&Ⅱ   作:水代

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アニメ見たら……なんか書きたくなってしまった。


チュートリアルワン

「はっ……あはははは、ハハハハハハハハ!」

 砲撃と爆音が響き渡る戦場で、だからこそその声はより一層異様だった。

 駆動するエンジン音すら黒森峰の重戦車の放つ榴弾の雨と直後に響く爆音にかき消され、爆発に穿たれ穴だらけの戦場の大地からは濃密な硝煙と火薬の匂いが漂っていた。

 

 ―――生きていると実感する。

 

「砲塔回せ……今、撃て(テェ)!」

 

 戦車というのは地面に接地している、さらに車輪は複数あるものを履帯で覆っているだけなので、当然ながら走れば揺れる。しかも先ほどから榴弾に穿たれた戦場である、ごとごとごとごとと激しい震動が響き、車体は大荒れに荒れる。

 そんな状況にも関わらず、獰猛に笑みを浮かべる少女の一声に合わせ、砲塔が火を噴く。

 放たれた砲弾はけれど敵集団から大きく逸れて着弾する。

 

 だがそんなものは分かっていると少女は気にした様子も無く。

 

「今、全車前進(トツゲキ)!」

 

 手にした無線を通して少女の声が各部隊へと伝達され。

 

『『『突撃!』』』

 

 逡巡の迷いも無く全ての部隊が高地へと陣取った敵部隊へと走りだす。

 

「敵の砲撃陣地にたどり着くことすらなく散った馬鹿どもは後で特別指導だ! 刺し違えてでもやつらを落とせ!」

『了解!』

『拝承であります』

『勿論です隊長、やつらに我ら知波単の強さを見つけてやりましょう!』

『そらそら進め進めー! 王者に土をつけるのはアタシらだあ!』

『戦線を押し返せ! 興亡この一戦にあり!』

『FOOOOOOOOO!!!』

『おい誰だ、大和魂忘れた馬鹿は!』

『留美副隊長であります!』

『おい佐瀬、裏切ったな! お前だってこの間密かにしゅーくりーむとかいうハイカラな菓子を食ってただろ!』

『なっ、み、見てたいたのですか?!』

『おい、なんだそれは、質素倹約、質実剛健の精神を忘れたのか! 弛んでいるぞ!』

『そういう由紀だってこの間ご飯三杯もお替りしてた』

『銀シャリのお替りは一日一度と決まってるのを忘れたか!』

『夜空腹だと寝れないんだ、仕方ないだろ!』

 

 段々と緊張感の欠片も無くなっていく無線の内容に、ハッ、と笑い。

 

「贅沢したきゃ、戦果をあげろ、オレが頭でっかちに掛け合ってやるからよ、特別予算だぞ?」

『ひゃっほー! さすがです、隊長』

『落ちろ黒森峰(オウジャ)! あたしらのすいーつのために!』

『FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!』

『テンション上げすぎだろ、耳がキンキンするぞ!』

『そういう時はしばらく静かなところで耳を休めると良いでありますよ』

『おーそうするか……ってこんな爆音だらけの場所で静かなところってどこだよ!』

『二号車、接敵開始、これより超接近戦を開始します!』

『あちらの火力はチハの装甲を易々と抜く、ご武運を!』

『武運を!』

『武運を!』

 

 前から横から、後ろから、わらわらと湧き出したこちらの部隊に黒森峰の砲撃が散発的になる。

 どこから狙いを着ければいいか分からず、各自がそれぞれで撃ちだせば砲弾もまばらになる。

 例え車体を停止して撃ったとしてもどうやっても砲弾というのは理想の着弾地点からは多少のズレがある。

 だからこそ、号令で一斉射撃というのが高所を取った時の基本戦術になるのだ。

 そうして四方に散ったこちらの部隊の間隔は広い、そこにまばらに砲弾を撃とうとそう簡単には命中することも無い。すでに少数部隊ながら敵の砲撃陣地に食い込み、荒らしている部隊もある。

 このままならばこちらの部隊は相手部隊を四方から囲み、その喉笛に食らいつくだろう。

 

 ―――このままならば。

 

「そろそろ、か?」

 

 呟いた直後に。

 

 ずどぉぉぉん

 

 耳に慣れた砲撃音。けれど直後にだぁぁぁん、と重量のある何かが転がったような音がして。

 

『来ました! 敵フラッグ車及びその周辺動き始めました!』

「了解、各員に通達、虎は巣を飛び出した、虎は巣を飛び出した」

 

 包囲の重圧にいよいよ敵の本隊が動き出す。

 

