【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI 作:スターダイヤモンド
結構な日数を要して、ようやくオレたちは運河を抜けた。
時間は掛かったが、ここまで特に危険な目に遭うこともなく来れたのは、オレの日頃の行いがいいからだろう。
しかし…『この先、外海。凶悪モンスターに注意!』…岸辺にそんな看板が見える。
「さぁ、ここからは安穏としてはいられないわよ!いつ、ヤツらが船に飛び込んできても構わないように、心の準備を怠らないでね!」
ソルティコの街を出たときは、不自然なほど明るく振舞っていたように見えたシルビアだが、みんなに声を変えたその言葉は、いつもの感じに戻っていた。
するとヤツがそんなことを言った途端、船を取り巻く環境が一変する。
「急に靄(もや)ってきたな…」
「えぇ…視界が相当悪くなってきたわ」
シルビアが眉を顰めた。
「アリスちゃん、大丈夫?」
「それが…姉さん…」
「どうしたの?」
「計器類が狂い始めているでやんす」
「えっ?」
「まさかと思うが…この辺りが『神隠しの海域』かのう…」
成り行きを見守っていたじいさんが、ポツリと言う。
「『神隠しの海域』?」
オレは思わず鸚鵡返しで訊いた。
「うむ…あくまでも噂じゃがな…『船はそのままに、乗り海員だけいなくなっている』…なんてことが、よくあるらしい」
「ちょ、ちょっと!ロウ…本当なの、それ?」
「あら、アンタ恐いの?」
「…暗闇とお化けは昔から苦手なのよ…」
ベロニコさんの…少し意地悪な問い掛け…にエリティカさんは素直に答えた。
「へぇ、意外だな…」
とサイエリナさん。
まぁ、普段、魔物やモンスターと対峙していれば、お化けのひとつやふたつは、どうとでもなそうなもんだが。
「誰でも、苦手なものくらい、ひとつやふたつあるでしょ?」
彼女は軽く拗ねるようにして、顔を赤らめた。
そんなエリティカさんの『ギャップ萌え』を堪能している間に、靄はどんどん濃くなっていき、ついには目の前は真っ白がなってしまった。
「何も見えない…」
「うむ…」
その瞬間だ。
ゴゴゴゴゴ…ゴゴ…
大きな振動。
そして船底を擦ったであろうという音。
「…座礁したでやんす…」
「マジか!…」
「この視界じゃ、無理もないわね…」
シルビアは船長アリスの肩をポンと叩いた。
「さて、どうしたもんか…」
「結構、ガッツリ乗り上げてる感じ?」
「はぁ…ウンともスンとも言わないでやんす」
アリスが下船して、状況を確認しているが、あまり嬉しくない報告をしてきた。
みんなが途方に暮れ始めた…そんな時…急に目の前がクリアになってきた。
靄が晴れてきたのだ。
「ここは…?」
「入り江…でしょうか?」
「うむ…」
「とっても綺麗なお砂だね」
セーニャさんは無邪気に笑う。
「えぇ、水も澄んでいて…絵本で見た楽園みたいだわ」
エリティカさんも、表情を崩した。
「うん、気温も暑過ぎなくて丁度いい感じだし。こういうとこにいたら、すぐに眠くなっちゃうねぇ」
「でもセーニャ、あんまり呑気なことは言ってられないかも」
「ニコちゃん?」
「周りをよく見てみなさい。ここだけ時間が止まってるようだわ」
「えっ?」
確かに、ベロニコさんの言う通りだ。
入り江の雰囲気の素晴らしさとは別に…何十年…いや、何百年と放置されているであろう船が散見される。
「なんだ…これ…」
朽ち果てた船が、この白い砂浜に違和感を醸している。
「神隠しの海域か…まんざら噂でもなさそうだぜ」
「とりあえず、周囲を探索してみましょう」
「あぁ…って言っても、全員で行くのは危険だ。みんなは船で待機しててくれ」
「わかったわ」
「じゃあ、ウミュ!一緒に来てくれ」
「はい!」
「気を付けてくださいね」
「ワシは…船内で休んどる…」
じいさんも一般人に比べれば、肉体年齢は若いが、やっぱりそれなりの歳だ。
休むべきところは、休んでもらった方がいい。
「あぁ、任せておけ!」
と、オレは返事をした。
そうしてウミュと2人で船から降りた…その途端のことだった…。
ザバァ!!
