東方軍器伝   作:RYUやん

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妖怪退治

星空の下。郊外の住宅街の中を一台の車が走っていた。

 運転席には、一人の老人。そして、後部座席には二人の男女が座っている。老人はコートに身を包んでいるが、後ろの男女の姿は黒色の戦闘服でどう考えてもこの場には不釣り合いな格好だ。

「……最後にもう一度、確認するぞ」

 運転席の健二が口を開く。

「今回の依頼は、あくまでも捕獲というの分かってる筈だ。でも、万が一、やむを得ない状況になったら……ベストの一番端に入れてあるマガジンを使うんだ。分かってるな?」

 健二の言葉に対して、後部座席の仁が「分かってる」と、答える。

「でも大丈夫なのか? 例え弾幕弾でも、音はあるんだろ。なら周りに気付かれるんじゃないか?」

「問題ない。お前達を下ろしたあと、私がちょっとした細工をしてくる」

「じゃあ、心配しなくて良いんだな」

 

 

 

 彼らが乗った車は住宅街を抜けて、柵と木に囲まれた場所へと近づく。

「もう直ぐ到着だ。マガジンの確認は済んだか?」

 その言葉を聞くと、仁は腰のホルスターから"タウルス・ジャッジ”を引く抜き、シリンダーを開けて中身を確認する。赤、青、黄などと色彩豊かな銃弾が入ってることを確認するとシリンダーを閉じ、腰のホルスターへと戻した。

「大丈夫。"ジャッジ”の方は問題なし」

「分かった。……あとその寝坊助(ねぼすけ)も起こしてやれ」

 仁が右を見れば、そこには寝息をたてながら目を閉じている鈴華がいた。仁が頭を少し小突くと直ぐに目を開けて彼女は一言。

「あれ、もう到着……?」

「もう、じゃないだろ。出発してから何分経ってると思ってやがる」

 まるで緊張感のない二人を乗せた車は、総合運動公園の入り口へと着いた。

「到着だ。……それと、気をつけろよ」

 後部座席の方を見ながら健二が言う。

「了解」「分かりました」

 そして、二人は車を降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 総合運動公園は、入り口から見ただけでも相当な広さだというのが分かる。見えたものだけでも、野球場からサッカー場に、中部最大の大きさを誇る室内競技場。

「それじゃ、予定通り二手に別れよう」

 さすがに、二人だけでこの広さの敷地内をしらみつぶしに探すのは至難の業だ。だから、二手に別れて捜索するのだ。捜索、と言っても、実際は公園の中央にある陸上競技場の室内にある、高さ10メートル以上の高さにある室内トレーニング場から鈴華が偵察して、妖怪を見つけたら地上にいる仁が現場に向かうというものだ。

「了解。何かあったら、無線で」

 黒の戦闘服に身を包んだ鈴華は、いつものような快活な性格とは違い、月にいた時の隊長兎のような雰囲気を醸し出している。

「分かってるって」

 仁が前へ進もうとして、右足を前に出した時。

「……待って」

 不意に鈴華が仁を呼び止めた。

「どうした?」

 首を傾げながら聞く仁に、鈴華が言う。

「健二さんからも言われたけど、その……気を付けてね」

 それに対し仁は、二っと口角を上げて、

「大丈夫。ありがとな、お前さんも気を付けろよ」

 陳腐な言葉だが、彼にはこれ以上の言葉が思いつかない。それでも、彼にとって一番の気遣いの言葉だ。

 そして、それだけ言うと仁は、足早にその場を去っていった。

 そして、一人残された鈴華は「ありがと」と呟くと、運動公園中央の陸上競技場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜数十分後〜

 

 

 

 鈴華と別れた仁は現在、野球場近くの広場にいた。

 周囲は夜と言っても、公園中にある街頭のおかげで決して暗くはない。

 そして、この野球場で3ヶ所目。中央の陸上競技場から見てても、施設の周辺を片っ端から見て回っているのだ。

 結論として、目標である妖怪どころか、人っ子ひとりいない状態だ。いや、こんな時に一般人が紛れ込んできても困るだけなのだが……。現時刻は11時を過ぎたところだ、こんな時間に人がいないのも納得はできる。

