東方軍器伝   作:RYUやん

38 / 38
山奥にある寺にて

 

 

二日後

 

 二人はバスを乗り継ぎ、目的地である寺の近くへとやってきていた。

 周囲のどこを見ても生い茂った木々が目に入り、鳥の鳴き声が聞こえてくるようなのどかな場所だった。

「案外、平和そうな場所だな」

「だねぇ」

 二人はそんなことを言いながら、山沿いの道を歩く。

 彼らの格好は若干季節外れな、登山をするための格好で厚着をしている。いかにカモフラージュの為とはいえ、この季節にウィンドブレーカーは暑い。

 と、当初は思っていたのだが、この場所は標高が高いからなのか春の初めにも関わらず、十二月中旬ほどの温度だったので、案外、この格好は合っていたのかもしれない。

 そして、見えてきたのは高い杉の木に囲まれた石畳の道路だった。この先に目的地の寺があるのだろう。

 三百メートル続く石畳の先に、一件の建造物が見えてきた。

 その建物はいつの時代からあるか分からないが、見た目から相当昔の時代からこの土地にあったようだ。

 重要文化財に指定されてもおかしくはなさそうな雰囲気の寺。

 だが、そこの様子がおかしかった。

 荒れていたのだ。

 門には無数の切られたような跡、壁は所々穴が空いておいる、障子戸も破損していたり、そもそも無かったり、まるで廃墟のようだ 。森の中にある荒れ果てた寺。それだけだと、まるでホラー映画の舞台のようだ。

 そして、少年は気付く。

 ここら辺一帯が異様な空気に包まれていることに。

 人の気配がしないのは普通だ。こんな山の奥にある名の聞いたことの無い寺にわざわざ出向く物好きなんて、そうそう居ないはずだ。

 では、この誰かに見られているような感覚はなんなのだろう? 

「……鈴華」

「分かってる。背中は任せる」

 そう言って、彼女は静かに上着の中に着ているベストから拳銃を抜くと、側面の木々の間へと銃を構える。

 今回、鈴華が持ち込んできたのはUSPの45口径仕様。45口径信者の彼女らしいチョイス。

「……今度は何だよ」

 少年も同じようにベストから拳銃を抜く。

 少年が持つのは、イタリア製のベレッタM93r。バレル下のレールには小さなグリップが付けられ、銃口には長方形のコンペンセイターと、特異な見た目をした特殊部隊ようの拳銃。

 その時、風もないのに、周囲の草木が揺れる

「来るか……!」

 少年の予想は的中する。

 草むらから、二匹の犬のような奇怪な生物が飛び出してきた。

 所々毛が剥がれ、白目を剥き、まるでゾンビのような風貌のライオン程の大きさの犬の化け物だった。

 飛びかかれる前に、少年はM93rで妖犬に発砲する。

 パンッ!! という乾いた音と共に、銃口から9x19mmパラベラム弾が撃ち出される。

 放たれた弾丸は吸い込まれるように、犬の頭部に命中した。

 ゾンビのような風貌とは裏腹に耐久力はないようで、頭を撃ち抜かれた妖犬はバランスを崩して三回ほど転がると動かなくなる。

 続いてもう一匹の脚を撃つ。まるで、ダルメシアンのような黒と白の模様の妖犬は少しバランスを崩すだけで、止まることなく少年に向かってくる。その開いた口に並ぶ歯は鋸のようにギザギザとしていて、こんな生物が存在していいのかと思わせられるほど気味の悪い光景だった。

 少年はすかさず、飛びかかってきた妖犬の口の中に三発をバーストで撃ち込む。

 周囲に、赤黒い血が飛び散る。その血は少年の頬にもかかる。

「数が多い!」

 鈴華の叫びに、少年は振り返る。

 見れば、彼女の腕に妖犬が噛み付こうとする瞬間だった。

 考える事より先に手が動いた。

 ナイフホルダーからナイフを抜き、逆手で持つと思いきり妖犬の頭部を突き刺す。

 恐らくはその白濁した目を刺したのだろう、感じたことのない感触と共にナイフが頭部の奥へと刺さる。

 きゃいん、と妖犬が情けない声を出して絶命する。

 少年はナイフを抜くと、残りの四匹の内で鈴華にいちばん近い個体に向かって投げる。ナイフは見事に三匹の内で一番鈴華に近かった個体の脳天へと突き刺さる。犬は倒れると、数秒ほど暴れて絶命した。

