【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI 作:スターダイヤモンド
「優勝賞品が盗まれたぁ!?」
まったく、色々と想定外のことが起きる。
ハンフリーとの一件も終わり、あとはそれを受取ったら、このミッションは終わり…そう思った瞬間、これだ。
「ちょっと、盗まれたってどういうことなのよ!」
事態を聴いて、客席からベロニコさんたちがやってきた。
「それが…朝までは確かにあったのですが、表彰式が始まる前に見たら、無くなっていて…」
彼らがバタバタと、忙しく慌てふためいていた原因は、これだったのか。
「その代わり、現場にはこれが…」
スタッフがオレたちに見せた物。
「これは!?…」
「ロウちゃんとエリティカちゃんが付けてたマスクじゃない」
「あぁ」
「それともうひとつ、こんなものが残されていました」
「手紙?」
〉リサトよ、ユグノア城跡で待っている
差出人は不明…。
だが、この状況からしてロウが書いたものだということは明らかだ。
「どういうことでしょうか?」
「まぁ、理由はよくわからないが、あの2人が賞品を持ち去った。そして、それが欲しかったら、ここまで取りに来い!ってことじゃないか?」
「なぜ、そのようなことを?こういうことをする人たちには思えないのですが…」
「オレに訊くなよ」
「何か心当たりはないのですか?」
「無いよ、無い」
「とにかく行ってみるしかないわね」
シルビアがオレに決断を促した。
「あぁ…そうするしかないみたいだな」
このグロッタの街から南西に進んだところに、ユグノア城跡はあった。
しっかりと手入れがされていれば観光名所にでもなり得るのだろうが…雑草が伸び放題で、とてもそんな感じではない。
当時は…それはさぞ、立派な城だったであろうことは想像できなくないが、今はほとんどの壁が崩れ落ち、まさに城跡である。
廃墟という言葉がふさわしいかもしれない。
あちらこちらにドラゴンの姿も見える。
しかし、オレたちを物珍しそうに見てはいるものの、こっちがちょっかいを出さない限り、襲ってくることはなさそうだ。
とはいえ、決して居心地のいい場所ではない。
「なぜ、このような場所に?」
さっきからウミュは、誰もが思っている疑問を何度も口にしている。
そう言わずにはいられないのだろう。
もちろん誰もその答えを知らない。
さぁ…と返す以外なかった。
「ですが、リサトさん。もしかしら、何かのワナかもしれません。充分、用心したほうが…」
「エリティカさんに限ってそんなことはないと思うけど…」
「ふん!甘いわよ!ちょっとくらいスタイルがいいからって鼻の下を伸ばしてると、痛い目に遭うんだから」
「はい、ベロニコさんの言う通りです!」
2人とも、恐い顔をしてオレを見ている。
…ウミュ、さっきはお前が「こういうことをするような人たちじゃない」って言ったんだけどなぁ…
「そ、そうですね…」
しかし、逆らうと怖いので、オレは彼女たちの視線から逃れるように、明後日の方向を向いた。
敷地内を彷徨うこと数分。
オレたちの眼前にヤツの姿が現れた。
謎コンビのじいさん…ロウだ。
「待っておったぞ」
「随分と偉そうだな…」
「まぁ、その理由を今から教えてやるわい。ところで、これがなんだかわかるかね?」
じいさんは、自分の後ろに建っている…人間の背丈ほどもある石碑を指差した。
「…墓石?…」
「その通りじゃ」
「どなたのでしょうか?」
「この国の…ユグノアの国王夫妻のじゃ」
「!?」
「何を隠そう…2人は…リサトの…両親じゃ…」
かなり勿体ぶって、オレたちにそう告げた。
「オ、オレの…両親!?」
「そして、お主はワシの孫なんじゃ」
「なにぃ!?じいさんが…オレの…じいさん?」
「リサトちゃん、その言い方はややこしいわよ」
「ワシの娘が…お主の母親じゃ…」
「マジか!!」
まったく、色々想定外なことが起こる。
ついにこのタイミングで肉親が現れやがった!
