【ラブライブ μ's物語 Vol.6】オレとつばさと、ときどきμ's × ドラクエXI   作:スターダイヤモンド

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Marmeid Festa vol.2

 

 

 

「ここが…ナギムナー村?」

 

「そうでやんす」

 

船長のアリスは間違いないと、右拳でドン!と鍛え上げられた部厚い胸を叩いた。

 

どうやら目的地に着いたようだ。

 

 

 

「村…っていうわりには、思ってたより大きいな」

 

「果たして…そのキナイという人はすぐ見つかるのでしょうか…」

 

「まったくアンタは心配症ねぇ…」

 

「まぁ、大きいと言っても、こういう漁村じゃから、誰も知らんということはなかろうて」

 

「そうですね…」

 

「それより、リサト。なんか、やたら『大砲』が島中にゴロゴロしてるんだけど」

とベロニコさんが、小さい身体を精一杯伸ばしながら、村中を見渡して言う。

 

「ねぇねぇ、あの大砲、お花が生けてあるよ!」

 

セーニャさんの指差した島の外れの方を確認すると

「本当ですね。なかなか…斬新な手法です」

と海未は苦笑した。

 

 

 

…そういやぁ、海未ちゃんは、茶華道にも精通してたんだっけ…

 

 

 

「漁村に大砲…変な組み合わせね…」

 

「確かに。でも、ベロニコさん、何もなきゃ、ただ、そんなのモノ置いておくこともないだろうし、きっと理由があると思いますよ…。取り敢えず、いつものように手分けして、情報収集してみますか?…そうすれば、何かわかるかも」

 

「そうね。じゃあ、アタシとセーニャは向こうに行くわ。アンタとウミュはあっちをお願い。エリティカとロウはそっちで…残りの3人は海辺をお願い」

 

「ハラショー!さすがニコね!こういう時は『部長』っぽいわ」

 

「ふん、誉めたって何も出ないんだから」

 

「まったく、素直じゃありませんね…」

 

ウミュとセーニャさんは、お互いの顔を見ると、肩をすぼめて、ふふふ…と笑った。

 

 

 

 

 

…ということで、早速、聴き込み調査や民家に侵入し『書物を漁る』と、次の事がわかった。

 

 

 

ひとつ目。

近海で『クラーゴン』が暴れている為、魚が獲れない。

 

ふたつ目。

男衆は、そのクラーゴン退治に出払っている。

 

みっつ目。

『キナイ』の母親は、島の奥に住んでいる。

 

よっつ目。

この島では…人魚は『怪物』として伝承されている…。

 

 

 

「ノゾミアさんが言った通りだな…。彼女はやはり、歓迎されるような存在じゃないらしい…」

 

「…はい…残念ながらそのようですね…」

 

「それで、リサトちゃん、どうするの?」

 

「クラーゴンがどうたらこうたら…も気になるっちゃあ、気になるけど…」

 

「そうですね。男性が出払ってるなら、その中にいる可能性が高いものですからね」

 

「じゃが、ウミュ殿…キナイの母親がこの島にいるなら、まずはその者に会いに行くのが先じゃろ」

 

「はぁ」

 

「だよな。じゃあ、そこに行ってみるか」

と、オレたちは、住民に教えられた場所へと向かった。

 

 

 

その道中の事だ。

 

 

 

「おや、なんでしょうか?あの人だかりは…」

 

ウミュが前方に何かを発見した。

 

「行列の出来る店か?」

 

「いや、それは違うんじゃない?子供しかいないみたいだし」

 

サイエリナさんとビビアンジュさんが、その人だかりの奥を覗きこむ。

 

「紙芝居に集まってるみたい」

とセーニャさん。

 

 

 

「紙芝居?…」

 

「このご時世に?」

 

 

 

…いや、この世界だし、それはあるでしょ…

 

 

 

セクシーコンビに、心の中でツッこむオレ。

 

 

 

「紙芝居とはまた、随分懐かしいのぅ…ちょっと覗いて行こうかねぇ」

 

「いや、じいさん!そんなヒマは…」

 

 

 

だが、オレのその意見は…紙芝居を読み聴かせる語り手…ばあさんの

「さぁ、みんな…静かにして、よ~く聴いておくれ。今日は、この島に伝わる『忌まわしき呪い』のお話じゃ」

と言う声に掻き消されてしまう。

 

それは…海千山千…いくつも修羅場を切り抜けてきたであろう感じで…通りすぎようとしたオレたちの脚を止めさせるには充分すぎる…なんとも言えぬ説得力のある声と口調だった。

 

否応なく、集まっていた多数の子供の後ろで、オレたちもその話を聴くこととした。

 

