此処は普段から活気のある街の玄関口としていつもひっきりなしに怒号の飛び交う港。そんな港が今は静まり返っており、誰一人として喋ってはいない。その理由は港にやって来た一団によるものだった。
白い宇宙服のような独特の服を着込み、シャボン玉の様なヘルメットを被り、爆発する首輪を付けた奴隷を従えた存在。そう、天竜人だ。すぐ側には海軍中将モモンガも控えている事からやはり本物なのであろう。だが港の住民達は全員が呆然としており、
「今まで本当に済まなかった!我々が皆の血税の上に立っている事など忘れ、過去の威光のみを使って威張り散らし、皆の家族や仲間、恋人や伴侶の人生を面白半分で潰してしまったこと。我々も同じ人である事を忘れ、傍若無人に振舞っていた事。全て…全て!申し訳ない!謝って済む問題ではないことは重々承知している。故にこそ、最後のお願いだ。これからの我々を見ていて欲しい!必ず……必ずや!必要とされる「天龍」の名に恥じぬ存在になると誓う!」
当然、最初は受け入れられることなどなかった。石を投げられ、暴言を吐かれ、暴力を振るわれた。だがそれでも天竜人は土下座を辞めなかった。ただひたすらに涙を流しながら済まない」と詫び続けていた。海軍中将も命に関わるような怪我をした場合の治療以外では動くことは無く、十何日もの間
次第に人々は「これは本気なのではないか?」と考えるようになった。然し、過去の罪がそう簡単に消える訳ではなく、その結果として無言の空間が続いていた。そんなある日のこと、港にやって来た女の子が土下座している天竜人に向かってこう言ったのだ
「おじちゃん。なんでないてるの?ないてないでサクヤと遊ぼ!おじちゃんが笑ってくれる方がサクヤもうれしいよ!」
そう言ってボールを差し出した。それ聞いた天竜人はとても優しい表情で
「そうだね。一緒に遊ぼっか…。ボールだからキャッチボールかな?……ありがとね。お嬢ちゃん」
その後その少女が満足する迄遊んだ後、天竜人は少なくないお金をお礼として渡した。少女は最初は遠慮したが、今度は家に招待するという約束を交わして持たせたのだ。
そしてその2日後に事件は起きた。一時的に船に戻り療養していた天竜人が港に戻ると港は火の海と化していたのだ。天竜人は呆然としたが、直ぐに港の人間の安否を確認する様に奴隷とモモンガに伝え、自身も軽傷者に応急手当を施して船に連れていっていた。そうして暫くした後、ふと先日遊んだ少女の姿がないことに気がついた。天竜人は嫌な予感を覚え船から飛び出した。そして勘を頼りに歩いていくと路地裏にて舌なめずりをする海賊と母親と思わしき人影を庇いながら必死で立ち塞がる少女の姿があった。
「ケヒヒヒヒ…おいおいお嬢ちゃ〜ん。そこを退いてくれねぇかなぁ…そしたら痛い目に合わずに済むんだぜ〜?」
海賊達が私と母様を見てそう言う。だが私は知っている。母様は元より、私すら彼奴らの慰みものになるのだ。同年代に比べても発育のいい私は彼奴らからしてみれば母様程はないにしろ、充分
「ふん、よく言うわよ。元から母様も私も慰みものにするつもりでしょう?だけどお生憎様。あんた達みたいな祖チンの早漏野郎どもの相手なんて真っ平御免よ。あんた達に慰みものにされるくらいなら私はここで自害選ぶわ。」
「ほぉう?ならお嬢ちゃんの覚悟が本物かどうか確かめてやろうじゃねぇの。おい」
そう言って彼奴の両隣に居た海賊が私と母様の方に向かってくる。私だけならまだ何とか逃げ切れたかも知れない。だけど母様を庇いながらでは逃げ切るのは到底不可能だ。ごめんなさい母様、せめて母様が逃げ切れるだけの時間は「おい。貴様らそこで何をしている?」
…え?
「あぁ?なんだおま…え…」
嘘だ。ありえない。夢に決まってる。私の目の前には本来ならこんな所には居そうにない人物がいる。艶のある銀髪は腰まで伸びており、2日前に来ていた服は所々千切り取ったかの様に破れて靴は血や土埃等で汚れているがその狼の様に鋭い碧色の眼は海賊達を睨んでいる。それは2日前に母様からのお使いとして本当に害がないのか知るために接触した天竜人だった。
「な、なんで天竜人が此処に…!」
「質問に質問で返すな。聞いているのは私だ。貴様らはそこで何をしている?よもや、その少女を慰みものにしようとしていたのではあるまいな?」
「へっ。お前ら天竜人だって同じようなものじゃねえか。そのお前らが俺達に説教垂れてんじゃねぇよ!」
「…確かに。今までの我らであればそうだっただろう「なら」だが!我らは今日この時より生まれ変わる!過去の先祖に恥じないように!後世に『犯罪者』として残らぬように!我らは世界の抑止力の一端となる!刮目せよ。これが世界の抑止力となる為に得た力である!
そして私の前に
絶望が
やり過ぎた…だが反省も後悔もしない!(`・ω・´)キリッ←