海から何かが顔を出した。
「!?」
「なんや…『キナイ』やないやん…」
突然現れた『その人』は、オレたちを見るなり、そう言った。
「あ、あなたは…」
「希!」
「希ちゃん!」
船上に残ったメンバーが、次々に彼女を見て声をあげた。
「ん?ウチのこと知ってるん?」
「知ってるも何も…希さんでしょ?」
「おや!誰かと思えば、リサトさんやない…それに、えりちに海未ちゃん、ことりちゃん…」
「ひとり忘れてるわよ!」
「…にこっち…」
「…ってオマケみたいに…まぁ、いいわ。それより、今はそれぞれ事情があって、エリティカとウミュ、それとセーニャと…ベロニコってことになってるんだけどね」
「なるほど…」
「は~い!」
「久しぶりだな」
「わぁ、A-RISEの…」
「ビビアンジュと…」
「サイエリナだ」
「ほんま、ご無沙汰やね」
彼女たちを見てニッコリと微笑む、その女性は…μ'sの東條希さん…だった。
オレと海未ちゃんが交際を始める…その切っ掛けを作った人。
キューピッドと言ってもいい。
そういえば、出発前にセーニャさんが「希ちゃん、まだ出てきてないね…」なんて言ってたが…噂をすればなんとやら…ってヤツだ。
「…ほんなら、ウチも自己紹介せんといかんね」
「?」
「ウチの名は『ノゾミア』や」
「ノゾミア?」
「そうなんよ!…そして何を隠そう…よいしょ!」
そう言うと彼女は、バシャッと音を立てて海面からに跳ね上がり、陸上に現れた。
同時に、面積の少ないビキニで隠された彼女の豊か過ぎる胸が、ブルンと揺れた。
その姿に一同がどよめく。
息を飲むようなグラマラスボディ!!
そのボリュームは、エリティカさんも、ビビアンジュさんもさすがに叶わない。
当然のことながら、オレの視線は、その胸元に釘付けになった。
しかし、すぐに…エロい!…というより…神々しいという感覚に襲われる。
その理由は彼女の下半身にあった。
「ニヒッ…驚いたやろ?ウチ、人魚なんよ!!」
そう、彼女の腰から下は…大きな尾びれのついた、ピンク色の魚だったのだ。
「そうきたか!」
と呟いたのはベロニコさん。
事前に予想した、占い師でもパフパフ娘でもなかった…ということに対するセリフか。
…パフパフ娘じゃなかったのは、ちょっと残念だったかも…
オレの期待も、虚しく散った。
いや、これはこれで、凄く嬉んだが…。
「人魚姫かぁ…すごく似合ってるよ!」
「ことりちゃん、ありがとさん」
「うふっ、今はセーニャって呼んでほしいな。ちゅんちゅん!」
「そやね」
「ですが…なんて格好をしてるんですか!は、破廉恥過ぎます」
ウミュはいつものように言葉を発したが
「人魚はこれが『正装』やから、仕方ないやん。この格好で『スノハレ』の衣装着てたらおかしいやろ」
と希さん…いや、ノゾミアさんは、ちょっと訳のわからない説明で、彼女の口癖を一蹴した。
「リサト…ワシはお主と旅ができて本当によかったぞい」
センサーでも付いているのか?
