東方軍器伝   作:RYUやん

22 / 38
ある晴れた日にて

 〜数週間後〜

 

  住宅街の中、空は雲ひとつ無い快晴。

  人々の肌に触れる空気は冷たく、それは二週間もすれば年が明けるということを人々に感じさせている。

  そんな中、住宅街の中を二人の少年が歩いていた。いや、正確には少年とそれっぽい少女なのだが。

  片方の中肉中背の少年━━神川 仁はジャケットにカーゴパンツ。それに対し、もう片方の少年…ではなく少女━━鈴華はミリタリージャケットにジーンズという格好をしている。

  仁はともかく、ショートカットの鈴華に対しては"男装”とも受け取れるような格好で、傍から見れば2人が歩く姿は同年代の男子中学生が並んで歩いているように見える。

 「はぁ…」

 仁が溜息をつく。

 そんな仁に対し、

 「どしたの、溜息なんてついてさ?」

 と、隣を歩く鈴華が聞く。

 「いや、最近なんか疲れててな…」

 実の所、最近の少年は多忙だった。

 …まあ、理由は多々あれど、ほとんどが鈴華の相手をしていたせいなのだが。

 そんな少年の苦労などつゆ知らずに鈴華は、

 「休める時は休んどでおくのだぞ、少年よ」

 と、そんな冗談か本気なのかよく分からない言葉を投げかける。

  そんな彼女に「……誰のせいだと思ってやがる」と、仁はポツリと呟くのであった。

  しかし、そんな仁の努力は決して無駄ではなく、その努力のおかげで鈴華が地上の生活に慣れてきているので、結果オーライだろう。

  元々いた月で地上の資料を散々見てきた、と彼女は言っている。事実、彼女は地上の生活に慣れるまで時間はかからっていないように仁は見えた。事実、彼女は地上での振る舞いや、"ルール”などは熟知しているように仁は見えた。

  しかし、彼女にとって盲点だったのが、地上での過ごし方、だった。

 例えば、海外へ移住する際に、その国の言語、治安、法律、文化等は事前に勉強しておくのが筋だろう。

 しかし、自分の国で娯楽として楽しんでいた文化も、その国では存在しない。

 簡単に言えば、"楽しみ”がない。

 月からの移住者である鈴華も同様に、当初は『暇だー』と延々と嘆いていた。

 そこで、仁の出番だ。

 彼はまず、自分の趣味を鈴華に勧めた。

 それは、ゲームから始まり、映画、海外ドラマからライトノベルまで、ありとあらゆるものを勧めた。

 幸いにも、鈴華はこれらの創作物(・・・)が気に入ったようで、数日もすれば、仁の部屋の壁一面の本棚にある本やDVDにゲームソフトは全て制覇していた。

 さすがに仁は、これ程になるとは思っていなかったようで、そのハマりっぷりにただただ翻弄されるばかりだった。

 

 

 

 

 「仁君、一つ良い?」

 と、鈴華が仁に聞く。

 「何だ藪から棒に…で、どうした」

 「そういえば、君の能力を聞いてなかったね」

 「………知ってて、聞いてるのか?」

 「いやいや、違うって。ボクが聞いてるのは、君の"もう一つ”の方だって。紫さんから、君が二つの能力持ちってことを聞いて、"武器を作る方”の説明は受けたけど、もう片方のことは何にも教えてくれなかったしね」

 「…あー、ね」

 もう片方の能力

 それは、神川 仁に与えられた、二つの能力の一つである。

 物に手を触れずに操る程度の能力、それは創作の中では念動力、もしくはサイコキネシスと呼ばれる能力だ。

 名前から分かるように、手を触れずに物を浮かせたり出来る"だけ”の能力だ。

 特段、変身出来たり、怪力を得るとか、そういうものでは無い至って地味な能力。

 仁は能力の名前、効果を鈴華に伝える。

 それを聞いた鈴華は、数秒ほど考える仕草をすると。

 「やっぱり、それが本命(・・)なんじゃないかな?」

 「何だって?」

 「そのもう片方の方が、君の能力じゃないかってこと」

 そう、鈴華がいつにもなく真剣な顔で言う。

 「だって武器を作る方は、その……鍛冶神のバルだっけ?」

 「自称、な」

 「な、なるほど」

 そして、鈴華は仕切り直して言う。

 「それで、そのバルが"機能停止”した時から、武器を作る方は使えなくなったんでしょ?だったら、彼が君に能力を"貸してた”って考えられないかな?」

 それは、約2ヶ月前の幻想郷内の吸血鬼の舘で起きた、"例の事件”。

 仁が霊夢から説明された"異変”とは違う、別の何か。

 その事件の最中に起きた戦いで、仁は下手すれば後遺症が残りかねない程の重症を負い。バルは機能が停止したように物言わぬ石となった。

 そして考えてみれば、以前バルは能力を与えた(・・・)と言っていたが。

 それは本当に、与えたのだろうか、と仁は考えた。

 「で、それがどうしたんだ。今話したところでどうにかなるようなもんでもない気がするけど」

 「分からないじゃないか。もしかしたら、ちょっとした拍子で戻るかもよ?」

 「……だと、良いけどよ」

 「でも、確かに湿っぽくなっちゃったね。ごめんごめん」

 あはは、と笑いながら言う鈴華に、

 「誰のせいだと思ってやがる…!

