YUMIYA~ある弓道部員の物語~   作:伊藤ネルソン

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 ヴィシー学園で遥達が学生生活を満喫していた頃、宮廷では何やら不穏な空気が流れていた。 
「皆さんお久しぶりです、作者です」
「同じく涼太です」
「昨今物騒な事故や事件が多く心配です」
「特に交通事故が多い気がしてます」
「皆さんも気をつけてくださいね」
「さてそれでは弓矢12話始まります。」
「学校生活ばかりであったこの話も一度宮廷に目を向けてみましょう」
「世界がちょっとずつ動き出します。」
「それでは」
「「よろしくお願いします!」」


宮廷謀議

 1786年 6月

 

 この日ヴェルサイユには多数の政治家、軍人が集まっていた。

 彼らは皆ヴィシー派に属するものであり、昨今のフランス政治の主役である。

 

 やがて、側近に付き添われて国王、ルイ16世がやってきた。

 彼が椅子に座ると同時に話合いが始まった。

 

 1786年、日本でいうと天明6年。

 世界中を騒がせた異常気象による寒波をなんとか乗り切ることが出来たフランスは次なる問題に直面していた。

 

 それは宮廷を追放されたオルレアン派の貴族たちである。

 

 彼らは突如現れたヴィシー派の政策に不満を抱き、王妃マリーアントワネットを煽動しクーデターを起こそうと画策していたがアントワネットの報告により、国王に発覚し追放されていたのだ。

 

 しかし、彼らはパリロワイヤルで何やら怪しい動きを見せており、いつ動き出すか分からないでいた。

 

 我々は軍制改革により、武装蜂起を鎮圧するのに十分な力を手に入れる事ができているが、下手に動けば民衆を刺激しかねず、何もできずにいた。

 

 「.....1万丁のジャスポーや2万丁のロワイヤルよりもパリの民衆ほど有用な武器は無い」

 

 ヴィシー派の将軍、ラファイエットは呟いた。

 

 「パレロワイヤルを没収しなかったのは失敗でしたな」

 

  同じくヴィシー派の弁護士、ダントンも同様の事を考えていた。

 

 「まぁ、失敗を悔いていても始まらぬ。まずは有事の際如何にヴェルサイユを防衛し、またパリを奪い返すかだ。ペタン殿頼む」

 

 玉座に座る国王は話をすすめるべく切り出した。ペタン元帥は地図を広げた

 

 「はい、陛下まずここヴェルサイユの位置から考えましょう。ここはもともと狩猟の舘として建てらてたため、周りに森があり私達が防衛戦を行うとしたら、そこが主防衛線となります。」

 

 「うむ」

 

 国王は頷きながら聞いている。この森は普段狩猟の際に用いるような場所のため、彼にとっては庭先のような場所である。

 

 ペタンとしては森全体を要塞化してヴェルサイユを囲むマジノ線のようにしたかったが、そこまでするには時間と金が無いためすることが出来ない。

 

 そこで彼はラファイエットと相談した上でゲリラ戦をメインとした防衛戦をすることにした。

 

 「森の中心を通るいくつかの街道沿いにトーチカを何機か設置し、また森と森とを繋ぐように隠蔽された砲台を設置し迎撃出来るようにしていく予定です。」

 

 「さらにもし追加で費用と時間を下されば本格的な連絡壕も作れますが......」

 

 ペタンは森のさらなる強化を希望するが

 

 「森の強化をすすめたいのは山々だがパリを奪還するための戦力も整備しなければならない。故に今は辛抱してもらえるか?」

 

 「分かりました。」

 

 ペタンは渋々といった様子で引き下がった。

 

 「次に奪還用の戦力について説明いたします。」

 

 ペタンに変わって次にラファイエットが説明を始めた。

 

 「今ヴェルサイユには約20台のK1砲車を擁する軽砲連隊2個連隊と近衛騎兵連隊が常駐しており機動戦力に関しては非常に充実していると言えます。」

 

 もともとはスイスの傭兵部隊がメインであったが即応部隊を置くことによりとっさの作戦にも対応出来るようにしたのだ。

 

 しかし、

 

