時に、神川 仁という少年は不幸な人間である。
別に、道を歩けば犬に追いかけられたりとか、トラックに轢かれそうになるとかの様な命に関わる系な感じではなく。
家の中を歩けば家具の角に小指をぶつけ、店に行けばピンポイントに欲しかった商品が品切れになっていたり、ゲーム機のコントローラーの特定のボタンだけ何故か機能しなくなっていたり、と割と地味に嫌なやつが多い。だが、ここ最近は幻想入りした影響かどうかわ分からないが、その不幸のレベルが少年にとって上がっている気がしていた。
例えば、会ったばかりの吸血鬼の少女?の為に暴走した彼女の妹を止める為、ちっぽけな勇気を出して退治に向かうが、吸血鬼の館にてほぼ手も足も出ずにボコボコにされたりと、割と本気で命に関わるような事がつい最近あったばかりであるが今回の件も、少年は本気でツイてなかった。
「はっ!俺は何処!?ここは誰!?」
訳の分からない事を叫びながら、ボコ!!という音を立てて瓦礫の山から飛び出てきたのはいつもの少年ー神川 仁である。
レミリアが主犯と思われる少年誘拐事件にて、仁はロケットと思われる物体に乗せられて、空へと旅立って行ったのだ。
とりあえず、深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、少年は立ち上がり、そして周囲を見回した。
周りには広葉樹の森が広がっていて、
しかし、上を見上げればあるはずの
それなのにもかかわらず周囲は、明るかった。
そう、まるで真昼のような明るさ。
常人には理解しがたいこの光景に、少年は唖然としていた。
「……ちょっと落ち着こうか」
そういえば少年が飛ばされる前、レミリアは何を言っていた?
「あ、ああ…!!」
考えてみれば、少年の疑問はいとも簡単に解ける。
レミリアと初めて会った時も、紅魔館に救援に向かった時に図書館で見たのは?そして、椅子に縛られていた時に言われたのは?
「月かよぉぉおお……」
そう、恐らく少年がいる場所は、月だ。
考えてみれば、アポロ計画の月面着陸の時の写真とか見れば、森は無けれど、似たような光景だったはずだ。
でも、それでは何故息が出来るのか、何で木々が生えているのかも分からない。本当にここが月なのかどうかも怪しいが、
「クソっ!
少年は悪態を着くと、近くにあるロケットだったと思われる瓦礫に腰掛けた。
味方も居なければ、場所の把握もついていない。
この時、少年はある事に気付いていた。
それは自分の周りの瓦礫の量が少ない事に。
どう見ても瓦礫の量は少年が先程いた、ロケットの一室分しかないように見え、レミリア達が居たと思われる上段の部屋の瓦礫は無いように思えた。
「探した方が良いのかね…」
と少年は言った、その時。
「そっちはどうだ?見つけたか?」
と、不意に近くから少女の声が聞こえた。
声は少年から見て、背中の方から瓦礫越しに聞こえてきた。声は少女だったが、残念ながら少年の知っている幻想郷の人物の声ではなかった。
おまけに、その少女の口調はどこか近視感があった。
「それほど遠くには行ってない筈だ!!」
「「了解」」
と、先程の少女の声とあと二人程の少女の声も聞こえた。そして、この言葉で少年は確信した。
あ、コイツら兵士か。と。
命令口調のリーダー格の少女、そして統率がとれた返事。
遊びでは真似出来ないような口調で、彼女らはもしかしたら本物の兵士の様な存在だと少年は思った。
何故、兵士が?なんで少女?というか、ここどこ?という疑問が頭を駆け巡っているが、確実に自分を探してるんだろうな、という結論に至った少年は
(あー…訳の分かんない土地で、訳の分からない連中に追いかけ回されるのかー)
と言うが、実際、少年はめちゃくちゃビビっている。
心の中ではあっけらかんとしているが、めちゃくちゃビビっている、ついでに足もガタガタ震えてる、
もし見付かったら何されるか分からないし、逃げようとしても今立ち上がると見つかる危険性もある。
そういう事で、少年は瓦礫の陰で見つからないように縮こまる事を余儀なくされた。
どうか、こっちに来ませんように。という少年の願いは
「良いか!瓦礫のひっくり返してでも見つけろ!!」
という、可愛らしい声と似ても似つかない(少年にとっては)恐ろしい事を言い、少年の願いと精神はガラスの如く砕け散った。
それよりも、どうも声が段々大きくなっている気がした。
と言うより、近づいている。
何が?だって?