 他の二匹は鈴華のUSPの射撃で倒れる。

 と、その時。

「仁くん、後ろ!」

 少女が叫ぶ。少年が体の向きを変え、振り返る。

 そして、少年の目に映ったのは眼前まで迫っていた妖犬の姿だった。不意打ちだ。

 引き金を引こうとするが、間一髪間に合わないと悟ってしまう。

 どうしようも出来ない、とその瞬間、少年と鈴華の間に一本の長い棒のようなものが入れられた。

 棒の先には刃が付けられている━━それは"薙刀”だった。

 二人の間を通った薙刀の刃は、妖犬の腹へと突き刺さる。

「危なかったな、少年」

 突然、男の声が二人の耳に飛び込んできた。

 声がした方を向くと、そこには禿頭の中年の僧侶が立っていた。

 僧侶が薙刀を引くと、妖犬に刺さっていた刃が抜ける。支えが無くなった妖犬の体は、力なく地面に落ちる。

「あなた、は?」

 急な出来事に困惑している少年は、僧侶に向かって言う。

「俺か? 見た通りの、お坊さんだよ。あの寺のな」

 そう言って、僧侶は荒れた寺の方を見る。

 妖犬への対応が常人のソレとは違った。そもそも、この時代で薙刀を純粋な武器として使うこと自体異常である。それが、この僧侶が只者では無いことを思わせられる。

「まぁいい。どうせ、お参りに来たわけじゃないんだろ? 寺に来い。色々話もあるだろうしな」

 僧侶は、目の前の子供たちが持つ銃を見ながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 外観は荒れていた寺だったが、内部はそれほど目立った損害もなく、そのうち少年達がいる居間は障子戸が破れていること以外は快適とも言ってよかった。

 そして、少年は僧侶に、自分たちが健二によって送られてきたことを話していた。

「なるほど、アイツがお前たちを……。て事は、自分たちが何のために此処に来たか分からないだろ?」

「え? ま、まぁ確かにじいちゃんからは此処に行けとしか言われなかったので……」

 少年が返すと、僧侶はため息を吐く。

「ったく、やっぱりか。ホント、アイツは変わんねえや」

「昔から? もしかして、昔のじいちゃんを知ってるんですか?」

「まぁな。健二とは昔っから一緒に戦ってた仲かな」

「じいちゃんと、戦ってた?」

「昔の話だ。今は違う」

 数秒ほど間を空けると、僧侶は言う。

 さて、と僧侶が言う通り、

「とにかく、自己紹介だな。俺は……"明練”。名字とかはない。ただ、明練和尚とだけ呼ばれていた男だよ」

「」

「まぁ、自己紹介はしたが俺のことは何とでも呼べばいい。名前なんてもん、俺にとっちゃどうでも良いからな」

 ワハハと僧侶には似合わない笑い声を上げる和尚。きっと、感情の起伏が激しい人なのだろう。

「……にしても、あの健二が引退か」

と、今度は落ち着いて和尚は呟く。

「引退って、じいちゃんはまだまだ現役ですよ」

 少年が怪訝な顔で聞く。

「いや。自分の代わりに、お前たちを行かせるんだ。俺もそうだがアイツも中々歳をとったってことだろうさ。……ま、跡取りがお前たちなら心配もないだろう」

「心配ないって……。俺はそうは思えません」

「お前がそう言っても、俺にはそう見えたんだ。もっと、胸を張れよ。じゃねえと、舐められちまうぞ」

「……分かりました。ありがとうございます」

「礼なんて言うもんじゃねえよ。……さて、この話は終わりだ。本題に入ろう」

 そう言って、僧侶は障子戸の方を見る。

 障子戸の向こうの庭は、先程の妖犬の襲撃によるものなのかだいぶ荒らされている。

「さっきの犬、覚えてるか?」

「はい。あの、とても……」

 思い出されるのは、白濁した黒がない目、毛が剥がれた体、おぞましい口の中。あれではまるで━━━

「生きているようには見えなかった、だろ?」

「ええ」

「そう思うのも仕方ねえな。何故って、奴らは死んでいる(・・・・・)らしいからな」

「でも、アレは確かに動いてました。俺にはとても死んでいるようには……」

 徐々に声を小さくしながら少年は言った。正直、こんな話がこっちの世界で聞くとは思いもしなかったのだ。

「なら、少し言い方を変えるか。なぁ、仁」

 僧侶は声を低くしながら、続ける。

「式神、って知ってるか?」

「式神……それって、陰陽師の?」

「ああ、その式神だ。まぁ、式神っつっても存在の仕組みが似てるだけなんだけどな、奴らは」

 式神とは、大昔の陰陽師と呼ばれる存在が使役する、位の低い神や妖怪の霊のこと。

 だが、本来なら、人が決めた正しい行いの為に使役されるはずの式神が、何故あのようなおぞましい姿となって少年らを襲ったのだろうか? 

