【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI   作:スターダイヤモンド

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勇者か悪魔か

 

 

 

「えっ?えっ?」

 

 

 

…どういうことだ?…

 

…この格好…この景色…

 

 

 

「ドラクエの世界に飛び込んだぁ!?」

 

 

 

オレの名前は高野梨里。

サッカー選手だ。

 

息抜きでゲームをしていたら…うたた寝をしてしまい…目が覚めたら、この世界にいた。

 

 

 

 

 

「リサト…どうかした?ボーッして…」

 

「『エマ』…」

 

「エマって誰?私は『アヤノ』だけど」

 

「あぁ…だよな…」

 

なるほど、目の前にいるのは『チョモ』こと…『藤綾乃』…オレの幼馴染みだ。

 

 

 

…オレは…確か…

 

 

 

『イシの村』で育ったオレは16歳になり、同い年のアヤノと共に、村に伝わる成人の儀を終えた。

 

そして、その日に村長から聴かされた話。

 

それは…

 

オレは赤ん坊の時、バスケットに入れられたまま川に流されていたところを拾われ、ここで育てられた…ということだった。

 

さらに驚くべきことに…オレは『伝説の勇者の血を引く者』だというのだ。

 

その証拠が、左手の甲にあるアザ…。

 

確かに成人の儀を行っている最中、モンスターに襲われ絶体絶命だ!…と思った瞬間『コイツ』が輝くと、不思議な力が放たれ…オレたちは、それに救われた…ということがあった。

 

 

 

…そういうことか…

 

…言われてみれば、そうなのかも知れない…

 

 

 

オレは、バスケットの中に一緒に入っていたという『手紙の指示』に従い…『育ての母』やアヤノ、村の仲間に別れを告げて…『デルカダール王国』へと旅立った。

 

 

 

 

 

勇者の血を引く者というオレは…何らかの事情で生地を離れ、ここで16年間の時を過ごした…ということらしい。

 

そして今、その謎が解き明かされようとしている。

 

 

 

「待っておったぞ!」

 

国王はオレにそう声を掛けた。

 

 

 

だが、その刹那…

「この者は『悪魔の子』じゃ!ひっ捕らえよ!」

と叫んだのだ。

 

あっと言う間に、屈強な騎士たちに囲まれたオレ。

 

多勢に無勢…

 

抵抗するのは、限りなく無謀なことだと悟った。

 

 

 

…仕方ない…

 

…ここはおとなしくしておくか…

 

 

 

彼らに連行されたオレは、地下にある独房にぶちこまれた。

 

 

 

 

 

「あなたは何をしたのですか?」

 

声の主は、オレのいる鉄格子の向こう側…対面の独房からだった。

目深にフードを被っている為、顔は見えない。

 

「何をしたか…だって?強いて言うなら何もしていない…さ。『勇者の血を引く者』だから…って、ここに呼ばれて…着いたとたんに『悪魔の子』呼ばわりされて、ここにぶちこまれた。正直言って、何が何やら状況が理解できてない」

 

「勇者の血を引く者?」

 

「なんでも、この左手の甲にあるアザが、その証しらしい」

とオレはそいつにそれを見せた。

 

「まさか…あのお告げが本当になるとは思いませんでした」

 

「お告げ?」

 

「よいですか?よく聴いてください。今から、あなたは私の指示に従って頂きます。有無は言わせません!」

 

「あぁ?」

 

「決して楽な道ではありませんが…何もしなければ、あなたは、そこで座して死を待つだけです」

 

 

 

「…」

 

 

 

「おわかりですね?」

 

「…どうするつもりだ?…」

 

 

 

するとヤツはオレの質問には答えず、大声で看守を呼んだ。

 

「すみません!ちょっと、お願いがあります!誰かいませんか!?」

 

「どうした?何があっ…うっ!…」

 

鮮やかな一撃だった。

ヤツは近寄ってきた看守を、独房の中から手刀で仕留めた。

 

 

 

…何者だ?コイツ?…

 

 

 

なかなかの手練れのようだ。

 

 

 

ヤツは気絶した看守の身体を引っ張り込むと、腰に着けていたカギを奪い、難なく解錠した。

 

「さぁ、行きますよ!」

 

