艦隊好海録   作:ぱる@鏡崎琴春夜

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生きて愛する者所へ帰ろうとする・・・・それも愛なのです


球磨の海

「やってしまったくま・・・」

 

 硝煙の香りと黒い煙がごうごうと立ち上るとある海域。

 

 元は美しかった海も燃料によって淀み、また透き通っていた蒼い色も血によって紅く染まる。

 

 また一人、また一人と海の中に沈んでいく戦友たち。

 

 たった今目の前で沈む娘もまた自分の家族であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分も提督も敵を甘く見ていた。

 

 資材やバケツ潤沢だった物も次第に数を減らし最後には提督が何処からか手に入れてきた資材も今や底をついていた。

 

 敵の全国で一斉の反攻作戦などたかが知れていると思っていた。

 しかし、それは慢心だった。

 

 レ級や悽鬼がごまんと攻めてきた。

 

 前線を支える遠征も相手は全力で潰しに来た。

 

 

 数人沈んだところで気付いたのだ、敵はもう止められないと・・・

 

 

 

 

 

 

 

「やられた!!また遠征組で大破がでた!」

 日に日にやつれる提督。

 その顔は幽鬼の様だった。

 

「落ち着くくま!」

 そしてあらぶる鬼神を諌めるのが自分のつとめだった。

 

 

 

 そして、月日は移り、相手の本拠地と思われる場所を制する直前までとなった。

 

 何人の娘が犠牲になったのか・・・艦隊の中で沈んでいない家族はいないと思われるほどの多くの娘が沈んだ。

 

 

 

 

 だがその悲しみもここまでだと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ってくるくま・・・勝利の報告を待ってて欲しいくま」

 外套に身を包み自分達を見送る提督・・・・その顔はやつれていたが精一杯の笑顔を見せてくれた。

 

「あぁ、待ってるぞ」

 

 

 敵の余力もないのか少し強い程度の敵艦を蹴散らし進む艦隊。

 疑いもしなかった戦力。

 

 

 

 

 しかし、暫くして地獄は始まった。

 

 初めは駆逐艦からだった・・・・

 

 超遠距離からの砲撃によって一撃の大破。

 それが雨霰のように降り注ぐ。

 

 次々と戦友たちが大破していくなか、自分は・・・自分だけは無事だった。

 

 己の技術なのか、敵の考えなのかはたまたどちらもなのか自分だけは砲弾があまり来ない。

 

 

 

 

 

『総員今すぐ離脱せよ!』

 危機を察知したのか提督が撤退の命令を下す。

 焦りと苦しみと哀しみが入り交じった悲痛な叫びは艦隊中の通信機へと零れてくる。

 

 そして満身創痍な戦友たちに代わり、自分が通信を返す。

『こちら球磨だくま・・・提督すまんくまー、油断したくま』

 

 この自分声が何れだけ提督を突き落としたのか自分でも分かりはしない・・・だけど、辞世の言葉を伝えるならそんなものより敵の情報を教えて死んだ方がましくま。

 

『何言ってるん--『もう新しい子達を沈ませるのはダメだくま・・・だから残った戦力で仕掛けるくま』

 

 それだけ言って一方的に通信を切る。

 

 そして艦隊の戦友を見渡し告げる。

 

「これより最後の一撃を奥で眠りこけてるバカにぶつけに行くくま」

 妹三人を沈められた金剛、最後まで妹が出なかった長門、球磨型最後の二人のうち一人の北上、最後まで残った歴戦の駆逐艦の皐月、先輩や姉に先立たれた瑞鶴、そして私。

 

 それぞれ思うことがあるのだろうしみじみと目をつむり、想い、先へと進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨウコソ、ボクノオシロへ」

 奥にまつ影は一つ。

 

 

 ただ最後にのこるのはどちらなのかの戦い。

 

 

 この命の蝋燭が消えるまでは止まらない。

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