「各員通達。突撃、突撃、そして突撃だ。最後の勝負だ、こちらが倒れるか、あちらが倒れるか、分かりやすい二極だ。こちらも敵本隊との交戦に入るため通信を切る、では健闘を祈る」

『『『『『了解!!』』』』』

 

 もっと頭が良ければスマートに相手を釣りだす作戦もあったのかもしれない。

 だが残念ながら自分にはそんな頭も無く、知波単の突撃精神は何よりも性に合った。

 だからこそ、それだけを極めた。それしかできないなら、それだけは誰にも負けないように、鍛え続けた。

 そもそも知波単学園の使用する戦車の性能自体がどう足掻いても突撃仕様なのだ。

 威力は高いが射程の短い九十七式や速力はあれど豆鉄砲の九十五式。元が対戦車を想定された機体ではないためこちらがまともに砲撃戦をしようとするなら新砲塔を搭載した九十七式を持ってくるしかないのだが、知波単学園にはそれらの機体は数が少ない。

 だから、敵にぶつかって行き、近距離で敵の装甲を大破させる突撃が基本戦法になっている。

 

「我が親愛なる戦友たちに告ぐ。これより敵本隊との交戦を開始する。作戦も戦法も突撃、突撃、突撃、それだけ、簡単だろう?」

「そら簡単やな」

「結局いつものことじゃないですかーやだー」

「それしかできませんしね」

 

 帰ってくる声に苦笑しながら、無線を捨てる。

 キューポラから出した半身をさらに上へと乗り上げながら、戦場を見渡す。

 さすがは王者黒森峰と言ったところか、先ほどまで9割以上無事だったこちらの部隊も本隊の出現から僅かな時間で半数はやられている……が残りの半数はすでに敵の喉元へと食らいついた。

 

「ティーガーもだが、黒森峰の戦車は基本的に懐に潜り込まれると動きが鈍る。なまじ火力が高い分同士討ちを避けようとして隙も増える。つまりオレたちのカモだ……」

 

 とは言えただのカモなら大会9連覇などできるはずも無い。

 そもそも相手の戦車との性能差を考えればそう単純な話でもない。

 黒森峰の戦車は全体的に重戦車、つまり高火力重装甲なものが多い。

 唯一欠点としてその重量を支える足回りが弱いことだろうが、だからこそ、黒森峰の戦法は固まって、揃って撃つ、これだけだ。

 西住流という戦車道の大家によってさらに精錬された戦法は常道にして王道、だからこそ最強と謳われる。

 去年までの知波単戦車道ならばただ無為に突っ込んで砲撃の嵐を食らったそれで終わりだっただろう。

 それを良しとする頭の緩さこそが知波単の最大の欠点だったのだから。

 

 だからこそ、今年こそは、そう思う。

 

 鉄と油と火薬の匂いが鼻を衝く。

 硝煙と鉄火が彩る戦場を、ただただ敵目掛けて突っ込む。

「そら、敵がこちらさんに気づいたぞ! 引きつけて、引きつけて……今、左折!」

 ごう、と車体を揺らして戦車が左に曲がる。

 直後に降り注いだ砲弾の雨が地面を抉る。

「狙いが正確なのが逆に避けやすい……呼吸さえ盗めばこのまま突っ切れる!」

「そんなんできんの隊長だけやろが!」

「やかましいぞ操縦手」

 がんがん、と右肩を蹴りつける。車体が右に曲がり再びに砲弾の雨が降り注ぐ。

「こっちを見てるのは……三、四、五……おうおう、六両か。十五両しか使えねえのによくやるな」

 がんがん、と左肩を蹴る。車体が左に曲がり、即座に右肩を蹴ればすぐに右に曲がる。

 その度に敵の集中砲火が落ちる。落ちるが当たらない。

「はっはっは、よく避けるなお前」

「つーかがんがんがんがん蹴り飛ばしおってからに、肩が痛いわ!」

「だってお前、優しく蹴ったら」

 ちょん、と右肩を蹴る。

「ひゃん!」

 甲高い悲鳴と共に車体が大きく右に曲がる、というか―――。

 

「横転する! 馬鹿、戻せ!」

 

 どんどんと両肩を蹴り飛ばせば、即座にはっとなったのか車体が何とか戻る。

「くすぐったがりだから強めに蹴ってるんだから、我慢しろよ」

「せやかて~」

「あーだった……っ!」

 ちょん、と背中の中心を辺りにつま先で触れ。

 つつ、となぞり上げる。

 直後、ぞぞぞ、と背筋に震えたのをつま先越しに感じ。

 

「うっひゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 絶叫と共に戦車が驀進する。

 限界ギリギリの速度を出しながら猛然と進む戦車の姿に敵が慌てたように砲撃を続け。

「ほら避けろ避けろ」

 ぐわんぐわんと左右を的を絞らせない軽快な動きで敵の砲撃陣地を超えていき。

 

