【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI   作:スターダイヤモンド

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モテ期到来?

 

 

オレはグロッタの街で『仮面武闘会』に参加することになった。

目指すは賞品の『虹の枝』もしくは『イエローオーブ』だ。

 

 

「じゃあ、少なくとも、この街にいる何人かは、この大会に出場するってことか…。どんなヤツがいるか、ちょっと散策してみようぜ」

 

すると早速、オレたちに声を掛けてくる者が現れた。

身なりからして街の住人らしい。

 

「やぁ、あなた方もこの大会に参加するのですか?」

 

「全員じゃないけどね…」

 

「初めてですか?」

 

「あ、あぁ…」

 

「なら『ハンフリー』さんと一緒になれたらいいですね!」

 

「ハンフリー?」

 

「おや、ご存知ありませんか?前回の優勝者ですよ。この街の孤児院に働く『気は優しくて力持ち』を絵に描いたような人物です。よっぽど弱いパートナーと組まない限り、連覇は間違いありませんね」

 

「そんなに強いんだ」

 

「一昨年までは、その優しさが災いして、いまひとつ力が発揮できなかったのですが、昨年は見違えるほど強くなりましてねぇ…」

 

「へぇ…」

 

「この街の誇りですよ」

 

彼は『さも自分のことのように』自慢気に語った。

 

 

 

…ハンフリーねぇ…

 

…覚えておくか…

 

 

 

「おや?あなた方も私にサインを求めに?」

 

次に話しかけてきたのは、モデルのようなルックスの若者。

オレほどじゃないが、なかなかのイケメンだ。

 

「サイン?」

 

「マスクをしてない時はプライベートな時間だから、困るんだよねぇ!まぁ、どうしても…っていうならしてあげてもいいけど」

 

「はぁ?アンタ、なに言ってるの?」

とベロニコさん。

 

「でも、ちょっとアイドルモードの時のニコちゃんっぽいかも…」

とセーニャさんは笑った。

 

「えっ?違うんですか?…もしかして大会の参加者?」

 

イケメンは気を取り直して…といった感じでオレたちに訊いた。

 

「全員じゃないけどね」

 

「これは失礼しました!」

 

「アンタも参加するのか?」

 

「はい!」

 

「ふ~ん…」

 

「あ、いえ…サイン云々は忘れてください!パートナーはくじ引きで決まるので、見ず知らずの人と組むこともあるわけじゃないですか。ですから、積極的に話し掛けて、情報収集してるんです。当日『初めまして!』よりは、ちょっとでも顔馴染みの方が、闘い易いですからね」

と、どう見ても取り繕ったように言った。

 

 

 

…でも、それは一理あるな…

 

 

 

「もし、一緒に組むことになったら、よろしくお願いしますよ」

 

「あぁ…こちらこそ、よろしく」

 

最初のナルシストぶりからは想像つかない、意外と礼儀正しい青年だった。

ただし、強そうかと言われれば疑問符が付く。

 

 

 

…コイツはハンフリーではないな…

 

 

 

直感的にそう思った。

 

 

 

ところが期せずして、その人物と出会うことになる。

「ハンフリー、今年はお前の好きにはさせねぇ!」と言う声が聴こえてきたからだ。

その声のする方へ歩いて行ってみると、大男が3人いた。

2人はヒール、1人はベビーフェイスという感じである。

これがWWEというアメリカのプロレスなら、こんな街中でも乱闘が始まるところだが…さすがにそうはならなった。

 

「まぁ、どっちが強いかは、明日になればわかることだがな」

とヒールのひとり。

大会前だと言うのに、すでにツノの付いたマスクを被っている。

 

「べろべろべろ~ん!!お前なんか、やっつけちゃうからねぇ!!」

ともうひとりは、舌を出しながら挑発をする。

アゴのあたりから、ヨダレが滴り落ちているのを見て、オレの背筋が一気に寒くなった

 

「残念ながら、優勝を譲る気はない。例え、お前たちが束で掛かってきてもな」

と言ったのはベビーフェイス。

つまり、コイツがハンフリーというわけだ。

 

「おっと、これ以上は旅人の邪魔になる。続きは明日…ということにしないか」

とハンフリーはオレたちに気付き、中断を提案した。

 

「あぁ、もちろんだ。言い争いをしても、どうにもなんねぇからな」

 

「べろべろ~ん」

 