 「注意していただきたいのはこれら砲車はあくまで軽砲を牽引するためのものであり、発射までに若干の時間がかかります。また、砲の口径も小型のため打撃力に劣るものであります。

 そのため今牽引していた砲を搭載し、また口径も6.5サンチから7.5サンチに引き上げたk1'自走砲'を制作、試験をしておりますが、既存の部隊だけでは即応能力に不備があると思われます。」

 

 あくまで既存の砲車は牽引車であり砲は先込め滑腔砲である。故に今後、後送ライフル砲を載せた自走砲、k1自走砲を開発中であるがまだまだ試験の域を出ていない。

 

 「そこで、ヴェルサイユの側のセーヌ川岸に小規模な港をつくり、そこに河川砲艦を何隻か待機させておいて戦時には砲車と騎兵連隊をパリまで送り出し、上陸後支援砲撃を出来るようにしたいと思います。」

 

 「その港とやらはどこに作るのだ?」

 

 話を聞いた国王は疑問に思いながら聞いた。

 

 「ヴェルサイユにある程度近いセーヌ川湖畔の街、リュエイユのマルメゾン城辺りがいいでしょう。」

 

 ラファイエットは地図を指しながら説明した。

 

 マルメゾン城は後にナポレオンの妻、ジョゼフィーヌが買って整備した事で有名になる城館だが、この頃は荒れ果て小さな屋敷がぽつんと立っているだけであった。

 

 「この城の敷地内に入り江を作り、セーヌ川と繋げて秘匿港とするのです。そうすればオルレアン派にも気付かれずに戦力の充実ができるはずです。」

 

 「それと港だけでなく城館もきちんと整備してヴェルサイユにいる部隊のうち、約半数をそこに配備し、有事には即座に対応できるようします。また、小さな造船所も整備して海側から分解して輸送した砲艦をそこで組み立てられるようにします。」

 

 ここまで話をしたところでラファイエットは説明を止めたが、国王はうーんどうなりながら答えた。

 

 「計画としては確かに素晴らしいが、先程も話した通り予算がなぁ.....一応、特権階級から税金を集められるようになった事で多少余裕は出来たが、そこまでの戦力を充実させる余裕は無いのだよ。」

 

 「そこでです!!」

 

 ペタンはある資料を示した。

 

 そこには兵器の量と倉庫の空きについて書いてあった。

 

 「ここには各部隊の兵器の配備状況と倉庫の空きについて書いてありますが、現在軍はジャスポーやロワイヤル等新式小銃の配備を進めていったことにより、元よりあったシャルルビル等のマスケットが余ってしまっています。一部はジャスポーやロワイヤルに改造して使用しておりますが、このままだと倉庫の空きが無くってしまいます。」

 

 ここまで説明したところでペタンに代わりラファイエットが説明を始めた。

 

 「銃は持っているだけでも整備等保守作業に金がかかります。また、現状倉庫の足りない分は官庁等の倉庫を用いて保管しておりますが、軍施設ほど警備が厳重では無いため、暴動や蜂起が起きた際に叛徒に武器が渡る恐れがあります。」

 

 「確かに、それは大変だな」  

 

 国王は頷きながら聞いた。実際、バスティーユ牢獄襲撃の際にも、警備の比較的ゆるい廃兵院より武器弾薬が獲られている。

 

 「そこで、予算のためにも暴動を防ぐ意味でも旧式化した武器を廃棄または、譲渡して大規模な軍縮を行うべきです。」

 

 「廃棄はわかるとして、譲渡はどこにするのだ?.....ヨーロッパ中の国は比較的余裕があるから需要は無いぞ?......まさか!?」

 

 国王は気づいたようだ。

 

 「そうです。武器弾薬に余裕がない国...最近出来たばかりの国なんかよろしいでしょうな」

 

 そう、後の世界の警察、アメリカ合衆国のことである。

 

 独立戦争時、民兵主体の大陸軍があったが、戦争が終わるに従い、解体された。

 

 そのため、後の時代とは違い、国防にはやや不安が残る状態であった。

 

 実際、米英戦争時には首都ワシントンを英軍に占領されてしまっている。

 

