【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI 作:スターダイヤモンド
「そうでやんすなぁ…『ナギムナー村』の人々なら、詳しいじゃないんすかねぇ」
船に戻ったオレたちに、その主(あるじ)…アリス…がアドバイスをくれた。
「ナギナター村ですか?」
「ナギムナー村でやんす」
ウミュのマジボケに表情ひとつ変えずにツッコむ船長。
もっとも、マスクをしているので、その中の顔は窺い知れないのだが…。
「どうして、その人たちが?」
「彼らは漁師なんでやんす。世界中の海を知り尽くしているんで、その海底王国についても、きっと情報を持ってるでやんす」
「へぇ…」
「確かに…これまでのことを考えれば『故事』とか『伝承』も侮れないですから…。何か手掛かりが掴めるかも知れないですね」
「だとすると、一旦、ソルティコの街に寄る…ってことになるのね…」
とシルビア。
「そうなるでやんす」
「…」
ヤツの表情が曇った。
「ソルティコの街?…えっと…前に行った、カジノのあるリゾート地だよな?」
「そうね…」
「なんだよ、あんまり嬉しく無さそうじゃん…オレはわりと好きだぜ。メシも上手かったし」
「あら、そう…」
「?」
いつも気持ちが悪いくらい陽気なシルビアだが、何か様子がおかしい。
…そう言えば、この間も船から降りなかったんだっけ…
明らかに行くことを嫌っている…そんな雰囲気を醸していた。
「どうしても、そこに行かなきゃいけないのでしょうか…」
ソルティコの街に拒否反応を示す者が、もうひとり。
この間、カジノで大負けしたウミュだ。
…あぁ、そうか…
ひょっとしたら、シルビアも博打で、何かトラウマになるようなことをやらかしたのかも知れない。
それなら、あの表情も納得できる。
「ウミュ殿、ナギムナー村に行くには、そこを通らざるをえんのじゃよ」
とじいさん。
「どういうことですか?」
「我々が今いる大陸からは『外海(そとうみ)』には出られないんでやんす」
「空を飛ぶなら、話は別じゃがの」
「そとうみ?」
…そのだうみ…なら知ってるが…
…って、これじゃあ、海未ちゃんのネタと変わらないレベルだな…
「分かりやすく説明してくれないか?」
つまらないことを口に出さなくてよかった…と思いつつ、周りに悟られないようじいさんに尋ねた。
「うむ…まぁ、よかろう…。え~…ワシらが今いるところを、ここだとしよう」
とじいさんは、地面大きな円を描き、その中心に×を印した。
「あぁ…」
「簡単に言うと、この丸の外側が外海じゃ」
「はぁ…」
「そして…向かう先は…ここじゃ」
今度は×印からほぼ真下…円から少し外れたところ…に小さく丸を書いた。
「そのまま南下すりゃあ、いいんじゃね?」
「ところがじゃ…この円の縁(ふち)の部分は…高い山、あるいはごつごつとした岩に囲まれており、内海(うちうみ)から出れんようになっておるのじゃ」
「えっ?」
「当然、外から中へも入れんし…この岩が邪魔して、船を接岸させることすらできん」
「そうでやんす」
「じゃあ、どうやって外に出るんだよ?」
「運河じゃ」
「運河?」
「船で外海に出る唯一の方法は…ここから西にある…ソルティコの街…から始まる運河…を抜けなくてはならない…」
じいさんは地面に線を引きながら、オレたちに説明した。
「そのソルティコに…運河の水門があるでやんす」
「水門を通るには、街に『通行料』の支払いが必要でな…」
…そういうことか…
「なるほど。あれだけ街が潤ってるのは、単にカジノの収入だけじゃないってことか」
オレたちが進むルート。
それを『向こうので世界』で例えて言うなら…日本から真っ直ぐ西に向かって移動して…アフリカ大陸の最西端に辿り着いたら、今度は南下し喜望峰を周り…大西洋を抜けてオーストラリア大陸でゴール…みたいなコースだ。
「結構な移動距離だな…誰かルーラとか使えないんですか?」
「…」
オレはみんなの顔を見たが、こぞって首を横に振った。
「使えたとしても、行ったことがないところには飛べないわよ。アンタ、それくらいは知ってるでしょ?」
…はい…
…ベロニコさんの仰る通りです…