そう言って3人は別れていった。

 

 

 

「どうやら、あの人がハンフリーさんのようですね」

 

「みたいだな」

 

「思った以上に紳士な感じですね?」

 

「気は優しくて力持ち…ってさっき街の住民が言ってたからな」

 

「ねぇ…でも不思議じゃない?残りの2人だって、くじの結果次第で、アイツと組むことだってあるんでしょ?それが必ず戦うみたいになってなかった?」

 

ベロニコさんの言う通りだ。

 

「ある程度、レベル分けみたいなのがされてて、強い人同士が組まないようになってるんじゃないかしら?」

 

「あぁ、それなら納得できる。サッカーのワールドカップでも、組分けする時はそうだもんな。FIFAランキングを元に強豪国が一緒にならないようにしたり…地域が被らないように…とかするしな」

 

「へぇ…」

 

「そういえば3人とも、結構強そうだったもんね」

 

「う~ん、でも、セーニャさん…ツノマスクはいいとしても、ベロ男とは一緒になりたくないなぁ…。敵としても当たりたくないけど」

 

「そういうことを言うと、一緒になったりするのよ」

 

「いやいや、ベロニコさん…それはいくらなんでも、いくらなんでも、勘弁してください…」

 

オレがそう言うと、ふふふ…とカミュたちが笑った。

 

 

 

「もしかして、お兄さんたちも大会に参加するのかしら?」

 

 

 

「えっ?」

 

その話しかけられた声が、あまりに思いがけないものだったので、オレは自分の耳を疑った。

それは少し気だるさの漂う、妖艶な女性の声だった。

 

そして、その声の主の姿を見て

「うぉっ!!」

と再びオレは驚く。

 

そこにいたのは…屋外にあるカウンターバーで酒を飲んでいた、2人の美女だった。

 

 

 

「なんて破廉恥な格好をしているのですか!」

 

オレの気持ちをウミュが代弁してくれた。

もっとも、オレは怒ってはいないのだが。

 

 

 

彼女たちは『異常なほど露出度の高い格好』をしていた。

しかし水商売の人たちでないことは、ひと目でわかる。

なぜなら身に纏っているのが『武具』だったからだ。

 

ひとりはショートボブの…いわゆる巨乳。

もうひとりはロングヘアの…スラッとスリムな美女だ。

後者はどことなくイシの村に残してきたアヤノに雰囲気が似てる。

それだけにこの格好は、相当オレを焦らせた。

 

 

 

ウミュやセーニャさんたちの目を気にしながら、なるべく平静を保っている風に

「あ、あぁ…参加するけど…」

と答えた。

 

 

 

「そちらのお兄さんは?」

 

 

 

「わ、私ですか?い、いえ…私は…」

 

忘れているかもしれないが、ウミュは男装している。

彼女たちからすれば、見た目は『彼』なのだ。

 

 

 

「あら、残念ねぇ」

とショートボブは甘ったるい声でそう言った。

 

 

 

「あ、あの…あなた方は?」

とオレ。

 

 

 

「私たちは、この街を拠点に活動してる武闘家よ」

 

「あぁ…日々、ここに集まる男どもと腕試しをして、自己研鑽に励んでいるだ」

 

ロングヘアの方は、すこし男っぽい喋り方をした。

シルビアとは(いい意味で)別の中性的な雰囲気を醸している。

 

 

 

「武闘家?」

 

 

 

「私の名前は『ビビアンジュ』…よろしくね、お兄さん!」

 

「私は『サイエレナ』だ」

 

 

 

…ん?…

 

…びび…あんじゅ?…

 

…さい…えりな?…

 

 

 

…おぉ!!どこかで見たことがあると思えば…

 

…A-RISEの『優木あんじゅ』と『統堂英玲奈』じゃないか!!…

 

 

 

「こんなところで登場するとはね…」

 

ベロニコさんは、本日何回目かの台詞を吐いた。

 

続けて

「ビビ…の方は、絵里か真姫が出てくるかと思ったけど…違ったのね」

とも言った。

 

「それは、にこちゃんも含めて3人いないと『BiBi』にならじゃないかな?」

とセーニャさん。

 

「それはそうね…」

 

 

 

「?」

 

なんのこと?とシルビアは首を傾げている。

 

 

 

「い、いや…内輪ネタだ…。それはさておき…えっと…ビビアンジュさんとサイエレナさんも、この大会に?」

 