 

 

 

“「昔、昔のことじゃった。この村には、誰もが認める腕利きの漁師がおってのう…。技術もさることながら、それはそれは、たいそう男前で…彼は村長の娘とも結婚し、順風満帆な人生を送っておったのじゃ」

 

「じゃが…幸せは長くは続かなかった…。あれは…ある大嵐の夜…彼は漁へと出たところ、海に投げ出されてしまったのじゃ。誰もが『この波風じゃ助からん』…そう思って諦めておった。彼の妻は必死に夫の無事を祈ったのじゃが…」

 

「状況は絶望的じゃった…」

 

「…数日後…なんと彼は島へと戻ってきたのじゃ!!どこをどう彷徨ったかは定かじゃないが…なんとか急死に一生を取り止めたらしかった。妻と村長はもちろん、村中も大喜び、お祭り騒ぎ!!」

 

「ところが!…じゃ…彼の様子は一変しておった」

 

「以前のように漁に出ることもなく、毎日、海を眺めては、なにもせずにボーッ過ごし…挙げ句の果てには『オレは人魚と結婚するんだ』などと言い出し、嫁を捨て、海へ出て行こうとする始末。完全に腑抜けになってしまっておった」

 

「これに怒ったのが村長じゃ。なんと船を燃やしてしまうと、彼を『しじまヶ浜』に閉じ込めて、二度と出られないようにしてしまったのじゃ」

 

 

 

「あとから聴いた話によれば…遭難し死を覚悟した漁師の前に現れたのは…美しい人魚…。そして彼女は…彼の耳元でこう囁いたそうな…」

 

 

 

「『生きたいならば…魂をおくれ…』とな…」

 

 

 

「めでたし、めでたし…」”

 

 

 

「…いや、めでたくはねぇだろ…」

 

「完全にバッドエンドじゃない」

と先に集まっていた子供と区別が付かない大きさのベロニコさんが、オレの意見に同調した。

 

「そうね…」

 

エリティカさんも頷く。

 

 

 

…そういえば、この人たち…

 

…『♪ハッピーエンドね!』って歌詞の曲があったっけ…

 

 

 

オレの脳裏に、ふとそんなバカな事が浮かぶ。

 

 

 

「ねぇ…リサトちゃん、この話ってもしかして…」

 

 

「…ん?…あぁ…まさかと思うがノゾミアさんと…キナイ…か?」

 

シルビアに話し掛けられ、我に返った。

 

 

 

「!!…そこの者たち!…今、キナイと申したか?」

 

そう言ったのは、紙芝居の語り手だ。

オレたちの会話が聴こえたらしい。

 

 

 

「はい。私たちは訳あって、キナイさんを探しているのです」

 

 

 

ウミュがそう返答すると、ばあさんは

「キナイは私の息子じゃが…」

と言ったのだった。

 

 

 

「へぇ…なら、話は早い。息子さんは今、どちらに?」

 

「村の男衆と共にクラーゴン退治に出掛けておるよ」

 

「あぁ、そうなんですか…」

 

「じゃが、生きて戻ってこれるかどうか…相手はなんせ、バケモノ中のバケモノじゃ。長い歴史の中で、ヤツと戦って、どれだけの者が命を落としたものか…」

 

 

 

「なるほど…。これはやっぱり、オレたちにバケモノ退治を手伝ってこい…って流れですね」

とベロニコさんに訊いてみる。

 

「それが勇者の宿命ってヤツなんじゃない?」

 

言わずもがな。

想定通りの答えが返ってきた。

 

 

 

「仕方ないわねぇ…アタシたちがそのクラーゴン退治、協力してあげるわよ!」

 

「…」

 

「あ、オレたちで全員で!ってことです」

 

「それは助かる!」

 

「ぬゎんでよ!今、アタシの言葉をスルーしたでしょ」

 

「ベロニコ、それは仕方ないわ。ただでさえ…なのに、今はそんな格好なんですもの」

 

「エリティカ!…まぁ、いいわ。ただでさえ…ってのは、気に入らないけど、確かにこの姿じゃ説得力がないのは認めるわ」

 

「そうだよね。ニコちゃん、集まった子供たちに溶け込んでて、どこにいたかわからなかったもんね」

 

「セーニャ、アンタねぇ!」

 

「ちゅんちゅん!」

と彼女は悪戯っぽく笑った。

 

「はぁ…怒る気が失せるわ…」

 

オレだって…何されても、彼女のこのセリフと笑顔で、すべてを許しちゃうだろうな…。

 

 

 

「それじゃあ、クラーゴン退治に行きますか!」

 

 

 

 

 

~つづく~

 

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