【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI   作:スターダイヤモンド

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温泉地でファイトだよ!

 

 

オレたちは道中で遭遇するモンスターをなぎ倒しながら、世界有数の温泉地であるというホムラの里を目指した。

 

 

 

「ウミュの主力武器はブーメランなんだ?」

 

「はい。もっとも…私が得意なのは弓道…或いは剣道なのですが」

 

「この世界には弓も竹刀も無いからね…まぁ、矢もブーメランも、同じ飛び道具ということかな?」

 

「ふふふ、そうですね…」

 

ウミュは苦笑した。

 

 

 

 

 

「ここがホムラの里ですね…」

 

「なるほど。微かに硫黄の匂いが…」

 

 

 

「ようこそ、ホムラの里へ!!」

 

オレたちがそこに辿り着くと、入り口でひとりの少女が出迎えた。

 

「キミは?」

 

「ホムラの里の看板娘…『ホノカ』です!」

 

「…だとは思いましたが…」

 

「安易…っちゃあ、安易だな…」

 

「うぅ…私にそんなこと言われても…」

 

「あぁ…悪い、悪い…そんなつもりじゃ…」

 

「ふ~んだ!どうせ『ファイトだよ!」って言わせておけば、いいと思ってるんだよね…」

 

 

 

…否定はできませんね…

 

 

 

ウミュの目は、オレにそう言っていた。

 

 

 

「えっと…それはそれとして…。どうです、ここで旅の疲れを癒していきませんか?今はキャンペーン期間中だから、ホムラのお饅頭を買った人には、ホカホカストーンをオマケしちゃうよ!」

 

「それより、ここに温泉があると聴いたんだけど…。ひと風呂浴びたい」

 

「あ~…よくいるんだよね、そういう人」

 

「ん?」

 

「確かに温泉は至るところで沸いてるんだけど、いわゆるお風呂はないんだよねぇ。残念ながら」

 

「そうなのですか?」

 

「その代わり、蒸し風呂はあるよ。つまり…サウナだね。案内しようか?」

 

「はい、お願いします」

 

「ここのところ、物騒でさぁ。観光客が減っちゃって…ドタキャンも多いんだよねぇ」

 

「何かあったのですか」

 

「う~ん…デルカダール王国から『悪魔の子』と『大盗賊』が脱獄した!って噂が出回っててね…みんな、外出を控えてるみたい。2人がどんな人たちかは、よくは知らないけど…。なんだか急に、魔物の数も増えてきてるみたいだし…旅をする時はお兄さんたちも気を付けてね」

 

 

 

その言葉に、オレとウミュは顔を見合わせた。

 

「…ここまで情報は流れてきているのですね…」

 

「あぁ、だけど、まだ面は割れてないようだ」

 

彼女に聞こえないよう、小声でそんな会話をする。

 

 

 

 

すると突然、前方から

「だからガキは入れないって言ってるだろ!!」

という大きな声が聴こえた。

結構なオッサンの声だ。

 

「失礼ね!ガキじゃないって言ってるでしょ!」

 

負けじと女の子の声が響く。

 

「どう見たってガキだろ!」

 

「見た目で判断するんじゃないわよ!」

 

 

 

「なんだ?なんだ?どうした…」

 

見ると、酒場の前で2人がやりあっていた。

ひとりは用心棒風情(ふぜい)の男。

もうひとりは…小柄の少女…いや、少女というより幼女だ。

 

「とにかく、中に入れさせなさいよ。マスターに話を訊きたいだけなの!」

 

「ダメだ、ダメだ!どんな事情があろうとも、ガキは入れさせねぇ!それがオレの仕事なんだよ!」

 

「ふん!わからずや!!」

 

幼女は捨て台詞を放つと、その場を走り去ろうとした。

 

 

 

だが、オレたちの存在に気が付くと、一旦、立ち止り

「アンタは…」

と呟いた。

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「名前は?」

 

 

 

「リサトだけど…」

 

 

 

「やっぱりね…そうだと思ったわ!」

 

 

 

「?」

 

 

 

「ごめん、今は妹を探す方が先決なのよ!またあとで!」

 

 

 

「あ、待って!!」

 

彼女はオレたちの脇をすり抜け、どこかに走り去ってしまった。

 

 

 

…誰だ?…

 

…オレのことを知ってる?…

 

 

 

「お知り合いですか?」

 

「いや…おそらく初対面のハズなんだが…」

 

 

 

「何かあった?他のお客さんの迷惑になるから、大きな声を出さないでよ」

 

「おぉ、ホノカちゃん!いやぁ、まったく参ったよ。あのガキがさぁ、この中に入れろってうるさくて。何度ダメだ!って言っても、聴く耳を持ちやしねぇ」

 

「この中に?」

 

「なんでも一緒に旅してた妹がいなくなったとか、なんとかで…」

 

「えぇ!?妹さんが?それは大変ですね」

 

ウミュは大袈裟に驚いた。

少なくともオレにはそう見えた。

 

「それと、この酒場と…どう関係があるのかな?」

 

ホノカが用心棒に訊く。

 

「知らねぇけど…マスターに訊けば、何かわかるんじゃないか…みたいなことは言ってたな…」

 

