YUMIYA~ある弓道部員の物語~   作:伊藤ネルソン

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「皆さんこんにちは、作者です」
「同じく、涼太です」
「突然ですが、登場人物達のイラスト書いてみました。」
「突然ですねぇ、なんで書こうと思ったんです」
「いや、何か小説じゃ画像がなくて何か寂しく感じたんですよ」
「はぁ、それなら漫画にすればいいんじゃないですか?」 
「一番はそれなんですがね、だけど何からやれば良いか分からなかったので....」
「それでイラスト書いて見たんですか」
「まぁ、もし漫画化出来たら恐らくピクシブに載せると思うのであまり期待せずお待ちください。」
「はぁ、まぁ作者じゃ多分やる前にやる気を失せてしまいそうですけどね」
「はは、そうならんよう頑張ります。さて、弓矢21話始まります」
「今回はいよいよ、ヴィシー派とオルレアン派がぶつかります」
「その最初の舞台は学校」
「奇襲となった彼らはどう対応するのか」
「詳しくは」
「「ゆっくりお読みください!」」


フランスの一番長い日①ヴィシー攻囲戦

 

 1786年 ヴィシー学園

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 「ふぅ、ようやく午前終わったぁ」

 

 私、伊藤遥は机の上の教科書やノートをどけ、伸び伸びと背伸びをしていた。

 

 今日は普段以上に頭を使った気がした。

 

 「今日、理数系ばかりだったもんね。まあ、私しゃ逆に天国だけど...」

 

 私の思ってることを察したのか、隣のカリーネが答える。

 

 「ほんと、何がなんやらちんぷんかんぷんだったわよ」

 

 複雑な公式は何を示しているのか、考えるだけで頭が痛くなる

  

 「ハハッ、お疲れ様〜、さてそれじゃ昼行こか」

 

 「うん、行こ行こ♪」

 

 私達は勉強道具をしまい、食堂へと向かおうとしたその時

 

 「皆さん、ちょっと教室で待機していてください」

 

 突然、先生が教室へと入ってきて食堂へ向かおうとする生徒らを制止した。

 

 「何が、あったんですか?」

 

 「ちょっと今はお伝えできませんが、非常事態が発生しました。」

 

 非常事態という言葉に教室中がざわめきだす。

 

 いよいよ、昼は遠くなってしまった。

 

 「うーん、腹減ったなぁ」ぐぅ〜

 

 丁度待機状態にあった腹が鳴り出す。

 

 「非常事態だというのにハルちゃんは相変わらず能天気ね」

 

 カリーネが私の腹の音を聞いてクスクスと笑う。

 

 それに私は頬を膨らませながら

 

 「だって、見知らぬ非常事態の前に今感じてる空腹の方が深刻なんだもの....」

 

 そう答えた直後、

 

 「伊藤遥さん、ちょっと用事があるので来てください」

 

 先生より呼ばれた。

 

 「非常事態が身近になったわね」

 

 カリーネが笑いながら話した。

 

 「あんまり笑えないことだろうけどね」  

 

 「まぁ、頑張れ」

 

 カリーネが親指を立てて見送る。それに私も手を振って答えた。

 

 ......

 

 職員室につくと、ラボアジエ博士や叔母さん等、この学校に勤務中の全先生が集まっていた。

 

 それだけで事態の重大さが分かる。

 

 「さて、今日皆さんに集まってもらったのは他でもありません.....つい先程、鉄道局よりヴィシー、ヴェルサイユの中間地点でペタン、ダントン両先生の乗車する列車が爆破されたとの連絡が入りました。」

 

 そう校長代理の教頭先生が伝えると、室内がざわつく

 

 「ペタン校長は...ダントン先生は無事なんですか!?」

 

 「残念ながら生死については不明ですが.....それよりも重大なこととして連絡後、ヴィシー駐屯軍が事故現場の調査に向かおうとした所、オルレアン派の軍勢に襲撃され、退却したようです。そして、退却時、市街へ抜ける道を偵察した所どの道もその軍勢に封鎖されておりました。」

 

 私は、あまりの展開に頭が追いついていなかった。

 

 つまりは

 

 鉄道が爆破、ペタン、ダントン両氏行方不明

 

 フィリップエガリテ反乱、軍勢ヴィシーへ、駐屯軍が退却するほどの大軍

 