しかし、そうであれば、じいさんの偉そうな口調も納得できる。
「16年前、魔物にこの国が襲われたときに…2人は亡くなり、孫は行方不明になった。絶望の中…それでもワシが生き残ったことに意味があるのだと、これまでやってきたのじゃ。」
「それは、さぞお辛かったことでしょう…」
ウミュは今にも泣きそうな顔をして言った。
「良かったね!リサトちゃん!」
見れば、シルビアもベロニコさんも…そしてセーニャさんもしんみりとしている。
感動の対面!!
みんな勝手にそんな雰囲気になっている。
だが
「ちょっと待ってくれ!感極まっているところ申し訳ないが…当の本人は、まったくそんなこと思ってないから」
とオレは少し冷静だ。
「?」
みんなが不思議そうな顔をして、オレを見る。
「そりゃそうさ!オレはこの間まで『イシの村で生まれ育ったもの』…と思っていたんだぜ。それがいきなり、否定されたのみならず…『勇者の生まれ代わり』だと言われ…挙句の果てには、突然『両親はユグノアの国王夫妻』でした…でも『死んでます』とか…わけのわからない、じいさんに『お前は孫じゃ』とか言われて…『おぉ!!』ってなるか!ならないだろ?」
「なによ!ムードのかけらもない男ね!」
「リサトちゃん。それは口にしちゃだめよ」
「はい、確かにリサトさんはそういうところがあります。デリカシーがないというか。特に女性に対して…」
「ウミュ、それは今、関係ないだろ」
「いえ、毎回毎回『あの人、きれいだね』とか『あの人、胸が大きいね』とか、報告しないでください。私だって、見ればそれくらいのことはわかりますから」
「情報は共有しておいたほうがいいだろ?」
「そういうことを言ってるのではありません」
「まぁまぁ、リサトちゃん、ウミュちゃん」
「うふふ…」
「セーニャさん、笑ってる場合ではありません!」
「やれやれ…」
じいさんは頭をポリポリと掻いた。
「ユグノア王国は確か、バンデルフォン王国と共に魔物に滅ぼされたのでしたよね?」
ひと段落してから、ウミュがじいさんに訊いた。
「いかにも。その魔物を退治したのが、デルカダール王国のグレイグ将軍じゃ。見たと思うが、グロッタでは街を救った英雄として、巨大な像が建てられておる」
「あぁ、見たよ。でも、そのデルカダールの国王から『悪魔の子』呼ばわりされて、オレは今『お尋ね者の身』なんだぜ」
「!?」
「あれ、それは知らなかった?」
「悪魔の子の噂は聴いておったが…お主のことだとは!?いったい、あやつは何を考えておる…」
「こっちが訊きたいよ」
「うむ…」
「…で、本当なのか?オレがユグノアの国王の息子だってことは?」
「間違いない。その左手の甲のアザが何よりの証拠じゃ」
「これか…。いつ気付いた?」
「グロッタの街で見かけたときじゃ。ワシらは行方不明事件を追って、あそこに入ったのだが」
「あぁ、昨日の?」
「魔物が放つ、邪悪な気配が漂っておった」
「じいさんたちは、魔物ハンターなのか?」
「まぁ、似たようなもんじゃ」
「ふ~ん…」
「そしてその時に…一般人にはない…敢えて言うなら『勇者のオーラ』…みたいなものを感じたのじゃよ…。その気配の出所を探っていったらリサト…お主がいたわけじゃ」
「へぇ…オレからそんなものが出てるんだぁ」
「すれ違った時に、そのアザを見て、確信した…ってことかしら」
シルビアが訊くと、じいさんは頷きながら
「さすがに、生きてはいまい…そう思っておったのじゃが…」
と答えた。
「それは驚かれたでしょうね?」
「うむ…こんなに美人さんを引き連れて旅しているとは…」
「はい?今、なんと?」
ウミュはじいさんの言葉に耳を疑い、訊き直した。
「い、いや…何も言っておらんよ。はっはっはっはっ…気にするでない」
「は、はぁ…」
…なぜでしょう…
