艦隊好海録   作:ぱる@鏡崎琴春夜

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時雨の海

「ボクの好きになった人はみーんな死んじゃうんだよ?」

 だからこそボクは気を付けてきた。

 もう誰の沈む場所も見たくなかったから。

 

「そんなこと知ってる、俺はそれも踏まえてお前が好きになってこうしてケッコン(仮)を申し込んでるんだ」

 

 それでも提督は退いてくれない。

 でも、そんな提督に引かれるボクもいる。

 

「扶桑さんも!山城さんも!最上さんも!みーんな沈んじゃった!それなのに僕だけが生き残って、こんな幸せ手に入れたら・・・」

 

 そこでボクは口を塞がれる。

 

「オイ、それは違うぞ時雨・・・確かにカミサマってのは残酷なことを気分でしでかす糞野郎だ、だがなその気まぐれに勝った奴は大きな恩恵が貰えるんだ」

 

 ボクには提督が言っていることが解らなかった。

 

「つまり、どう言うことだい?」

「なーに簡単な事だよ。俺は死なねぇし、クソッタレなカミサマの気まぐれに打ち勝ってお前と楽しい新婚生活おくんだよ」

 

 人から見ればボクの顔はポカーンの一言に尽きるのだろう。

 でも、そんな、なにも保証もない提督の約束に強く引かれた。

 この人なら、この人ならきっと打ち勝ってくれる!

 そんな思いが、胸内に渦巻き始める。

 

「本当に本当なの?」

「悪いが俺は死ぬ気はねぇし、死ねるとも思ってない。だからこうしてお前に伝えてるんだ」

「ふざけずに答えて!!」

 

 ヘラヘラしながら言う提督に思わず大声で怒鳴ってしまう。

 でも、提督はヘラヘラとしたままで告げる。

 

「俺は・・・ふざけて何ていねぇよ、お前が怖がるもんになって嫌われたくないしな」

 

 そういって提督は立ち上がって出ていってしまう。

 直感的にやってしまったと言うのが理解できてしまった。

 言い過ぎてしまった。どうしようと今更ながらに頭の中に罪悪感が溢れ出す。

 

 ・・・こんなボクなんて消えた方がいいよね。

 

 

 頭がボヤける感覚のままふらふらと執務室をでようと扉に歩いていく。

 

 

 

 

 

 しかし、扉に手をかけた時に勢いよく扉が開き、思いっきり頭を打つ。

 

「イタタタタ・・・」

 思わず尻餅をつきながらも、相手を見る。

 

「すっすまん!時雨!大丈夫か?」

 

 ボクを転ばせた相手はどうやら提督だったようだ。

 

「あれ?怒って出ていったんじゃないの?」

 

 不思議に思いながら提督に質問をする。

 そんなボクに、何をいってるんだと言う目線を向けつつ手をさしのべる提督。

 

「別に怒ってなんかないさ、ただお前に俺が死なない理由を見せに来たんだ」

 

 ホレ、と提督が見せる大本営からの通達文書には確かに提督が【戦い】で死なない理由がかかれていた。

 

『 貴官の働きは目を見張る事務処理能力があるとして、ここに配置替えの通達を渡す。

 なお、事務処理を手伝う部下として貴官の鎮守府所属の艦娘を一人だけ連れていくのを許す』

 

 こんなのズルいなぁ・・・と思いつつ、その裏ではこの通達に大喜びしている自分がいる。

 

「ほら、荷物まとめろよ・・・ついでに言うとサインもしてくれると嬉しいがな?」

 

「わかったよ提督・・・書類を頂戴」

 

 この喜びは過去を切り捨てられるだろうか?

 それとも・・・・

 

「あー、あと時雨」

 

 少し考えながら名前を書いていると提督がついでにと言うように話しかける。

 

「なんだい提督?」

 

「誰もお前を恨んでないし、責めたりしない・・・悔やんでも悔やみきれないの分かる、だが我武者羅に突っ走ったって最後には身を滅ぼすのは自分だ」

 

 提督の言い分についてボクはこれだけは譲れないと反駁する。

 

「それは違うよ提督。ボクは許されないし、ボク自身も自分を許すつもりはない」

 

 どんなに周りが許しても、最後は自分が自分を許せるか・・・だからボクは自分が許せない。

 

「・・・だったらどうすれば自分が許せる?」

 

 名前を書く手が止まり・・・いや、書くのを止めたボクは提督と真っ向に話し合うと決めた。

 

「無理さ、一生背負うモノだからね」

 

「・・・だったら俺はお前を赦す、その背負ってるもん背負わせろよ意地っ張り」

 

 唖然、呆然としか言いようがなかった。

 

「なぁ、お前らどうせ外で聞いてんだろ?」

 

 そう言って提督が扉に向かって声をかける。

 すると扉が開き、そこに三人の人物がたっていた。

 

「あら、気づかれていましたか?」

「あっちゃー、バレてたか」

「でも気になりましたし・・・」

 

 そう、扉の向こうに居たのは【西村艦隊】の皆だった。

 

「で、どうするんだ?扶桑に山城、最上・・・お前らは時雨を赦せるか?」

 

「当然赦します」

「お姉さまと同じく」

「勿論赦すさ」

 

「だそうだ・・・これで、お前は自分を許せるステップに進めるか?」

 

 屈託のない純粋な笑顔。

 ヒマワリと形容するしかないようなその笑顔を提督はボクに向け問いかける。

 

「多分ね・・・でも、許せるかどうかはわかんないよ」

 

「なら、それもまた一興として乗り越えるか?」

 

「・・・そうだね」

 

 ボクは止めていた手を再び動かし始めた。

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