「同じく涼太です」
「つい最近まで凄く暑かったのに一気に涼しくなってきましたね」
「やっぱ雨が降ってから一気に涼しくなるもんですね」
「なかなか晴れ間が見えないのは梅雨時同様気になりますが夜の練習が涼しくなるので助かります」
「コロナで少なかった道場にも少しずつ人が戻ってきてますもんね」
「皆さんも適度に対策をしつつ、涼しいこの季節を楽しみましょう」
「さて、弓矢23話始まります」
「ついに英国も参戦した内乱、フランスの未来は誰の手に収まるのか」
「まずは海からその様子をご覧あれ」
パリで市街戦が始まった頃
シェルブール海軍基地
「何!?ポーツマスに英艦隊がいない!?」
海軍司令官は報告を聞き、驚いた。
フランスに備え常にドーバー海峡を抑えるべくポーツマスに集まっていた英艦隊が消えたのだ。
「はっ、前日より出港準備を進めていたため、恐らく夜のうちに出港したのでしょう」
「そうかぁ、まあいい、各地哨戒中のフリゲート艦に警戒を厳と成せと伝えておけ...あと、主力艦隊、巡洋艦隊も出港準備急ぎ進めておけ」
「はいっ」
そう言うと、通信士は部屋より退出した。
海軍は国王に対する信頼があつく、一部オルレアン派の私有船を除き、皆反乱軍には加わらず、比較的秩序が保たれていた。これも、海軍に力を注いだお陰であろう。
本当の所、海軍としては陸戦隊を組織して支援したかったが、英国の動きも警戒しなければならず、苛立っていた。
そこへ、今の連絡である。
これで当分英国の相手をしなくてはならないであろう。
「ふぅ、チャッチャッと始末しちゃいたいところだがな....」
彼はタバコを吸いながらソファに深く腰掛けた。
窓からはシェルブールの港が見える。
「待ってろよ....今すぐにでも漁礁にしてやるからな」
艦隊からはモクモクと黒い煙が立ち始めていた。
ブレスト西方100キロ海上
「まもなく、回頭点!」
「よーし、面舵いっぱーい!」
ガラガラと音を立てながら操舵輪が回り、ゆっくりと船体が曲がってゆく。
「通信士!無電はあったか?」
つい先日、ヴィシー学園にて研究中であった無線(いわゆるマルコニー式無線機)はようやく実用化出来、各哨戒艦艇に配備されていた。
「はっ、特に新たな連絡等は入っておりません」
「そうか.....下がって結構」
フリゲート艦の艦長はタバコをゆったりと吹かしながら、遠く英国の方を見た。
ブレスト軍港より出港して2週間、ようやく一時寄港できるタイミングで飛び込んできた報告がオルレアン派の反乱であり、それに伴う哨戒の延長であった。
帰港モードが漂っていた船内の空気が一気にどんよりとしたものに変わったのは言うまでもない。
皆、グチグチ文句をいいながら哨戒をつづけていた。
モクモクとタバコの煙が目の前に上がる。
「上質なタバコ何だがな、だいぶ湿気ってしまった」
「全くですね、私もはよ故郷の蛆虫のいないパンを食べたいですよ」
「はは、それもそうだ。......ちょっと灰皿よこせ」
「ハッ」
艦長は、航海士より差し出された灰皿にタバコを押し付け、航海士は双眼鏡を覗き込む
しかし
「艦長中々、このタバコしぶといですな」
航海士の眼鏡からはまだ煙が登っているように見えた。
だが
「君、タバコの煙はとっくに途絶えているが.....」
肉眼で見るととっくにタバコの火は消えている。
「あれ、おかしいな、私の見間違いでしょうか」
「かもな、ちょっとつかれたのであろう...........」
そう言い、艦長も望遠鏡を除くと.....