…一瞬、リサトさんが喋っているのかと思ってしまいました…
「ゴホン!!そういうわけでリサトよ…記憶も実感もないかも知れないが…無事にこれまで生きてきたことを、お主の両親に報告して欲しいのじゃ」
「あぁ…そういうことなら…まぁ…」
「エレノアよ…アーウィンよ…喜ぶがいい。息子はご覧の通り、逞しく成長しておったぞ…」
じいさんは墓石に向かって、そう呟き、手を合わせる。
…エレノアが母親の名か…
…エレノア?…
…エリティカ…
…まさか…オレと彼女は血縁関係にある?…
…いや、いや、そんなバカな…
オレの中に、一気に吹き出してきた疑念。
だが、今、それを口にするのは躊躇われた。
ここはじいさんに倣って、オレも手を合わせる。
…そう言えば、イシの村に残してきたアヤノは…
…父親を事故で亡くしたんだったな…
…突然のことだからな…
…そりゃあ、やりきれないよなぁ…
身近な人が亡くなるというシチュエーション…オレはまだそういったものに直面したことがない。
だから、オレは本当の意味での悲しさや寂しさを、まだ知らない。
それでも…
オレも…『向こうの世界では健在なハズの両親』が、亡くなったことを想像してしまい…ちょっぴりセンチな気分になった。
役者は、そんなことを考えながら、涙を流す演技をするのだろう…。
「もうひとつ、付き合ってほしいことがある…」
「あぁ」
「この奥の、丘を登ったところに祭壇がある。そこで『鎮魂の儀式』を行いたいのじゃ」
「鎮魂の儀式?」
「非業の死を遂げた者を弔う…ユグノアの王家に代々伝わる儀式じゃ」
「断る理由はない」
「うむ…では、行こう」
じいさんに先導されて、オレたちは祭壇に向かうと、そこにはエリティカさんが立っていた。
「姫…仕度は?」
「えぇ。準備は済んだわ」
「ご苦労じゃった」
この状況では、さすがのオレもふざけたことはできない。
黙ってその様子を見守ることとした。
「魔物によって非業の死を遂げた者は…未練を残し、この世を迷うという…。そんな魂を救う儀式じゃよ」
じいさんが手にしたステッキの先に明かりが灯ると、どこからともなく淡い光を放つ蝶の大群が現れた。
「この蝶を人の魂に見立て…命の大樹へと送るのじゃ」
この場で使うのには不謹慎な言葉かも知れが、それはあまりにも『幻想的』だった。
何千、何万という蝶の群れが、柔らかで優しい光となって空に飛び立っていく光景は、オレたちの心も穏やかにさせていく。
それは、それは見事なものだった。
「これで娘も、ムコ殿も安らかに眠れるじゃろうて…」
「よかったですね」
「うむ、ありがとう」
「…ところで、じいさん…」
「ん?」
「オレもいろいろ訊きたいことがあるんだが…」
「だろうな」
「オレがユグノアの国王の息子だとすると…オレは王子ということになる」
「いかにも」
「一方、じいさんはエリティカさんのことを、ずっと『姫』って呼んでいる」
「確かに…」
「…ってことはさぁ…オレたちは…」
「その先は、本人から聴くがよい」
「えっ?」
「ワシはここにもうしばらくおるから…」
「わかったわ。リサト…ちょっと散歩、付き合ってくれない?」
「えっと…」
オレは一応、ウミュの顔を見た。
「なぜ、私を見るのですか?そこまで私も無粋ではありません!」
…じゃあ、お言葉に甘えて…
「その代わり…わかっていますね?」
「ん?」
「何かありましたら、ただじゃおきませんから」
ウミュはニヤリと笑い、ブーメランを構えた…。
~to be continued~
この作品の内容について
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ドラクエ知らない
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続編作れ