東方軍器伝   作:RYUやん

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再戦、吸血鬼

「禁弾『カタディオプトリック』!」

 現在、少年はおびただしい数の弾幕に襲われていた。今のところは、刀一本でどうにかなっているが、それが通じなくなるのも時間の問題のようだ。

 現在まで、フランが宣言したスペルカードは計4つ。

 禁忌「クランベリートラップ」

 禁忌「レーヴァテイン」

 禁忌「カゴメカゴメ」

 そして、現在発動している禁弾「カタディオプトリック」。どれもこれも避けるのが難関なくせ者ばかりだ。

「うっ……」

 弾幕を受け止めた際の衝撃が、刀を伝って体に響く。両手で持てばどうにかなるかもしれないが、生憎と左手は拳銃で塞がっている。

 弾幕が薄くなった一瞬の隙に拳銃でフランを撃つ。

 銃弾型の弾幕が、宙を飛びながら弾幕を放っているフランに命中する。彼女は一瞬だけ怯み弾幕の密度が下がる。

 しかし、彼女はすぐに体勢を整えると、

「お兄さんも、中々やるね!」

 と、無邪気な、そして心の底からの笑みを浮かべて言う。そして、再びあの弾幕が襲いかかってくる。

「そりゃ、どうも……!!」

 さっきよりは密度は下がれども、攻撃の苛烈さは変わらない。やはり、このままではジリ貧だ。

 それにしても、素人の中の素人であるはずの仁が弾幕を斬れる程にまで成長したとは、彼自身思いもしなかった。フランの放つ弾幕は銃弾型の弾幕に比べれば速度は遅い方だが、それでも時速20キロ程はあるはず。それなのに彼がこうして五体満足で居られているのは、彼が避けることよりも弾幕を斬ることに重点を置いているからだろう。

 彼がやっているのは、妖夢のように弾幕を斬りに行くのではなく、弾幕が来る位置に刀を置いているだけだ。そうすれば自然と近づいてきた弾幕は斬れる。

 それらを教えてくれた妖夢は、相当の腕なのかもしれない。……もしくは、少年の頭の中に残るあの時の名残かもしれないが。

 どちらにせよ、後で『ありがとう』と伝えなれけばならないのは確かだ。

「にしても、いつまで続ける気だよ!」

 つい叫んでしまったが、無理もない。何故なら、弾幕ごっこを始めてからはや30分。正直に言って、彼の体力は限界に近い。重い刀で弾幕を凌ぎ、どうしても凌ぎきれないのは避けて、密度が濃い弾幕の間に弾幕を撃ち込む、などとやっていれば自然と体力は消耗してくる。

「……でも"そろそろ”だな」

 そして、彼はフランに背を向けて走り出した。

 突然のことにフランはキョトンとする。だが、直ぐにぐにゃりとした笑顔へと戻る。

「どこへ行くの? まだ遊びましょうよ!」

 その言葉に耳を傾けずに少年は走り続ける。やがて、彼は横にある大きな本棚に挟まれた通路へと入り込む。

 その後をフランが追いかける。しかし、通路を曲がった先に少年の姿は無かった。

「あれ?」

 少年の意図が掴めないままフランは通路へと入り込む。その際に彼女は地面へと着地する。

 この紅魔館にある図書館というのは、地球上にある図書館の中でも上位にあるであろう広さを誇る。少なくとも、外の世界の人間は地下4階にまで及ぶ図書館なんて見たことは無いはずだ。

 だから、このフロア一階でも相当の広さがあるのだ。構造としては、中央にある吹き抜けを囲むようにドーナツ状に存在している。そして奥行もかなりあったり、本棚も高さ自体は結構あるのだが長さは短いため、それらが置かれて作り出されるのは、まるで迷路のような複雑で広い空間だ。

 そんな中に少年は入り込んだのだ。当然、そこで繰り広げられる鬼ごっこでの鬼の立場はあまり良くはない。鬼、であるフランはとりあえず、その迷路を(しらみ)(つぶ)しに探すことにした。

 しかし、

「どこ?」

 見つからない。

「どこに行ったの?」

 見つからない。

「分かった、ここね! ……あれ?」

 見つからない。

 どこを見ても、どこを探しても、居ない、見えない、見つからない。

 あれだけ積極的にフランと相対していたはずの少年の姿は、どこにも無かった。

 フランは少年に対する怒りよりも先に、何故こんなことをしたのかという疑問が湧いた。

 と、その時。

 バタン! 

