【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI 作:スターダイヤモンド
「ぐっ!…」
「リサト!?」
一時避難した小屋の外から複数の足音が聴こえ、その見えない何者かに対応しよう…と身構えた瞬間のことだった。
雷に打たれたような激しい痛みが、オレの首筋から四肢の末端へと走った。
呼吸が止まるかというほどの衝撃に、肩膝を付いて蹲(うずくま)ってしまう。
「はぁ…はぁ…川に落ちたときの…後遺症かな…」
オレは向こうの世界で、頚椎損傷という大怪我をしている。
手術のあと、懸命なリハビリとトレーニングで、サッカー選手として復帰するまでに回復したが…時折、小さな痛みが走ることがある。
それは「ピリッ」と電気マッサージで刺激される程度のもの。
一瞬「うぉっ!」…とは思うが、そこまで酷いものでない。
担当医からは「これは一生付いて回るものです」と言われている。
故にオレもそれなりに覚悟してるし、このサプライズプレゼントにも、だいぶ馴れてはきた。
しかし、今のこれは…。
「大丈夫!?」
「…って言いたいですけどね…ちょっと…ヤバいかも…」
「ごめんなさい!私…呪文は覚えてなくて…『やくそう』でなんとかなるかしら」
「気休めにはなるかも…です。それより…とりあえず…オレを立たせてくれないですかね?」
「えっ!たたせる?…こんな状況で何を考えてるのよ!」
「ん?…えっと…そっちの『勃たせる』じゃないですよ!」
ウミュなら真っ先に「破廉恥です!!」と張り手のひとつやふたつ飛ばしていたところだろう。
「オレの身体を起こしてください…っていう意味なんですけど…痛みが治まるまで『戦うポーズ』を見せておきたい。威嚇ってヤツです」
「ハラショー…」
彼女は真っ赤になった顔を手で覆った。
「そっちの方は、あとでお願いします!でも、まずこのピンチを脱出するのが先です」
「わ、わかったわ!」
きっと恥ずかしさのあまり冷静さを失っているに違いない。
オレの『依頼』をふたつ返事でOKしてくれた。
もっとも、この状況をなんとかしなきゃ、まったく意味のない約束なのだが。
「来ますよ!」
「うん!」
小屋のドアがバタン!と激しく音を立て、勢いよく開いた。
「姫!」
「リサトさん!」
足音の主は、グレイグの出現によって離れ離れになったウミュたちだった。
「なんだ…アンタらか…」
オレとエリティカさんは、安堵の表情で顔を見合わせた。
「どうしてここがわかった?」
「愚問じゃな。ユグノアはワシの庭じゃ。ここに小屋があることくらい知っておる。まず、身を隠す場所…と思えば、真っ先にここを探すわい」
「なるほど…」
「無事で何よりです」
とウミュ。
「とりあえず…は…ね…」
だが、オレは緊張感から解き放たれたこともあってか、前のめりに突っ伏してしまった。
やせ我慢の…限界…だった。
「リサトさん!」
「リサト!」
「ロウ!…リサトはおそらく川に落ちたときの衝撃で、首を…」
「!!…リサトさんは頚椎に爆弾を抱えております!!」
「ふむ、では早速回復呪文を…」
「…できれば…じいさんじゃなくて…セーニャさんにお願いしたいんだけど…」
「は、はい!?も、もちろんですよ!」
「この状況で、そんなことが言えるとは…アンタもたいしたものね」
とベロニコさんがオレを皮肉った。
「ワシがやっても、効果は同じなんじゃがな…」
「…いや…絶対、セーニャさんにしてもらった方が…早く治るから…」
「バカじゃない…」
今度はベロニコさんに、バッサリ切られた。
「ふん…ガキが色気付きおって」
「隔世遺伝ね」
「姫、今なんと?」
「ちゃんとアナタの血を引いてる…ってこと」
「ゴホッ、ゴホッ…」
エリティカさんの言葉を聴いて、じいさんは咽(むせ)込んだ。
…思い当たる節があるってことか…
…ん?…
…ってことは…
「じいさん、ひょっとして…色ボケ老人か?」
外見は似ても似つかないが、オレにはじいさんが急に『ドラゴンボールの亀仙人』に見えてきた。
「な、なにを言う!」
