【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI   作:スターダイヤモンド

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森の中で

 

 

 

オレはエリティカさんに誘われ『散歩』へ出掛けた。

だが、どういう『立ち位置』で歩いたらよいものか…彼女との距離感がわからず、少し後ろを付いていく。

 

およそ『散歩道』と呼ぶにはふさわしくない…鬱蒼とした木々に囲まれた中を、ゆっくり進んだ。

月明かりがところどころ漏れているものの、お世辞にもデートコースとは言い難い。

どちらかと言えば、お化け屋敷レベルの暗さだ。

 

 

 

…まぁ、敢えてそういう所に連れていくのもアリだけど…

 

 

 

相手がエリティカさんじゃ「怖いわ」などと言って、寄り添ってくるハズもない。

 

 

 

しかし…

 

 

 

「ねぇ…腕…組んでいいかしら」

と彼女は言った。

 

 

 

「えっ!?あ、あぁ…はい…」

 

よろこんで!!…と言いそうになったが、そこはグッと堪える。

まだ、そういうタイミングじゃない。

 

 

 

「私ね、こう見えて暗いの…苦手なの」

 

 

 

「へぇ…」

 

 

 

「意外…って顔しないで。人間誰しも得手不得手ってあるでしょう?」

とエリティカさんは苦笑いした。

 

 

 

…ほう…

 

…いわゆるギャップ萌えってヤツですな…

 

 

 

「なら、なんでこんなところを?」

 

素朴な疑問。

 

 

 

「それは…どうしても二人きりで話がしたかったから…」

 

 

 

「わお!」

 

 

 

…そんなことを言われたら、変に期待しちゃうんですけど…

 

 

 

「じゃあ、どうぞ…」

 

オレは、自分の左手を腰に当てる。

そうしてできた三角のゾーンに、エリティカさんが腕を絡めてきた。

 

 

 

…肘の辺りに…豊かな胸が当たるんですが…

 

 

 

否が応にも、意識がそこに集中してしまう。

向こうの世界…『チョモ』こと『藤綾乃(夢野つばさ)』と『海未ちゃん』…では味わえなかった感覚だ。

 

 

 

「それで、話って?」

 

極力冷静な態度を装い、カッコつけて訊いてみる。

 

 

 

「…私の母は病弱で…私を生んですぐに亡くなったの…」

 

彼女はオレの問い掛けに…かなり間を空けてから語り始めた。

 

 

 

いきなりヘビーな話だ…。

 

打ち明けるのには、それなりに決意が必要だったのかも知れない。

こういう時はなんて言えばいいのだろうか。

オレは適当な言葉を持ち合わせていない。

 

「…そうなんですか…」

 

そう答えるのが、精一杯だ。

 

 

 

「そんな私を、いろいろ気に掛けてくれたのが…あなたのお母様…エレノア女王なの」

 

 

 

「オレの母親!?」

 

 

 

「本当に親身になって面倒をみてくれて…私を自分の娘のように可愛がってくれたわ」

 

 

 

「…」

 

 

 

「どうかした?」

 

 

 

「いや、オレはてっきり、これまでの流れからして、エリティカさんは自分の『お姉さん』なんじゃないか?って思ってたから…」

 

「それは、ある意味、間違いじゃないけど」

 

 

 

「?」

 

 

 

「私が5歳になる少し前に、あなたが生まれたの…。ユグアノの国王夫妻にとって…初めての子供があなた…リサトよ」

 

 

 

「長男…ひとりっこ…」

 

 

 

「だから、その時、私は『弟ができた!』って思ったわ。赤ちゃんってこんなに可愛いんだ!って。何度も何度も『抱っこさせて』って、エレノア女王にせがんだの…。いまでもハッキリ覚えてる…。まさか、こんなに成長した姿で再会するとは思わなかったけど」

 

「なるほど、そういうことか…ってことは…オレとエリティカさんは『従姉弟(いとこ)』か何かで?」

 

「ううん…私の母と王女は、古くからの親友だったみたいで…」

 

「ほう…じゃあ、血は繋がってない?」

 

「そうね」

 

 

 

「良かったぁ」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「血縁関係にあったら、結婚できないじゃん。エリティカさんと」