 何かが落ちる音が聞こえた。何か、というかそもそも此処には本しかないため、本以外のものはあまり考えられないのだが。

 音が聞こえた方向に、フランは猛スピードで向かう。

 そこへたどり着いて、あったのは地面に落ちた本だけだった。あの少年がやったのだろうか? 

 考えるよりも先に、再びバタンという物音が聞こえた。

 今度は先ほどよりも近い位置から聞こえた。

 再びフランは、音が聞こえた場所へと向かう。

 しかし、そこにも本しかなかった。

 また、音が聞こえた。フランは向かう。

しかし、そこにも本しかない。

 今度こそ、フランの中には怒りの感情が湧いてでてきた。

 さっきまでは、私が遊んでいたのに。これではまるで私が遊ばれている(・・・・・・)ではないか。

 恐らく、これは物音によって彼女を誘導しているのだろう。それになんの意味があるのかは分からないが、フランにとってはそれは屈辱以外の何物でもないのは確かだ。

 その時だ。

「どうだ、そろそろ疲れてきたか?」

 と、正面の通路の角から仁が現れた。

 彼の顔には穏やかな笑みが浮かんでいる。

 それが更に、フランを怒りに油を注いだ。

 馬鹿にしているのか。

 言葉にならない叫びと共にフランが、少年に飛びかかる。

 彼女は右腕を振りかざす。その手に持つレーヴァテインは火を纏う、それによりぐにゃぐにゃした棒は炎の刀身をもつ剣へと変わった。

 その剣は見覚えのあるものだった。少年の攻撃を武器ごと砕いた、あの時のトラウマが蘇る。

 そして、火を纏った剣が彼を襲う。

 フランはレーヴァテインを横に払った。少年は身を屈んでそれを回避するが、若干避けきれていなかったのか髪の毛が焦げる臭いが鼻に届く。

 その際に生じた隙を少年は見逃さなかった。

 怒りにより仁を殺すことしか彼女は考えていない、ならば、それ以外の事━━自分が反撃されるということも考えられなくなる。だから、わざわざこんなリスクを負ってまでこんな作戦を行ったのだ。

 刀を両手で持ち、油断しきっていた彼女の華奢な体にぶつける。刀とは鉄の塊、そんな物で殴られればたとえ吸血鬼でも無事では済まない。

 ドン!! という重い音が響く。フランは一瞬だけ固まったと思えば、手にしていたレーヴァテインは炎が消えてただのぐにゃぐにゃときた棒へと戻り。彼女自身の体もゆっくりと床へ倒れる。

 そこにあるのは弾幕ごっこ特有の、美しい弾幕は無く。あるのは無情な一撃だけだった。

「あっ……?」

 フランの口からそんな声が漏れた。彼女は徐々に閉ざされつつある視界に仁を収めると、

「やっぱり……あなた、どこ……か……で……?」

 とだけ言うと、彼女は気を失って少年へと伸ばしていた腕が床へとパタンと落とす。

 そんな彼女を見ながら、仁は抜いていた刀を鞘に収める。前回とは違い、今回は上手くいったらしい。

 彼女の、"フラン”という人格だったから勝てたようなものかもしれない。もしこれが"誰か”に操られていて、気を失うことさえ許されない状態だったら少年に勝機は無かっただろう。

 ……そういえば、これはまだ遊びの範疇なのだろうか。少年は思った。

 弾幕ごっこの勝敗に関しては詳しくないのだが、ほとんど闇討ちのような攻撃で倒すことは卑怯ではないのか? それにフランが目覚めた後、自身が騙し討ちされたことを知ってどう思うのだろうか。