 といったところであろうか。

 

 私は考えていくにつれ、顔から血の気が引き出した。

 

 「軍勢は!....どれほどなのです!?」

 

 普段は冷静な数学の先生も声を荒げて質問する。

 

 「正確に伝えることは出来ないと思われますが、鉄道沿いに展開する正面兵力だけでもおよそ、25000!」

 

 「対するこちらは....」

 

 「我々は....駐屯軍のみで5000です」

 

 室内に暗い空気が流れる。

 

 約5倍もの兵力差はいかんともし難い。

 

 しかし、そこで私はふとあることに疑問を感じ質問した。

 

 「あれ、先生!私達が負けることは分かりましたが.....私が呼ばれたのって、ただそれを伝えるためですか?」

 

 わざわざそれだけのために呼ぶことはないだろう。

 

 「はい、貴女をお呼びしたのは.....先程オルレアン派の軍勢より軍使がやってきて、ある条件を飲めば、封鎖を解き、飲めなければ......」

 

 ここで、教頭先生は息をつまらせる。なんとなく察しはつくが

 

 「飲めければ?」

 

 「返答のない場合、午後16時を以て本校に総攻撃を仕掛けるとの話です。」

 

 「......それでその条件と言うのは」

 

 私は、場の空気を察し聞いた。

 

 「1に、本校の武器弾薬を引き渡すこと、2に、教師にオルレアン派の者を雇うこと、3に、本校の生徒を反乱軍に参加させる事....4に....貴方達王族方の引き渡しとありました。」

 

  「....」

 

 やはり、想像通りの答えではあった。

 

 正直、私が行けばそれで済むのであれば行ったであろう。

 

 しかし、我々は王族である、故に味方にとって錦の御旗でもある。

 

 そのため、簡単に結論を出すわけには行かない。

 

 また、今は近世であり、戦力差も圧倒的である。故に約束を反故にされる恐れが高い。

 

 私は、悩みに悩んでいたが

 

 「教頭!生徒を逃がす方法は無いんですか?」

 

 叔母さんが質問する。普段は落ち着いた叔母さんも、今日は必死の表情をしていた。

 

 「ひとまず、学校外に出られる抜け道はどこも空いておりましたが、市外へと通ずる道はどれも駄目なようで、万が一戦闘になった場合、市内も火の海となるでしょう」

 

 「そうですか.....」

 

 叔母さんは落胆したような表情をしたが、すぐ決心をしたようで

 

 「分かりました!ハルちゃん、私と一緒に行こ!」

 

 叔母さんは私の手を取った。

 

 当然ながら周囲は猛反発する。

 

 「お止めください!先生の御身に何かあったらどうするんですか!」

 

 「そうですよ、私達には貴方方をお護りする義務があります」

 

 その声を聞き、叔母さんは困ったような表情をしたものの、すぐにキリッとした顔をして

 

 「ならば私達、王族にも'高貴なる義務'があります。臣民の安全を護るのも私達の宿命です」 

 

 こう言われると、皆何も言えない。

 

 その様子を見た叔母さんは、顔を崩し...

 

 「ふふ、皆さん、心配してありがとうございます。でも、大丈夫です。彼らも同じ臣民なら私達王族を存外には扱わないでしょう」

 

 「.....」

 

 静かな職員室の中、彼女は私申し訳なさそうに語りかけた。

 

 「ハルちゃん、ごめんね、本来は関係ないはずなんだけど....」

 

 「いえ、大丈夫です。養子にしていただいた時点で覚悟はしておりましたから」

 

 「そっかぁ.....ハルちゃんは強いなぁ」

 

 叔母さんはしみじみという。

 

 「いや、啖呵切ってみせた叔母さんには遠く及びませんよ....」

 

 「オホホ、ちょっと元気が出たわ.....さて、行きましょうか」

 

 「はい」

 

 私は彼女に連れられるがまま、職員室を出ようでした、その途端

 

 「「待ってください!!!!!」」 

 

 扉から多数の生徒が入ってきた。

 

 「なんだね!、君たちは、教室で待機するように行っておいたはずだろ!?」

 

 先生達が狼狽えながら注意する。

 

 「すいません、つい気になって聞いちゃいました!だけど.....全て聞いた上で、行かないで下さい!」

 

 代表とおもしき生徒が私達に訴える。

 