「それに、海底王国を探すんだから、船で移動した方が、なにかと都合がいいんじゃないなぁ…途中で見つけることだってあるかもしれないよね?」
…はい…
…セーニャさんの仰る通りです…
「…ですね…。まぁ、じゃあ、のんびりと船旅を楽しみますか…」
「では、アリス殿…長い航海になるが、宜しく頼むぞよ」
「ガッテンでやんす!」
船長はどん!と胸を叩いた。
「あぁ!ちょっと待った!」
素っ頓狂な声を出したのは…何を隠そう、このオレだ。
「まだ、出発は待ってくれないか?」
「?」
「ちょっと、やり忘れてきたことがあるんだ…。悪いが、1日待っててくれないか…」
「やり忘れてきたこと…ですか?」
「どこに行くのじゃ?」
「へへへ…ス・カ・ウ・ト・だ!」
「スカウト?…」
「私たちも行きますよ」
「あ、いいから、いいから…大勢で行っても仕方ないし…」
「?」
「じゃあ、またあとで!」
「お、おい!」
「リサトさん!?」
オレは船を降りると、急ぎ足で『あるところ』へと向かった。
やって来たのはグロッタの街だ。
「おや、チャンピオンじゃないですか!何かお召し上がりになりますか?お安く致しますよ」
武闘会ではマスクを着けていたが、その正体はバレバレだ。
会う人、会う人、オレを見つけては声を掛けてくる。
一応チャンピオンになったことを認めてくれてるようだ。
「あぁ、今日はちょっと…また今度寄らしてもらうよ」
とオレは軽く手を挙げ、酒場へと急いだ。
「あら、チャンピオンじゃない!」
「どうも!」
またも向こうから声を掛けられた。
もっとも、今回は、オレがその人たちに会いに来たのだが…。
その相手とは…例のセクシーコンビ。
予想通り、彼女たちはここにいた。
平日にも関わらず、昼からワインのようなものを飲んでいる。
…いや、こっちの世界に土日とかは関係ないか…
「どうか…した?」
とビビアンジュさん。
相変わらず、アンニュイな雰囲気。
対戦した時とは別の武闘着だが、巨乳をアピールするかのようなシャツと、短いスカートがエロい。
「この間の夜は、せっかくのお誘い頂いたのにすっぽかしちゃって…で…そのお詫びに…」
「…いつまで経っても来ないから…結局、朝まで呑んでしまった」
とサイエリナさん。
ビビアンジュさんと比べれば、スラッと背が高く、モデル体型である為『セクシーさ』という面では少し劣るが…単体で見るなら、充分綺麗だ。
何より、そのスタイルと長い髪が、イシの村に残してきた元カノ…アヤノ…になんとなく似ている。
時折、脳裏で彼女の姿がダブって映る。
「本当、すみません」
とオレは2人に謝罪した。
「気にしてないわ。それに…」
「あぁ…ハンフリーから『蜘蛛の化け物と闘ってくれた』と聴いたぞ」
「この街を救う為、戦ってくれてたんでしょ?もしかしたら、私たちが餌食になってたかも知れないと思うと…」
「ゾッとするな」
「まぁ…そういうことです…」
「なら、文句を言える立場にない」
「あなたは武闘会のチャンピオン…っていうだけじゃなくて…街を救った英雄として、近いうちに銅像でも建てられるんじゃないかしら」
ビビアンジュさんが、脚を組み直す。
短いスカートの裾の…その奥…に、つい視線が移ってしまう。
「そんなになったら、こそばゆいですね…」
オレは頭を掻いた。
照れ隠しの意味もあるが、そうすることで、視線を外すきっかけにした。
「呑むか?」
「いえ…遠慮してきます。すぐにここを発たなきゃならないんで…」
「そうか…」
サイエリナさんは、少し残念そうな顔をした。
「しかし…昼間っから、いい身分ですねぇ」
嫌味…というよりは、羨ましい…という気持ち。
「まぁな…」
「…そう毎日毎日、腕試しをする相手がいるわけじゃないし…」
「退屈…じゃないですか?」
「えっ!?」
「もうちょっと、刺激が欲しくないですか?」
「刺激?」
「単刀直入に言います。一緒に旅をしてくれませんか?」
「旅?」
「はい。世界を救う旅です!」
「私たちが?」
2人はお互いの顔を見合わせた。
「今、この世は、強大な力を持つ魔物の復活によって、邪悪な力に支配されようとしています。それを阻止する為…いや、その闇を討ち払う為、オレたちは旅をしています。さっき話のあった蜘蛛の化け物も、その流れで起こった事件なんです」