そう、声の主が。
バクンバクン!!という心臓の鼓動の音が聞こえる程の恐怖で、少年は思い切り叫びたくなっていたが、肝心の舌が動かなかった。
そして、足音が刻一刻と迫り、遂に足音が真横まで来た時。
少年は大人しく顔を上げた。
顔を上げると、少年の目の前には銃口が向けられていた。
ついでに、おっかない顔をして銃を向けてる少女の姿もだ。
「ひっ」
という情けない声を出して仁は後退りをした。
「止まれ」
少女は仁に言うと、今度は銃口を仁の額にピタと突きつけた。
仁が、パクパクと口を動かして何か言おうとするが、やはり舌が動かなかった。
この時仁は気づかなかったが、よく見れば、少女は白いヘルメットをしていて、その上に兎の耳のようなものがあった。
「お前が、神川 仁だな?」
少女が言うと。
「……せ…ろせ」
と、小さな声で
「なに?」
「いっそ…殺せぇぇぇぇ!」
「きゃぁぁぁぁ!?」
その名状しがたい迫力に少女は、絶叫すると、少年を銃のストックで殴りつけた。
そして、仁の意識は後頭部の痛みと共に沈んでいった。
目が覚めた仁が最初に見たのは、銃口だった。
今回ばかりは叫ぶ元気がないのか、静かに震える仁だった。
周りを見れば3人程のウサ耳兵士が仁の周りを取り囲んでいる。
ウサ耳兵士達は全員同じ格好をしており、白のYシャツに紺のジャケットに白のヘルメット。
そして、彼女達の表情がどうもおかしかった。
警戒しているような感じではなく、どちらかというと。
怯えてた。
理由は言わずもがな、先程の仁のアレだろう。
「た、隊長!」
と、正面にいたウサ耳兵士が叫んだ。
すると、叫んだウサ耳兵士の後ろから、恐らくは隊長格と思われるウサ耳兵士が現れた。
「もう良い、下ろせ」
隊長格のウサ耳兵士がそう言うと、仁の周りにいたウサ耳兵士達は手に持つ銃を下ろした。
そして、隊長格のウサ耳兵士は仁に近づくと。
「私の部下が迷惑をかけたな。部下の代わりに謝罪する」
と、隊長格の兵士が言うと右手を差し出してきた。
「あ、ああ…」
仁は、その手を右手で握ると、隊長格のウサ耳兵士が思い切り仁の手を引っ張り、仁を立たせた。
「もう一度確認する。お前が神川 仁だな?」
どうやら敵ではないと判断したのか、そう言う隊長格のウサ耳兵士は穏やかな表情を浮かべて言った。
「ああ、そうだけど。お前らは何なんだ?」
「私達の事は、道中で話す。今は兎に角ここから離れる事を第一優先で考えてくれ」
ロケット墜落現場を足早に立ち去った仁と総勢五人のウサ耳兵士達は森の中にある道を走っていた。
そして、隊長ウサ耳は自分達が、この先にいるレミリアや何故かいる霊夢や魔理沙達から頼まれて仁を探しに来たのだという事を仁に話していた。
どう考えても、月には存在しない人間らしき彼女達は、"玉兎”と呼ばれる月の兎で、自分たちは月の都を守る警備隊のような存在なのだという事もだ。
「とりあえず、レミリア達に俺を探すように頼まれたってのは分かった」
「理解が早くて、助かるよ」
と、走る仁の横で走っている隊長ウサ耳が言った。
「けど、ここは何処なんだ?それに何で走ってんのさ!?」
「落ち着け。良いか?君を狙う阿呆がいるという情報があるんだ。私達の任務は、君の捜索と護衛だ」
「誰だよ、阿呆って?」
「ちょっとした、言うなればテロリストだよ」
「テロリスト!?」
「だから落ち着け。私達がいる限り危険な目には合わせないから」
「……分かった」
今の所、道の先にはウサ耳兵士達が言うような"街”は見当たらず、心配になった仁は。
「なあ、ホントに月に街なんてあるのか?」
と、黒い空を見上げて仁は言った。
「勿論」
「そうか」
どうも、まだ信用しきれてない仁は、半信半疑のまま彼女達に従い、また森の中を走って行く。
暫く進んだ後、仁の視界には森の木々の間から中華風の建物群が見えてきた。
「あそこが"都”」
と、隊長ウサ耳が建物群を指差して言った。
「あそこにレミリア達が?」
「ええ。それに、もうそろそろ"対談”も終わりそう」
「対談?確か、レミリア達は月旅行の為に、ここに来たんだろ?んな、小難しい事なんてする必要なんてあるのか?」
「知らないわ。詳しい事は、本人達に聞いて」
隊長ウサ耳が言う。
そして、突如、仁の右にいたウサ耳兵士が。
「隊長!!敵で…」
そう言いかけた、ウサ耳兵士は後ろから聞こえた破裂音と共に倒れた。
「敵襲!!」
隊長ウサ耳の合図で、それぞれ他3人のウサ耳兵士と仁はそれぞれ、近くにあった木や岩の塊の陰に隠れた。
「おい!敵襲って何だよ!?」
と、岩の陰にいる仁は、同じ岩に隠れた隊長ウサ耳に聞いた。
「多分、例のテロリストだ」
先程の破裂音は銃声なのだろう。ちょうど今も、仁がいる岩を光弾が掠っていった。