 再び、僧侶が口を開く。

「使役することにゃ変わりねえが、あれに関しちゃ使役ってよりは操作だ。式神化の術を使えるヤツがそこら辺の野良犬かなんかを無理矢理式神にしたのが、アイツらの正体だろうさ。まあま、あれは式神というよりかは傀儡だな」

 つまり、先程の化け物は式神モドキにされた野良犬ということらしい。あの見た目も、無理矢理式神にされたことで起こった変化なのだろう。

 だが━━━

「……あの、そもそも式神が……」

 少年は、この世界での式神というものを理解していなかった。

 映画やゲームとかではよく見るが、それとこれとは訳が違うのは明確だ。だから、彼の中での式神という認識は陰陽師が扱う不思議な力という認識でしかない。

 だから、イマイチこの僧侶の言っていることが分からないのだ。

「なんだ、お前のじいちゃん、そこら辺の事は教えてくれなかったのか?」

「はい、全く」

「……」

 即答だった。

 僧侶は深くため息をつくと、

「……分かった。簡単にだが、説明はしてやる」

「すいません」

 良いってことよ、と僧侶が言うと、

「まずは、だ。少年。仁、お前、ゲームは分かるよな?」

 僧侶の問に少年は頷く。

「なら、ゲームをする時に必要な物はなんだ?」

「必要な物?」

 しばらく、考えていると脳裏に思い浮かんだのは、

「ゲーム機本体……とか?」

「で、他には?」

「……カセット?」

「そうだ。どれだけ、本体(ハード)の性能が良くても、ソフトが無けりゃ何も出来ないだろ? それと一緒だよ、式神ってのは。式神は、本体と式って術で成り立ってる。そんで、本体に使われるのは大抵妖怪になりかけた動物とかだ。それに"式”っつうソフトをダウンロードする。そうやって式神は出来るもんだ」

 説明されて、浮かんだのは式神も使い手がいなければ何も意味が無いのでは? という、考えだった。

 ゲームだって、本体にソフトが入っていても使い手(プレイヤー)がいなければ、それは精密機械という以前にただの鉄の塊となってしまう。

 式神というのも、使い手となる"誰か”が居てこそ成立する

「…なんだか、良い感じはしない仕組みだ」

「ん? どうしてだ?」

「だって、生き物を道具みたいに使うなんて、俺には出来ない」

 一瞬、キョトンとしていた僧侶は数秒程すると、急に大声で笑いだした。

「え?」

「それは違うぞ、仁。確かに式神ってのは使うもんだ。だけどな、式神にだって感情はある。機械なんかと一緒にしちゃいけん。自分で考えるし、行動もする。道具なんかじゃねえ、式神ってのは"仲間”だ」

「ならさっきの犬は? アイツらも式神なんだろ?」

「言ったろ、アイツらは式神に似てはいるが根本的には違うってよ。言うなら、普通の式神が万能AI、さっきの犬がそれこそ工場の機械みてえなもんだ。きっと、入力する"式”が普通のとは違うんだろうよ」

「なら、なんであの犬達はそんな"機械”にされたんですか?」

「単純に扱いやすいからだろうさ。自分で考えて動くよりも、ボタンだけ押せば勝手に動いてくれるロボットの方が都合がいいんだろう。……それだけ、入力する命令が非道えってことだ」

「なら、あの式神を作ったのは誰なんです?」

「さあな。まぁ、俺のことが好きじゃないヤツの仕業だろうさ。とにかく、重要なのはその式神と、式神を送り込んでくるヤツからこの寺の宝を守らなきゃならねえ、ってことだ。分かったか?」

