幻想入り一日目夜~
携帯の時計で七時半を迎えた頃、辺りは既に真っ暗になっていた。
夕食等を終えた仁は博麗神社にて霊夢に自分は誰か、何処から来たのか、などを話していた。話、と言うよりは紅白の巫女━━霊夢による事情聴取に近かったが。
「ふーん、ということはあんた自体に幻想郷に来る意思はなかった、と」
と、興味が無さそうに霊夢は自身の中の結論を言った。
「そう言うこと」
そう話をしているが、やはり彼女の雰囲気がドラマでみる事情聴取中の刑事のソレだ。
それだけ、仁を連れてきた"紫”という人物? は信用されていないのだろうか? 同様に少年のこともこの様子だとあまり信用されていないのか、今の少年には検討がつかない。
「それと仁、あんたが首に付けているそれは何?」
霊夢が仁の首にあるネックレスを指さして言った。そのネックレスには中央に赤い小さな丸い宝石が嵌め込まれていて、ロケットのように中に写真を入れられるようになっている。
「これは俺の爺ちゃんから貰った物なんだ」
仁は首はロケットを手に取りカパっと音を発てながら開けた。そこには幼い子供を抱きながら微笑む老人の写真が入っていた。
「それが仁のお爺さん?」
霊夢は仁の横に移動してロケットを除きこむように見ながら言う。
「ああ。爺ちゃんは考古学者やってたんだよ、このロケットの宝石はもう必要が無いって渡されたのをロケットに加工したものらしい」
「こうこがくしゃ?」
霊夢は小首をかしげて言った。この
「考古学者ってのは簡単に言うと、昔何処で何が有ったかを調べる仕事」
「そうなの。……それお爺さんからもらったって言ってたけれど、貴方のお爺さんってまさか……」
「いや、まだ生きてるよ。元気に老後を趣味に費やしてるよ」
「まだ生きてるの?! 今の流れで?!」
と、霊夢は軽く絶叫した。
「六十超えても元気過ぎて両親が困ってるぐらいだからな」
ははは、と笑ってはいるものの、なぜか目は笑っていない。地雷でも踏んだのだろうか? と不安になった紅白の少女は話を変えて、
「じゃあ、何でその形見みたいに持ってるのよ?」
と、仁に聞いた。
「別に形見って訳でもないだけど……まぁ、小さい時に爺ちゃんに仕事の事を色々聞いていたら、そういう仕事に憧れちゃって、将来爺ちゃんみたいな考古学者になりたいって言ったんだよ」
「そしたら、それを?」
「ああ。そん時に俺を安心させるためかな? こいつはお前を守るお守りだ、だから大切にしろ。もしもの時があったら必ず守ってくれる筈だぞ、って言って、そしたらこのロケットを渡してきたんだ」
「仁のお爺さんって優しいのね」
「ああ。俺が一番尊敬している人だよ」
そして仁はロケットをギュッと握る。その時、霊夢にはロケットの中央の宝石が光っているように見えたが彼女は、気のせいね、と呟くと立ち上がった。
「さーてと、仁もうそろそろ寝るわよ。私が向こうだから仁はここで寝てちょうだい」
「分かった。それで布団とかは何処だ?」
「こっちの襖の中に入ってるわ」
「ありがとう」
そして少年の幻想郷での一日目が終わった。
~幻想入り・二日目・朝・博麗神社~
仁と霊夢は朝食を済ませると、紫が来るのを待つために博麗神社の住居部分の横にある庭のような場所に居た。だが今は朝と言っても仁が持ってきたスマートフォン内の時間で10時を表示しており、太陽は既に頭上を過ぎようとしている。
「……さすがに遅すぎないか?」
「そうね……そうだ! すっかりあの事忘れていたわ!」
霊夢は何かを思い出したように片手を頭に乗せた。
「忘れていたって、何を?」
「実はね
「は?」
驚愕の事事を知り、仁は呆然とした。紫は姿こそは人間だが、れっきとした妖怪だという。生活サイクルも人間と違っても何らおかしくない。
……もしかすると、実は紫はクマの妖怪だったり、などという事も有り得そうで怖い。
「冬眠って、熊とかがするあれか?」
「似てるけど、違うらしいわね。確か、紫の式神……簡単に言うと召し使いのようなもの。その式神に聞いた話なんだけれど、あいつは一度寝るとずうっと眠り続けるらしいわよ。起こさない限り」
霊夢は呆れたようにため息をつくと居住スペースにある縁側に腰を落とす。
「まさか、ただ単に眠いから寝るみたいな感じか?」
子供か、と仁は心の中で呟く。
「そうみたいね。けど、紫は時々起きて色々とやるのよね、ちょうど昨日みたいに」
最近会ってなかったから忘れてた、と彼女は項垂れる。
「それじゃあ俺の能力を調べるには?」
「私達だけでやんなきゃいけないのよ」
「まあ良いか……それで具体的に何をすれば良いんだ?」
「とりあえず、頭の中で何かしらのイメージをしてみて。例えば私の能力の『空を飛ぶ程度の能力』はそんな単純じゃないけど。幻想郷の中には『水を操る程度の能力』とかが有るから、まずはイメージからやってみるのも良いかもしれないわ」
「分かった、ちょっとやってみる」
と仁は目を閉じ色々なモノをイメージしてみた、地面を浮き上がらせるようなイメージや天候を操ってるイメージや、苦し紛れに少し厨二病とも評されるような入ってるイメージもしたが、何も変わらず何も起こらなかった。
「何も起きないわね、やっぱり難しいかしら?」
「うるさい!! べ、別に他に色々とイメージ出来るから大丈夫だ!」
と、仁は焦りを顔に出したまま、再び頭の中でイメージを始めた。
~30分後~
「どう?」
と霊夢は縁側でお茶をすすりながら言った。