 「ごめんね、だけど私達が行かないと皆を助けられないのよ?」

 

 叔母さんが苦笑いをしながら答える。

 

 「僕たちは大丈夫です。叔母さんもハルちゃんも大切な仲間なんだから...仲間を見捨てることなんて出来ません!」

 

 「だけどね.....」

 

 「じゃ、逆に聞きます!僕たちはなんの為に軍事教練なんて受けたんですか!?」

 

 「そりゃ、来る時に自分の身と皆の身を護るために決まってるじゃない?」

 

 「今はその来る時じゃないのですか?」

 

 「うっ......」

 

 叔母さんは、返答に窮した。

 

 確かに、日頃の訓練の成果を生かすとしたら今をおいて他にない。

 

 「僕たちが貴女方をお護りします。だから行かないで下さい!」

 

 「.......」

 

 「さぁ、エリザベート先生、皆もこう言ってるのですし、大船に乗った気分でいて下さい」

 

 教頭先生が叔母さんの肩をさすりながら語りかける。

 

 「皆......ごめんね....」

 

 それから叔母さんは肩を揺らしながら、たくさんの涙を零して泣いた。

 

 普段はあまり感じなかったが、王族としての重圧を常に抱えていたのだろう。

 

 「ハルカさんはどうします?」

 

 クラスメイトが一応とばかりに聞いてきた。

 

 「どうするも何も、残るしか選択肢は無いよね、こんな空気じゃ」

 

 「ハハハッ、それもそうですね」

 

 重くどんやりとした空気が若干晴れたような気がした。

 

 「さて、ひとまず、結論は出ましたが、この後どうします?」

 

 今まで無言を貫いていたラボアジエ博士が皆に質問した。

 

 「防御体制を敷くとともに、街の人々を本校に避難させなければなりません。タイムリミットは4時間です。戦時校内規則に則って急ぎ行動しましょう!」

 

 「「はい!」」

 

 教頭先生の指示を合図に先生達は準備に取り掛かった。

 

 戦時校内規則とは、大規模な内乱や革命等に備えられた、この学校独特の臨時規則であり、

軍事教練などもこれを元に行っている。いわば緊急対応マニュアルである。

 ペタン元帥の提唱でもしもの時に皆の身を護れるよう制定された。

 

 私は忙しくなった職員室を後にし、教室へと戻った。

 

 .......

 

 教室では既に皆が作業着に着替え、装備を身に着け待機していた。

 

 私も急ぎ、着替えを済ませ、席に着席する。

 

 私が座ったのを確認した先生は、真っ先に頭を皆に下げた。

 

 「皆さん、すみません、出来ればこんな事に付き合わせたくなかったのですが、止むを得ずこんな事態になってしまいました。本当に申し訳ございません。」

 

 先生の言葉に一瞬教室がざわつくもすぐに静かになる。

 

 「皆さんには、裏山の10.5サンチ砲3門をグループごとに役割を分けて運用してもらいます。指示は適宜私の方から行うので、その指示に従い行動してください!」

 

 その後、私達は保管庫より機材、弾薬を持ち運び、裏山へと移動した。

 

 この学校はヴィシー駐屯軍の施設も隣接しているため、非常に広く、また有事の際の防衛拠点としても用いれるよう、予め陣地が構築されている場所がある。普段は、土に埋もれて、城跡や廃墟のようにしか見えないが、少し手を加えれば充分要塞として機能する場所である。

 その陣地類が最もよく集まった場所こそが、ここ裏山である。ここには10.5サンチ砲3門を始めとして、6.5サンチ砲多数やトーチカ等も設置されており、また、いくつかの陣地は地下壕で繋がれてある。その様は後の硫黄島の摺鉢山を彷彿とさせるものであった。

 

 私は、そこに付き、弾薬を並べると一発装填し、拉縄を握った。

 

 照準器より先を覗いても、間接射撃のため、盛り土しか見えないが、周りを見るとどんどん作業が進んでいるようだ。来たばかりのときよりも、塹壕がたくさん掘られ、土嚢も高く積まれている。

 

 「ハルちゃん、ちょっと暇だね」

 

 「そだね、準備といったら土嚢積みぐらいしか無いし....」

 

 となりで砲弾を抱えるカリーネがあくびをする。最初こそ緊張でガチガチだったが、しばらくすると現状にも慣れてきた。

 