 

 

 

「!?」

 

 

 

「オレ、年上でも5歳くらいまでならOKですから」

 

 

 

「…呆れたわ…この状況でナンパ?」

 

オレの顔を見て、目を白黒させた。

 

 

 

「逆にみんなの前じゃ、こんなこと言えないでしょ?」

 

 

 

「そういうことじゃなくて…」

 

彼女はそう言って笑った。

 

 

 

しかし、すぐに

「実は…もうひとつ…伝えなきゃいけないことがあるの…」

と真顔になる。

口調から、それがかなり重大なことだとわかった。

 

オレは彼女の胸と、自分の肘との関係を一時忘れ、その告白を待った。

 

 

 

ところが…

 

 

 

この緊張の瞬間は、無粋なヤツらにぶち壊された。

 

オレたちの視界に、ポッっと灯る明かりが飛び込んできたからだ。

それも、ひとつやふたつではない。

恐らく両手ほどはある。

 

 

 

「間違いなく悪魔の子は、このあたりにいるはずだ!」

 

「くまなく探せ!!」

 

 

 

「なっ!?デルカダールの騎士団?」

 

どうやら追っ手が現れたようだ。

 

 

 

「グロッタの街で、派手に暴れすぎたかな?有名人は辛いねぇ」

とオレは小さく呟いた。

 

 

 

「悪魔の子…って…あなたが?」

 

彼女は驚いた顔で…だが、声は圧し殺してオレに訊く。

 

 

 

「あれ?知らなかったっけ?あぁ、そうか。話したのはじいさんに…だったな。オレはデルカダールの王から、そう認定された…お尋ね者の身なのさ」

 

 

 

「…まさか…お父様が…」

 

 

 

「えっ?今、なんて!?」

 

 

 

「ううん…なんでもない…それより、ここから逃げなきゃ…」

 

「あぁ、一旦さっきの場所へ戻って、みんなと合流しよう!…アイツら、やられてなきゃいいけど…」

 

 

 

ヤツらは松明(たいまつ)を焚いているから、それが目印になる。

つまり、そいつを避けて行けば見つからない。

その灯火と灯火の間を縫うように、来た方向へと引き返した。

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…取り敢えず、ここまでくれば…」

 

 

 

「そこまでだ!!悪魔の子よ」

 

 

 

…そうはいかないらしい…

 

 

 

馬に乗ってオレの前に現れたのは、グロッタの街で像になってるアイツだった。

 

 

 

「グレイグ将軍か!」

 

「いかにも!」

 

「…城で会った時以来だな…」

 

「すぐにその城に戻ってもらおう!」

 

「二度と行くか!」

 

「いや…そういう訳にはいかない」

 

ヤツは馬から降りて、オレと対峙した。

 

 

 

「エリティカさんは先に戻ってて…」

 

 

 

「リサト…」

 

 

 

「あなたがこの件に巻き込まれることはない」

 

 

 

「…」

 

返事はなかったが、彼女の気配はオレの後からスーッと消えた。

 

 

 

「仲間がいたか…」

 

「彼女は関係ない。欲しいのはオレの首だろ?」

 

「その通りだ!覚悟はいいな?」

 

「望むところだ!」

 

「いくぞ!」

 

グレイグは大剣を構えた。

オレの武器も同じだが、ヤツのモノは一回りデカイ。

 

 

 

…こいつをぶん回すのか…

 

 

 

歳の割には、相当の筋力と体力が備わっているということだ。

 

 

 

ヤツは英雄と呼ばれてるらしいが…オレもこれまでの戦いで、そこそこ力を付けているハズ。

 

 

 

…そう簡単にはやられない!…

 

 

 

だが…

 

 

 

「おっさん、強ぇじゃねぇか!」

 

「ぬかせ!私はまだ40歳だ!」

 

 

 

…その風貌で?60歳前後かと思ってたぜ…

 

…貫禄ありすぎだろ…

 

 

 

そのせいなのか、同じデルカダールの将軍…ホメロス…に較べれば『小ざかしい』感じはしない。

むしろ『威風堂々』昔堅気の騎士…そんな雰囲気だ。

威厳に充ちている。

 