ヤツはオレの独房のカギを開けると、自らがさっきまでいた場所へと連れてきた。

床に敷いてあったゴザを捲ると、人がひとり通れるほどの穴が現れた。

 

「抜け穴?」

 

「あなたが来るのを待ってました!さぁ、急ぎますよ!」

 

 

 

すぐに追っ手がやって来た。

しかしヤツは、この階下からの脱出ルートが頭に入っているのか、迷うことなく、オレを誘導する。

 

その途中…ドラゴンと遭遇したのは想定外だったが…吹き掛けられる炎からはなんとか逃れ…オレたちは追っ手を振り切ることに成功した。

 

 

 

「逃げ切れたようですね…」

 

「あぁ…。取り敢えず、感謝するよ。ところで、あんたは何者だ?」

 

 

 

「すみません、申し遅れました。私の名前は『ウミュ』です」

 

「ウミュ?…『カミュ』じゃなくて、ウミュ?」

 

「はい」

 

ヤツは目深に被っていたフードを、パサッと後ろに払った。

 

 

 

「女?…って海未ちゃん!?」

 

 

 

「はい!…ですが、何故、私が盗賊役なのでしょうか?しかも、このキャラクターは本来、男性だったかと…」

 

「さ、さぁ…それはオレに訊かれても…。胸が無いからかな?」

 

「なんてことをいうのですか!私だって、胸はあります!触ってみますか?」

 

 

 

「ん?いいの?」

 

 

 

「あっ…いえ…その…破廉恥です!!」

とウミュは顔を紅くした。

 

 

 

「自分で言ったんじゃん…」

 

「それはそうなのですが…まぁ、リサトさんのパートナーは私しかおりませんので…」

と、彼女は無理矢理自分を納得させた。

 

「オレも海未ちゃんがそばにいてくれるなら、心強い!…って、早速だけど、オレはこれからどうすればいい?このままじゃ、お尋ね者として指名手配されて、捕まるのは時間の問題だぜ」

 

「そうですねぇ。まずはリサトさんの汚名を晴らしてくれる仲間を探しましょう」

 

「あっ!それそれ!そもそも、オレは何者なんだ?勇者だ、悪魔だ…ってなんのことだ?」

 

「私が見たお告げが正しければ、リサトさんは間違いなく勇者の血を引く者です。ですが、その存在を邪魔だと思っている人がいます…」

 

「それがデルカダールの国王?」

 

「勇者の血を引く者が誕生したということは…裏を返せば『悪しき世界が復活』した…ということ。彼の言い分は…リサトさんの存在を消せば、その闇も無くなる…どうやら、そういうことのようです」

 

「なるほど…一理ある。それでアイツはオレを悪魔の子と呼んだのか…」

 

「ですが、私はそう思っていません!」

 

「ん?」

 

「むしろ逆です。悪しき世界が復活するからこそ、リサトさんが生まれたのではないかと…」

 

「卵が先か、鶏が先か…だな」

 

「ただ、ひとつ言えることは…リサトさんは、今、ここで亡くなってはいけないということです!その為に私は全身全霊、あなたを守ることに命を捧げます!」

 

「ウミュ…なぜ、そうまでして…」

 

 

 

「それが私の使命ですから」

 

 

 

「使命?」

 

 

 

「事情はいずれ話します…。とにかく、今は先を急ぎましょう!」

 

「あぁ…わかった…。じゃあ、まずは村に戻るか」

 

「いえ、残念ながら…イシの村はあなたが戻ることを想定して、すでに包囲されているでしょう。ここは一旦、南東にある『ホムラの里』に向かいましょう」

 

「『穂むら』の里?…どこかで聴いたことがある名前だな」

 

「はい。火山が近くにある為、世界有数の温泉地ですよ」

 

「…ってことは?」

 

「名物は温泉『饅頭』です」

 

「あははは…そうなんだ…じゃあ、まずはそこへ急ぐとしよう」

 

「はい!」

 

 

 

こうしてオレとウミュは、ホムラの里を目指すことにした。

 

 

 

 

 

~to be continued~

 

 







※アヤノ…ドラクエでの正式名称はエマです。
※ウミュ…ドラクエでの正式名称はカミュです。


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