その相手の少年は膝をつき両手の手のひらを地面につけており、その姿には如何にも残念な感じが伝わってくる。
「駄目だ……なんも出来ない」
その言葉が、(彼の中では)切羽詰まった状況を表している。
半場、涙目になりながらも仁は頭の中で自分が考えつく限りのイメージをまだ考えていた。
「やっぱり紫が来るのを待ったほうが良いと……仁! 今すぐそこを退いて!!」
突然、空を見上げたと思うと霊夢はものすごーくマズイという顔をして部屋の奥に逃げるように駆けていった。
その霊夢が最後に見ていた方向にはこの真昼にも関わらず光る星のようなモノが見えていた。そしてその星のようなモノは心無しか段々光が増し……というよりはこちらに向けて迫ってきてるように見える。
「仁! 早くそこから逃げて!!」
へ? と仁が顔を上げた瞬間、その星……というより彗星は博麗神社の先ほどまで霊夢が居た場所にドォォォン!! という凄まじい音を発てて衝突した。
周囲には土煙が舞い、仁はその衝撃により数メートル吹き飛ばされる。仁はフラフラと立ち上がると、恐らく悲惨な事に成っているだろう博麗神社の方を見た。
「何だ!?」
その神社をよーく見てみると衝突したのは縁側でなく手前の庭の方らしい。その証拠に縁側の前には半径約1メートルのクレーターが出来ているが、建物の方は無事だった。今の衝撃でも無傷の建物もおかしいのだが、それよりも仁はその土煙の中に居る人影の方に目が行った。
「あぶないあぶない。神社壊してたらまーた霊夢に治されるから面倒なんだよなー」
土煙の中で服に着いた土を払いながら、その人影は少し男口調が混じった少女の声で喋る。
「魔理沙!! 危ないじゃないの!」
と霊夢が土煙の中の人影に向かって怒鳴った。
「悪い、ちょっとスペルの練習してたら、意外とスピードが出ちまって」
仁は聞いたことの無い単語を聞いたがそれよりも目の前の滞空時間の長い土煙が段々と晴れていき、そこからその声の主が現れる。
「ま、魔女!?」
そこに居たのは黒い大きな帽子を被り白と黒の服を身につけ、片手には箒を持つ霊夢と同い年ほどの金髪の少女だった。
初めて見た感想は、魔女。
「ん? お前外来人か、また紫連れて来たんだな……っと、それよりも悪いな騒がせちまって」
と、魔女のような少女は言って仁に箒を持っていない右手を差し出した。
「宜しく、私の名前は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ」
仁は白黒の魔法使い━━魔理沙と握手をして自己紹介をした。
「俺の名前は神川仁。あー……ただの外来人? だ」
「それで魔理沙、今日は一体何の用?」
いつの間にか、神社から外に出てきた霊夢が言った。
「暇だから、来たんだぜ」
ニンマリと笑顔を浮かべながら白黒の魔女は言う。
「来たんだぜ、じゃないでしょ」
ハァーと溜め息を吐きながら霊夢が言った。
「別に良いだろ。それで二人は何してたんだ?」
「そこに居る仁の能力を調べてたのよ。けれどそれらしい事が起きないからどうしよう、と思ってたらあんたが突撃してきたのよ」
「だから悪かったって……。で、仁? だっけか、どうすんだ」
魔理沙は仁の方を見ると、鋭い目つきで話す
「……どうするって何を?」
「だからお前は諦めるのか? それともまだ続けるのかどっちにすんだ? 遠くからだけど私にはしっかり見えてたぜ」
「……」
と、仁は庭の横にある森の方に体をむけとある言葉を思い出す。
(紫は確か外来人の能力はその外来人が思い入れがあるモノや体験って……ちょっと待てよ、それって自分が好きなものでも例外じゃないってことだよな? でも俺にとって思いでのあるものって言うと……特に、なし。なんか悲しいなぁ)
そう考え込んでいる仁を縁側でとなり同士で座りながら霊夢と魔理沙は見ていた。
「なぁ霊夢、あいつは幻想郷にいつ来たんだ?」
「昨日の夕方位だと思う。私が来る前には、酸欠起こして倒れるほどの運動をしていたみたいだし、もしかしたらもっと前かも知れないわね」
「そんなに動くって、まさか何か追われてたのか?」
冗談交じりに魔理沙は言うが、
「デカイ狼型の妖怪に追いかけられてた」
まあ私が退治したけどね、と霊夢は言うと、再び手に持つ湯呑みに口をつける。
「そ、そいつはエライ目にあったな。それでも怪我なしか、外来人にしちゃ生きてるだけでも珍しいのに」
「でも私が仁が居るところに着いた時に妖怪に殴りかかられていて、結構吹き飛ばされてたけど無傷だったのよ。仁が言うには、妖怪の攻撃が攻撃が。まあ、結構不器用な妖怪だったようだし」
「なんかもう運が良いんだか悪いのやら……」
少女二人が談笑してる間、そういう仁は未だ考え事をしていた。
(いやまさか……そんなことがある訳ないよな……でもそれ位しか考え付かないし……やってみなきゃ分かんねーしな……)
仁は両手を前に出し手のひらを上に向け、何かを受けとるような格好になった。
そして仁はとあるイメージをした。すると仁の手周囲に光の粒のような物が出てきて仁の両手の平に集まってきた
「ん? ……おい、霊夢起きろ!」
魔理沙は眠りそうになっていた霊夢を起こすと目の前で起こっている現象を見せた。
「何あれ?」
「分かんない、急に仁の周りから光が出てきたと思ったらこうなってた」
そして仁の手のひらに集まった光の粒子は手のひらで何かの形を作るように集まったと思うと、弾けるように消えた。
(なんだ……今の?)