 僧侶の問いに、仁は頷くと、

「分かりました」

 と、だけ答えた。

「なら、宜しく頼むぞ神川 仁。今、この寺にはお前たちが必要なんだ」

 覚悟を決めたように、僧侶は言った。

 その真っ直ぐな瞳に嘘はない。

 そして、

「……まぁ、さっきからこはずかしい事ばっか言ったのは良いが……」

 チラリと、僧侶が横を見ると。

「ふふーん♪」

 寝転がり、足をパタパタとさせながらどこからかやってきた黒猫相手に遊んでいる鈴華がそこにいた。

「……そっちの嬢ちゃんは大丈夫なのか?」

「あ、大丈夫で、……

「大丈夫。ちゃんと、全部聞いてたよ」

 と、仁の言葉を遮るように鈴華が口を挟む。

 声こそ二人の方に向けてはいるが、その顔は猫の方に向いている。

「なにせ、こんな耳をしているものですから」

 そう言って、彼女は右の手の人差し指を頭に向ける。

 すると、頭部に兎の耳が現れた。

「こいつは驚いた……まさか、お前玉兎ってやつか」

 ピクピクと動く兎の耳を見ながら僧侶は言う。まるで、珍しい生き物に釘付けになっているような目で彼は少女の耳を見続ける。

「その通り。けど、なんでボク達のことを? 外の世界の人間には、ボク達のことは知られていないはずだけど……」

「健二から聞いてるんだよ。向こうの月には、餅をつく兎がいるってな」

 それを聞いた鈴華が、苦い顔をする。まるで嫌な事を思いだしたかのように。

「それは……、うーん、間違っちゃ居ないけど……」

 今度は頭を抱えだす兎を横目に少年は言った。

「で、具体的には俺たちは何をすれば良いんです?」

「お前たちにはな…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボロボロの壁、穴が空いた障子、そしてそこから入り込む冷たい風。

 電気などのライフラインは通っているのか、暗い部屋を蛍光灯の明かりだけが照らしている。

 そこに、仁と鈴華はいた。

 二人はそれぞれの武器を手入れしている。

 一度、拳銃を分解して再び組み立てる。

 その際に汚れている部品を念入りに掃除をする。

 そういった作業をしながら、少年の頭の中では和尚の説明が繰り返されていた。

『お前たちにやってもらいたいのは、この寺にある……まぁ、宝物ってやつを守ることだ』

 どうやら、この寺には"宝物”があるらしい。

 それが何かは教えて貰えなかったが、明練和尚が言うには"命にかえても守り抜きたいもの”らしい。

『実は、あの式神もどき共は日に日に数を増やしているんだ。それもネズミみてぇに、倍々になってな。初日は五匹、次は十匹。四十匹までなら、大丈夫だったんだが……。数が三桁言ったあたりから、キツくなってきてな。助け? 欲しかったが、電話線はとっくに切られてたよ。こんな山奥だと電波も来ねえからな、携帯も使いもんにならなかった』

 組み立てた拳銃を構える。銃口を戸の方に向けて空撃ちする。カチン、という音とともにハンマーが撃針を打つ。

『それに、色々あってここの宝物は外には持ち出せなくてよ。だから、逃げたくても逃げれねえもんでな。まぁ、そもそもこちとら逃げるつもりなんて毛頭ねえが』

 スライドを引いて、装填した弾薬を確認する。蛍光灯の白い光が弾丸を薄らと照らす。

『話が逸れたな。結局の話、今夜お前たちが相手にするのは数百は超えるあのバケモン共だ』

 腕や脚に気持ち程度のプロテクターを着ける。さっきまで着ていた登山用の服は脱いで、シャツとベストとズボンだけの軽い服装の上にだ。なぜ、この軽装かと言われれば、彼らが相手するのは一撃が重い相手ばかり。だから、無理に受け止めるよりも避けた方が良いというのだ。