 「かの国は出来たばかり故にイギリス辺りがまだ再度の植民地化を狙っていますし、先住民(ネイティブアメリカン)達としょっちゅう内戦している状態ですから、軍が不要と叫んではいても心の中では藁をも掴む様な思いでしょう。」

 

 「実際、ワシントン将軍も苦労されていました。」

 

 ラファイエットは自らが新大陸で経験した事を話した。彼はワシントン将軍の元、数々の戦闘で活躍しており、アメリカの実情をよく理解していた。

 

 「そこでこの機会に一斉に古い装備を売却しちゃいましょう。海軍についても同様です。今はまだ陸軍ほど旧式化が進んでいないとはいえ、ティゲル等鋼鉄の蒸気軍艦が登場した今、スピードは風任せで射程も短い戦列艦は飾り物にしか過ぎなくなってしまいます。」

 

 しかし、国王は再び指摘した。 

 

 「しかし、陸軍はよいとしても海軍は陸軍と違い装備更新....艦隊再編にはとてつもない時間がかかる。私が即位した頃から始めてようやく英国に対抗できるまで再建出来た海軍だ。それを潰すのはもったいないと思うが.....」

 

 「しかし、やれる時にやらないといつか追いつけないまでに戦力差が広がってしまいます。私が若いときのフランスもそうでした。」

 

 ペタンは第一次世界大戦前、英国で完成したある戦艦について思い出していた。

 

 「ある大戦争の前に英国で前例の無いとても強力な軍艦が登場しました。その船はあまりにも強力であったがゆえに今建造中の船すら旧式化させてしまうような存在でした。

 とある国はその情報を比較的初期の段階で手に入れ、思い切って建造中の船を再度設計変更することで難を乗り切りましたが、我が国はそれに気づきつつも対応するのが遅れ、今まで英国の後を追っていたはずが、そのとある国に抜かれてしまいました。

 

 ゆえに、艦隊の再編もやるべきと思った時にするべきなのです。」

 

 

 国王はそれを聞いて、しばらく考えた後、決断を下した。

 

 「分かった.....陸軍に関してはそちらのしたいようにすれば良い。旧式化した戦列艦とフリゲートに関しては売却しても良いが蒸気機関を積んだ5隻の新鋭戦列艦に関しては売却は認めん。艦隊再編がなるまでは戦列に残してもらう。後、売却するのも今建造中の4隻の航洋装甲艦が完成してからにすること。これが条件だが良いか?」

 

 「ご聖断、感謝いたします。軍備に関しては以上です。」

 

 「次にオルレアン派の内情について説明いたします。」

 

 今まで説明していたラファイエット達軍人にかわり、政治家たるダントンが説明を始めた。

 

 「オルレアン派には最初、私達パリの政治クラブの者がたくさん属しておりましたが、私達の工作により、大半を引き剥がすことに成功しました。しかし.....私達にかわり同じく宮廷を追われた貴族達が彼に近づいており、その中には旧王家の者も含まれて非常に危険な状態です。」

 

 「うーむ....オルレアン公に近づいた者達の名前はわかるか?」

 

 国王は困ったような顔をしつつ聞いた。

 

 「探りを入れてみたところ、私達のクラブからはエベールだけですがロアン枢機卿をはじめとする聖職者のグループ、アルトワ伯やコンデ公と言った王族達とその近辺の法服貴族が出入りしているようです。」

 

 そこまで聞いた途端国王は呆れた様な顔をしながら笑った。

 

 「ハハッ.....第三身分を助けた途端特権階級が皆、敵となったか、これは面白い」

 

 「何が面白いですか...国の一大事ですぞ!!」

 

 近くにいたティルゴーは堪らず声を上げたが

 

 国王は一通り笑い終えた後、落ち着いた表情で話した。

 

 「何も恐れることはない。我が王朝は成立過程から特権階級を目の敵にしてきたのだ、敵の数が増えようと屁でもない.....ティルゴーよ貴殿が改革を始めた時、味方はいたか?」

 

 「......いえ、おりませんでした。」

 

 「だろ、だが最終的には目的を達成して民の暮らしを楽にすることが出来た。」

 

