【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI 作:スターダイヤモンド
注目の対決は呆気なく終わった…。
「ごめん、リサトちゃん…ワン、ツーフィニッシュとはいかなかったみたい…」
レディ=マッシブことシルビアは、そう言って肩を落とした。
「…そんなことより、早くイケメン君に付き添ってやれよ。精神的ダメージが大きいんじゃないか?」
「うん…だけど…今は独りにして欲しい…って…」
「そっか…」
ナルシストコンビvs謎コンビの試合は、マスク=ザ=ハンサムが狙い撃ちにされ、早々にダウン。
彼も決して弱かったワケではない。
むしろ謎コンビが想像以上に強かった。
その後、レディが孤軍奮闘するも、最後は力尽き、決勝進出を逃したのだった。
「いくらリサトちゃんとハンフリーちゃんとはいえ、そう簡単には…」
「あぁ…わかってる…」
…これまでみたいに、ヤツが後方支援…サポートに徹するなんて言われたら…
…オレはイケメンと同じようにやられるだけ…
…今回は積極的に闘ってもらわないと…
「…ってことで、作戦の練り直しだ」
と声を掛けると、ヤツは黙って頷いた。
女の人をいたぶるのは、オレの趣味じゃない。
ましてや、相手はスタイル抜群の美女である。
だから正直な事を言えば、極力、エリティカさんとは闘いたくない。
そうすると…「ブスならいいのか」…って話になるが…それは口にするだけ野暮ってもんだ。
何でもかんでもセクハラって言われちゃあ、堪らない。
それはさておき…できれば…まずは、ロウっていうじいさんを潰したい。
だが、さっきの対戦を見ていると…前線で戦うのが、エリティカさん…後方支援がロウじいさん…って感じだ。
残念ながら、直接対決は不可避ってとこだ。
…エリティカさんの攻撃を耐えつつ、カウンターを狙う…か…
オレとハンフリーは暫くの間、作戦を練った。
約1時間の休憩が終わり、係の者がオレたちを呼びに来た。
ハンフリーはいつものようにルーティーンをこなす。
ただ、少しだけ違ったのは、小瓶を2本空けたことだった。
「決勝だからな…気合いを入れないと」
ヤツはオレにそう言った。
控え室を出て、闘技場へと向かう。
身震いするほどの歓声がオレたちを襲った。
ロッカールームからピッチに出る…あの時の感覚が甦る。
目の前には…ナイスバディ。
ビビアンジュやサイエリナほど露出は高くないが…ショーパンから伸びたスラリとした脚…タンクトップで強調された豊かな胸元…くびれたウエスト…縦長で形のいいヘソ…。
どこを見ても惚れ惚れする。
目が釘付けになる。
「エリティカさん、オレ、どうしても賞品のあの虹の枝が必要なんです。ここは優勝、譲ってくれないですかね?」
とダメ元で頼んでみた。
しかし、彼女はピシャリとオレに言い放った。
「認められないわ!」
「リサトよ…お主、そんな心構えでは、世界なぞ救えぬぞ」
横からじいさんが口を出した。
「なんで、アンタがそんなことを!?」
「それはな…おっと、そろそろ試合開始のようじゃ。続きはまたあとで…」
…チッ!…
…上手く逃げられたか…
「ホーク、私語はそれくらいにしておけ…」
「ん?あぁ…」
ハンフリーは臨戦態勢に入っているようだ。
オレも自分の頬を2、3度叩き、気合い入れ直す。
試合を取り仕切るアナウンサー兼レフリーに、所定の位置まで戻るよう指示された。
…やるしかない…か…
そして、戦闘開始の銅鑼が鳴った。
回復系の呪文を使うじいさんを先に潰しておきたいとこだが、エリティカさんが、なかなかそうさせてくれない。
長い脚を見せびらかすかのように、立て続けにキックを放つ。
さすが元バレリーナだけのことはある。
クルクルと回転しながら…ローキック、ミドルキック、ハイキック、回し蹴りに踵落とし…あらゆる角度から澱みなく足が飛んでくる。
それと同時に相当、股関節の柔らかいことがわかる。
あのイケメンくんは、初っ端からこの連続攻撃を喰らい、建て直す間もないままダウンした。
セクシーコンビが相手のときは、パンチラ、チクチラを期待しながら戦ったオレだが…そんな余裕はない。
避けるので必死だ。
もちろん、彼女のコスチュームは、それが見られるようなものではないのだが…。
オレがエリティカさんと対峙している間、ハンフリーがじいさんに攻撃を仕掛ける。
だが、カウンターで『ドルマ』を唱えられ、ヤツがダメージを喰らった。
「ぬぉ!!…」
「大丈夫か!?」
「よそ見をするな!」
「わかってるよ!」
オレはまずは防御に徹し…エリティカさんの攻め疲れ、スタミナ切れを待つが…攻撃は一向に止まない。
「神田明神の階段ダッシュは相当なもんですね!」
「ふふふ…」
エリティカさんは不敵に笑った。
「うっ…」
「ぐふっ…」
「うぉ…」
後方でハンフリーの呻く声が続く。
じいさんの呪文攻撃が結構効いてるようだ。