 「あれー?どうして、ボクのほっぺを摘む……やめて、いひゃい!いひゃい!ほっへひゃらへをはなひてっ!?」

 無言のまま仁が、その鈴華伸びた頬から手を離す。

 「地上の環境に慣れてない、乾燥肌のボクに…ひどい」

 わざとらしく悲しむ演技をする鈴華に対し、仁が、

 「自業自得だろ」

 と、答えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、急に何かを思い出したように仁は、

 「そういや鈴華、お前の能力は何なんだ?」

 と、鈴華に聞く。

 「今更?」

 「悪いな、聞き忘れてて…で、その様子だとあるんだろ?」

 「ああ、そうだよ。持ってる」

 「なら、早く教え…」

 「だったら、当ててみなぁ少年よ!!」

 いきなり訳の分からない事を言い出した鈴華に、仁は困惑した。

 「……何だって?」

 怪訝な顔をして、仁が聞く。

 「だから、当ててみてよ。普通に教えても面白くないでしょ?」

 ふふふ、と微笑みながら喋る鈴華に仁は、

 「言いたくないなら、良いよ。どうせ後に分かるし」

 と言うと、急に鈴華が慌てだす。

 「あー!言うって、言うから!」

 「そうか」

 仁が素っ気ない返事で返すと、鈴華が続ける。

 「私の能力は、"五感を操る程度の能力”。名前のまんま、触覚、味覚、聴覚、視覚を操るのよ」

 「おい、今"私”って…」

 「はいはーい、説明するの面倒だから、直接味わってみてね」

 何かを言いかけた仁を遮って、鈴華は仁の額に人差し指を当てる。

 そして、その瞬間。

 少年の視界が、失われた。

(ッ!?)

 その一瞬にして、見えるもの全てが暗色に染まった。

 鈴華に、何をした、と聞こうとするが"喋っている感覚”が無い。それに仁は、絶え間なく吹いているはずの冬の冷たい風の音が聞こえない事にも気付いた。

 挙句の果てには、額に当たっているはずの鈴華の指の感触もない。

  見えない 聞こえない、感じない

 それが、仁の中に芽生えた恐怖を煽る。

 何なんだよ。と、そう喋っている筈なのに口が開いている感覚もないし、自分の声も聞こえない。

 そんな時だ

 「どう、仁君?」

 どこからか、鈴華の声が聞こえたと思うと、少年の感覚が再び戻ってくる。

 「ねえ、どうだった?怖かった?」

 仁の目には色鮮やかな風景が蘇り、目の前にはニヤニヤしながら仁の顔を見ている鈴華がいた。

 「……これが、お前の能力なんだな」

 「その通り。ボクの能力は五感を鋭くすることも出来るし、その逆もまた然りだよ」

 「なるほど、そりゃ便利だな。じゃあ、今みたいに耳がないのは、その能力のおかげって事か?」

 と、仁は鈴華の頭を指さして言った。

 その鈴華の頭には、この前のようなウサ耳は無かった。

どうせ、能力かなんかで隠しているんだろうなと、仁は思った。

だが、

 「これは違うよ、単純に髪の中に隠してるだけ」

 そう言うと鈴華の髪の毛の中から、ピョコンとウサ耳が飛び出した。

 「こんぐらい、造作もないんだぜ。どう?見直した?」

 と、自慢げに言う鈴華に、仁は静かに言い放つ。

 「………とりあえずお前、今日の夕飯抜きな」

 仁の言葉には明確な怒りが込められていた。

 「申し訳ございませんでしたあああぁぁぁあ!!」

 その時、鈴華が目にも止まらぬ速度で頭を下げたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんやかんなあって、何とか二人は紫から送られてきた住所の場所に着いた。

 だが

 道中の近視感を覚えていた仁は、薄々嫌な予感はしていた。

 まさか本当に的中するとは思ってはいなかったが。

 「……おい待て、どういう事だ」

 それが仁にとって、その目的地にあった建物を見ての第一声だった。

 「へぇー、ここが紫さんの言ってた所かー。さっきの住宅街(?)とはまた違った建物だね」

 と、呑気に言う鈴華。

 二人の見ている方向には

 

 

 

仁の祖父母が住む、西洋風の屋敷があった。

 

 

 

 仁は目を白黒させながら、屋敷の方を見るが、その屋敷は仁が昔から行き慣れてる祖父母の家で間違いはなかった。

 その屋敷は全体的にこれと言った特徴もなく、あるとすれば屋敷全体が黒に近い色のレンガで作られていることぐらいだろうか。

 「住所間違ってんじゃねえのか…?」

 「え、どれ見せてみ?」

 と、仁が鈴華にスマートフォンの画面を見せるが。

 「いや、間違ってない。ここが目的地で合ってるよ」

キッパリと答えた鈴華の目に嘘偽り、イタズラ心の様なモノは感じられない。

 「嘘だ……いや、なんかの間違いだ。そうだ、じいちゃんに聞いてみるか」

 それだけ言うと、仁はそのまま屋敷の方へとスタスタと歩いて行く。

 「あっ、待って」

 そんな、彼の背中を鈴華は忙しなく追いかけていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




書くことがないです。
以上(´°д°`)
それでは、今回はこれで…。
誤字や脱字に、おかしな文があったらご報告して頂けると幸いです。
それでは、こんな小説を読んでいただきありがとうございました!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。