 「我々は今その始めの状態に立っているのだ。今は先が見えずとも臆することなく足を踏み出せばいずれ成果を出すことが出来る。だから気にする必要は無い、全力で事に当たれ!!良いな!?」

 

 「はっ!!」

 

 その姿は王になったばかりの頃と別人の様にティルゴーの目に写った。

 

 ティルゴーはこの御方なら国を救ってくださるであろうと改めて実感した。

 

 「さて、話を戻しまして、先程のメンバーの中にはプロイセンやイギリスの者も含まれているようでして..... 」

 

 ダントンが話の続きを始めた。

 

 「やはりな....いくら国中に土地を持つオルレアン公といえど彼だけで事を成すのは難しいであろうな。よし、ひとまず今まで通り探りを入れつつこちらに引き込めそうな奴は引込め。そして英普の動きについても今まで以上に探りを入れよ!今日はこれを持って解散!!」

 

 国王が席を立つと共に集まっていた者達は帰り始めた。

 

 ラファイエット達学園の教師である者達も帰ろうとするが、そこへ父親の様な笑みを浮かべた国王がやってきた。

 

 「おっと、そういえばハルカは元気にやっとるか?」

 

 「はい、弓道場が出来てからというもの、弓道を教えるのに夢中なようで、楽しんでおられます。」

 

 それを聞くと国王はさらに笑顔を浮かべて

 

 「そうかぁ... いつか見に行ってみるか!!」

 

 「いつでも歓迎いたします。」

 

 「ハハッ、今日はありがとう、いい話が聞けた。」

 

 国王はそう言うと去って行った。

 

 

 

 ......

 

 

 

 後日、新たに就役した航洋装甲艦パリ級4隻の編入と共に、(旧式だが)大量の武器を搭載した戦列艦艦隊がほぼ全てアメリカ沿岸警備隊に移籍された。

 

 これにより一時的に米国の防衛力が格段に強まると共にフランス海軍の戦力に空白が生じたが、それもすぐに収まる事となる。

 

 また、アメリカ沿岸警備隊は戦列艦を有したものの使いみちが無く、フリゲートのみ哨戒任務に用いたようだ。(彼女達戦列艦が現役に復帰するのは海軍が設立されてからとなる。)

 

 

 

 

 ・航洋装甲艦パリ級

 

 就役 1886年

 

 同形艦 パリ リヨン ナント ルーアン

 

 速力 9ノット

 

 排水量 8000トン

 

 装甲

 舷側 305mm

 甲板 25~76mm

 主砲塔 220~330mm

 司令塔 150~200mm

 

 武装

 305ミリ後送ライフル連装砲2基4門

 15センチ後送ライフル砲4門

 10.5センチ後送ライフル砲14門

 7.5センチ速射砲4門

  

 注、モデルはイギリス海軍の砲塔艦ネプチューン

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

  ティゲル級装甲巡洋艦とセットで作られた、航洋装甲艦。ティゲル級では先込め砲と後送砲が混じった配置であったがこの艦では後送砲に統一するとともにティゲルよりも一回り大型の305ミリ砲を搭載している。その砲と装甲の厚さからこれを以て戦艦の始まりとも言える。しかし、この艦は305ミリ砲を乗せるために主砲が一段低いところにあり、荒天時、そこから浸水して沈没するリスクがあったりする。(実際似たような配置をしたキャプテンは嵐の中沈没した。)また、この艦は主砲を中央に纏めてあり、装甲もその周りに集中して施されている。

 

 




「さて、12話終わりました。」
「最初はあくまで内政だけのつもりが徐々に海軍の話に移って行ってましたねぇ」
「なんででしょうねぇ....自分でもちょっと気になります。」
「しまいにはブレストワークモニター飛ばして中央砲塔艦出してましたし....」
「社会人になってから文章もですけど、色々な所が下手になってきた気がしてきました。」
「まぁセミナーでも受けて頑張って治してください。」
「......できる限り善処いたします。」

 その頃、射法八節を徹底して習得したメンバー達は次の段階に移ろうとしていた
 次回 巻藁テスト!?
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