「おかしいな、私も疲れているようだ.....!いや、あれは!!」
よーく見ると、煙は水平線から上がっている。
恐らく船の煙であろうが、ここは、海上交通路からはやや外れている。
そして、その煙も一本のみならず、二本、3本と増えていった。
「怪しいな....シーレーンから外れたこの海域で船団、航海士、念の為臨検隊の準備をしておいて」
そう言いかけた瞬間!マストが水平線より現れるとともに、その船の旗が日に照らされた。
それは
「ホワイトエンサイン!!総員!持ち場につけ、戦闘配備!」
英国海軍旗を確認した艦長は指示を急ぎ飛ばした。
「航海士、忙しくなるぞ....」
「ハッ!どこまでもお付きします!」
「フッ、休暇はしばらく取り消しだな」
「しゃあないです。戦勝後特別報酬頂いてたっぷり豪遊しましょう」
「貴様らしい.....よし、取舵いっぱい、船を英艦隊に近づけろ!」
「はっ、とぉーりかーじいっぱい!」
明かりを完全に消し、幽霊船のようになったフリゲート艦は気づかれぬようゆっくりと敵艦隊に近づく。
「ほお、蒸気戦列艦に蒸気フリゲートか、あちらさんもなかなかようやっとるようだな....」
「船の数だけなら我々よりも多そうですな」
「そりゃ、アメさんに売ったからな.....だが性能はこちらの方が上のはずだ」
フリゲート艦は奥の方まで見える位置に達し、偵察活動を始めていた。
「いいか、射程内に入っても、決して発砲するなよ....あくまで我々の任務は偵察であり、ましてまだ英国は宣戦布告をしていない、あくまで尾行するだけに徹するぞ.......」
「ハッ!......艦長、戦闘旗はどうしますか.....」
「まだ戦時ではないため'戦闘'旗ではないが.....一応メインマストに掲げとけ!」
「アイサー!!」
「通信士、司令部へ報告! 英国主力艦隊発見、蒸気、帆走戦列艦20隻、蒸気フリゲート10隻帆走フリゲート4隻見ユ。地点ブレスト沖100キロ」
「ハッ!」
「多分、無線を傍受されることは無いだろうが....それよりもキチンと届くかどうかが不安やな.....」
「まぁそこは神に祈りましょう」
「そうだな....よし、機関停止、帆を張れ!帆走にて追跡するぞ」
「アイサ!」
英艦隊との距離を詰めたフリゲート艦は排煙で気づかれぬよう帆走で追跡することにした。
...........
シェルブール海軍基地
「何!見つかったか!」
「はい、ブレスト沖合いで発見したようです」
「そうかぁ、まあ良い、準備でき次第出港!指示は追って連絡する!」
「ハッ!」
「それから参謀達を集めよ!作戦会議じゃ!」
彼らは海図を盤上に広げた。
「集めた情報によると奴らの艦隊は恐らく、夜間にポーツマスを出港、分散しつつブリストル沖で集合し、我が国への方へ航行したのだと思われます」
「そうか、分散しているときに各個撃破できたのであればよかったのだがな....まあ良い、英艦隊の進路、目的地は分かるか?」
「ビスケー湾方面へ向かっておるため、恐らく我が本土に対する艦砲射撃もしくは上陸作戦が目的でしょう...まぁ、もっとも宣戦布告無しで行動するかは分かりかねますが」
「そうか、よし主力が到着するまでは哨戒中の全フリゲートである程度距離を保ち、警戒しつつも決して攻撃するな、ただ上陸しようとしたり、砲撃を受けたりしたら発砲するのを許可する。私から指示できることは以上だ、後は現場司令官に任せる」
「ハッ!」
短い会議であったが、その頃には港の艦は皆出港していた。
..........
英仏海峡 巡洋、戦列艦隊
装甲艦よりも一足先に出港した巡洋艦、戦列艦は哨戒中のフリゲート艦と合流しつつビスケー湾目指して航行していた。
陣容としては
装甲巡洋艦 ティゲル セル シュバァル コック 4隻 (シアンは地中海にて警戒中)
蒸気戦列艦(74門艦改造) テメレール オダシュー フグー シューペルブ ボーレ 5隻
蒸気フリゲート16隻
以上26隻である。
英国の34隻に比べれば少ないが、装甲巡洋艦を含む高火力、高防御の艦隊である。
「尾行中のフリゲート艦視認!まもなく英艦隊見えます」
「あいわかった!」
ティゲル艦橋からは、マストに帆を掲げたフリゲート艦とその後方に何本もの排煙が見えた。
「いよいよですな」
「あぁ、フリゲート艦隊を先頭に単縦陣を構成せよ!奴らと距離を取りつつ、同航する!....それと警戒中のフリゲート艦へ我がフリゲート艦隊の末尾に付くよう連絡せよ」
「ハッ!」
命令を受けたフリゲート艦が再び煙をモクモク上げながら艦隊に加わるとともに、装甲巡洋艦達を護衛していたフリゲート艦隊は一本の槍のように単縦陣を構成した。
「英艦隊視認!距離1万!」
英艦のマストがゆっくりと姿を表す。
「よーし、その距離を保ったまま、同航するぞ、弾の当たらね距離とはいえ油断するな!」
「ハッ!」
その後フランス艦隊はピッタリとひっついて航行した。
........
