クラブの危機だよ!!」
ソバールがいつも以上にまどまどしながら聞いてきた。彼女も焦っているのだろうが、それ以上に私の方が焦っていた。文字通り廃クラブの危機である。
と、そこへシレーヌがやってきて提案した。
「弓なら古いけど倉庫に行けばあるんじゃない?」
私達はシレーヌの案内の元、倉庫に行った。
..................
.........
私は倉庫にあった古い弓?をみてつぶやいた。
「弓は弓だけど.....」
その弓にはハンドルがついており、予め巻き上げておいて放つ機械式の弓、弩弓いわゆるクロスボウであった。
フランスでは銃が発明される前、こういったクロスボウが使われていた。
クロスボウは予め巻き上げてから放つため、射手の技量はあまり重要では無く、銃のように錬成しやすいことからフランス国内では流行った。しかし、装填に時間がかかるため(それこそ、マスケット銃と同じくらい)100年戦争中のクレシーの戦いでロングボウ部隊を有したイギリス軍に敗北した。
以来、銃の発明もあって使われなくなったが、地元住民の手により大切に保管されてきたのだ。そのため、この機会に使ってもらおうと紹介してくれたのであろう。しかし
「ちょっと、これはね........」
このクラブが弓道じゃなくてアーチェリークラブか射撃クラブだったら良かったかもしれないが、流石に弓道で機械式の弓は無理がある。機械では無く、自分の力で引くことが大切なのである。その点、イギリスのロングボウだったらまだ救いがあったかもしれない。
しばらくは私の弓を回して使うか、私以外のメンバーはゴム弓を使ってもらうしか無い。せめて、日本と連絡が付きさえすれば買うこともできるだろう。
私達が困り果ていたその時
ガラガラ〜
「みんなこんなとこにいたの?」
一人ずっと祭壇で祈りを捧げていた叔母さんがやってきた。走ってきたようで未だに肩が上下している。
「どうしました?」
「ヴェルサイユから贈り物が届いたわよ!!」
ヴェルサイユから?私宛にだろうか?
「宛先は誰になってました?」
「弓道クラブ殿だって!!」
何と弓道クラブに対する贈り物であった。私達はそれが何か気になり我先にとクラブに戻っていった。
.............................
..............
「おぉ、これは.......!?」
私達が射場で見つけたのは絹の布に包まれた弓具一式であった。
「弓10本に矢60本、弓懸10個に弦30張り、道着一式10枚+胸当て10個......もう充分だね」
ここに来て一気に問題が解決したのである。ちょっと贅沢いうとギリ粉やイカ粉もほしいところだが、ひとまず弓を引く分には困らないであろう。
ふと、布の奥の方を見てみると私宛に手紙が届いていた。
ハルちゃんへ
お元気ですか?
この手紙が届く頃には学校生活にもなれてきた頃と思います。ペタン元帥を通してあなたの
最近の姿を聞いていると、あなたの笑顔が思い浮かびます。同封の弓具一式は母のちょっと
したプレゼントです。オランダを通して日本から直接輸入したものだから大切に使いなさいね。
またあなたに会える日を楽しみにしています。
マリーアントワネットより
よく見ると弓には柴田勘十郎の銘があった。京都の御弓師柴田勘十郎の弓は現代でも非常に優秀な弓であり、全国に数ある竹弓のブランドの中でも特に人気があり、多くの先生方が愛用されている。
私は静かに一つ一つ布巾で拭い、弓立てに立てた。それが終わると静かに皆の方に向いた。
皆はただ静かに私の事を見ている。
私は瞳に涙をうっすらと浮かべながら叫んだ。
「頑張ろう、みんな !!」
「王妃様のためにもやろう!!弓道万歳!!」
カリーネが答えるように叫んだ。
「弓道万歳!!」「弓道万歳!!」
ソバールも弓道部でないシレーヌもそれにつられて叫んだ。
私もそれにつられて万歳をしだし、弓道場全体が熱を帯びていた。
私達はしばらく熱に浮かされて万歳を唱えていたが、十分も経つとみな疲れて果てて、そのまま射場の床に寝てしまった。
「あらあら、風邪引いちゃうわよ」
その様子を端から見守っていた叔母さんは苦笑いをしながら
一人一人に毛布を掛けて回った。
そして、起こさぬよう静かに射場を後にした。
..................