何故か重量を感じる自分の手のひらを仁は恐る恐る見る。
「嘘だろ……成功した」
その仁の手の中に有ったのは世界で最も有名な銃の一つ“M1911”とサバイバルナイフだった。
「「何があったの(か)?!」」
と魔理沙と霊夢が仁の方に向かって来た。
「やった……俺はやったよ」
仁は持っていた2つの武器を持ちながら言った。
「で、それは一体何だ?」
魔理沙が通称『コルト・ガバメント』と呼ばれるそれを指をさして聞いた。
「これは外の世界で銃って呼ばれる武器の一つなんだ」
そう言うと仁はガバメントを構えて見せた。
「それでその"ジュウ”? はどんな武器なのよ?」
「これは飛び道具の一つで弓矢よりも遥かに強いんだ……って、うおっ!」
仁の言葉が途中で途切れたのは調子に乗って銃をくるくるとジャグリングのように回そうとして、案の定地面に銃が落ちそうになったからである。
(あぶねえ、何とか地面に落ちる前に止められ……ん?)
仁は一瞬自分が銃をキャッチしたのかと錯覚した。
だが現実は仁は銃をキャッチするのではなく手を伸ばしたままの格好で銃を宙に浮かせていた。
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
「……なぁ霊夢、これって」
「ええ、どう見ても能力の2つ持ちね。そんな珍しいことでもないでしょ」
「はぁ!?」
予想外のことに、彼は動揺した。
「ねえ仁、試しにそこら辺に転がっている石を見てなんかやってみて」
「なんかって何だよ、なんかって……。まぁ、やってみるけどさ……」
そして仁は銃とナイフを地面に置き、そこらにある石を見たまま脳内で色々なイメージをしてみた。
すると対象の石は、仁が思ったように浮いた。
「なっ!?」
「んー……とりあえずこっちの方の能力は『触れずに、物を動かせる程度の能力』ってことこかしらね」
「要するにサイコキネシスか……」
「? なんの事かよく分からないけど、とりあえずもうひとつの方も調べないと」
「それでそっちのは何なんだぜ?」
「まぁとりあえず先にやるか……。えーと、これは銃っていってな弓矢なんかよりも何千倍も強い武器なんだよ」
仁は銃を見たことない少女達に分かるように言った。
「それじゃあ弾幕よりも?」
「……弾幕?」
そう、仁は知らなかった。この幻想郷には下手をすれば銃よりも有能な物があることを。
「そうだったわね、紫が明日説明する、とか言ってたから仁は弾幕の事知らなかったのね」
「なあ霊夢、弾幕って一体何なんだ?」
と、仁は昨日から気になっていた単語について聞いてみる。恐らくだが、自分の知っている制圧射撃をする際の弾幕、とは意味が違うのだろう。
「教えてあげるから、とりあえず神社の中に入りましょう。ほら魔理沙も来なさい」
「それじゃお邪魔するぜ!」
一人の少年と二人の少女は神社の中に入っていく。
仁君の能力がどういう力を持つかとか名前とかは次回出す予定です。それまで色々とどんな名前かを想像してみて下さい。(-_-;)因みにこの能力はナイフが出てきたように銃限定では無いです。
2019/03/08
主人公のプロフィールを出すと言ったな。
あれは嘘だ。
冗談はさておき、一度オリキャラ達がある程度出たところでもう一度投稿します。
作ったのを見直すと、なかなか、アレだったので。そうさせていただきます。スンマセン
2019/06/22
全体的に修正しました。
誤字はあるかもなので、その時は報告お願いします!