英海峡艦隊旗艦 旗艦 蒸気戦列艦ロイヤルサブリン
「東方に排煙多数視認!恐らくフランスの蒸気艦隊と思われます」
「いよいよ、来たか......」
そう言いながら、海峡艦隊司令長官ハウ提督は双眼鏡に眼を当てる。
哨戒中のフリゲート艦に発見されてから常に付きまとわれており、(フランス人達はまだ気づかれていないと思っているようだが)やってくるのも時間の問題だと思っていたが
「やはり早いな....これが蒸気軍艦の戦いか.....こりゃ、わしみたいな古臭い軍人よりも若手のやつらに任せた方が良いかもな」
予想よりも早いフランス艦隊の到着に驚いていた。(実は蒸気機関の影響以上に無線の影響が響いていたのだが)
「いやいや、提督にはまだまだ私ども及びませぬゆえ、お願いします」
ロイヤルサブリン艦長は手を振りながら苦笑いする。
ハウ提督はジャコバイトの反乱の時より戦場で活躍した老指揮官であり、少し前までは海軍大臣も努めていたような人物である。(史実と違いこの海戦の前にロドニー提督に海軍大臣の座を譲って今は現場に戻っている)
「艦長ならすぐにわしの後任になれるさ.......さて、じゃそろそろ準備をしよか」
「ハッ!では」
「あぁ、厳封命令を開封しその指示に従い行動するとしよう....恐らく開戦通知しか書いてないだろうがな」
ハウ提督と艦長は幕僚を集め、時間を確認した。
「午前6時!では開封します.....命令!海峡艦隊は午前6時を以て戦闘行動を開始し、敵艦隊を誘引、近海にて砲台群と共同しつつ其れを撃滅せよ! 以上です!」
「まぁ難しい事は書いてない、敵を誘ってボコボコにすりゃいいだけじゃ、皆肩の力を抜いて頼むよ!」
「ハッ!」
「よし、じゃ始めるぞ!全艦隊、右一斉回頭!敵を釣るぞい」
命令一下、英艦隊は前後を変え、引返し始めた。
その様子は距離を離して追跡していたフランス艦隊にも伺えた。
「英艦隊一斉回頭〜こちらに向かってきます!」
「何!全艦回避せよ」
迫る英艦隊を避けるように仏艦隊は二手に別れていく。
回頭前
↑英国本土
←進行方向
イ旗イ戦列艦以下20隻英フリゲート14隻 仏フリゲート16隻仏旗仏装甲巡洋艦仏戦列艦
↓フランス本土
回頭後
↑英国本土
←フランス艦隊
英国艦隊→ ↑↓フランス艦隊
←フランス艦隊
↓フランス本土
「よし、今だ!全門斉射!凪払え!」
ズドドドドッーン!