「もちろんだ」

と、サイエレナは低音のイケメンボイスで答えた。

 

「…ということは…場合によっちゃあ、オレと組むことがあるかも知れないってことですね?」

 

「そうねぇ。私もできれば、お兄さんみたいな人と組みたいわぁ」

 

「私もだ。死んでもべロリンマンとは組みたくない」

 

 

 

…べロリンマン?…

 

…あのベロ男のことか?…

 

 

 

「ですよねぇ!オレもむさくるしい男と組むよりは…」

と言い掛けたところで、女性陣たちの鋭い視線が突き刺さる。

 

 

 

「あ…いや…もちろん、優勝して虹の枝をゲットすることが、第一目標です」

 

言い訳せざるを得なかった。

 

 

 

「どう、折角だから一緒に呑んでいかない?」

 

「えっ…あっ…どうしようかな?…そうしたいのはやまやまですが…」

 

「どうしようかな…ではありません!リサトさんは明日に備えて、コンディションを整えてください!飲酒などもってのほかです」

 

「…ということらしいので…。大会が終わったら、また誘ってください」

 

「うふっ!待ってるわよ」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

 

 

 

「いやいや、そりゃ、そうなるでしょ!?男だもん」

 

 

 

「…」

 

 

 

さっきからオレは針のムシロ状態だ。

誰も口をきいてくれない…。

 

 

 

「でも、あの2人、強いのかなぁ?」

 

救いの手を伸べてくれたのはセーニャさんだ。

こういう時、本当に助かる。

ちゃんとフォローをしてくれる。

 

「ふん、単なる露出狂じゃない!あんなのが強いわけないでしょ!」

 

 

 

…だけど、男としては、それだけで戦意が半分失われるんだけどね…

 

 

 

「あら、ベロニコちゃん…そうとも限らなくてよ。この世界においては『みりょく』っていうのも大事なステータスなんだから」

 

「そうそう!さすがシルビア、わかって…る…って…だから、いちいち、そんな顔で見るなよ…仕方ないだろ…」

 

 

 

 

 

そんなこんなで、宿へ向かおうとした…その時だった。

 

さっきの2人とは違う美女が、オレたちの前から現れた。

 

 

 

長く伸ばしたブロンドの髪はポニーテールを結っている。

サイエレナのようにスラッとしていて、ビビアンジュのように豊かな胸…完璧なボディだ。

 

オレは思わず見とれて立ち止まる。

 

 

 

…なんだ、なんだ…この街は?…

 

…美人の宝庫か?…

 

 

すると彼女はオレとすれ違いざまに、蒼い目を片方だけ『まばたき』させて通り過ぎて行った。

 

 

…ウインク?…

 

…オレに?…

 

…モテ期到来…ってヤツか?…

 

…なんか、もう、この冒険の終着点はここでいいんじゃないか…

 

 

 

ビビアンジュやサイエレナ、そして今の美女に囲まれて、人生を終えるなら、男冥利に尽きるっていうもだ。

 

しかし、すぐに別の感覚に襲われる。

 

 

 

…いや、待てよ…

 

…今の女の人…

 

 

 

…初対面ではない?…

 

…誰だ?…

 

…どことなく、懐かしい匂いを感じがした…

 

 

 

実際にいい香りがしたのは間違いないが、ここでいう匂いはそういうことじゃない。

もっと皮膚感覚的なもの…。

 

オレは必死の思い出そうと試みたが、

「姫、姫…お待ちください。もう少しゆっくり歩いてくだされ…」

と彼女の後ろを付いていく小柄なおじいさんの声で、現実に引き戻される。

 

そして彼もまた、オレにウインクをして通りすぎていった…。

 

 

 

…このじいさんも!?…

 

 

普通の感覚で言えば、じいさんにウインクされても気持ち悪いだけだが、不思議とそうは思わなかった。

 

 

 

…なんだ、この感じは…

 

 

 

オレは暫く2人の後ろ姿を見ていた。

 

 

 

 

 

気が付くと

「リサトさん!わかっていますね?くれぐれも変な気を起こさないでくださいね!」

とウミュが、オレの隣でブーメランを構えて睨んでいた…。

 

 

 

 

 

~to be continued~

 




※ビビアンジュ…ドラクエでの正式名称はビビアンです。
※サイエレナ…ドラクエでの正式名称はサイデリアです。

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