慌てたように、持っていたスティックを左右に振って否定した。
だが…
ぽとり。
「…『ビビアンジュ写真集~ショッキング パンティー~』…」
床に落ちた本の題名だ。
服の中に隠しておいたらしい。
「…」
「は、破廉恥です!!」
「サイテーだわ」
ウミュとベロニコさんが、じいさんから二歩三歩と後ずさりをする。
「あら、ロウちゃん!まだまだお盛んなのね」
逆にシルビアはニヤニヤと笑っている。
「おいおい、じいさん…」
…なんだ、その本…
…あとで見せろ!…
「ふっふっふっ…英雄、色を好む…じゃよ…」
開き直ったようなその言葉に、さすがのオレも引いた…。
…いや、オレも普段、似たようなことをしてるのか…
『少しだけ』自戒の念が走る。
「…ってことは、このオレの性格は…じいさん譲りってことか…」
「ほう…ということは…リサトもそうなんじゃな。それこそがワシの孫だという証。これで変な疑いも晴れたじゃろうて」
「喜ぶな!ありがた迷惑だ」
「そう言うな。男として生まれた以上、それを求めるのは当然のことじゃ」
「…だとさ…」
とオレはウミュの顔を見た。
「し、知りません!好きにしてください!」
と彼女はプイッとそっぽを向いた。
「あの日依頼…ワシはこの世に何が起こったのかを追及し続けた。姫にはこの16年、ツライ思いをさせたが…その甲斐あって、ようやくその真相に辿りついたわい」
ひとしきり場が落ち着いてから、じいさんは『本題』を話し始めた。
「真相?」
「その元凶は…はるか昔より暗躍し続ける邪悪の化身じゃ…。おそらくは今のデルカダールも、その魔物が牛耳っておるのじゃろう」
「デルカダールを牛耳っている?」
「それはつまり…エリティカさんのお父様も、その者に支配されているということなのでしょうか?」
「恐らくは…。少なくとも正常な判断はできていまい…」
「それなら、リサトちゃんを『悪魔の子』だと呼んで、追い掛け回すのも納得できるわね」
「うむ…」
「父親が魔物の手先…って…キツイわね…」
ベロニカさんはボソリと呟いた。
たぶん、その言葉はエリティカさんにも聴こえたハズだが、しかし、彼女の表情は変わらなかった。
「その邪悪の化身って?」
オレは変な間ができるのを嫌い、じいさんに訊く。
「ウルノーガじゃよ」
「!!」
「そいつは確か…前に退治したガマガエルの化け物が、口にしてた名前だよな?」
「うん。もしかしたら復活したのかも…って思ってたけど…」
「まさか、本当にその通りだったとはね!」
セーニャさんもベロニコさんも予想はしていたのだろうが、それが的中して驚いている様子だ。
「リサトさんが倒すべき相手…ですか…」
「はぁ…今更ながらだけど…荷が重い…」
オレはウミュの言葉に、思わず首を振った。
「ふふふ…その為にアタシたちがいるんじゃない?」
「シルビア…」
「そう、そう!何の為にアタシがいると思ってるのよ!」
「ちゅん、ちゅん!」
「ベロニコさん、セーニャさん…」
「私を忘れないでください」
「ウミュ…」
「ワシもじゃ」
「じいさん?…」
「もちろん、私もよ」
「エリティカさん!」
彼女が差し出した右手を、オレは強く握り返した。
「…ということで、このあとはワシらも同行させてもらうので…ウミュ殿、ベロニコ殿、セーニャ殿…そしてシルビア殿…よろしく頼むわい」
「じいさん、スケベ心を起こすんじゃねぇぞ!オレだって『まだ』何にもできてないんだからな」
ヤツの耳元でそっと囁く。
「まぁ、そう言うな。これでも結構、役に立つと思うぞ…特にそっちの方はな」
ヤツもオレの耳元で囁いた。
…あほか!…
…でも…
…期待してるぜ…
ウミュはオレたちを不思議そうな顔をして見ていた…。
「そうじゃ、そうじゃ…そういえば、これを渡すのを忘れていたわい」
「あっ!」
「虹の枝…とイエローオーブですね!?」
「何で持ち去ったりしたんだよ」
「それは、お主らをあそこへ呼び寄せる為じゃ」
「わざわざ、こんなことをしなくても」
「いや、言葉で説明したところで、ワシらの話をすぐには信じんじゃろう…と思ってな。百聞は一見にしかず…じゃ」