翌日
私達は射場で目を覚ました後に風呂で汗を流し、軽食をとってから授業を受けた。
そして、放課後 シレーヌとソバールのクラス
「フゥー......今日も一日終わったかぁ、さて今日は久し振りに剣を振るいますか!!」
今日シレーヌは本業であるフェンシングをすることにした
「私もついて言っていい?」
ソバールは荷物を纏めながら聞いた。ソバールは弓道クラブに入っているがフェンシングにも興味があり時々フェンシングを見に来る。
「いや、だけど今日、ハルカが儀式するって言ってたよ?」
「儀式?何の?」
彼女はどうも覚えていないらしい。
「何でも、弓道を始めるのに必要な事らしい。」
彼女はそれを聞いて、ハッとなった。思い出したらしい。
「しまった、放課後できる限りすぐに来てって言われてたんだったー!!」
彼女は急いで荷物をまとめて出ていった。
「大丈夫かなぁ.....」
シレーヌはその様子を心配そうに見ていた。しかし
「まぁ、カリーネ達がいれば何とかなるでしょう!!さて、アタシは今日も頑張りますか!!」
すぐに気持ちを切り替えて剣を振るう仕草をしながらクラブへと向かった。
...............
弓道クラブ
ガラガラ
「ごめーん、遅れちゃった?」
ソバールが息を切らしながら射場の中へと入ってきた。彼女の様子からするに忘れていたのであろう。
「大丈夫、まだ始まってないよ」
私は肩をたたきながら席を示した。彼女達は今日の観客である。
「ちょっと準備してくるから待っていてね」
私は全員揃ったのを確かめ、射場脇の控室に入った。既に的は私の手で付けられている。
控室で私は久し振りに道着に袖を通し、袴を穿いた。近くの鏡に映る自分の姿が非常に懐かしく感じる。出来ることならお義母さん達にも見せたかった。
そして、弓の末筈を弓張に押し付け弦を張り、弓懸をつけて矢を持ちすぐにでも入場できるように準備する。
いよいよである。
私は扉を開くと執弓の姿勢を取り、呼吸に合わせて入場した。とたん騒がしかった射場が静かになり、厳かな雰囲気を作り出した。
私は、ボンヤリと斜め下を見ながら一歩一歩進んでゆく。そして、中まで来たところで静かに跪坐し、揖をした。
この時さらに空気が締まるように感じられた。非常に気持ちが良い。
揖をしたときの空気の余韻をたなびかせつつ、私は立ち上がり、
静かに射位へと向かい矢を番えて再び静かに立つ。
馴染みの射法八節に従い、ゆっくり確実に一つ一つの動作をこなしてゆく
そして、そのボンヤリとした目のまま的の方を向き煙のようにふんわりと打ち起こして行き、額を超えたあたりで引き分け始めて大三をとる。
その後、胸を開くように、ゆっくり大きく引き分けて行き、会の形をとる。
この時、焦る気持ちが腹の底から湧いてくるが、決して離れてはいけない。早けになってしまうからだ。
弓に身を任せ、傍からみると引いていないように感じるぐらいのバランスでゆっくりと押し開く。そして、体と弓が一体化し、進退極まるとこに達した時......
トンッ!! パーンッ!!
まさしく、空気を引き裂くように矢が放たれる。
あぁ、気持ちが良い。この瞬間が1番気持ちが良いのだ。
それから、再度座って番えなおし、2本目も同じように引いた。そして、静かな表情のまま、退場した。
そして控室まで行き弓をおいて射場に再び入った時、私は全員の拍手を受けた。
正直、普段通りに引いただけなのだが、拍手を受けるというのはいつでも気持ちが良い。
「やっぱ、生で見るのは違うわ!!」
「空気が違ったよ!!」
「私も早く引きたい!!」
拍手の後にさっそく三人から質問攻めにあった。まだまだ彼女達に弓を握らせるわけには行かないが、興味を持ってくれたなら幸いである。
私は丁寧に一人づつ質問に答え、その日のクラブは終わった。
まだまだ弓道クラブは始まったばかりだ!!
「10巻終わりました」
「ひとまず、約一年で進んだのが10巻でしたが、ある程度方向は固まりましたね」
「まぁ、しばらくはこの弓道関係の話しで進めていく予定です。」
「弓道やってる間に19世紀になっちゃったら悲しいですね」
「いや、ある意味それが1番幸せじゃないかな?」
「なんでです?」
「本来ならこの後、革命の嵐が来るんですから.......」
「確かに......多分作者のことだからひどい展開に持っていきそうですけど」
「まぁしばらくは落ち着いていると思いますよ?」
弓道場の出来たクラブは遥を中心として本格的に練習をはじめる
次回 射法八節