「確かに…街の外はかなり物騒になっているとは聴いているけど…」
「はい、その通りです」
「私たちの手を借りなければならないほど、状況は厳しいのか?」
「わかりません。まだ、オレたちは、その親玉まで辿り着いていないんで…。でも、楽観視できるような戦力ではないと思います」
「…」
「なので、オレ的には2人が仲間に加わってくれれば、すごく有り難いなぁ…と思って、お願いに上がった次第です」
「突然そう言われてもなぁ…」
「そうねぇ…」
「少なくとも、ここに現れる『腕自慢の猛者』よりは、強いモンスターたちと対峙できると思いますよ」
「なるほど…口説き文句としてはいいところを突いてくる」
サイエリナさんはそう言って笑った。
「でも…私…観客がいないと興奮しないのよねぇ」
「えっ!?」
「誰かが見ててくれないと、燃えないの…超満員のあの視線が、私をエクスタシーへと導くの…」
…ビビアンジュさん…
…そのセリフ、かなりエロイんですけど…
でも、言っていることに対しては激しく同意だ。
そりゃあ、そうだ。
サッカーだって『無観客試合』ほど、つまらないことはない。
「その気持ちはわかります。ガラガラのスタンドよりは、超満員の中でプレーしたいですから」
「そう、完全にフルハウスね!」
「?」
「気にするな。ビビアンジュの口癖だ」
「はぁ…」
…満席っていう意味か?…
「あっ!そういえば、ビビアンジュさん、写真集、出してるんですね?」
「あぁ、あれ?…そんな大袈裟なものじゃないけど…」
「サイエリナさんは?」
「私は、そういうの、あまり好きではない」
「へぇ…そうなんですか…。でも戦闘中『投げキッス』とかするじゃないですか」
「それとこれとは、話が別だ。そこは四六時中、淫靡でふしだらなビビアンジュと、私との大きな違いだ」
「淫靡でふしだらって…」
ビビアンジュさんはクスッと笑ったが否定はしない。
「純粋に上を目指したいという気持ちは、お互い同じだがな」
…サイエリナさんって、なんとなく、性格は海未ちゃん似だな…
…意外と真面目というか…
ふと、そんなことを思った。
「なるほど…。でも、この世の中が邪悪な力に支配されちまったら、腕試しがどうの、観客がどうのなんて言ってられなくなるんです。だから…」
「理屈はわかった…だが…逆に、私たちで力になれるのか?」
「も、もちろんです!仲間はひとりでも多いほうがいいですから。だから『Private Wars(個人的な戦争)』だなんて言ってる場合じゃないですよ」
「うふっ…上手いこと言うわね…」
『Private Wars』は彼女たちの代表曲だ。
「オレにとっては、ふたりが傍にいてくれるだけで、充分なモチベーションになりますし…」
「モチベーション?」
「やっぱ、どうせ戦うなら、いいところを見せて、モテたいじゃないですか」
…っていうか、そっちの方が大事だったりする…
「正直な人ね」
ビビアンジュさんは、優しく微笑んでくれた。
「どうする?」
「どうしようかしら…」
「ハンフリーには声を掛けたのか?」
「いえ…まだ…いや、そのつもりはありません。誘いたいのはやまやまですけどね」
「?」
「彼には孤児院を守る!っていう使命がありますから。それに…今、この街を出て行ったら、住民から非難轟々でしょ?逃げたみたいに思われちゃうだろうし」
「それはそうだな…」
「どうですかね?」
「その答えを出すの…半日、待ってくれないかしら」
「半日ですか?」
「キープしてあるボトルを開けちゃいたいから…」
「あははは…いつまで呑むつもりなんですか…」
「ごめんねぇ…」
「わかりました。あんまり無理強いもできないんので…ここは一旦、帰ります。夜まで『ネルセンの宿』にいますから、その気になったら来てください」
「わかったわ」
「待ってます!」
オレは一礼をすると、その酒場を去った。
手応えはなかったが「きっと来てくれる!」という変な自信だけはあった。
~to be continued~
この作品の内容について
-
面白かった
-
ふつう
-
つまらない
-
ドラクエ知らない
-
続編作れ