あんな長いのかける人どうやってるんですかね?
ハンター試験が始まり、その場にいた私たち受験者は走っていた。
ベルを鳴らし、ハンター試験の開始を宣言した男、サトツが告げた一次試験の内容は二次試験会場までついてくることだったからだ。
そういうわけで私たちは走っていた。
いや、訂正する。
正確には『私以外は走っている』のが正しい。
え?私?そりゃお前飛んでるに決まってるじゃん。
「凄いね。それどうやって飛んでるの?」
走りながらゴンは箒に跨り飛んでいる私に聞く。
「これか?そりゃ魔法だぜ。さっきは言わなかったけど私は魔法使いなんだ。だからこの程度朝飯前だぜ!」
ゴンが驚いてるのを見て少し気分が良くなる。
さっきまでの暗い気持ちはどこかに飛んで行ってしまった。
……そういや念による性格診断だと放出系って短気で大雑把だったな。
こういうところが影響してるのだろうか?
まあいいや、とそこで考えを打ち切り他の奴らを見回す。
「あ……ありえない……魔法だと……いや、どこかにエンジンのようなものが……」
クラピカ……残念ながらエンジンなどついていない。
魔力(まあオーラだけどこれは魔法なんだ!)を使い飛んでいる。
別に今では箒に乗らなくても飛べるくらいには魔力の使い方には慣れて来てはいるが、ぶっちゃけ疲れるので箒を使っている。
なんというか箒にまたがってると魔力の消費量が段違いで減るのだ。
具体的にいうと箒なしでは1時間くらいしか飛べないけど、箒で飛べば1日中飛んでも余裕なくらい。
多分、というか十中八九『制約と誓約』だろう。
本当に魔理沙をイメージして箒で飛んでてよかった。
ちなみに、この箒はその辺で売っている(といっても丈夫でそれなりに良いものではあるが)竹箒である。
ただ、もう10年近く魔力を込めて使って来ているせいか、そこそこ使えるものになっている。
また、この箒にまたがって飛ぶことが魔法(念)の訓練、主に『練』の訓練になっていたらしい。
本当に良かった……
これが無駄な努力だったら灰になっていたところだぜ……
「てか、ずるくねえか?これ持久力のテストだろ?」
レオリオが飛んでいる私を見てそう言った。
「別に持ち込み自由だし、それにこれもこれでそれなりに体力もとい、魔力使うんだぜ?今後の試験に魔力を温存したほうがいいとも考えるとトントンだぜ」
「へー、そういうもんなのか。まあ確かに後の試験を考えるとそうなのかもな」
そして、しばらくそんな風に移動しているとスーッと横を通り過ぎて……は行かない影を見つけた。
スケボーに乗っている銀髪の少年だった。
何故か私の隣をスケボーで走っている。
「何か用か?」
「いや、それ凄いなと思って。どうやってんの?」
銀髪の少年がそう、感心したような様子で私を見ている。
お、なんだこれ。結構楽しいぞ。
どうやら私は褒められて伸びるタイプらしい。
さっきから素直に驚いてくれる奴らばかりで楽しくなって来た。
「そうかそうか、どうしても知りたいというなら教えてやるぜ」
「いや別に知りたくないからいいや」
……撤回する。いきなり梯子外されて気分を害された。
これだから気まぐれで嘘つきな奴は……
って嘘つきってことはホントは知りたいんじゃね?
お、なんだ照れ屋か。それなら言えよー。
「いやいや、本当は知りたいんだろ?特別に教えてやるぜ?」
「本当にいいから、そういうの。あ、そこの君いくつ?」
「俺?もうすぐ12」
「ふーん」
……本格的に無視しやがった。
これだから変化系は……。
そして、銀髪の少年はゴンの方を見て何か思ったのかスケボーから降りて走り出した。
「オレ、キルア」
「オレはゴン」
本格的に私を無視して同年代で話し始めている……
なんだよ!これ結構努力したんだぞ!もっと関心を持ってくれてもいいんじゃないか?
「私……先に行くぜ……」
もうなんか色々とどうでも良くなったので私は彼らを置いて飛んで行った。
一次試験開始から、6時間が経過しおおよそ80kmほど走った(私は走ってないけど)あたりだろうか、目の前の景色に変化が見えた。
先の見えない階段、それが私たちの目の前に現れたのだ。
「さて、ちょっとペースを上げますよ」
それに続きサトツがスピードを上げる宣言を行い、階段を二段飛ばしで駆け上がって行く。
そして、その急なペースアップによって、受験者達はじりじりと離されていった。
まあ私は離されてないけど!
というか、ずっとぴったり後ろについて飛んでいる。
努力が報われるのって最高に気持ちがいいな。
あの銀髪野郎も置いてけぼりにしていけるしな!
