(……知らない天井だ)
少年は頭の中で呟く。気がつけば彼は、うっそうとした森の中から、文明的な建物内の布団の中にいた。
(何処だ此処は?)
と、彼は起き上がると周囲を見回す。現在、彼がいる部屋は、日本のどこにでもあるような、床が畳のごく普通の和室の様だった。そして隣の部屋とは障子で仕切っていて気絶した時からあまり時間が経ってないのか、障子の外から夕方の赤い光が差し込んでいる。
少年が一通り部屋を見回すと、突然、障子がスーと音を発てて開いた。
「あら、起きてたの」
頭の向きを変え、障子戸の方を見てみれば、そこには、頭には巨大なリボンを付け紅と白が特徴的な脇の部分が空いている巫女服? を着ている少女が、そこにいた。
「……誰だ?」
「失礼ね。妖怪から助けてあげた恩人に対して、お礼の一つもないのかしら?」
「妖怪? ちょっと待て、何を言ってんだ? ここは日本だろ……」
そこで、彼の言葉が途絶える。考えてみれば、アレは夢だったのかもしれない。
「その様子だと、あなた外来人ね。服装もそれっぽいし」
「ガイライジン?」
紅白の少女の口から出てくる、聞きなれない単語に仁は困惑していた。
「つーか俺、酸欠で気絶してんじゃねぇか!! 病院行かなくて大丈夫かよ!?」
「それだけ元気に叫べるなら大丈夫よ」
と、半場呆れながら紅白の少女は言う。
「まぁ、今から色々と教えるからこっちへ来なさい」
紅白の少女はそう言うとくるりと体を先ほど来た部屋の方に向けた。
~??? の居間~
紅白の少女が仁に案内し連れてきた部屋は全体的に和風で洋の要素が皆無だった。部屋の中央には大きなテーブルが置かれていて、その上にはお茶が入っている湯呑み茶碗が二人分、乗っている。
「それで、あんたの名前は?」
少女が座ると、仁に聞いた。
「唐突だな……」
「良いでしょ別に。いいから早く、じゃないと話が進まないでしょ」
そう言うと霊夢は湯呑みを両手で持ちながらお茶を飲み始めた。
「ハイハイ……俺の名前は神川仁だ、君の名前は?」
「私の名前は“博麗 霊夢(はくれい れいむ)”。この楽園の素敵な巫女よ」
と、霊夢は微笑みながら言った。
「楽園? そういえば此処は何処なんだ?」
「此処は"幻想郷”。忘れられた者たちが集まる理想郷」
「幻想……郷?」
「そうよ」
そして仁は今いる居間の縁側の方を見た。
視線の先、恐らくは幻想郷と呼ばれると思われる、その地は彼が今までに見たことのあるような日本の情景
「ねぇちょっと感動するのも良いけど話の続きをするわよ」
「わ、悪い」
「次に此処には人は勿論妖怪や妖精あと見たことないけど神様も居るわ」
「…………」
「どうしたのいきなり黙りこんで? もしかして話に付いていけない?」
「いや此処は色々な奴らがいてさっき俺を襲ったのが妖怪ってのも大体想像がついた……けれど霊夢はさっき幻想郷は忘れ去られた者が集まる場所って言ったけどじゃあ俺が此処にいるってことは……」
そう言うと仁はそのまま俯いてしまった。
「確かにそう言ったわ。幻想郷にはあんたの他にも何人も外来人は居る……でも安心して、仁が幻想郷に来たのは多分私の知り合いのせいだから」
と、霊夢は先程から持ってた湯飲みを机に置き、溜め息をはきながら言った。
「知り合い? と、とにかく俺は誰からも忘れられて無いんだな……」
仁は安堵して、肺の中に溜めていた空気を吐き出す。
「それで俺を幻想郷に連れてきた奴はどんな奴なんだ?」
「そうね……まず、そいつは妖怪ね」
「っ!?」
「安心して。そいつはさっきのような狼見たいなのじゃなくて人の姿をしていて、人間は食べないわ」
恐らくね、と霊夢は湯呑みをまた持ってズズズとお茶をすすった。
「なんだよそれなら先に言ってくれよ……」
「後そいつの能力は……紫居るんでしょさっさと出てきなさい」
と霊夢は誰もいないはずの、仁が座っている横の空間を睨みながら言った。
「あら、もうバレちゃったの」
いきなり仁の横の何もない空間から声がしたと思えば、その空間が目を開く様に縦にひらきその中から霊夢や仁よりも見た目は年上の女性が出てきた。
「うぉ!?」
急に目の前に現れた女性に驚き、そのまま仁は後ろに転んだ。昔のコントで見るような、尻もちをついている仁の姿を見下ろしながら女性は言う。
「あらあら、驚かせちゃったかしら?」
紫と呼ばれて出てきた女性は、白と薄紫色のゴスロリと表現できるようなドレスを身につけ、頭にはドアノブの様な白い帽子を被り、左手でドレスと同じ色の畳まれた日傘をさしている、もう片方の手には紫色の扇子を持っておりその扇子で口元を隠しながら喋っている。
「れ、霊夢この人がさっき言ってた知り合いか?」