彼女見たさに、じいさんが甲板へとやって来た。
「出たなじじい!船内で休んでるんじゃなかったのかよ!」
「まぁ、よいではないか…」
「リサトさん、この方は誰?」
「オレの…じいさんです」
「おじいさん?」
「不本意ながら…」
「そうなんや…。そやかて、おじいさん、そんなジロジロ見んといてな。ウチもさすがに恥ずかしいやん」
「い、いや…このような芸術的なボディを、見るなって言うほうが無理じゃわい。いや、むしろ、そのバストから目を離した方が失礼に当たるというものじゃ」
「なるほど…やね…リサトさんのおじいさんやわ」
「納得しないでください!」
「ウチ、リサトさんと初めて中華街で会った時も、同じようなこと言われたんやけど…」
「良く覚えてますね…」
「言ったのかい!」
「そうなんですよ、ベロニコさん。あの時、私はリサトさんに殺意を覚えました」
「ウミュ…お前も良く覚えてるな…」
「えぇ、まぁ…」
ヤツの冷たい視線…それだけでオレは殺されそうなんだけど…。
「ところで…その船には『キナイ』は乗ってへんの?」
「『キナイ』?キナイなんて『いない』わよ」
「にこっち…こっちの世界でも相変わらずやね…」
「ち、違うわよ、別にそんなつもりで言ったんじゃないから!」
「ふ~ん…」
「ちっ!」
ベロニコさんは軽く舌打ちしたのを見て、ノゾミアさんはにんまりと微笑んだ。
「ウチ…キナイって人をずっと待ってるんやけど、みんな知らへん?」
「誰ですか?それは」
「ナギムナー村の漁師なんよ…」
「あぁ、そこ、これから行こうと思ってるところだ」
「そうなん?それなら、彼の様子を見てきてほしんやけど…」
「それで何者なんです?そのキナイって人は」
「ウチのフィアンセや」
「フィアンセぇ!?」
「そんなに驚かんでも…」
「驚くわよ、急にそんなこと言い出せば…」
…急に…か…
エリティカさんがそう言うのも無理はない。
向こうの世界じゃμ'sで結婚してるのは、オレのヨメ…つまり海未ちゃんと…ことりちゃん、それに凛ちゃんの3人だけなんだからな。
「…で、そのフィアンセがどうかしたの?」
「そうなんよ、エリティ。ウチ、こんな身体やから、陸上での生活ができひんやん」
「えぇ、まぁ」
「そうしたら彼が『それやったら、オレが結婚して、こっちで暮らしてやるさかい』って言ってくれたんよ」
「ハラショー!」
「何故、関西弁なのですか」
とウミュ。
しかし、それを無視してノゾミアさんは
「そやけど…待てど暮らせど、全然来てくれへんの…。もう何年も待ってるんやけど…ウチ、嫌われたんかな…って」
と言葉を続けた。
「なるほどね。それでアタシたちに、その男の様子を見てこい…ってことなのね」
「さすがベロニコッチ!話が早い」
…ベロニコッチ…
…希さん、こっちの世界でも、キャラがブレぶれてない…
「ふん!褒めたって何にも出ないわよ」
「素直やないんやから…」
「いいわよ。どうせ、そこに行こうと思ってたところだし」
「おぉ、エリティ!持つべきものは友…やね!」
「な、なに言ってるの…大袈裟よ」
「仕方ないわねぇ…アンタの願い、叶えてあげるわ。だけど、アタシたちの希望も聴きなさいよ」
とベロニコさんが、2人の会話にカットインした。
「なんやろ?」
「『海底王国』に行けるようにしてほしいんだけど!」
「海底王国?」
「アンタならできるでしょ?」
「そうやね…ウチのスピリチュアルパワーを使えば…」
「はいはい」
「あ~ん、そんな言い方…つれへんやん!」
「アンタの戯言に付き合ってるヒマはないのよ!元々ナギムナー村に行くのだって、海底王国の情報を訊く為だったんだから」
「せっかちやなぁ…」
「いいから。アンタの『不思議なパワー』で『お手伝い』しなさいよ」
「…まぁ、それなら…『諸君にはこれを差し上げてしんぜよう』」
向こうの世界でも何回か会ったことがあるんだが…時たま彼女は変な『小芝居』を始めることがある。
その度にオレはキョトンとなってしまうのだが、さすがにμ'sのメンバーは慣れたもんだ。
「なに、これ?」
ベロニコさんは何もなかったかのように、彼女に手渡された物を確認した。
「秘宝やね。これを持っていれば、その船は水中もスイスイ進めるんよ」
「本当でしょうね?」
「本当やって。あっ!ただ、このままではあかんよ。まだ、魂が入ってないんや」
「魂?」
「ちょっと待ってな…」
と言うと、彼女はゴニョゴニョと呪文のようなものを念じ始めた。
そして…
「『希パワー、た~っぷり注入!プシュ』」
「頂きました~!!」
彼女の謎の掛け声に、セーニャさんが間髪入れずに反応した。
「ふん、茶番だわ」
それを見てベロニコさんは呟いた。