ちょうど仏艦隊が英艦隊を挟むように二分したタイミングで英艦隊は一斉に火を吹いた。
戦闘のフリゲートより最後尾の戦列艦に至るまで全艦から放たれた榴弾は、仏艦のチーク材の舷側を貫き、火災を生じさせ、装甲巡洋艦以外の艦艇の戦闘力を奪った。
そう、放たれたのは単なる砲丸では無く、榴弾である。英国海軍もフランス海軍の影響を受け、安全な信管を開発、運用していたのだ。
「ゴホゴホッ.....大丈夫か!?」
激しい衝撃により発生した砂埃に咳き込みながら仏司令官は副官に問う。
「ハッ!本艦は厚い装甲板のお陰で一部木甲板が剥がれた程度で済みましたが.....艦隊は....」
そう言うと副官は各艦より伝わってきた情報を纏め、顔を青ざめさせた。
「フリゲート艦隊は発砲直前に距離を取ったため、多少ボヤが生じた程度でしたが、逃げ遅れた戦列艦艦隊はテメレールを残し全艦大破、大火災を生じさせております。」
「何!」
みると後方戦列艦艦隊のいるあたりが煙に包まれている。
若干船体が見えたが、艦底部にも損傷を受けたのか傾きつつもあった。
司令官は帽子を深くかぶりつつ指示をした。
「......テメレールとフリゲート艦2隻は現場に、残り救助活動をせよ。残りの隊で英艦隊を追う!総員に告ぐ!今我々が見ている光景を忘れるな!卑怯にも我らを罠に嵌めた奴らに同じ光景を見せてやれ!」
「「オー!」」
「申し上げます!」
「なんだ?」
場が司令官の激励により盛り上がったところに急報が飛び込んできた。
「海軍司令部より連絡です。本日午後6時英国は我が国に宣戦布告!繰り返します!英国は我が国に宣戦布告いたしました!」
「そうかぁ.....艦長、英艦隊の発砲時刻は何時であったか?」
「確かに6時2分でありました。」
「うーむ、一本取られたな。だが、ここからは我々も全力で行動できる。先手はもう過ぎたのじゃ。」
「はっ、では....」
「あぁ、正式に発砲を許可する。正当防衛の範疇は考慮せず全力で叩け。」
司令官は拳を振り下ろしながら答えた。
ここに、王党派対オルレアン派の内乱は英国を交えての国際戦争へと発展した。
英艦隊旗艦ロイヤルサブリン
「おっ、旗がメインマストに上がったか。どうやら向こうもやる気になったようだ」
望遠鏡よりフランス艦隊の動向を伺っていたハウ提督はニヤつきながらつぶやいた。
メインマストに戦闘旗(日本だと軍艦旗)が上がるという事は今が戦闘行動中であるということも示す。
「まぁそれだけでなく、砲門は皆開かれ、砲塔は皆こちらを向いてますからね。」
艦長もそれに答えながら指示を飛ばす。
「艦長!提督!、この機会にフランス艦隊を包囲殲滅してしまいましょう!今なら数の利は圧倒的です!」
「そうです!もはやフランス艦隊は死に体です!今が好機にございます!」
戦列艦4隻撃沈確実との報に参謀達は皆浮足立っている。
それもそうであろう。これで実質フランス艦隊はこの当時の戦艦たる戦列艦を失ったのだ。もう勝利は目に見えている。
「そうしたいのがやまやまであるがな.....」
「相手が今までの艦隊ならそれでも良いがな、ほれ!そこの装甲巡洋艦とやらを見てみよ!」
ハウ提督は一番近くに位置してる装甲巡洋艦に指を指した。
「あの船はな、恐らくそこで燃えておる蒸気戦列艦共より遥かに多くの打撃を加えたはずなのだが、火災は愚か外観にすら異常は全く見えぬ。」
彼の指指した船は恐らくフランス艦隊で最もたくさん砲撃を食らったはずなのだが外観からは一切異常が見られない。(実際には装甲板が歪んだり、ビスが外れて装甲板が剥がれ落ちてしまったとこもあったのだが)
皆その様子に顔を青ざめさせていた。
「故に我々では奴らをこれ以上どうすることも出来ない。だからどうにか出来るところまで誘い込むのだ」
「本艦隊の役目はあくまで誘引、それを忘れるな、わかったらさっさと動け」
ハウ提督の言葉に付け足すように艦長が指示を飛ばす。
「さて、泥棒は最初うまくいっても、逃げるのが怖いものだ」
彼の言葉が終わると同時にフランス艦隊は発砲しだした。
........