 私は、土嚢を積みながらチラと時計を見る。まだ時間まで2時間ほど残っているようであった。

 

 「カリーネ、ちょっと山頂から偵察しよ?」

 

 「OKー、ちょっと待ってて」

 

 私とカリーネは土嚢を積んだ後、許可を経て、裏山の山頂に登った。

 

 

 私は、そこで双眼鏡を覗き、そこからの光景を見て息を飲んだ。

【挿絵表示】

 

 

 「ハルちゃん、どう?」

 

 「.....いや、なんというか、大阪夏の陣とかスターリングラードとかこんな感じだったのかな?」

 

 「?........ッ!!何これ!?」

 

 カリーネは私の答えに困惑したが、私の双眼鏡を覗くと彼女は私同様に驚いた。

 

 報告ではまだ街の外にいた敵軍だが、既に市街へと侵攻し、学校をぐるりと取り囲むように包囲していた。我々の駐屯軍は少しでも遠くで食い止められるよう、ぎりぎりのところまで塹壕を掘り、待機しているが、この軍勢であれば突破られるのも時間の問題であろう。

 

 「ここまでとはね.....」

 

 「......正直、援軍が来ないと無理だよね」

 

 私達はへなへなと座り込んだ。事態はあまりにも絶望的である。

 

 正直私一人が捕虜になったほうが良かったのかもしれない。

 

 「ハルちゃん、これ」

 

 カリーネが自らの首に下げていたペンダントを外し、私の首にかけた。

 

 真ん中にはルビーとおもしき宝石が輝いている

 

 「これは....?」

 

 「私がちっちゃい時にもらったお守り。なんでも厄を取り除いてくれるらしいのよ....」

 

 カリーネが空を眺めながら話す。その肩はどこか切なく感じた。

 

 「だけどそんな大切なものなんで私に?」

 

 「もし、私に何かあった時の形見.....ハルちゃん大切にしてね」

 

 「形見だなんて.....」

 

 私は胸が締め付けられたように感じた。カリーネたちと出会って約半年、短い期間とはいえ、とても楽しい毎日であった。それがまさかこんな形で終焉を迎えるかもしれないと思うと悲しくて堪らなかった。

 

 「じゃあ、カリーネ私からもこれ!」

 

 私は、普段使っている愛用の弓懸を渡した。

 

 「えっ....これって....」  

 

 「そう、私のゆがけよ」

 

 さすがのカリーネも驚いた。まさか自分の普段使いの道具をもらうとは思ってなかったであろう

 

 「でも、これ私が、もらっちゃったらハルちゃん.....」

 

 弓を引くのにはかけがえの無いもの、つまり

 

 「そうよ、弓が引けなくなる。だから無事この戦闘が終わったら返しなさい。私もペンダント返すから....」

 

 「それじゃ、形見分けの意味無いよね?」

 

 カリーネが、苦笑いをしながら聞いてきた。

 

 「だからよ....お互い大切な物を返すためにも生きるのよ!」

 

 「ハルちゃん....そうよね、弱気になってても始まらないわよね!」

 

 カリーネが頷きながら答える。

 

 「そうよ、大丈夫!私達なら大丈夫よ!お互い生きて、凱旋しましょう!」

 

 「うん!」

 

 私達はその後砲台へと戻っていった。

 

 ........

 

 午後3時50分

 

 前線において、白旗を掲げ私達王族を待っていた、使者が陣地内へと戻っていく。

 

 そして

 

 午後4時

 

 ガーン、ゴーンと教会の鐘が不気味に鳴り響く。

 

 と次の瞬間!!

 

 ドーンッ!!ドーン!!    ヒュルヒュルヒュル〜

 

 多数の咆哮と共に砲弾が飛翔音を立てながら山なりに飛んできた。

 

 「衝撃に備えー!!」

 

 先生がそう叫ぶ前に私達は塹壕の床に屈みこんだ。

 

 パーンという破裂音、衝撃と共にあたり一帯の土がえぐられ、木が倒される。

 

 幸い、塹壕の中のため、中に落ちない限り影響はほとんど無いが、何度も訪れる振動に、気がおかしくなりそうになる。

 

 砲撃が一段落ついた所で私は、そっと顔を出し、外の様子を眺めた。

 