 どちらにせよ、結果的に少年は生きている。これだけでも奇跡だと少年は思うことにした。

 と、その時。

「あら、フランを倒したのね」

 背後から声が聞こえた。

 声は幼い少女のものだったが、その声からは想像もつかない貫禄のようなものを少年は感じとる。

 振り返れば、そこにはレミリア・スカーレットが立っていた。

 月の一件以来の顔合わせだ。

 紅魔館の当主であり、今のところ仁が一番文句を言ってやりたい人物でもある。

「何の用だ」

 仁はM17カービンカスタムのストックを伸ばして肩につける。そして、その銃口をレミリアに向ける。

 しかし。

「っ!?」

 突然、構えていた拳銃が消えた()

「そんな物騒なもの向けないでちょうだい」

 見ればレミリアの横には、銀髪のメイド服の女性が立っていた。その手に分解されたM17を持って。

 確か、メイド服の女性━━十六夜 咲夜は時間を止めることが出来る能力を持っていたはずだ。もしかしなくても、彼女が時を止めて少年の拳銃を奪ったのだろう。

「ずっと見てたのか?」

 少年はレミリアに尋ねた。

「いいえ、今来たばかりよ」

「そうか。でも、姉なら暴れてる妹を止めるもんじゃないのか?」

「まさか。私は貴方が勝つと分かっていたわ」

「ふざけんな! お前、俺を何だと思ってやがる!!」

「……何ですって?」

「何が、勝つと分かっていた、だよ。俺は人間だ。殺されるかもしれなかったのに」

 急に憤りを見せた少年に、レミリアはただ黙るだけ。

「……」

「それになんだ、いきなり俺を月に連れて行っておいて、……ごめんの一つもないのかよ。こっちは殺されかけたんだぞ!」

「……それ……は」

「もういい! 俺は帰る」

 そう言って、少年は近くにあった上へとつながる階段を上って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仁さん、本当に良かったんですか?」

 少年が図書館の最上階に来ると、そこには魂魄妖夢がいた。彼女は仁をみるなり、心配そうな声で言った。

「ああ。他人任せに戦うのは嫌だからな。これで俺が一人で戦えるって分かっただろ?」

「そうですが……、怪我は大丈夫なんですか?」

「髪の毛が少し焦げたぐらい」

「ほぼ無傷じゃないですか」

 呆れた妖夢が言う。

「ほとんど防御にまわってたからな。攻撃したのは一回だけ」

「それじゃあ、私が教えたことは出来たんですね」

「まぁな、というかあれが出来なきゃ死んでた」

 二人が言っているのは、刀を使って弾幕から身を守るという技のこと。どんな大きさの弾幕でも、その技さえ出来れば凌ぐことが出来る。

「なら、もっと鍛練しましょう。貴方ならもっと強くなれるはずですから」

「では今後ともよろしくお願いしますよ、師匠(・・)

 と、そこで彼は何かを思い出したかのようにハッと後ろを振り返る。

「どうかしましたか?」

「いや、ちょっとな。もうそろそろボロが出るんじゃないかってな」

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 図書館にある丸いテーブルとセットのアンティークな椅子に、レミリア・スカーレットは腰を掛けていた。

 そんな彼女は深刻そうな面持ちで頭を抱えていた。

「……ねぇ、咲夜」

 と、彼女は横に立っているメイドの十六夜咲夜に言った

 。彼女は、はいとだけ言うと、

「私、何が間違ってたのかしら」

「全て、です。あの少年が怒るのも当然かと」

「そう、よね……。やっぱりもう少し、あのスキマ妖怪に似せた方が良かったかしら」

 それは絶っ対に間違っているかと、そんな言葉が出てきそうになり咄嗟に喉の奥に押し込む。

 そう、彼女は彼女で悩みを抱えていた。八雲紫が連れてきたという、あの外来人のことについてだ。

 レミリア・スカーレットは守矢神社で開かれた宴会の時から彼のことは気にはなっていた。それは、何故ただの人間が守矢の一柱を倒したのかという興味があっての事。

 宴会の時は、ちょっとからかってやろう程度で月に連れていこうと言っていた。しかし、その後に起きた紅魔館での彼女の妹━━フランドール・スカーレットが暴走に似た何かを起こした日。

 あの日、少年が妹を倒したと聞いた時、レミリア・スカーレットは久方ぶりに焦りを見せた。

 彼は強いのだろう。ならば、外来人で強力な人間をこの紅魔館に引きいれれば、彼女達の幻想郷でのカーストは上位になるのではなかろうか? 