想定外。
ここまで苦しめられるとは。
「ハンフリー!」
「まだだ!まだ終わらんよ!」
…お前はクワトロ=バジーナか!…
聴き覚えのあるセリフに、オレは思わずツッコんだ。
気になって振り向くと、ハンフリーはどこからか例の小瓶を取り出し、中身を飲み干した。
すると…口では説明しづらいが、みるみるうちにヤツの身体にパワーが漲(みなぎ)っていくのがわかる。
「…すげぇ…」
その様子に、オレもエリティカさんも、じいさんも見入ってしまった。
「こらリサト!なにボケッとしてるのさ!今のうちにやっつけちゃいなさいよ」
「あっ!…」
観客席から叫ぶベロニコさんの声で、オレは我に返った。
「いくぜ、エリティカさん。ここからはオレの時間だ!」
「そうはいかぬぞ!」
「なに?」
…やべぇ!じいさんがゾーンに入った…
「姫!」
その溜めた気を、エリティカさんにパスした。
「まかせて!」
…来る!連携技だ!…
「『魔闘 旋風脚!』」
…耐えろ、オレ!…
「むおぉぉ!!」
「なんと盾になっただと?」
じいさんは驚きの表情を隠さない。
それもそのハズ。
ハンフリーがオレの前に仁王立ちし、無数に放たれたエリティカさんの蹴りを一身に受け止めたのだった。
「ハンフリー!!」
「わたしが全力を出せば、これくくらい…」
とヤツは言ったが、足元はふらついている。
連携技は諸刃の剣だ。
一撃必殺の為、決まれば威力は絶大だが、決め切れなければショックが残る。
そしてなにより、体力を使い果たしてしまうのだ。
攻撃を受けたハンフリーもヨロヨロとしているが、謎コンビにも余裕は無いように見えた。
それでも…
エリティカさんは最後の力を振り絞って、ヤツに向かってジャンプした。
途中で身体を捻り、背面からぶつかっていく。
「ヒップアタック!?」
エリティカさんのお尻が、ハンフリーの顔面にヒットした…。
「…お…おおぉ…」
ヤツの声は、心なしか嬉しそうに聴こえた。
しかし、そのまま…デ~ン…と後方に倒れやがった。
…テメェ!羨ましいじゃねぇか!
…っていうか、それだけでやられんな!っつうの…
きっと、オレが想像する以上に、女性に対して免疫がないのだろう。
ヤツはそのお尻にノックアウトされてしまった。
「エリティカさん、オレにもお願いします!」
「なにを言うか、このバカものが!」
「おっと、じいいさん!…まだ元気じゃねぇか」
「姫をいやらしい目で見るでない!我が孫ながら情けない!」
「我が孫!?」
「いやいや、言葉の綾じゃ。孫ほど年齢が離れているという意味じゃ。お主がエロに走るにはまだ早い」
「知るか!」
「受けてみよ」
…ドルマか!…
「見切ったぜ!」
「ふぐっ…」
「カウンターアタック、成功!」
「ひ、姫…」
「ロウ!」
「さて、残るはエリティカさんだ」
「ハラショー…」
「幸い、オレはまだ体力が有り余ってるんでね」
「待って!」
「ん!?」
「わかったわ!降参する」
「へっ?」
「残念ながら、もう、私には力が残ってないもの…。悔しいけど、負けを認めるわ」
「ナイスジャッジだ。オレもその綺麗な顔や身体に傷を付けるのは気が引ける」
「…生意気なことを言うようになったわね…」
そう言うとエリティカさんは、両手を上げて、降伏を宣言した。
「あ~っと、この瞬間、ハンフリー&ホーク=リッサート組みの優勝が決まったぁ!!」
レフリー兼アナウンサーの声が流れる。
地元の英雄を称える声と、善戦した謎コンビ…特にエリティカさんに対する声援が会場にこだました。
最後に勝ったのはオレなんだが…まぁ、この際、それはどうでもいいとしよう。
今、オレたちが必要としているのは、この歓声でも名声でもなく、賞品の虹の枝とイエローオーブなのだから。
正直オレはホッとした。
エリティカさんと戦わずに済んだからだ。
彼女のヒップアタックを受けられなかったのは、心残りだが…それはこの場じゃなくてもいい。
場所を変えてお願いすればいいことだ。
「ハンフリー…助かったぜ!あの時アンタが盾になってくれなければ…」
「いや、礼を言うのはこっちの方だ。大会前は私ひとりで充分だなどと言ってしまったが…キミと組んでいなければ、この優勝は無かった」
「そう言ってくれると、オレもこの戦いに挑んだ甲斐があるってものだ」
「それに…」
「それに?」
「いや、なんでもない…。悪いが少し休ませてくれないか。さすがに…疲れた…」
「あぁ…もちろん」
「表彰式は明日だ。その時にまた会おう」
「わかった」
オレとハンフリーは握手をして会場を後にした。
~to be continued~
この作品の内容について
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つまらない
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ドラクエ知らない
-
続編作れ