 こちらに落ちてきた砲弾は榴弾のようで至るところで小火災が起こり、カモフラージュとなっていた木々も皆なぎ倒されている。

 

 肝心の砲に関しては窪地の内側にあるため、敵からはどこが陣地か分からなくなっているが、

 

私達の退避壕は外からすると丸見えであろう。

 

 私達はこの隙に、先程の砲撃の届いていなかった更に奥の退避壕へと撤退した。

 

チラと学校を見ると、立派な校舎には見るも無残にチーズのように至るところに穴が空き、廃墟のような様相を晒していた。多分こちらは普通の砲丸で砲撃されたのであろう。

 

 それでも崩れてはいないところに設計者の意地を感じる。

 

 私達が後ろの退避壕に撤退した後、砲撃の主眼は裏山陣地から学校前の塹壕群へと移っていった。

 

 いよいよ、敵の侵攻が始まるのであろう。

 

 まばらに聞こえる砲撃を聞きながら、私達は各砲の配置についた。

 

 「念の為、異常が無いか点検するように」

 

 先生がそう皆に伝える。

 

 私は、一通り、いじってみたが、先程の砲撃で、多少土埃をかぶっているもののどこにも異常は無く、問題なく使えた。

 

 私は、拉縄を握り次の指示を待った。

 

 .......

 

 しばらくすると、校門の方より鼓笛隊の演奏が聞こえてきて、その後ゆっくりと丘を登ってくるように敵の大軍が姿を表した。

 

 全方位より侵攻しているようだが主攻は校門であろう、びっしりと隙間なく侵攻している。

 

 正面から当たったら我々は一溜りもない。

 

 だが、我々にとって幸運な事に、彼ら反乱軍は貴族の集合体であり、統一された軍集団ではない。そのため、武器もマスケットからボルトアクションまで様々であり、服装も近代戦向けの地味な服装よりきらびやかな服装の連隊が多かった。

 

 また、そんな状態のためボルトアクションを使いつつも、戦列歩兵形式で陣形を組みつつ進軍していた。

 

 私達はその状況に一縷の希望を込めた。

 

 前線に張り付く駐屯軍の部隊は皆銃口を敵に向けつつ、塹壕の中に屈んでいた。敵の斉射を避けるためである。

 

 私達も万全の体制で指示を待った。

 

 500メートル、400メートル、350メートル.....ザッ、ザッと軍靴を響かせながら敵は進軍する。

 

 とっくにライフルも、砲も有効射程に入っているが、まだ射撃はしない。

  

 300、200、100メートル....まで進んだところで敵の進軍は止まった。正直マスケットの有効射程にはまだまだ遠い。しかし、我々の設置した鉄条網が50メートル地点にあるため、これ以上戦列を維持したまま侵攻するのは困難であると判断したようだ。

 

 ここまで進んでから、引き返すわけにも行かず、指揮官はやれやれといった表情で指示をした。

 

 すると軍勢の中ほどより白旗を掲げた軍使が出てきて、我々に問いかけた。

 

 「これは最後の機会である!今王族共を引渡せば、それ以上侵攻しない。しかし、それを拒めば貴様らには徹底した破滅が訪れるであろう!さぁ、どうする!」

 

 こう宣言をする様は、ある意味現代にはない誠実さとでもいうべきか、敵ながら現代のテロリストにも見習ってもらいたいものだ。

 

 しかし、当然返答はなく、あたりに静寂が訪れた。

 

 しばらく待っても答えのない状況を見た軍使は

 

 「バカめ」

 

 と捨て台詞を吐き、戻っていった。

 

 「Position!」

 

 指揮官が剣を抜き指示を出す。と同時に前列の兵が一斉に銃口を向けた。

 

 いよいよである。

 

 「feu!」

 

 パッ、パッ、パッ、パンッ!