 

 

「どうした、貴様の実力はそんなものか!?」

 

 

 

…いや、マジで強い…

 

…師範と弟子…

 

…稽古をつけてもらってるみたいだぜ…

 

 

 

徐々にオレは受身一方になり、後退させられていく。

反撃の糸口を見出せない。

 

 

 

…剣の達人か…

 

…さすが英雄と言われれだけのことはある…

 

 

 

「チッ!」

 

気付けばオレは崖の上に追い込まれていた。

 

 

 

「…貴様もここまでだ…観念しろ…」

 

 

 

「…」

 

 

 

その時だった!!

 

 

 

「グレイグ!待ちなさい!!」

 

 

 

「エリティカさん!?」

 

 

 

だが、驚いたのはオレだけじゃないようだ。

 

「なに!?エリティカだと?」

 

グレイグはオレの叫んだ名前に反応した。

 

 

 

…えっ?…

 

…ヤツはエリティカさんを知ってるのか?…

 

 

 

グレイグは、背後に現れた彼女の方を向き直る。

 

そして

「ま、まさか…」

と呟いた。

 

表情はわからないが、かなり動揺しているようだ。

 

 

 

「グレイグ…久しぶりね…」

 

彼女はヤツの隣を『そこには誰もいないかのよう』にすり抜けると、ゆっくりオレの元へと近づいてきた。

 

 

 

「姫…エリティカ姫…なのですか!?」

 

 

 

「16年ぶりかしら」

 

 

 

「ご無事でいらっしゃったとは!」

 

 

 

…16年ぶり?…

 

…無事?…

 

 

 

グレイグとの関係も気になるが、その言葉も気になる。

 

 

 

「あなたも…元気そうね…」

 

「はい…姫はお美しくなられて…」

 

「お世辞なんていらいないわ」

 

「今までどこで、何をなさっていたのですか?」

 

 

 

「…」

 

それに対して、彼女は返事をしなかった。

 

 

 

「エリティカさん、みんなのところに戻らなかったんですか?」

 

間が空いたので、そこにオレの質問を挟ませてもらった。

 

「残念ながら、誰もいなかったの…」

 

「フン!貴様の仲間なら、私たちの姿を見て逃げ出していったよ」

 

「なるほど…懸命な判断だ」

 

 

 

…捕まらなきゃいい…

 

…生きていれば、また逢える…

 

 

 

「まぁ、ヤツらのことは、あとでどうにでもなる」

 

オッサンは余裕たっぷりに、そう嘯(うそぶ)いた。

 

 

 

「グレイグ…リサトが悪魔の子って、どういうこと?」

 

 

 

「そ、それは…」

 

何故か、口ごもるグレイグ。

これまでの会話からするに、エリティカさんは相当立場が上なのだろう。

『姫』はアダ名じゃなく、本当に『姫』なんだと、肌で感じた。

 

 

 

「とにかく、これ以上の手出しは、私が許しません!」

 

 

 

「ですが…しかし、それはいくらエリティカ姫と言えども…」

 

グレイグは逡巡している。

 

 

 

「さぁ、リサト。行くわよ」

 

その間隙を縫って、彼女がオレの手を引っ張った。

 

 

 

その途端…

 

 

 

ぐらり…

 

 

 

足元が揺れた。

 

 

 

…地震?…

 

…いや、違う!…

 

 

…落ちる!?

 

 

 

崖が…崩れた…。

 

 

 

「うわぁ!」

 

「きゃあ!!」

 

 

 

「姫ぇ!」

 

 

 

グレイグが慌てて手を伸ばすが、間に合わない。

オレたちは真っ逆さまに落ちていった。

 

 

 

「離れないで!」

 

 

 

「エリティカさん!?」

 

 

 

「今度は…絶対に離さないから!!」

 

 

 

…今度…は?…

 

 

 

オレはエリティカさんと抱き合う形で落下した。

 

 

 

彼女の柔らかな胸が、押し潰されるようにオレの身体に密着した…そんな微かな感触だけを残して…記憶はそこで途絶えた…。

 

 

 

 

 

 ~to be continued~

 

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