数時間後
英国艦隊はフリゲート艦を2、3隻ほど失いつつも、プリマスの港へと逃げ込んだ。
そしてそこにはやってきたフランス艦隊に睨みを利かすように強力な要塞砲が配備されていた。
「うーむ、出来るならば、逃げこまれる前に包囲したかったが.....」
「この艦隊の規模だと逆に包囲されなかったのが不思議なくらいですよ」
「まぁ、先程の砲戦で装甲艦の堅さを思い知ったのであろう」
仏司令官とティゲル艦長は港の奥を見つめつつ話す。
榴弾は戦列艦等木造の艦には圧倒的な強みを発揮するが装甲艦艇に対しては無力であり、(速射砲やより強力なピクリン酸を利用した榴弾等が開発されると装甲ある無しに関わらず火だるまになるが)徹甲弾が無ければ有効弾を与えられない。
そのため、フランス艦隊は例え数の劣勢と言えども容易に逆転しうる状況であったのだ。
「まぁ、こちらも切り札が揃った事だし、すぐにでも殲滅できるとは思うがな」
そう言いながら、後方へと目をやった。
そこには、最新鋭の装甲艦パリ級航洋装甲艦が4隻並んでいた。
巨砲を収めた砲塔を前後に2基4門収めたその姿は、さながら後の戦艦と言えるようなものであった。
「これがあれば、どんなに頑強な陣地でも一発ですね。」
「あぁ、だがなちとコイツには問題があってな」
「問題ですか?」
「あぁ、コイツの砲だと仰角があまりかけられないから丘の上の砲台に狙いを付けられないのだよ」
後の戦艦であれば、ある程度は問題無いかもしれないが、この船は主砲塔を船体の甲板下に収めてるため、仰角はあまりかけられないのだ。
「うーん、参りましたな」
「せめて、逃げこまれる前に間に合って居れば活躍も出来たであろうがな」
「強行突破いたします?」
「いや、それはいくら装甲艦とはいえ無傷では済まないよ」
昔から、要塞と艦隊が戦ったら要塞が有利なのは知れているが、それは装甲艦になっても同様である。揺れ動く船体で照準を合わせることすら困難な船と陸地に固定され、地中に隠す事も可能な要塞砲では勝負は見えている。実際に近代においても旅順に対する砲撃やダーダネルス海峡突破戦で艦隊側の被害が目立つ結果が出ている。
戦艦が陸上砲撃において優位に立つのは陸上砲の射程圏外だったり飛行場だったりといった、反撃の恐れの少ない場所である。
「故に秘策を用意していた」
「秘策ですか?」
艦長が首を傾げたとき、後方のフリゲート艦より何やら白い雲のような物体がふわふわと上昇していた。
「提督!!ありゃなんです!?」
艦長はそれを見るなり、びっくりしてひっくり返った。
「ハハハ、驚いたか、何でもヴィシーの奴らが開発したものでな、なんでも水素で浮く飛行船って言うものらしい」
「水素ですか!いや、それで空に本当に浮き上がるとは驚きですね」
司令官はこういう自体も想定して、研究隊より4隻程飛行船を借りてきたのだ。
モンゴルフィエ兄弟が、熱気球を開発したのはちょうどこの時代であったのだが、その裏では水素気球も発明され、フランス革命戦争では実用化に至っていた。(あいにく、部隊が壊滅しその後しばらく話題にはならなかったが)その気球をヴィシーの研究家達は改造し、自転車のようなペダルとプロペラを付け、自走できるようにした。そうそれがこの初期型飛行船である。
「これで、敵の砲台の頭上に爆弾でも落としてやろうと思ってな」
あまり積載量は稼げないため、手榴弾ぐらいしか載せられないが、脅しくらいにはなるであろう。
「それに高度が稼げれば、臼砲の観測もしやすくなりますもんね」
艦長が後方、パリ級に並ぶ位置に居座る旧式砲艦、ボムケッチを眺めた。
臼砲を搭載し、榴弾を以てして目標を火の海にするボムケッチは、艦砲射撃に必須の存在であったが、榴弾が一般的になるに連れ廃れ、徐々に数を減らしていた。しかし、こういった目的にはまだまだ使えるため、予備に何隻か保管されており、今回急遽再就役し、ここまでやってきたのだ。
数分後、爆弾や観測機器等の積載が終わった飛行船が空へと登ってゆく。
風は今吹いていないため、流されることなく砲台上空へと移動し、爆撃&着弾観測を開始した。