「だけどね、ノゾミアちゃん…ひとつ問題があるんだけど」
「この人は?」
甲板からオレたちの様子を窺っていた船の主が、声を掛けた。
「あぁ、オレたちと一緒に旅してるシルビアだ。この船のオーナーでもある」
「そういうこと。よろしくね」
「よろしく」
「それで、早速だけど…見ての通り、船が座礁しちゃって動かないの。これじゃあ、ナギムナー村に行けないわ」
「そりゃ、そうやね…」
「なんとかならないかしら」
「大丈夫!もう普通に動けると思うんやけど」
「えっ?」
「元々、ウチがその船をここに引き寄せたんよ。だから、その『念』を解けばいいだけやから」
「どうして、そんなことを?」
「もしかしたらキナイが来たんやないかな…って。近くを通る船はみんな、ウチが呼び寄せて確かめてるんや…」
「あっ…ひょっとしてこの海域が『神隠し』って言われてる理由は…」
「ウチのせいかもしれへんね」
「…」
「でも…な~にもせぇへんかったら、普通に帰しとるんよ」
「?」
「みんな…ウチのこと…襲うんやもん…。そやから、そういう人だけ、ウチのパワーで『消してる』んよ…」
「それが…船員だけが消える理由…」
「サラッと言ってるけど、そこそこホラーな話じゃない」
シルビアの…いや、他のメンバーの顔も少し強ばった。
「ですけど…そんな姿を見せられたら、男として襲いたくなる気持ちはわからなくないかな…。しかも、自分から呼び寄せてるんでしょ。それはちょっと、ひどくないですか?」
「リサトさん、その発言は『痴漢される方にも原因がある』みたいに聴こえて、とても不愉快です!」
「あ、いや…ウミュ…そういうつもりで言ったんじゃないけどさ」
「そやけど、ウチ、下半身、こんなんやん…『お○こ』付いてへんから、エッチはできへんのやけどなぁ」
「なっ…」
彼女のあまりにストレートな表現に、ウミュは卒倒してしまった…。
「ありゃりゃ…ウミュちゃんは、相変わらずやね」
そう言って、ノゾミアさんはムフフと笑った。
「最後にひとつ、質問があるんだけど」
「ベロニコッチ…なんやろ?」
「そんなに会いたければ、自分から行けばいいじゃない」
至極、全うな質問だ。
だが彼女は悲しい目をしてこう答えた。
「それが…できひんのよ…」
「どうしてよ!?」
「ウチ…こう見えて、人間からすれば半人半魚の『魔物』なんよ…」
「あっ…」
こう見えて…もなにも、半身半魚は見たまんまだ。
だが…あまりに魅惑的な上半身…に、そのことを忘れてしまうのは事実だ。
ましてや、彼女が…魔物とジャンル分けされている…ということも。
「こんな姿をして『ノコノコと』人間界に姿を見せれば…」
…そうか!…
…オレは勘違いしていた…
…彼女が言っていた『襲われる』の意味は…
…『性的な対象』としではなくて『狩猟の対象』…
…そういうことか…
「確かに…人魚って見た目の美しさとは裏腹に、いいイメージで語られることは少ないですもんね」
「悲劇も多いわね…」
とエリティカさんが相槌を打った。
「…ぐすっ…」
女性陣+シルビアが鼻を啜っている。
この展開で、こんなしんみりする話になるとは思わなかった。
「わかりました。そのキナイという方…必ず探してきてみせます」
「ウミュちゃん…」
倒れていたウミュが、その話を聴いて、ゆっくり立ち上がった。
「私も頑張るわ」
「シルビアさん…」
「そうとわかれば、善は急げよ!アリスちゃん、船は?」
「はい、OKでやんす」
「それじゃあ、行くわよ、ナギムナー村へ」
「オー!!」
「ほな、よろしく~」
彼女はオレたちを見送ると…水中へと姿を消したのだった…。
「…って絶対、希のことだから、何か企んでるわ」
「そうよ。凛と組んでドッキリだった!とか言うに違いないわ」
「あら、珍しく意見が合うわね」
「アイツには散々、イタズラされてきたからね」
エリティカさんとベロニコさんは、そう言って顔を見合わせると、何かを思い出したらしく、声をあげて笑ったいた…。
~to be continued~
※ノゾミア…ドラクエでの正式な名称はロミアです。
この作品の内容について
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ふつう
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つまらない
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ドラクエ知らない
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続編作れ