「まぁ、確かに…いきなり『孫だ』と言われてもな…今でも半信半疑だし」
「それより、どうも、これは、かなり大事な物のようじゃのう」
「そりゃあ、まぁ…それが欲しくてあの大会に出たんだからな…ん?…『大事な物のようじゃのう』…って、なんだよ、じいさん!これがなんだかわかってないのかよ」
「はて…売れば相当な額になると踏んでるんじゃが…」
「あぶねぇ!あぶねぇ!世界を救うアイテムを、身内に売り捌かれるところだったぜ!」
「なんと!世界を救うアイテム?」
「そうなのよ!詳しくはまだよくわかってないんだけど、このオーブを6つ集めることが、世界を救う道へと繋がるらしいのよねぇ。そしてその虹の枝が、オーブを探すレーダーの役目をするんだって」
ベロニコさんが説明した。
「ドラゴンボールみたいなもんじゃな」
…あぁ、それを言っちゃうか…
「では、ロウさん、それをくださいな」
「うむ…」
セーニャさんの手に、じいさんからそれが渡された。
「よし!虹の枝とイエローオーブ、ゲットだぜぇ!!」
「ふふふ、リサトちゃん、それは違うゲームじゃない?」
「あっ、そうか!」
「これでウミュがデルカダールから盗み出してきたレッドオーブと合わせて…ようやく2個ね…」
「ニコちゃんだけに?」
セーニャさんの一言に、冷たい視線がベロニコさんに注がれた。
「ぬわんでよ!!…なに、そのアタシが滑ったみたいな顔は!そんなつもりで言ったんじゃないんだから!完全にもらい事故よ、もらい事故!」
ベロニコさんが、妹を睨んだ。
セーニャさんはムフッって顔で微笑んでる。
「はぁ…」
ウミュがついた、ため息に
「…って、だ~か~ら~!!アタシが悪いみたいになってるの、おかしくない?」
とベロニコさんが噛み付く。
その様子がおかしくて、オレたちは爆笑した。
「はい、リサトさん」
「あぁ…」
なんの気なしに、セーニャさんから虹の枝を受け取った…その時だ。
オレの左手のアザが光を放った。
…と同時に、目の前に映像が現れた。
神殿…
祭壇…
赤、黄、青、緑、紫、銀…6色のオーブ…
そして台座…
オーブが台座に置かれると、そこから虹のような橋が生まれた。
その行き着く先は…
天空の城…
いや、天空の『島』と呼べばいいのだろうか…。
そこには巨大な樹が生えている。
神々しくて、禍々しくて…優雅でもあり、威圧するようでもある…。
ここまでが写し出されると、その光景はフッと消えた。
「なに?今の…」
「ニコちゃんにも見えた?」
「当たり前じゃない!」
「プロジェクションマッピング?」
「リサトさん、この世界にそのようなものは…」
「それなら、なおのことスゲェな…」
…まぁ、剣だ!魔法だ!って世界にいるんだから、これくらいで驚いてちゃ始まらないんだが…
「今のが、生命の樹への行き方なのでしょうか?」
「じゃあ、あの最後に観たのが?」
「たぶん、そうよ!」
「これで謎だったオーブの使い方がわかったねぇ。あの台座に置けばいいんだぁ」
「でも、セーニャさん…オーブを全部集めても、あの台座がどこにあるのか…」
「始祖の森じゃな…」
「じいさん?」
「古い言い伝えじゃが…天空への架け橋は始祖の森から…そんな話を聴いたことがある」
「なるほど…。何はともあれ、まずは残り4つを探せ!って話だな」
「そうね!」
「うむ…」
「…って言っても、ノーヒントで探し歩くのも、酷じゃね?」
「ニコちゃん…ひょっとして…『海に沈む青い玉』のことじゃないかなぁ?」
「アタシも今、それを思ったところよ」
さすが『双子』。
以心伝心ってヤツか。
…で、それは何?…
「…『海底王国にある秘宝』だったかな?…セーニャもうろ覚えなんだけど…」
「確か、そんなんだったわ」
「海底王国にある秘宝ねぇ…次に目指すは海の中か…」
「はい!?呼びましたか?」
とウミュ。
「ん?」
「海未は私ですが…」
「…」
はいはい。
お約束のボケ…。
~to be continued~
この作品の内容について
-
面白かった
-
ふつう
-
つまらない
-
ドラクエ知らない
-
続編作れ