「いた……西住いいいいいいいいいいい!」

「……来たか」

 

 キューポラから顔を覗かせる去年も見た顔に、少女が叫ぶ。

 西住まほ、黒森峰戦車道の隊長にして戦車道の大家西住流の師範の娘。

 戦車道におけるスーパーエリートであり、今大会最大の強敵だろう相手。

 

「「撃て!」」

 

 ほぼ同時の宣告。互いの火砲が轟き、中空で砲弾が交差する。

 移動しながら一撃のため互いの後ろへと着弾した一撃を置き去りにしながらさらに近づいていく。

 

「突っ込め、密着すれば置物だ!」

「させるな、どうせ近づかせなければ何もできない」

 

 近づかせまいとさらに砲撃を見舞ってくる敵に、さすがに真正面から突っ込めばそのまま大破されるのが目に見えているため包囲するかのようにぐるぐると敵の周りを回る。

 先ほどまでと違い、距離もかなり縮まっている上に相手が相手だ。

 間違いなく黒森峰で随一の練度を誇るだろう相手ティーガーなら偏差射撃などもできるだろうし、指示と操縦の一瞬の伝達ラグがそのまま大破に繋がるだろうことは明白だ。

 新砲塔を搭載した九十七式故にすでにこちらも有効射程圏内ではある。だがティーガーの重装甲を貫くのならばあと一歩、踏み込みが必要になるだろうというのも理解できていた。

 

 幸いにして周囲から邪魔の入る気配はない。

 すでに山頂の砲撃陣地は味方の知波単部隊によって食い荒らされ同士討ちを嫌った敵部隊は混乱に陥っている。

 機体性能に差が大きいため撃破判定が出ている敵戦車は少ないが、少なくともここまでの乱戦に持ち込んだ時点で黒森峰の強みは大きく削がれているのは事実だ。

 

 とは言え、こっちだって基本的には突っ込むしか脳の無い集団だ。つまりここからの作戦など各自健闘を祈るの一言で済む。

 互いの戦力を削り合う消耗戦だが火力と装甲に強い黒森峰相手にそれが分が悪いのは理解している。

 今は一時的に混乱しているだろうが、基本的に練度の高い連中だ、もう少しすれば混乱も収まりそれぞれのやるべきことを始めるだろう。

 つまり時間的猶予はそれほど無い。

 

 だからこそ、この瞬間の隊長車同士の戦いを制したほうが勝つ。

 

 元よりフラッグ戦なのだ。フラッグ車であるこちらの機体がやられれば終わりであることは少女の重々承知している。

 だからと言って慎重なんて言葉、少女の頭には無い。

 

 元より、そういう性格でも無い。

 

「はっはー! おら、行くぞ!」

「「「応」」」

 

 掛け声一つ、返答は簡潔に。

 即座に戦車が動き出す。相手の砲塔がこちらを狙い。

 どん、と火砲が放たれる。同時に動き出した車体が辛くもそれを躱し、返しとばかりにこちらも砲火を浴びせる。

 

 どん、どん、どん、どん、どん、どん

 

 互い違いに爆音が響く、無暗に撃っているわけではない。

 徐々にだが互いの狙いが正確になっていく。

 時にはこちらの車体の足元で土が弾け、時には相手の装甲の表面を削る。

 決着の時が近いことを悟る。

 

「―――!」

「―――!」

 

 互いの指示が飛び交い、砲弾が飛び交い、狭い戦場を戦車が駆け巡る。

 そうして。

 

 どん、どん

 

 放たれた砲弾が戦車の中心で爆発する。

 放たれた砲弾が戦車の前輪を大破させる。

 

 前者(西住まほ)からは白い旗が飛び出し。

 

 後者(角谷李)からは飛び出さなかった。

 

「勝った」

 

 誰かが呟いただろうその一言。

 喜びが、歓喜が、伝播しようとした、瞬間。

 

 どん

 

 と砲撃音が鳴った。

 誰もがその意味を理解できないまま。

 

 少女……李の戦車(フラッグ車)に白い旗が立つ。

 

 呆然としながら振り返ったその先に。

 

 ()()()()()に乗った西住まほによく似た少女の姿を見て。

 さらに振り返り、先ほど李が撃破した宿敵の車体にフラッグ車を示す()()()()()()ことに今になってようやく気付き。

 

「あちゃ……もう一人いたのか」

 

 嘆息した。

 

 

 




正直戦車の性能とか、良く分からんから、アニメ見たり設定読んだりして自分なりの解釈で書いてるから間違ってたら教えて(
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