 

 剣が振り下ろされると同時にあたり一帯に銃声が響き塹壕のあたりに大きな土煙が立った。

 

 だが、中に隠れているため恐らく駐屯軍の兵達に損害は無いであろう。

 

 「2列目〜Position!.....feu!」

 

 すぐに2列、3列目も射撃を進める。だが相変わらず状況は分からない。

 

 「なんだって、地面に射撃せにゃならんのじゃ、全体!着剣!」

 

 損害を与えられない状況に、指揮官は痺れを切らしたのか突撃準備を命じようとした。

 

 その時

 

 「feu!(撃てー!!)」

 

 射撃開始が下令され、私は拉縄を思いっきり引っ張った。

 

 ドーンッ!ガラガラ〜

 

 反乱軍に照準を向けていた、全銃砲が射撃を開始する。

 

 私達の周りはさることながら敵軍も煙で覆われた。

 

 中の状況は伺えなかったが、私達は観測をすることなく、急ぎ次弾を装填し射撃を継続する。

 

 時折、煙の中から炸裂音にまじり、叫び声等も聞こえたが、私達はそんな事には構わず射撃を続ける。

 

 何人か煙を抜け出し塹壕へと向かうものもいたが、手前の鉄条網に足を止められた兵たちは次々にライフルの餌食になっていく。

 

 そのうち、前へ向う者は途絶え、逃げようとするものが増えた。だが、それも徐々に少なくなっていく。

 

 敵軍に動きが見られなくなった後、射撃中止が下令された。

 

 それとほぼ同じくして風が吹き戦場を覆っていた雲が晴れ、全容が明らかになった。

 

 ...........

 

 史実ではこれより後、南北戦争でライフルを持った戦列歩兵同士の衝突が度々起こったが、マスケットよりも、遙かに命中精度の良いそれは部隊に全滅という言葉をもたらした。

 

 煙が晴れて現れた光景はまさしく全滅いや、虐殺といっても過剰ではない状態であった。

 

 砲撃により耕された地面には、誰のものとも分からぬ足や腕が転がり、指揮官は既に死に、皆敗走したようだが、逃げ切れずあまり距離をおかずして死体の山が積み上がっている。

 

 「.....うっぷ!!」  

 

 「大丈夫!?」

 

 隣でカリーネが吐いた。流石にこの光景は我々にとって衝撃がありすぎた。 

 

 「うん....ちょっと水もらっていい?」  

 

 私は、カリーネの肩をさすりながら、水筒を彼女に渡した。

 

 彼女は極力外を見ないようにしながら水を飲んだ。

 

 逆に私はちょっと気になったため、少し顔を出す。

 

 見ると他の前線でも食い止めるのに成功したらしく、また敵部隊も予想外の損害に驚いたのか、兵を引いていた。

 

 「ひとまず、第一波は食い止めたようね。」

 

 「うん、だけど何かあまり気持ちの良いものじゃないけどね。」

 

 カリーネが、口の周りを拭いながら答える。

 

 興奮が落ち着くと共に死体のツーンとした匂いがしてきた。

 

 これでも裏山陣地から前線まで結構距離があるはずなのだが、よほど強烈なものなのであろう。

 

 私は一通り周りの様子を見渡してから、ふとあることに疑問を感じ先生に質問した。

 

「あのう、これなんで前線を押し戻さないんです?ある意味今チャンスですよね?」

 

 敵が背中を向けている今、反撃をすれば恐らく敵に大損害を与えることができるであろう。

だが、どの前線も相変わらず皆塹壕にこもったままである。

 

 「恐らく弾の余裕がないのでしょう。先程の砲撃で私達も備蓄の半分ほどを消耗しましたから.....」

 

 「ああ、そういうことですか......」

 

 私は苦笑いをしながら答えた。

 

 19世紀、敵に全滅という答えを出させた近代戦は、味方にとっても弾薬の大量消費という予想外の事態をもたらした。そして、それは第一次大戦で実際の戦闘より、どちらの国の体力が先に力尽きるかという総力戦という形に変化し、敗者だけで無く、勝者にも地獄をもたらした。

 

 この戦闘の後、敵方も塹壕を囲むように掘り、兵糧攻めをすることにし、味方も弾薬を気にして攻勢はかけず、ただひたすら迎撃に徹した。

 

 結果、戦線は膠着した。

 




「皆さん、お疲れ様でした」
「今回はちょっと長くなりましたね」
「まぁ一番長い日ですからね」
「まだまだ、ヴェルサイユとパリでの戦闘が残ってますが、もし一つにしたら....」
「凄まじい量になるかもしれませんね」
「まぁ、どうなるかは知りませんが、漫画、期待してますよ」
「はは、描けたら描きますわ。」
「それでは皆さん」
「「御機嫌よう〜」」
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