「妹さんですか…心配ですね…私たちも探すのに協力してあげましょう」

 

「…って言っても、さっきの娘はどっか行っちゃったからなぁ…その妹の名前も特徴もわからなきゃ、雲を掴むような話だぜ。まぁ、気には留めておくけどさ」

 

「そうですね…」

 

 

 

「あっ、ごめん!ごめん!サウナに向かう途中だったんだよね?この先だよ」

 

彼女が案内してくれた場所は、階段を登った小高い丘に立っていた。

 

「じゃあ、私はここで」

 

「ありがとう」

 

 

 

「あぁ…私の出番はこれで終わりか…」

と看板娘が呟く。

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「おっ!と…言い忘れた」

 

 

 

「?」

 

 

 

「ファイトだよ!!」

 

 

 

「?」

 

 

 

「2人の旅が上手くいきますように…っていうおまじない。じゃあ…」

 

そう言って彼女は、村の入口へと戻っていった。

 

 

 

 

「いらっしゃい!2名様のご利用で?」

 

サウナの受付で、店主と思わしき男が声を掛けてきた。

 

「あぁ」

 

「かしこまりましたぁ!ここのサウナは、身も心も温かくなるのはもちろんのこと、美容効果も抜群で女性にも大人気なんだ。湯治効果も最高で、魔物との戦いで負った傷も、あっという間に治しちまう。そんでもって…」

 

「能書きはいいから、早く入れてくれ…」

 

「これはこれは、失礼しました。ささ、男性はこちらからどうぞ」

 

 

 

…混浴じゃないんだな…

 

 

 

「はい?」

 

 

 

「あ、いや…」

 

「えっと…あとは中で『湯浴み』に着替えてください」

 

「湯浴み?」

 

「えぇ」

 

 

 

…裸にバスタオルじゃないのか…

 

 

 

現代から来たオレの頭の中には、サウナと言われれば、そのイメージしかなかった。

ちょっとしたカルチャーギャップだ。

 

すると

「女性はこちらですか?」

とウミュは店主に訊いた。

 

「はい、そうですが…」

 

「じゃあ、リサトさん…またあとで…」

 

「いやいや、お客さん!冗談を言ってもらっちゃ困る。いくらアナタが美形だからって、そっちに入れるわけにはいかないよ」

 

「何を言っているのですか!私は…ハッ!!…」

 

そうなんだ。

デルカダール王国を出てから、生死を分ける戦いを繰り返しながら旅をしてきたので、すっかりオレの頭の中からも抜け落ちていたが…彼は『男装の麗人』だった…のだ。

 

しかし一般人には、イケメンの旅人にしか見えない。

 

ウミュも今、それを自覚したらしい。

 

「そうそう!『今のウミュ』はこっちじゃなきゃ、マズイでしょ」

 

「…ですか…その…」

 

「大丈夫だって。幸い、スッポンポンになるわけじゃないみたいだし…」

 

 

 

…幸い…なのかな?…

 

 

 

オレは自問自答する。

 

 

 

「…えぇ…まぁ…それはそうですが…」

 

「オレとウミュの仲だろ?今更、恥ずかしがってる場合じゃないじゃん」

と言ってはみたものの、このセリフはさすがにマズイ。

 

 

 

…知らない人が見れば…BL…倒錯した世界だよな…

 

 

 

現に主人は不思議そうな顔をして、こっちを見ている。

 

「いいから、行くよ!」

 

オレは強引にウミュの手を引っ張って、更衣室の中に入った。

 

 

 

「凄い蒸気だなぁ。真っ白で前が見えない」

 

「はい」

 

 

 

「!?」

 

「!?」

 

その異変に気が付いたのは、2人同時だった。

 

 

 

「リサトさん!」

 

「ウミュ!」

 

 

 

シク…シク…シク…

 

 

 

聴こえてきたのは子供の泣き声…。

 

 

 

「!!」

 

「!!」

 

脱衣所にいたのは、さっきの幼女と同い歳くらいの子供だった。

 

 

 

「おねえちゃん、こんなところで、どうしたんだい?」

 

「うっぐ…うっぐ…」

 

「ひょっとして迷子になっちゃったのかな?」

 

オレはあんまり子供に話し掛けるのが得意じゃない。

怖がらせないように、必死に作り笑いをしながら訊いた。

すると彼女は二度、三度と泣きながら頷いた。

 

「この娘に間違いないな」

 

「はい」

 

「よし!じゃあ、さっそくあの娘を探しに行こう」

 

「はい」

 

オレたちは、結局、ここへきた目的を遂行することなく、彼女を抱き抱えて外に出た。

 

 

 

 

 

どれくらい経ったろうか…。

 

 

 

 

 

「あっ!いた、いた!」

 

「あら、アンタたち…」

 

「見つけたぜ!キミの妹を」

と言って、オレは彼女にサウナで見つけた幼女を差し出した。

 

だが、返ってきた答えは、実に意外なものだった。

 

 

 

「誰、この娘?…」

 

 

 

 

 

~ to be continued ~

 







※ホノカ…ドラクエには出てきません。


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