イギリス側も迎撃すべく、銃を空に向けるも、弾丸は飛行船に到達する前に失速して落ちてゆく。その時を振り返ったある兵士は「まるで、雷雲にでも銃撃しているかのようであった」と証言した。
飛行船側からの爆撃は後世のような照準装置の無いような状態で行われたため、大半は地面の埃を舞わせるだけであったが、飛行船誘導の元行われたボムケッチよりの砲撃は有効であったらしく、砲台と主しき場所は徐々に鉄くず置き場へと変化していった。
「ここまでやれば艦隊は無事港内に侵入できるであろう」
「では、」
「あぁ、全艦隊に下令......」
戦果を確認した司令官が湾内突入の指示を下そうとしたその時
「申し上げます!英艦隊がマルセイユに来襲、地上部隊が我が国に上陸いたしました!」
脇の通信室より少尉が急ぎ飛び出して報告してきた
「なぬ、それは本当か?」
幕僚達の顔より血の気がスゥーと引いてゆく。
「はっ、あくまで確証は持てませぬが、マルセイユ方面軍よりの連絡を傍受いたしまして....緊急性の高い要件として報告いたしました」
「それは偽電では無いのでは?」
極力都合の良い情報が聞きたい参謀が疑うが
「いやいや、そもそも我が国の最高機密とも言えるものを英側が普通に使っているはずが無かろう」
艦長は現実的にありえないと語った。
そこにさらに
「申し上げます!海軍司令部より命令!本艦隊は反転し、地中海の上陸艦隊を撃滅せよとのことです。」
「.....そうか、わかった」
司令官は帽子を深くかぶり直すと、命令を下した。
「全艦、反転じゃ!急ぎ地中海艦隊を討つ!」
「はっ」
先程まで砲撃をしていたボムケッチや飛行船達も急遽引き返し、艦隊とともにマルセイユ目指して反転していった。
その頃、地中海では
「ふーん、フランスご自慢の装甲巡洋艦とやらも案外脆いんだな」
そう語る人物の目の前には、浜に乗り上げた船らしき形をした鉄くずがあった、そう地中海に派遣されていた装甲巡洋艦シアンである。
フリゲート艦一隻を引き連れ唯一地中海に睨みを聞かせていたかの船は、旧式戦列艦何隻かを屠ることに成功するも、平時の体制であったため弾、石炭共に早々に無くなり、逃げ回っていたところ暗礁に乗り上げ、停止、そこを榴弾で徹底的に砲撃された結果、日露のバルチック艦隊のような姿となってしまったのだ。
「とはいえ、我々も2隻失ったのです!油断なりませね」
「そう心配するでない、フランスの主力艦隊は本国に貼り付き、装甲巡洋艦も葬った我々を誰が邪魔すると言うのかね?」
「それは」
「確かに、戦列艦2隻は大きい、本国の連中も騒ぎ立てるであろう。だが、たかが旧式艦2隻失ったところで我々は痛くも痒くもない。それよりも」
「時間を失うことのほうがもったいないですね」
「きみ、良く分かってるじゃないか、それならさっそく行動するとしよう」
「はっ、では」
「あぁ、総員準備は良いか、ボートを降ろせ、フランス王国の玄関を突き破るぞ!」
そう言いながらその人物、ホレイショ=ネルソン提督は、剣を抜くなり、自ら戦闘に立ち、敵地へと飛び込んでいった。
こうして、英軍の上陸を許してしまったフランスはますます境地に立たされることとなる。
「23話終わりました」
「お疲れ様でした」
「いやぁ、構想は前から立てていたのにいざ文にして書くとこうも時間がかかるとは....」
「作者は思ったことを一気に書くタイプですからね、スイッチが切れると文が状況報告みたいになりがちですからちょっと読みづらいです」
「今更ながら中学高校で勉強した文の作り方を復習したい気分ですわ」
「それはそれとして作者弓届いたそうですね?」
「はい、特作粋ようやく出来上がりました!」
「使ってみた感想は?」
「いやぁ、いいですね、本当に反動が少なく感じられ、引いていてすごく楽です。ただ弓を重くしたためか、射が縮こまったり手の内が崩れ気味なのが今の課題ではありますね。それでもキチンと思ったように引けるとびっくりするくらい矢どころが集中するのでちょっと楽しいです」
「早くなれるように頑張ってくださいね」
「ありがとうございます」
「さて、それでは」
「「ありがとうございました」」
次回 ヴィシー包囲戦2?