腰を抜かしてしまい、仁はそのゴスロリの女性を見上げるように言う。
「そうよ、こいつがさっき言ってた奴。あと、人じゃなくて妖怪」
「私の名前は
と、金髪の女性? は扇子から覗くニヤニヤとした口を見せながらこっちを見て言った。
「……あんたが俺を此処に?」
「ええ、私が君を連れて来たのよ。君のことはよく知ってるのよ、神川 仁君」
どこか胡散臭さが漂う、その女性は扇子で隠れていても分かるような、ニヤリとした顔で言った。
「何で俺の名前を……?」
「何? と言われても貴方の事を調べたからよ。例えば貴方の身長や体重、通っている中学校そして貴方の家族も勿論、貴方に関すること全て」
紫は仁の情報を何から何まで調べたようだった、その何よりの証拠は紫が次々と口にする仁の家族構成や住所や電話番号まで、何もかもだ。
「……じゃあ、何で俺を幻想郷に?」
若干の疑問は残っている、けれど今は何故中学校の帰りにいきなり落とされ先程の様になったのかを知る事を、少年は優先した。
「気に入ったから。なんて、いつもは言うけれど、今回はちょっと違うのよ」
「何時もなら? じゃあ、どういう理由なんだ?」
「それは貴方に"ある事”を頼むため、ね」
「ある事って?」
「それを説明すると貴方はきっと何を言ってるか分からないでしょう? だから、その"ある事”を説明する前に一つ話をして良いかしら?」
「……分かった」
そう仁が一言だけ返すと紫は、先程から話に入らずにお茶と煎餅を頬張っている霊夢の横に座った。
「まず、この幻想郷がどういう場所かさっき霊夢に聞いたわね?」
「確か幻想郷は忘れ去られた者が集まる場所だろ?」
「確かに此処は忘れ去られた者が集まる場所、それは人は勿論物品や妖怪の様な人ならざる存在も集まってくるわ。そう、幻想郷は全てを受け入れるの、そう分け隔てなく、何もかも、それはそれは残酷な事にね……」
その時、紫は一瞬だけ悲しそうな表情をした、ように仁は見えた。
「けれど妖怪の様な人を襲う存在全てが此処にいる訳ではないの」
「ちょ、ちょっと待て一つ良いか?」
「何かしら?」
「此処は忘れられた者が集まるんだろ? じゃあその忘れられた物とかは何処から来るんだ?」
「だから、今から言おうとしているのよ」
そう言うと紫はいつの間にか用意されてたお茶を少し口に含むと、少し間をおくと再び喋り出す。
「この幻想郷は貴方の住んでる国━━━日本の中に有るわ」
この紫の発言は仁にとって強烈なものだった。何せ彼がいつもやってるゲームの中に居るような狼に襲われ、オマケに話を聞くと妖精や神様までいるという。まるでゲームの舞台の様なこの楽園が、日本という身近も身近な世界の中にあるというのが、彼にとっては信じきれていない。
「じゃあ、何でここは外から見つからないんだ?」
「それはね、外の世界と此処は『博麗大結界』という、今はそこの霊夢……というより各代の『博麗の巫女』という役職が管理をしている、見ることも、入る事も出来ない幻想郷を認識からも守っている見えない壁の様な物よ」
と紫は仁に説明するが。仁にとって
「けれども、その『博麗大結界』が出来る以前、すなわち幻想郷が出来る前にその時現存するほとんどの妖怪に幻想郷に来るかと呼び掛けたの。まぁ、ほとんどの妖怪は最初から此処に住み着いていたから呼び掛けはそれほど大変では無かったのよ。けれど、その時の全体の妖怪の約2割が幻想郷に来ることを拒んだ、そして今も外の世界で暮らしている」
「それでその残りの6割の妖怪の数はどの位の数なんだ?」
「その時はざっと500、ぐらい。そしてその中には人間を襲わないのもいたけど、勿論人間を食料にする輩も居るわよ」
「あんなのがまだ日本に居るって言うのか?」
正直な所、自分の様な体験をした人がいるかもしれないという事が容易に想像出来てしまう。仁には、それが恐ろしく思える。そんな人間は、居て欲しくないし、見たくもない。
「ええ、それも今となってはやつれてしまい人間を殺し喰う事しか能がなくなった妖怪の成れの果ても、ね……」
と、紫はより一層悲しげな表情をする。そして、口元を隠していた扇子を閉じ、その先っぽを仁に向けると、彼女は告げる。
「そしてね、神川 仁。貴方に、このやつれてしまった妖怪達の退治を任せるために私は此処に連れてきたのよ」
今回は仁君が幻想郷に来た理由が明かされました、そして次回は仁君の能力についての回です、この小説名で既に察しがつくと思いますが宜しくお願いします!
後次回以降は週に一度の投稿にしたいと思います。
それではこんな小説を読んで頂きありがとうございました。(-_-)
誤字や脱字があったら報告お願いします!
追伸・(2019/05/13)全体的に書き直しました。