 一通り、野球場周辺を捜索し終わると、仁は肩につけた無線機に喋りかける。

「もしもし、こちら仁。そっちの様子はどうだ?」

『ちょうど、こっちも連絡しようとしてたとこ』

「何かあったか?」

『変な人影が見えた。場所的には……あれは野球場の近くかな。そこら辺の、ちょっとした森みたいになってるところ』

「分かった。すぐ向かう」

 

 

 

 

 鈴華に言われたとおりに野球場近くの林へと向かうと。

「おっと……」

 確かに鈴華が言っていた通り、そこには人がいた。

 しかし、その様子がおかしかった(・・・・・・)。見た感じだと、髪が長かったり、着ている服からして女性だというのは分かるのだが。その歩き方はぎこちなく、街頭に照らされた服はボロボロで、靴も履いていない。当然、彼女が普通の人間ではないというのは、見て分かる。

「……鈴華、見つけた」

『どっち? 妖怪? それとも、変な人影のほう?』

「後者の方。だけど、様子が変だ。妖怪にでも襲われたかもしれない」

『じゃあ、保護する?』

「もちろん、ほっとくわけにもいかないだろ」

『それなら、私のとこに連れてきてくれれば面倒は見るけど』

「そっちの邪魔にならないか?」

『それぐらい、どうともないよ』

 それじゃ待ってるよ、とだけ言っても鈴華は通信を切った。

 そして、仁は少し離れた位置にいるその女性を見てみるが、五秒も経たない内に彼女は街頭にすがり付くように倒れた。

「っ!! おい、大丈夫か!」

 仁が倒れた女性に駆け寄る。

 近づけば、彼女が年端もいかない少女なのが分かる。仁と年はさほど変わらなそうな少女が、何故こんなところにいるのか、それを考えるよりも先に少年は、

「何があった?」

 少女を助けることを優先した。

「ぁ……に……て……」

 蚊の鳴くような、弱々しい声で彼女は答える。そして、異様なことに彼女の顔も、腕も、服にも、まるで何かに引っ掻かれたような切り傷が全身に刻まれていた。

「何だこりゃ……。クソっ。鈴華、今からそっちに行く、カバーを頼む」

『分かった、なるべく急いで』

「……悪い」

 仁は少女を背中におぶると、走早にその場に離れようとする。

 しかし、突然、

「に……て……げて、わた、し……から」

 今度は途切れ途切れだが、鮮明に聞き取れる声で少女が喋った。

「どうし……」

 仁が立ち止まって少女に問おうとすると、少女は仁の背中を突き飛ばすようにして、自分の身を落とした。

「何してんだよ!?」

 地面に落ちた少女はその細い腕で地面を掴みながら、必死になりながら少年の元から逃げよう(・・・・)とする。

「やめ、て……ちか……づかないで」

仁を見る彼女の目は、体の震えと共に揺れており、その瞳には恐怖とも怒りともとれない感情が込められていた。

そして、不意に彼女は呻き声を上げてうずくまる。

「……っ!?」

その瞬間、仁はまるまった彼女の背中を見て察した。服の模様かと思っていたその赤い線は、彼女の背中から広がっている。

「う…ぐぁ……あ"あ"あ"あ"あぁアァ!!!」

彼女は空を見上げながら人とは思えない叫びを発する。例えがあるなら、それはケモノの咆哮。

その叫びと同時に、彼女の体から、黒い霧のようなモノが沸く。

「…鈴華。お前、俺がいる位置、見えるか?」

黒い霧は、そのまま彼女の体を隠すようにして、全身を覆いはじめる。

『見えないけど、それがどうしたの?』

「いや、ちょっとな━━━━」

全身を黒い霧に覆われた少女は、もはや人の形をしていない。

代わりにそこにいるのは、ケモノの形をした"なに”か。

「━━━━━ちょいと、面倒なことになりそうだ」

 

 

彼の前に佇むのは、"妖怪”だった。

 

 




次の週に、今年度最初の中間テストがあることを忘れていたので、急遽、二回に分けて投稿する事にしました。
なにぶん、どうせ戦闘パートは三千は優に超えそうなので、なるべく早めにと…。
とりあえず、今回はこの辺で。
誤字や脱字、おかしな文があったらご報告して頂けると幸いです!
それでは、こんな小説を読んでいただきありがとうございました!!
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