『最後に聞くが、やれるのか?』

 やれるに決まっている。いや、やらなければならない。

 守らなければならない宝物とやらがどんな価値を持っているのかは知らないが、一人の男が自らの命を削ってまで守るような物だ。価値が無いわけがない。

「ねえ、仁くん」

 唐突に鈴華が声を上げた。

 見れば、彼女は小さなアタッシュケースを開けようとしている所だった。

「どうした?」

「これ、見て」

 アタッシュケースが開かれる。中には狩猟用のライフルに使われるような大きなスコープと、いやに長いバレル、そして機構が剥き出しの拳銃のような物が入っていた。

「こいつは?」

「タンフォリオ・ラプター。M1911を改造した、狩猟用の拳銃」

 彼女はタンフォリオ・ラプターを手に取ると、銃身の方を握って少年に渡す。

「使用弾薬は7.62mm。装填数は一発。その分威力は抜群」

「なんでこんなモンを……」

「犬達以外にも他の動物の式神がいたって、和尚さんが言ってたの」

 そう言って、彼女はケースに入っていた弾丸を取り出すと、

「7.62mmなら、クマでも殺せるから」

 コイントスのように弾丸を指で弾く。

 弾かれた弾丸は少年の方へと飛んでいく。仁は弾丸をキャッチすると、

「なるほど。困った相手にだけ使え、ってか」

 装弾数からして、文字通りの最後の手段になるのは確定のようだった。

 一応、予備弾薬を貰ったが、波のように妖犬が押し寄せる状況で、もう一丁の銃と合わせて使うとなれば、リロードをするというのはあまり現実的ではなさそうだった。

「で、お前はどうする? 同じヤツらを相手にするんだぜ? お前んとこにも来るだろ」

「その心配はいらないよ。ボクには、コイツがついてるから」

 そう言って、腰のホルダーから抜いたのはゴツゴツとした黒いリボルバーだった。

「S&W M29。ご存知、44マグナム」

「待て、その銃どっかで見たことあるぞ……何だっけな……」

 悩む仁に対し、鈴華はM29を床に置いて、何も持っていない右手の指でピストルを作ると、人差し指の先を少年に向けて、

「コイツはマグナム44っつって世界一強力な拳銃だ。ヤツらのどたまなんて一発で吹き飛ぶぜ。楽にあの世まで行けるんだ。運が良ければ、な」

 その台詞を聞いて、少年は思い出した。

「キャラハン刑事か」

「そ。さすがに映画みたいな火力は出せないけど、元々コイツも狩猟用に作られた銃だから充分役に立つと思うからさ」

 恐らく、この銃も健二から送られたものだろう。あのじいさんの事だから、彼女の言う映画みたいな火力が出せるほどの改造を施しそうなものだが、そこら辺はどうなのだろう? 

(ま、爺ちゃんの事だし、良っか)

 そう割り切って仁は考えることを諦めると、目の前で体に巻き付ける予定だろう弾帯に弾丸を一発づつ込める鈴華にある物を投げ渡した。

「M29の反動はだいぶキツいんだろ? だったら、そいつでも着けとけ。擦りむかないようにさ」

 彼女が受け取ったのは黒色の手袋━━━━━いわゆる、タクティカルグローブというものだった。

「ありがと。って、キミは良いの? ラプターもそれなりに反動はあるよ?」

「俺のことは気にすんな。いいから、黙って着けとけ」

「……分かった」

 鈴華は納得がいかないといった表情で、渋々と手袋をつける。

「で、時間は大丈夫なの?」

「まだ、……いや、どうだろう。アイツらが来るのは単に日が暮れたら、来るらしいけど……」

 そう言って仁は、障子戸の外を見る。赤い夕陽も沈んで、徐々に日は暮れつつあるものの、夜という雰囲気ではない。

「微妙だね」

「まぁな。だからってゆっくり出来る訳でもないだろうし、早く終わらせて和尚のとこに行こう」

「りょーかい。って、言ってもボクは君待ちだけどね」

「……まじ?」

「まじ」

「そういうことで……、ボクはこの子と遊んでるから」

 何を言っているんだ、と言おうと彼女の方に視線を送ると、胡座をかく彼女の足の上に黒い猫がちょこんと座っているのが目に入った。

 その猫はさきほども、彼女のもとにいた猫と同じだった。

「ん……?」

 普通の黒猫……のようには見える。

 しかし、どこか違和感を感じる。仕草も毛並みも、普通の猫の筈……。なら、この違和感は何なのだろうか。視覚では分からない、……また別の感覚から感じる違和感。

「……まぁ、良いか」

 そう割り切ると、再び、仁は銃をカチャカチャといじり始めた。

 

 

 




お久しぶりです。筆者です。
受験も終わり、ゆっくり出来るようになったので投稿しました。
久しぶりに投稿ということで、前の作品を振り返ると、やはり二次創作と言えど原作から離れすぎだと思い、三話ぐらい先から幻想郷の方面での話になる予定です。東方ロストワードをやっていたら幾つかやってみたいネタが見つかったので、楽しみにしていて下さい。
では、話すネタもないので今回はここら辺で。

誤字や脱字、おかしな文があったらご報告して頂けると幸いです。
それでは、今回も読んでいただきありがとうございました!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。