ハッハッハと高笑いしそうな感じで飛んでいると後ろから追い抜いてくる二つの影が見えた。
「ゲッ……!」
ゴンと銀髪野郎である。
畜生、なんでついてこれんだよ……
確かにあいつら主人公組でなかなか体力あるけどさ、もう少しくらい勝者の余韻というものに浸らせてくれてもよろしいんじゃないかしら?
そんな落ち込んで行く気分をよそに二人は和気藹々と喋りながら近づいて来た。
「いつのまにか一番前まで来ちゃったね」
「うん、だってペース遅いんだもん。こんなんじゃ逆に疲れちゃうよなー」
……余裕そうだな。
というか私の存在ないものとして扱ってないかこの二人。
飛んでて結構目立つのに……
と、そんな今にも睨みつけそうな私の視線に気がついたのか、私の方を見て話しかけて来る。
「あ、魔理沙さんも前まで来てたんだね」
「んー、まあ、飛んでるから余裕だぜ。飛んでるからな!」
……さりげなく飛べることを自慢する。
別に気にしてるわけじゃないんだぜ!
……なんか微妙にツンデレっぽくなったのでやめよう。
本当に気にしていない。
「ふーん、まあこんなのが余裕でいけるくらいだし結構ハンター試験も楽勝かもな」
そして私を見ながらつまらなそうな表情で銀髪野郎は呟いた。
……なんだこいつ喧嘩売ってんのか?
売るなら買うぜ?
あ、やめとこ、保護者が怖い。
それになんとなくこいつが私を下に見てる感じも分からなくもない。
伝説の暗殺一家出身で、その中でも歴代トップクラスとさえ言われる才能の持ち主だ。
つか1、2年であそこまで念の扱いに長けるようになるとかやばい。
魔法(念)を覚えるのが早かった私でもここまで来るのにそれなりにかかってるのに……
それに近接戦闘なら多分速攻で抜かれそうだ。というか今ですら抜かれてそう。
私も格闘術とかもやってみたりしたけれどハンター達からすると平均以下だろう。
まあ、弾幕メインで鍛えていたのでそれを組み合わせた萃夢想とか緋想天みたいな感じの戦い方も加味すればそこそこいいところ行くだろうけど、それでも中遠距離が私のフィールド。
暗殺とかいう近接戦メインでやってる本職の人には負ける。
そういう、「あ、こいつ簡単に暗殺できそう」ってところが私を、いや他のやつも含めて下に見ている原因なんだろうなとそう思った。
まあムカつく事には変わらないけど、ちょっと落ち込むことが多すぎてなんとなく冷静になれた。
さすが私。切り替えが早いぜ!
「……キルアはなんでハンターになりたいの?」
そんな私の思考をよそにゴンはキルアに質問していた。
「オレ?オレはハンターになんかなりたくないよ。ただものすごい難関って言われてるから面白そうだと思っただけさ」
拍子抜けだと言わんばかりにキルアは答えた。
それを聞いてゴンは少し黙り込む。
「ゴンは?」
「オレの親父がハンターやってるんだ。親父みたいなハンターになるのが目標だよ」
それからゴンの親父がどういう人かとかそんな感じの話を続けている。
だから、さっきから無視するのやめてくれませんかね……
同い年の子とお互いに初めて会えて嬉しいのはわかるけどさ。
……私泣くぞ。
「あ、魔理沙さんはどうしてハンターに?」
そしてまた暗い気持ちになりそうなところでゴンがこちらに質問して来た。
なんなのこの子、素で上げたり落としたりして来るとか末恐ろしいわ……
「私は成り行きで。確かめたいことが有ったから来たけどそれはもう終わったし、有ったら便利だから受けてるぜ」
ゴンの話にそう返していると、周りにいる受験者達が何かに気づいたらしい。
「見ろ!出口だ!」
その言葉につられるように前を見ると光が差し込んで来ているのが見えた。
……ようやく半分か。
魔力もかなり残ってるし、これは余裕だな。
そう思いながら目の前に広がる湿原を私は眺めていた。
とりあえず空を飛ばして見た。
原作でもシュートさんが飛んでるからこれくらいは他にもいそう。
念だと気付いてなかったので名前付けてない発だけど一応操作系に分類されるようなやつです。
制約については魔女っぽい雰囲気で飛ばなかった場合、使用するオーラ量がペナルティのような形で倍増します。
具体的にいうと箒を使う。万人が魔法使いだと思うような服装をする。夜に飛ぶ。
といったところでしょうか。
他にも有りますが魔女っぽいというのは本人の主観に影響するので結構曖昧です。