 そして、周りも同じような事を考えているかもしれないという考えも同時に思い付いた。

 彼女は月に行くという計画を建てていた。

 そこへあの外来人を連れていけばどうだろう。彼は空に浮かぶあの月へ行き、そして自らのカリスマに惹かれて自然と彼は近づいて来るのではないか。

 彼女はそう思っていた。

 だが、現実はそんな幻想には程遠かった。

 月に向かっていたロケットは途中で崩壊し、乗っていた少年は月の大地に落ちていった。

 その後、彼が無事に帰れたとは聞いた瞬間に安堵はしたもののまた別の問題が彼女の中に生まれた。

 実の所、彼女はあまり人間と長らく話すことはなかった。会うことはあっても、それは生きている人間ではなく食料として加工されたものとだけ。生きている人間、ましてや普段なら真っ先に殺されるはずの外来人となれば尚更。

 接し方なんて分からないし、扱いも分からない。

 そんなわけで、不器用なお嬢様"レミリア・スカーレット”は悩んでいる。

「それほど、あの少年のことが気になるのならもう一度話してみてはどうです?」

 やや投げやり気味に咲夜が言った。

「無理よ……」

 彼女は珍しく弱気な声で答える。

「どうしてです?」

「だって、あの様子だと怒っているじゃない」

「なら、謝ればよろしいのでは?」

「それは嫌よ! そんなことしたら、私の……威厳が無くなるじゃない!」

 そんなことを言うから無くなるんです、再び喉の奥からそんな言葉が飛び出ようとした。

 目の前では尽くすべきお嬢様が、やれカリスマやら威厳やら、と騒いでいる。

「そんなに言うなら、もう彼の事は諦めた方がよろしいのでは?」

「それはそれで嫌!」

 彼女は吸血鬼だ。長い悠久の時を生きており、その体は500年を過ぎているというのに幼い少女のままだ。

 ……そして、たまに見た目相応の幼さを見せる彼女は、こうやって周りを振り回すこともあるのだ。

 と、その時。

「ふぅん、そうゆーこと」

 どこかから、あの少年の声が聞こえた。

 振り返ると本棚の横から神川 仁の顔が覗いていた。

「誰かに似てんなって思ったら、そうか紫か」

「ち、違っ……」

 らしくない言葉を発したレミリアの顔は真っ赤に染まっている。

「だいたい、何かおかしいと思ったんだよな。喋り方がいちいちセリフ臭いし、妙に棒読みみたいだし……って、まさか練習してたりするのか?」

「違う!」

 完全で瀟洒なメイド長は見ていた、カリスマ溢れる吸血鬼であるレミリア・スカーレットが寝る前に、メモに書かれた台詞を一生懸命音読していた所を。

「それに、一つ言うけどよ」

「な、何よ!」

「紫の真似は辞めた方がいいぜ、あんなのカリスマ云々の前に胡散臭すぎて誰も近寄りたくなくなるぞ」

 あ、それ言っちゃいけない。

「……ふふ」

 俯いたレミリアは、不意にそんな笑い声を上げた。

 それは決して愉快だからという訳ではなく、単純に怒りが限界を突破していたからである。

「ただの人間風情が言ってくれるじゃない……」

 彼女のこめかみには青筋がたっていた。

 完全にブチ切れている。

 レミリアは、自身の右手に赤色の槍を出現させるとそれを少年な方向へと投げつける。

「うおっ!?」

 少年は避けるが、赤色の槍は彼の後ろの本棚に当たると赤い光と共に爆発を起こした。

「…………」

 ゆっくりと、少年は振り返る。

 あのフランの攻撃にも耐えていた、恐らく魔術が掛けられて高い耐久性を得ていた本や本棚が、クレーター状に抉れていた。

 徐々に少年の顔が青白くなり、血の気が引いていく。

 不味い、からかい過ぎた。

「もういい、お前はここで殺してやる。安心しなさい、お前の死体はフランのディナーにでもしてやるから」

 再び、レミリアの手に赤色の槍が握られる。

 次に少年がとった行動は、全力で出口に向かって猛ダッシュ。

 後ろから赤い槍やら弾幕やらに加えて怒号が飛んでくるが、後ろを振り返るor立ち止まるなどの行動をした途端、彼の短い人生は終わりを迎えることとなるため、気に留めず、無我夢中で走ることにした。