そう、見た事ある光弾が、だ
「なあ、アイツらが使ってる弾丸って、弾幕か?」
仁が聞くと、隊長ウサ耳は、
「そうよ」
と、素っ気なく返した。
「でも、何でだ?」
「何で、って何がだ?」
「俺達を殺すつもりなんだろ?じゃあ、何で実弾を使わない?」
弾幕は、確かに相手を傷つける事は可能だ。しかし、弾幕とは遊びの為の、言わばモデルガンなどで撃つBB弾の様なもの、当たり所が悪いならまだしも、それでは到底、人の命を奪うには難しいだろう。
せいぜい気絶がやっとだ。
「実弾?何だそれは?というよりも、そもそも、奴ららは私達を殺す気はないんだよ」
「どういうことだ?」
「長々と説明してやりたいが、生憎説明している暇もないもので!!」
そう言いながら、隊長ウサ耳は立ち上がり、クルリと後ろを向くと手にしていた、形はM1カービンに似た銃を2、3発撃つと、しゃがんだ。
ウサ耳達が持つ、M1カービンに似た銃からは弾幕が放たれていたが、その銃が鳴らす銃声は、少年が撃っていた銃が鳴らすオモチャの様な銃声とは打って変わり、本物と呼ぶに相応しい重々しい銃声だった。
「敵の数は?」
と、仁が聞いた。
「見えたのは3人、銃声から考えたら6人」
隊長ウサ耳が言うと仁が、
「なあ、ちょっと手伝ってくれ」
「何だって?」
「ちょっと、あいつをコッチに連れてこよう。気絶してるんだろ?」
と、仁は今いる石から右の方向にいる、倒れたウサ耳兵士を指差して言った。
「……分かった。では、私が援護する。その間に連れてこい」
少年の返事を待たずに隊長ウサ耳が言い、大きく深呼吸すると、
「みんな聞いたか!合図で制圧射撃!」
「「「了解!!」」」
と、顔も姿も見えないウサ耳兵士達から返事が聞こえた。
「3・2・1、射撃開始!!」
隊長ウサ耳の合図でウサ耳兵士達はそれぞれが手に持つ、小銃でテロリスト達がいる方向へと弾幕を張る。
ウサ耳兵士達が持つ銃は見た目はM1カービンだが、どうやらセミオートだけでなくフルオートも可能らしく、弾幕だから出来ることなのか分からないが、その銃はLMG(ライトマシンガン)等の分隊支援火器の役割をしっかりと果たしていた。
「今だ、早く!!」
「分かった!」
隊長ウサ耳がそう仁に言うと、仁は急いで倒れたウサ耳兵士の元に行き、腕を持ちそのままウサ耳兵士を担ぎ上げると、そのまま先程までいた岩にウサ耳兵士を担いで戻った。
「気絶してるみたいだ、怪我もない」
と、ウサ耳兵士を下ろすと仁は、隣で弾幕を張っている隊長ウサ耳へ言った。
そして、仁の言葉を聞くやいなや、隊長ウサ耳は、
「全員、撃ち方止め!!」
と、他のウサ耳兵士に呼びかけた。
「どうする?」
仁が隊長ウサ耳に聞く。
「"都”が近いから、逃げる事は考えられない。都に被害が及ぶのは全力で避けたいからな。一応、救援は呼んではいるが、期待はしない方がいい」
「救援の意味あんのか?」
「質より量と言うだろう」
「なる…ほど?」
そんな事を言っている間にも、銃弾は仁達がいる岩のすぐ側を掠っていく。
「じゃあ、俺に何か出来ることはあるのか?」
仁がそう言うと。
「無い」
と、隊長ウサ耳は素っ気なく返した。
そして、
「何でだよ?」
「まず、足でまといにしかならない。それに忘れたのか?私達の任務は、君の捜索、そして護衛。護衛対象を危険な目には遭わせられないの」
「それは……」
言い返せなかった。
少年は今、無力だ。
今まで2度も助けてくれた神様は今、居ない。
彼の能力である【ありとあらゆる武器を作りだし、それを操る程度の能力】も使えない。昨日、仁がスーツを作り出した後から、また使えなくなってしまっている。
そして、2つ目の能力の【物に触れずに動かす程度の能力】に関しては、正直に言ってしまえば使い慣れていない為、
「きゃっ!」
と、近くにいるウサ耳兵士の悲鳴が聞こえた。
「大丈夫か!!」
隊長ウサ耳が言うと、
「すいません、腕が動かなく…」
と、ウサ耳兵士の弱々しい声が返ってきた。
「分かった…」
そして、隊長ウサ耳が呟くと。
「すまない、ちょっと待っててくれ」
隊長ウサ耳は、仁にそう言った。
「何だっ…うぉ!!」
と、仁の言葉は、隊長ウサ耳の方から来た風圧により遮られた。
「って、どこに行った…ん…だ?」
そして、仁は風圧を感じた方向を見た。
しかし、彼の横にいたはずの隊長ウサ耳は消えていなくなっていた。
段々と、文字数はアレですが、投稿数を目標に今年はやっていきたいと思います。
それでは今回も、特にはないので、次回もよろしくお願いします!!
なるべく2週間以内を目安に投稿するので宜しくです、
では、誤字や脱字、そしておかしな文があったらご報告して頂けると幸いです。
それでは、こんな小説を読んでいただきありがとうございました!!!!