 かくして、途中で拾った妖夢を巻き込んで紅魔館を舞台とした壮大な鬼ごっこが始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……あれ、咲夜?」

 フランドールが目が覚めて最初に見たのは、彼女が住む紅魔館のメイド長だった。

 そして、いつの間にか図書館から自分の部屋へと戻っていたことも知った。

 彼女はベッドから起き上がると、

「あの人間はどこ?」

 と、キョロキョロと周りを見回しながらベッドの横に立つ咲夜へと聞いた。

「あの人間?」

「ほら、半人半霊と一緒にいた」

「あの外来人のことですか。彼なら先ほどお帰りになりましたよ」

「そう、なんだ」

 彼女は残念そうに俯く。それはどこか寂しそうでもあった。

「ねぇ、聞いてよ咲夜」

「何ですか、妹様?」

「アイツったら非道いのよ。私と遊んでいたのに、急にどこかへ行っちゃったの」

 彼女はふんすと頬を膨らませながら、

「だから私は怒ったのだけれど……でも、その先は覚えてなくて」

「きっと、お疲れなのですよ。今日の妹様はまだ日が高いうちから起きていましたから。まだ、夜までは時間があるのでそれまでゆっくりとお眠りになっては如何ですか?」

「そうする」

 そう言うと、フランドールはベットに寝転がる。

「……ねぇ、咲夜。あの人間って前にも会ったことあったっけ?」

 少女は天井を見据えながら、言った。

「…………」

「咲夜?」

「……一度だけ、妹様がお眠り(・・・)になっておられる時にお会いしましたよ」

「そうなの?」

「ええ」

「もしかして、その日って私がなんにも覚えてない日のこと?」

「……はい」

 そんな彼女を見てフランドールは小首を傾げ、疑問に思った。

 今日の咲夜はどこか様子がおかしい。そう思った彼女は言う。

「咲夜、私に何か隠しごとしてる?」

「いいえ、滅相もございません」

「例えば、この前のこととか。……私が知らないうちにみんな怪我してて……、私が寝ている()時なにがあったの?」

「私から、言えることは何もございません」

「…………」

 答えることも無く、フランドールは寝返りを打って咲夜に背を向ける。

「あの日のこと、私は覚えてないの。……でも、すごく怖かった」

「きっと悪い夢を見ていたのですよ」

「でも、怖いだけじゃなかった。まるで……私が私じゃなくなるって思ったの。何かに塗りつぶされるみたいに」

 一度言葉を切り、鼻をすする音が聞こえると再び話し始める。

「もし、あれが悪夢だったのなら。私を起こしてくれたのは誰なの?」

「分かりません。もしかしたら、その方は素敵な方かもしれませんよ」

「魔理沙みたいな人間かな?」

「そうですね。そのような方かもしれません。では、私は用事がございますので。……おやすみなさい、妹様」

「……うん、おやすみ咲夜」

 そうして咲夜は、フランドールに背を向けて彼女の部屋の分厚い鉄の扉から出て行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで、フラン戦二回目です。
前回のとは違い今回は理性がまだある状態での戦闘でしたので、個人的には暴走した時より描きやすかった印象でした。
…まぁ、前回書いてた時は自分の力不足感も否めなかったんですが。
それと一応補足しますが、基本的に仁くんはスペカを使うことは出来ません。弾幕を自力で作れず、かと言って作れたとしてもバリエーションが少なすぎるので、今はまだ無理なんです。
まぁ、その話はまたいつか…
誤字や脱字、それに変な日本語があったらご報告していただけると幸いです!
それでは、今回もこんな小説をよんでいたありがとうございました!!





それと、仁くんの髪はアップバング的なのを想像しといてください。
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